成長著しいアジアへの投資ウエイトを高めることは、国際分散投資を進めるなかで大変重要なことであると、これまで一貫してお話をしてきました。では、どのようにそれを実現したらいいかという考え方を今回はお伝えします。

単純にその国に行って、不動産や株式、債券などに現地通貨建てで直接投資をしたらいいのかというと、実はそれだけではありませんし、いきなりそのような行動に出ると、そこには考えておかなくてはならないリスクがあります。

投資のアジアシフトへの道筋

世界の投資家は、確かにアジアシフトを進めていますが、いきなりアジア各国に直接投資をしていくかというと、必ずしもそうではありません。ローカルのビジネスパートナーと組んで直接投資するなど、より確実な選択肢もありますが、それでも、まず香港やシンガポールなどのマネーセンターに資金をシフトし、ワンクッションを置いて投資していることが多いのも事実です。

個人の場合、選択肢が相応に狭まることを勘案すると、最も保守的な手法は、香港などに集まるプロフェッショナル達のノウハウを利用することだと思います。彼らは様々なネットワークを持ち、アジア諸国からの情報や他の投資家たちからの情報も持っています。そのプロフェッショナリティを利用するのです。

香港のファンドマネージャーの強みとは

香港には、アジアを投資対象とするファンドが山のようにあります。それには、もちろん報酬(ファンドの場合、信託報酬や買付け手数料)を支払う必要がありますが、多様な情報を活用できたり、ファンドマネージャーのプロフェッショナリティを活かして投資した利益の配分を受けることができます。投資対象の選別や、より適正な売買のタイミングを確保でき、自分自身でポートフォリオを管理運営するよりは優位性があります。

数多くの、またあまり見聞きしたことのないアジアの企業の株や債券を自分で選別することは、容易ではありません。しかし、そうした企業の情報も、既に世の中には溢れ出ています。日本にいるとそういう情報に触れる機会は残念ながら少ないですが、情報公開は進み、会計基準もどんどん国際基準に近づき、企業の活動範囲も拡大しています。

そうした情報に敏く、アジア各国への投資を専門とするファンドマネージャーという意味では、香港には実に多くのプロフェッショナルがいます。少なくとも、数では日本の比ではありません。筆者もインタビューや交流の機会を得る中で、そういう人たちからの情報は有益であると実感しています。

日本からは、彼らプロフェッショナル達の情報ネットワークや判断力を活用して、躍進するアジアの国や企業の成長から利益を得ていくことを、まず検討いただくことをお勧めします。

通貨リスクについてはどうか?

ちなみに、香港では、アジア株式やアジア債券を投資対象とするファンドであっても、米ドル建てでのファンド設定が多いのも特徴です。米ドルをベースカレンシーにしていますので、アジア通貨のリスクまでも背負わなくていいという利点が、ここにあります。

筆者は、アジア通貨の脆弱性は、1997年のアジア通貨危機、2007年のリーマンショックの時に比べれば、相当に改善してきており、何か事が起こるとアジア通貨が売られるという市場の反応には懐疑的です。1997年や2007年当時に比べても、アジア各国の外貨準備の水準はかなりの改善を見せていますし、対外債務もGDP比でずいぶん抑えられています。それほど脆弱な環境ではなくなってきているということです。

それでも、2016年にもマレーシアリンギットやインドネシアルピアなどを中心にアジア通貨は、トランプ当選後の米ドルが買われる局面で、資本流失懸念から売りを浴びました。原資産の価格変動リスクに加えて、為替のリスクを取る段階かどうかは悩ましい課題です。まだ、もろ手を挙げてという局面ではないかもしれません。

筆者は、いずれアジアのローカル通貨のリスクも、より安心して取る時期が来ると思いますが、その時を慎重に見極めていきたいと思っています。

ニッポン・ウェルス・リミテッド・リストリクティド・ライセンス・バンク 長谷川 建一