この記事の読みどころ

  •  OKIの最大セグメント、情報通信部門の本部長である坪井正志常務執行役員を訪問取材しました。
  •  同セグメントでは様々な社会課題の解決のため、IoTを活用したソリューションの創出に部門横断で取り組んでいます。
  •  ATM事業だけではなく、長期的に成長が期待できる情報通信部門の動向についても注視していきたいと考えます。

OKIの情報通信部門を訪問取材

OKIというと、まずは銀行やコンビニに設置されているATM事業が思い浮かべられますが、同事業は国内や中国市場の成熟化によって最近の業績は低迷しています。また、今後はインド、ブラジルなどの新興国市場にはまだ伸び代が残るものの、一方でキャッシュレス化の波に晒されるリスクも否定できないため、同社をATM事業だけで評価していくことは難しくなっていくと考えられます。

一方、今回取材を行った情報通信部門は、これまで情報、通信、公共の3つに分かれていた事業が統合され、売上高、営業利益ともに同社最大のセグメントとなっています。2017年3月期の売上構成比は39%、営業利益率は8%と、同社の稼ぎ頭と言えます。

取材での主なやり取り

――今回の中計では、「社会インフラ市場を中心に安定収益を確保しながら、IoTをチェンジドライバーとして新規事業を創出する」とされています。既存事業と新規事業に分けて、今後の見方を教えてください。

坪井:弊社が強い防衛や国交省関連では、中計期間中(~2020年3月期)は底堅いと見ています。民間部門もノウハウが蓄積された業務特化型であるため、大手との競争激化のリスクは比較的軽微であると思います。

――とはいえ、国の予算は限られることや、既存事業のリプレースだけでは、いずれコモディティ化し採算性が低下する懸念があります

坪井:そこは意識しており、センサー、ネットワーク、データ処理の3つの技術を融合した強みを活用した新規事業を顧客との共創で創出することにも注力しています。最近、社会課題を解決するためにIoTを活用した新規事業のニュースリリースを頻繁に発表しているのもその表れです。

――具体的に教えていただけますか。

坪井:一例としては、2017年9月28日に発表した映像圧縮化技術と画像センシング技術を搭載した映像IoTシステム「AISION™」という新製品があります。この製品は、映像監視、防犯・レジ混雑予測、来店検出・客層分析、侵入検知・エリア監視、道路逆走検知など様々なシーンで活用が期待できます。

――どこで他社と差別化するのですか?

坪井:現場で取り込んだ映像を全てクラウドに送り処理するのではなく、一部は端末で処理してしまうという「エッジコンピューティング」の技術や、ネットワークの負担を軽減するための画像圧縮技術が取り入れられていることです。

また、2017年9月7日には、省電力性能を大きく向上させた920MHz帯マルチホップ無線「SmartHop® SR無線モジュール」を発表しています。920MHz帯マルチホップ無線技術は長年、弊社が培ってきた無線技術ですが、免許が不要であり電波の到達性能が高いなどのメリットによりIoT端末としての活用の広がりが期待されます。

こうしたメリットが評価され、最近、住友林業様の「センシング技術活用による自然災害時の住宅の安心・安全度を向上する実証実験」に参画することができました。

――これらは御社の取り組みのほんの一例だと思いますが、いずれも労働力不足、自然災害、環境問題、老朽化など多様な社会課題を解決するという御社のミッションに沿った内容であることが理解できます。最後に、投資家の関心度が高い自動運転関連についてもご解説ください。

坪井:弊社では2012年より、国交省が進める「次世代の協調型ITSに関する共同研究」に参画しており、信頼性の高い車・車間通信技術、次世代の路車協調型ITS通信システム構築などを進めています。

また、丸紅様とともに、国交省が行う「ETC2.0車両運行管理支援サービス実験」にも参画し、ETC2.0を活用した物流事業者向け車両運行管理支援サービス実験を開始しています。

まとめ

現在、取り組み中の新規事業が本格的に収益に貢献するのは今中計(~2020年3月期)以降となりそうですが、ATM事業の収益動向だけに一喜一憂するのではなく、長期的な成長ポテンシャルが期待できる情報通信部門の動向についても注視していきたいと思います。

本稿は「個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)」の記事のダイジェスト版です。全文は以下からどうぞ(有料記事)。
>>OKI(6703)の情報通信セグメントを訪問取材。「IoTのOKI」への取り組みに対する期待と課題
 

和泉 美治