年収800万円の場合の受取額は1万1000円
最後に年収800万円でシミュレーションを行いましょう。
【扶養控除を受けられる場合】
所得税
課税所得=800万円-{(給与所得控除190万円)+(基礎控除48万円)+(配偶者控除38万円)+(扶養控除38万円)+(社会保険料控除117万3600円)}=368万6400円
- 所得税額:368万6400円×20%-42万7500円=30万9700円
<課税所得計算内容>
- 給与所得控除:800万円×10%+110万円=190万円
- 社会保険料控除:(健康保険料(介護保険料込)3万8415円/月)+(厚生年金保険料5万9475円/月)→月額合計約9万7800円→年額約117万3600円
住民税
課税所得=800万円-{(給与所得控除190万円)+(基礎控除43万円)+(配偶者控除33万円)+(扶養控除33万円)+(社会保険料控除117万3600円)}=383万6400円
- 住民税額:383万6400円×10%=38万3600円
【扶養控除なしの場合の場合】
所得税
課税所得=800万円-{(給与所得控除190万円)+(基礎控除48万円)+(配偶者控除38万円)+(社会保険料控除117万3600円)}=406万6400円
- 所得税額:406万6400円×20%-42万7500円=38万5700円
住民税
課税所得=800万円-{(給与所得控除190万円)+(基礎控除43万円)+(配偶者控除33万円)+(社会保険料控除117万3600円)}=416万6400円
- 住民税額:416万6400円×10%=41万6600円
【扶養控除廃止による増額】
上記計算結果から所得税、住民税の増額分を求めます。
- 所得税=7万6000増額(38万5700円-30万9700円)
- 住民税=3万3000円増額(41万6600円-38万3600円)
したがって、年収600万円の世帯の場合、所得税と住民税で合計10万9000円が増額されることになり、児童手当を受給しても実質受け取れるのは1万1000円となります。
ここまでの年収ごとのシミュレーション結果を【図表2】にまとめました。
児童手当拡充のまとめ
児童手当の拡充により、子どもにかけるお金に余裕ができるかと思われた今回の施策ですが、扶養控除が廃止になった場合、高校生のいる世帯は実質的な受取金額は大きく減額となる可能性があります。
世帯収入によってはマイナスになる可能性も指摘されており、少子化の歯止めとしての役割を果たせるのかは不透明といえるでしょう。
今後の政府の発表に注目したいところです。
参考資料
- 内閣府「児童手当制度のご案内: 子ども・子育て本部」
- こども未来戦略会議 「こども未来戦略方針」案 (2023年6月13日公表)
- 国税庁「No.1410 給与所得控除」
- 協会けんぽ「令和5年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」
- 国税庁「No.2260 所得税の税率」
木内 菜穂子