毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」。何気なく見てみると、その金額の少なさに驚く方も多いものです。

次の年金支給日が2023年8月15日に迫りますが、1階部分の国民年金は満額でも月6万円台。2階部分の厚生年金を足しても月10万円程度という方もいます。

老後を考えると、年金額はできるだけ上げておきたいですよね。

そこで検討しておきたいのが「繰下げ受給制度」です。

本来の年金受給額より「最大84%」も増額できるという制度ですが、年金が少ない人にとって本当に救世主となるのでしょうか。

魅力と見逃せないデメリットについて見ていきましょう。

1. 厚生年金と国民年金の繰下げ受給

年金の繰下げ受給とは、65歳から受け取る年金の受給開始年齢を、66歳以降に繰下げることです。

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出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成

これにより、増加率は1ヶ月遅らせるごとに0.7%。1年間遅らせると8.4%になります。最大で75歳まで繰下げできるので、年金は84%増やせます※。

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出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」をもとにLIMO編集部作成

※昭和27年4月1日以前生まれの方(または平成29年3月31日以前に老齢基礎(厚生)年金を受け取る権利が発生している方)は、繰下げの上限年齢が70歳(権利が発生してから5年後)までとなるため、増額率は最大で42%です。

もし厚生年金と国民年金の目安額が月額で10万円という場合、繰下げ受給を活用すると18万4000円に増やせることとなります。

「年金が少ない」と考える場合、一考の価値はあるでしょう。

ただし、繰下げ受給にはデメリットもあります。

2. 年金を繰下げ受給した場合のデメリット

繰下げ受給は年金額を増額できるという大きなメリットがあるものの、その利用者はまだまだ少ないです。

その要因には、大きなデメリットがあるからだと考えられます。

まずは日本年金機構が注意喚起する「繰下げ受給の注意点」を確認しましょう。

  1. 加給年金額や振替加算額は増額の対象にならない。また、繰下げ待機期間(年金を受け取っていない期間)中は、加給年金額や振替加算を受け取ることができない。
  2. 65歳に達した時点で老齢基礎年金を受け取る権利がある場合、75歳に達した月を過ぎて請求を行っても増額率は増えない。
  3. 日本年金機構と共済組合等から複数の老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取ることができる場合は、すべての老齢厚生年金について同時に繰下げ受給の請求をしなくてはいけない。
  4. 65歳の誕生日の前日から66歳の誕生日の前日までの間に、障害給付や遺族給付を受け取る権利があるときは、繰下げ受給の申出ができない。
    ※ただし、「障害基礎年金」または「旧国民年金法による障害年金」のみ受け取る権利のある方は、老齢厚生年金の繰下げ受給の申出ができる
  5. 66歳に達した日以降の繰下げ待機期間中に、他の公的年金の受給権(配偶者が死亡して遺族年金が発生した場合など)を得た場合には、その時点で増額率が固定されるため、年金の請求の手続きを遅らせても増額率は増えない。
  6. 厚生年金基金または企業年金連合会(基金等)から年金を受け取っている方が、老齢厚生年金の繰下げを希望する場合は、基金等の年金もあわせて繰下げとなる。
  7. このほか、年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金に影響する場合がある。
  8. 繰下げ請求は、遺族が代わって行うことはできない。繰下げ待機中に亡くなった場合で、遺族の方からの未支給年金の請求が可能な場合は、65歳時点の年金額で決定したうえで、過去分の年金額が一括して未支給年金として支払われる。ただし、請求した時点から5年以上前の年金は時効により受け取れなくなる。

上記のリスクには十分注意する必要がありますが、特に注意したい点を抜粋して深掘りします。

3. 年金の繰下げ受給の注意点3選を抜粋

年金の繰下げ受給にまつわる注意点について、ここでは3つを抜粋して紹介します。

3.1 【年金の繰下げ受給の注意点】税金の負担が増える

年金額が増えれば、税金や保険料の負担があがります。額面と手取りが比例すれば問題ありませんが、実際は段階的に負担が増えます。

特に税金では、非課税だった方が課税されてしまう可能性もあるでしょう。

こうした負担については、事前にしっかりシミュレーションしておくことが必要です。

3.2 【年金の繰下げ受給の注意点】加給年金が受け取れない

繰下げ受給を利用すると、加給年金が受け取れないという点にも注意が必要です。

加給年金とは、厚生年金の被保険者期間が20年以上あり、かつ65歳以上になった時に生計を担っていると、条件を満たした子や配偶者がいる場合に加算されるものです。

年下の配偶者がいる方などが受け取れる加給年金ですが、繰下げ受給を選択すると受け取れなくなってしまいます。

夫婦の総額の年金を考えて選択する必要があるでしょう。

3.3 【年金の繰下げ受給の注意点】健康保険や介護保険の負担割合が増える

病院を受診する場合、健康保険制度により1~3割の自己負担で済みます。高齢者はある程度の収入まで1割負担で済みますが、年金が増額されると「2割」「3割」に該当することもあります。

病院を受診する機会も増えるため、負担割合の増加は負担に感じてしまうでしょう。

同様に、介護保険の負担割合にも影響するため注意が必要です。

4. 年金増額以外の老後対策も

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年金の繰下げ受給について解説しました。

ねんきん定期便の見込額が少ないという方は、検討しておきたい制度だといえます。

ただし繰下げ受給には注意点があることも事実です。繰り下げる場合には、その間の収入確保や貯蓄も重要になるでしょう。

年金増額だけに頼るのではなく、複合的に老後に備えることが重要です。

資産運用なども視野にいれ、老後の資産を形成していきましょう。

参考資料