4. 厚生年金「月額20万」以上は受給者全体の約15%

厚生年金受給者総数のうち、老齢年金が「20万円以上」の割合がどのくらいかを見ていきましょう。

厚生年金受給者総数は1618万445人。このうち老齢厚生年金(老齢基礎年金を含む)が20万円以上という方は250万1594人・約15.5%です。

厚生年金月額20万円を受給する人は「6~7人に1人」の割合ということになります。

男女別でみると、男性は約22%、女性は約1%です。つまり、男性約78%、女性98.8%が「年金月額20万円未満」です。

個々の生活費と照らし合わせてみると、年金収入だけで老後を過ごすことは困難だと感じる方は少なくないのではないでしょうか。

ひとりで月額20万円の年金受給は難しくても、夫婦2人分なら可能かもしれません。同資料によると、国民年金の平均受給額は男性5万9013円、女性5万4346円でした。夫婦の年金の種類ごとに平均値で2人分の年金額を比較してみます。

4.1 夫「厚生年金」・妻「厚生年金」

  • 夫:16万3380円
  • 妻:10万4686円

合計:26万8066円

4.2 夫「厚生年金」・妻「国民年金」

  • 夫:16万3380円
  • 妻:5万4346円

合計:21万7726円

4.3 夫「国民年金」・妻「厚生年金」

  • 夫:5万9013円
  • 妻:10万4686円

合計:16万3699円

4.4 夫婦ともに国民年金

  • 夫:5万9013円
  • 妻:5万4346円

合計:11万3359円

夫婦ともに厚生年金であれば、月額20万円以上の年金収入が期待できそうですね。とはいえ、あくまでもいまのシニア世代の平均受給額に基づくものです。

「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」でご自身の年金見込額を確認して、老後の年金収入を想定しておきましょう。

5.「将来の自分への仕送り」を。

公的年金は、現役世代が負担する保険料によってシニア世代の受け取る年金が賄われる「賦課方式」と呼ばれる仕組みです。そのため現役世代とシニア世代の人口バランスによって、保険料や年金額のおおよその水準が決まります。

出生数が上向き、多数の現役世代で少数のシニア世代を支える人口構成にならない限り、年金額が増える将来を思い描くことは難しそうです。

年金には賦課方式のほかに、「積立方式」と呼ばれる仕組みもあります。これは自分が積み立てたお金を将来自分が取り崩して使う方式です。自己完結型の「じぶん年金」と言ってよいでしょう。確定拠出年金制度(企業型DC、個人型iDeCo)や、民間の保険会社の個人年金保険はこちらの仕組みです。

積立方式の「じぶん年金」は、「将来の自分への仕送り」です。

新NISA「つみたて投資枠」を利用すれば、夫婦で最大月20万円を積立投資することができます。一方、夫婦2人の老後の生活費は月20万円が目安でした。

現役時代に30年間、毎月20万円を貯金すれば、老後30年間にわたって月20万円を引き出すことができます。

しかし、子育てや住宅ローン返済を抱える現役時代に、月20万円を継続的に積み立てられる世帯は実際にはそう多くはないでしょう。

より少ない資金を大きく殖やせる可能性があるのが、積立投資です。リスクはありますが、長期間コツコツと継続し、「時間」を味方に付ければリスクはある程度コントロールできます。老後までの「時間」がたっぷりとあるのが現役世代ということになります。

積立投資を始める方法の一つとして「iDeCo」や「つみたてNISA」などがあり、多くの現役世代が活用を始めています。

積立投資は「雪だるま」と言われます。大きな雪玉を作るのに、最初から大量の雪は必要ありません。小さな雪玉を長く長く転がすことが、大きく育てる秘訣です。今が一番若い、ということを忘れてはいけません。老後の生活が気になったら、積立投資を検討してみてはいかがでしょうか。

参考資料

上田 輔