海外ではAirbnbなどに代表される民泊の利用が一般化しつつありますが、世界中から観光客が集まる京都では、そんな事情を背景に民泊施設が急増しています。しかし、民泊特区制度を導入していない京都市では、民泊物件の大半が違法民泊と考えられます。以下、京都市における外国人観光客の宿泊事情を見ていきます。

違法民泊が広がる京都市

世界的に人気の高い観光地である京都市は、毎年観光客数の把握等を目的に「京都観光調査」を実施。その中で、2016年度の違法民泊利用者数は約110万人と推定されています。

この約110万人という数は、宿泊を伴う修学旅行生の110.5万人をやや上回るレベルであり、京都市における違法民泊の存在感の大きさと利用者数の多さを実感させる結果となりました

実態はさらに多い?

上記調査は、Airbnbを始めとする民泊仲介サイトに掲載されている京都市の約5,000件の違法民泊施設について、30%の稼働率として利用者数を推計したものです。

稼働率30%というのは、来年施行予定の民泊新法(住宅宿泊事業法)の年間営業可能日数180日から見ても、相当少ない数字です。実際に稼働率30%では物件オーナーは赤字の可能性があります。

よって、違法民泊利用者数約110万人との推定は相当控えめな数字であり、実態としてはさらに利用者数は多い可能性が高いと言えます。

京都に宿泊する外国人の14%が民泊を利用

そもそも観光客の増加で慢性的な宿泊施設不足に陥っている京都市では、外国人観光客の民泊利用が急増しています。

京都市の訪日外国人観光客に対する宿泊施設タイプ調査(複数回答)によれば、宿泊先として「アパート・マンション」=民泊を利用した比率は14.0%。全体から見れば1位ホテル40.2%、2位旅館22.4%に次ぐ、3位の利用率ですが、町家・宿坊・ゲストハウス等の9.8%より上位にきています。

さらに、オセアニア・欧州からの観光客に限れば、アパート・マンションの利用率は旅館を上回っています。

この調査結果からは、利用率は低めながら絶対数が多いので利用者が多いアジアからの観光客、絶対数は少ないながらも利用率の高いオセアニア・欧州からの観光客という民泊利用の姿が浮かび上がります。

ウーバーやタクシーや民泊など、海外ではシェアリングエコノミーが驚く程のスピードで浸透していますが、京都市の調査でも外国人の民泊利用が既に一般化している実態が明らかになっています。

違法民泊の増加に苦慮する京都市

街の規模は決して大きくない京都市では、こうした違法民泊の増加により地域住民との軋轢が生じるケースも目立つようになっています。

ゴミ出し・騒音トラブルなどが頻発し、京都市はいち早く違法民泊対応部署を設ける等の対策を取っていますが、急増する違法民泊物件に対応は後手に回っているのが現状です。

京都市の推計では、平成28年度の観光客数は5,522万人と、前年度の5,684万人に比べ減少しています。一方、宿泊者数は平成27年度1,362万人から平成28年度1,415万人と増加していますが、これもピークアウトする可能性もあります。

しかしながら既にリピーターの訪日外国人観光客が増加している中で、急激な減少は考えにくい状況です

少なく見積もっても修学旅行生並みにまで増加した違法民泊利用者数の増加に対し、来年の民泊新法に向けて京都市がどのような規制強化に乗り出すのか注目されます。

石井 僚一