皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
日経平均株価は、10月11日に1996年12月以来、約21年ぶりの高値を更新しました。加えて、翌12日においても続伸しており(12:00時点)、21,000円近い水準まで上昇しています。
メディアなどの報道では、「①グローバルに景気が堅調であること」、「②企業収益が好調なこと」、「③衆議院選挙において自民党が優勢との見方が強まったこと」などが、上昇要因となっていると報道されているようです。
3週間ほど前の2017年9月20日付けの本コラム「日経平均株価20,000円を回復!!」では、衆議院解散が株式市場のプラス要因である理由を考察した上、「これまで幾度となく、お伝えしている好調な企業業績や、底堅い世界経済、着実な進展を予想する米国の金融政策正常化(円安材料)が、(緩慢ではあるものの)株価の持続的上昇をもたらす」と考えていることをお伝えしました。
私の考え方はこの3週間でほとんど変わっていないのですが、一般的に報道される「景気、企業収益」に加えて、着実な進展を予想する米国の金融政策正常化の動きが株価を押し上げていると考えています。
「なぜ、米国の金融政策正常化が、我が国株式のプラス材料になるか」との理由を簡単にご説明すると、「金融政策正常化は米国の景気の底堅さと併存するものであること」と、「米国金利上昇は円安要因として働き、企業業績の上ぶれ要因となること」が挙げられます。
そして、約3週間前から変化したこととしては、選挙で自民党が優勢との見方が主要新聞社の調査結果として報道され始めたことです。選挙については、私は、安倍政権の継続は株価のプラス材料であると考えています。
したがって、このまま優勢な状況が継続すれば、選挙の日が近づくにつれて、(都議会選挙の自民党敗北の一因であると思われる)失言等が生まれる可能性も低下するわけですから、優勢の継続は、株価の上昇材料になると考えることが自然であるように思います。
しかし、投資家にとって大事なことは、反対の立場に立脚するなどして、多面的な思考をすることです。そこで、安易に株価上昇が続くとの結論に至ることなく、改めて今回のコラムでは、今後のマイナス材料について考えてみましょう。
マイナス材料としては、「①なにかと話題のトランプ政権の政策不透明感」、「②北朝鮮問題」、「③ 10月18日に始まる共産党大会後に中国経済が急減速するリスク」が重要であると考えます。
まず、トランプ政権の政策については、法人税減税が実施されるかが、投資の観点からは重要であると考えています。なぜなら、法人税減税は、企業収益・株価の押し上げ要因であるからです。
それでは、トランプ政権は法人税減税を実施することができるのでしょうか。「小さな政府を目指す共和党の立場からは異論が出にくい政策であること」、「2018年秋の中間選挙を有利に戦うためにも、与党である共和党は今後早い時期に景気刺激的な政策を実施したいとの誘因があること」から、来年早々にはなんらかの減税案が成立する可能性が高いと私は考えます。
したがって、トランプ政権の政策が大きな株価のマイナス要因となる可能性は低く、減税案が成立した場合には、むしろ株価のプラス材料となる可能性すら感じます。
次に、北朝鮮問題です。新たな展開が発生する可能性は当然考慮に入れる必要はあるものの、株式市場は、すでに経験したミサイル発射や核実験に耐性を強めつつあるように思います。北朝鮮と陸続きの韓国の株価は、今年に入って、我が国以上に堅調に推移しています(図表1)。
最後に中国経済の急減速です。政府の「経済や市場への影響力が強い」中国では、政府がコントロールできなくなるような急減速を政府は容認しないと考えます。中国との関係が深い台湾の株価が好調なことも、今後の中国経済に一定の底堅さがあることを示唆していると考えます(図表1)。
選挙が各種報道の通り、自民党優勢となれば、(9月20日のコラムの結論と同じで恐縮ですが)企業収益の伸びに応じた「(緩慢ではあるものの)株価の持続的上昇」が続く可能性が高いと考えます。
(2017年10月12日 12:00執筆)
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柏原 延行