2. 老後は本当に「2000万円以上」必要なのか
ここからは、「老後2000万円問題」について、金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回)厚生労働省提出資料)をもとに整理していきます。
同資料内では、モデルケースとなるシニア夫婦世帯のひと月の収支について、以下のような試算がなされています。
2.1 高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)
- 実収入(主に年金):20万9198円
- 実支出(主に食費):26万3718円
月々の赤字額=約5万5000円
老後必要額=5万5000円×12カ月×30年(老後30年と仮定)=1980万円 ※約2000万円
「標準的な夫婦世帯で老後30年と仮定すると、2000万円ほど不足する」いう計算式ですが、実は住居費が約1万4000円で計算されていたり、介護費用が含まれていなかったりします。
そのためこの支出額はあくまで「老後最低限の生活費」という前提で考える必要があります。
介護費用を例に挙げましょう。LIFULL介護のデータを用いて平均の入居期間である5年間で計算すると、サービス付高齢者向け住宅で約1000万円、有料老人ホームで約1900万円かかるのです。
また、公益財団法人生命保険文化センターの意識調査によると、「ゆとりある」老後生活を送りたい場合、月々の生活費が36万1000円必要である、という結果も出ています。
これを上記の計算式に当てはめると、老後に約5400万円が不足することになるわけです。
つまり、老後費用に関しては最低でも2000万円、そしてニーズに合わせてさらに上乗せで準備していく必要がありそうです。
3. ほとんどの世帯に「老後対策」が必要
先ほど見ていただいた老後費用が必要となると、60代で貯蓄が2000万円以上ある3割の世帯でも、十分な老後準備が出来ていないということになります。
では、現役世代の私たちが、安心して老後を迎えるためには、どのような準備をしていけばよいのでしょうか。
そのひとつとして、ぜひ検討して頂きたいのが、預貯金だけではなく「資産運用」に視野をひろげることです。
もちろん、コツコツ預貯金を増やすことも大切ですが、超低金利が続くいま、銀行などにお金を漠然と預けていても、ほとんど利息はつきません。
仮にわずかな利息がついたとしても、例えばATMの時間外手数料1回分で、一瞬に消えてしまう程度の金額だったりするわけです。
そんな今こそ、「資産運用」でお金を増やす発想を持つ好機であるといってよいでしょう。
少額から、コツコツ積み立て投資をしていきたい場合には、「つみたてNISA」や「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」などが活用しやすい制度であるといえそうです。
また、資産運用のスタートを検討される際、ぜひ知っておいていただきたいのが「複利」という考え方です。
複利とは、投資から得られた利益を手元に受取らず、再度投資に回すことで、資産を雪だるま式に増やしていく方法です。「利子が利子を生む」などと表現されることもありますね。
老後資金の準備は、ぜひこの複利のメリットを最大限に活用しながら進めていかれることをお勧めします。