皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
日経平均株価は、10月20日で約57年ぶりに14営業日続伸し、21,500円に近づきました(20日の終値は21,457円64銭編集部注)。水準としては、約21年ぶりの高値であり、57年、21年ぶりとの数字を聞くと、素直に株式市場の強さを評価する必要があると感じます。
編集部注:23日の終値は年初来高値の21,696円65銭で歴代1位の15連騰を達成。
約1カ月前の9月15日では、19,909円50銭とまだ20,000円に到達しておらず、この時点と比較すると約8%の上昇となります。
約1カ月間での上昇率約8%という数字はさほど大きいものではないと考える方もおられるでしょうが、「①我が国の10年債金利がほぼ0%であること」、「②大きく下落した反動ではなく高値を切り上げる形での上昇であること」を考えると、大きな上昇と捉えるべきと私は考えています。
上昇した理由は投信1・2017年10月12日付『日経平均 約21年ぶりの高値更新! あえて今後のマイナス材料を考えると?』や2017年9月21日付『日経平均株価20,000円を回復! これは持続するのか?』でお話した通りです。
上述の記事でお話させていだいたとおり、株式市場を取り巻く環境は良好であると考えておりますが、上昇ピッチが速いこともあり、「我が国の株価は既に割高ではないのか?」というご質問を受けることが多くなりました。
そこで、今回以降のコラムでは、割高、割安を判断するバリュエーション指標について、お話したいと考えます。株式市場のバリュエーション指標としては、利益に注目したものやキャッシュ・フローに注目したものなど実は様々なものがありますが、今回はよく利用される予想PERを使って割高、割安を考えたいと思います。
予想PER(Price Earnings Ratio:株価収益率)は、株価を1株当たり予想利益で割ったものです(株価/1株当たり利益)。例えば、この値が18倍とすれば、1株当たり利益に対し、株価が18倍の大きさまで買われていることを示します。
仮に予想PERが1倍であったとすると、次の期で得られる予定の利益と同じ金額を支払えば、株主になることができます。
黒字基調の企業では次の期以降も利益が生まれる可能性が高いのですから、仮に予想PERが1倍であれば、これはどう考えても割安であると思われます。
一方で、皆さんは何倍までであれば割安、何倍以上は割高と感じられるでしょうか?
これは極めて難しい問題です。ひとつのヒントとしては、投資金額に対して発生する利益の利回りを捉えるために、予想PERを逆数にして考えるとの案があります。たとえば、予想PER18倍であれば、1÷18で、5.6%と計算することができます。
この利回りは、長期金利がほぼ0%である日本においては魅力的なようにも思います。しかし、通常の債券利子とは異なり、次の期に予定されている利益は、上にも下にもぶれるため、単純な利回りの水準だけから割高、割安と論じると判断を誤りかねません(なお、予想利益の数字にどの情報ソースのデータを採用するかによって、予想PER・利回りの数字は大きく変化します)。
したがって、私なりの結論としては、理論的に適正な水準を把握することが困難なため、(同一の情報ソースのデータを利用し)「①他の市場との比較」、「②過去との比較」など参考に適正な水準を想像するしかないと考えます。
図表1は、我が国株式市場と海外株式市場の予想PERを比較したものです(情報ソースはブルームバーグ)。これを見ると、我が国株式(日経平均株価、東証株価指数)は、米国(NYダウ、ナスダック)よりは割安で、ドイツ(DAX)よりは割高なことが分かり、米国、ドイツとの比較では突出して、割高であるとはいえないと考えます。
次回は、過去のバリュエーションの推移等から考えた割高、割安評価をご説明させていただく予定です。
(2017年10月20日 15:00執筆)
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柏原 延行