先週の為替市場はドルが買われる展開ではあったものの、ドル/円、ユーロ/ドルともに大きな値動きのない中、レンジ相場を形成し次の値動きに備える状態となりました。今週は大きな指標発表はありませんが、次期FRB議長の人事等をテーマに、サポート&レジスタンスのブレイクを伴う大きな値動きが生じるかという点に注目です。

先週の為替市場振り返り

6日(金)に米雇用統計の発表があった先週の為替市場は、ドル/円、ユーロ/ドルともに大きな値動きは生じませんでした。しかしながらドルが買われる流れは継続。ドルの他通貨に対する相対的な強さを表すドルインデックスは、4週連続の陽線を形成しました。

6日に発表された米雇用統計はハリケーンの影響が生じているものの、全米レベルで見れば雇用状況は順調との結果でした。ただし、雇用統計を契機にドルインデックスはいったんピークを付けた後、下落しています。

そのドルインデックスの値動きの影響を受け、ドル/円は雇用統計発表後に113.4円台を付けたものの、その後は急落。さらに、ロシアの議員による北朝鮮が新たなミサイル実験を準備中との発言が報じられて下落に勢いがついた結果、112.6円台にまで下落しました。

ドル/円は週足では陽線とはなったものの、上ヒゲの長い陽線です。先々週も113円以上で長いヒゲを付けている状況であることから、113円以上では強い売り圧力の存在があると推察されます。

ドル/円の過去6か月間の推移

最安値から2割戻しを達成したドルインデックス

9月第1週に年初来安値を付けたドルインデックスですが、その後は一転上昇に転じています。大枠では下落トレンドの流れにありますが、先週は1月の高値と9月安値の間で約2割の戻しを達成。この先、再度下落トレンドに転じるのか、3割戻しに至るまでまだ上昇を続けるのか、分岐点とも言える値位置に到達しました。

雇用統計を受け、いったんピークアウトした形となっているドルインデックスですが、金融市場が本格的にスタートする10日以降の方向に注意を要します。

今週の見通し

今週は大きな指標の発表予定はありません。また、9日(月)は日米とも祝日であり、金融市場が本格的にスタートするのは10日からとなります。そんな中、先週から為替市場で急浮上している話題が次期FRB議長の人事。イエレン議長再任の可能性は低いとの前提で、様々な人事情報が流れています。

テーパリング開始を決定して既に金融引き締めに舵を切っているFRBですが、イエレン議長は金利引き上げには慎重な姿勢を崩していません。しかし、後任には金融引き締め論者として知られるウォーシュ元FRB理事の名前も上がっており、雇用統計後のドルの行方は、次期FRB議長を軸に動くと予想されます。

個別の通貨ペアを見ると、ドル/円では113円を超える水準に強い売り圧力が存在していそうで、今週以降113円を確実に超えて上昇できるかどうかがポイントです。先々週以降、113円の壁に4回上昇を阻まれており、先週は112円台半ばから113円台前半のレンジ相場で終始したため、上下いずれの方向にもブレイクしやすいチャートパターンとなっています。

ユーロ/ドルは、1.170ドル付近が壁となり下落が止められています。スペイン・カタルーニャ州の独立問題でユーロは売られやすい状態となっています。この問題の行方によっては、1.170ドル付近を明確に下ブレイクする可能性もあり、その行方に注目する必要があります。また12日にはドラギECB総裁の講演も控えています。

先週はドルが買われる展開ではあったものの、通貨ペアとして見ればドル/円、ユーロ/ドルともにレンジ相場を形成しており、今週以降大きな値動きが生じる可能性があります。

まとめ

為替市場がレンジ相場を形成する一方、先週は日米独で株式市場が絶好調で推移しており、いずれも年初来高値を連日更新しています。よって株式市場の高値更新がどこまで続くのかという視点も必要となります。

次期FRB議長人事にドルが影響される可能性が高い今週以降の為替市場ですが、ドル/円、ユーロ/ドルともに注目すべきサポート&レジスタンスが存在しています。このサポレジ付近での値動きに注意して各市場に臨みたいと思います。

石井 僚一