絶好調だった上期決算

パチスロ機の「北斗の拳」で有名なセガサミーホールディングス(6460)は、ゲームやリゾート事業なども展開する東証1部上場企業です。その同社が、2017年11月2日に2018年3月期上期決算を発表しています。

実績は売上高が1,947億円(前年同期比+15%増)、営業利益は268億円(同+75%増)と、大幅な増収増益となっています。同時に、営業利益は通期会社予想(200億円)を超過達成するなど、極めて好調な決算であったと見ることができそうです。

ちなみに、セグメント別の営業利益は、遊戯機(パチスロ、パチンコ)が214億円(同+102%増)、エンタテインメントコンテンツが101億円(同+11%増)、リゾートが▲12億円の赤字(前年同期は▲13億円の赤字)となっており、とりわけ遊戯機が好調であったことになります。

同業の平和(6412)が遊戯機の不振から10月24日に上期および通期予想の下方修正を発表するなど、パチンコ、パチスロ市場には依然として逆風が吹いています。そうしたなかで同社は、パチンコ機の新製品にヒットが出たことに加え、部品の再利用や部材共通化促進などの取り組み等によるコスト改善効果で好業績を確保しています。

今回の決算では、下期における遊戯業界の規制変更の影響が不透明であること等により通期会社予想は据え置かれたものの、上振れ余地があるのではないかと感じられます。

このように足元の業績は絶好調な同社ですが、中期的にどのような姿を目指していくのかが気になるところです。そこで、同社が今年5月に発表した「Road to 2020」という中期経営計画の内容を振り返ってみたいと思います。

意欲的な中期計画

まず数値目標ですが、今回の中期計画の最終年度にあたる2020年3月期の業績目標は、売上高が5,000億円(2017年3月期実績3,669億円)、営業利益は750億円(同295億円)、営業利益率15%(同8%)と極めて意欲的なものとなっています。

この背景には、同社が2015年3月期から進めてきた構造改革や事業ポートフォリオの見直しが一段落したため、成長フェーズに移行することが可能になってきたことがあります。

成長戦略の具体的なポイントは以下の3点です。

第1は、衰退産業とも言われているパチンコ・パチスロ機ですが、同社は引き続きコア事業として遊戯事業の成長を目指す考えです。ただし、力点は売上拡大よりも営業利益率の改善に置かれ、最終年度には30%(注:遊技機事業の「その他/消去等」を除いた営業利益率)という高い利益率目標が掲げられています。

実際、今回の決算でも採算性の改善が達成されているため、今後も継続的にリユースの推進、筐体などのプラットフォーム統一化の推進、開発期間の短縮化を進めることで、利益率の改善が期待できるのではないかと思われます。

第2に、エンタテインメントコンテンツ事業(ゲーム関連)については、「グローバルヒットタイトルの創出」を重点課題として挑戦することで成長を狙っています。なお、この事業の目標営業利益率は10%と遊戯事業に比べると低いですが、グローバルに売上を拡大させることに優先順位が置かれていることが背景にあると推察されます。

第3は、統合型リゾート(IR)事業の成功に向けたノウハウの取得に取り組むことです。具体的には、韓国企業と合弁で今年4月からスタートしたカジノ施設「パラダイスシティ」(同社の持分比率は45%)を通して、カジノ事業の開発を行い、運営ノウハウを蓄積していく考えです。

これにより、いずれ日本でも法整備などが進みIR関連投資が可能となった時には、現在、同社リゾート事業の中心である宮崎県の「フェニックス・シーガイア・リゾート」でもカジノ事業を展開することが期待されます。

今後の注目点

同社の過去1年間の株価上昇率(11月2日の終値ベース)は+2%高と、TOPIXの33%高を大幅に下回っています。これが、今回の好決算をきっかけに反転に向かっていくのかが注目されます。

また、カジノの規制基準等を定める「IR実施法案」は10月に行われた突然の解散総選挙で成立が遅れていますが、この影響についても注視したいところです。というのは、2016年にすでに「IR推進法案」(通称カジノ法案)は成立しているものの、実際にこの政策を実行するためには「IR実施法」による規制環境等の整備が必要であるためです。

仮にIR実施法が早期に成立し、国内でIR施設建設の動きが活発化すれば、同社にとっては追い風になることが予想される一方、そうでなければ、同社のリゾート事業の将来に対する懸念が高まることも考えられます。

いずれにせよ、短期業績の好調さだけではなく、中期的な事業の行方にも目配りしていきたいと思います。

和泉 美治