2023年度は3年ぶりに年金額が引き上げられ、6月15日にその初回支給日を迎えました。
年金は偶数月だけの支給となるため、年金生活になると少々戸惑うかもしれません。
その他、「年金から天引きされるお金がある」ということにも注意が必要です。
筆者も自治体職員のときは、年金から天引きされる保険料について何度も相談を受けました。
いつのお金がどのように天引きされるのか、いまいちわからないというのが大きな原因のようです。
今回は、国民年金と厚生年金からも「ガッツリ天引きされる6つのお金」をご紹介します。
1. 「厚生年金と国民年金」年金制度のしくみ
公的年金には「厚生年金と国民年金」があり、上の図のように2階建ての構造をしています。
1.1 国民年金(老齢基礎年金)
1階部分にあたる国民年金には、日本に住む20~60歳未満の方が加入し、一律の保険料(2023年度は月額1万6520円)を納めます。
さらに、自営業やフリーランスなどの第1号被保険者、公務員や会社員などの第2号被保険者、第2号被保険者に扶養される第3号被保険者にわかれます。
なお、第3号被保険者は保険料納付の義務がありません。
1.2 厚生年金(老齢厚生年金)
公務員や会社員などの第2号被保険者は、国民年金に上乗せして2階部分の厚生年金にも加入します。
現役時代の報酬に応じた等級で厚生年金保険料が決まり、加入期間や納めた保険料によって、受け取れる年金額が決まるというしくみです。
年金額は納めた保険料や加入期間によって異なるため、個人差が大きいものです。
さらに、国民年金や厚生年金から天引きされるお金も個人によって異なります。くわしく見ていきましょう。
2. 厚生年金と国民年金から天引きされるお金6つ
厚生年金や国民年金から天引きされるお金は、主に次の6つです。
2.1 所得税
公的年金は雑所得となり、65歳未満なら108万円、65歳以上なら158万円を超えると所得税が課税され、年金から源泉徴収されます。
2.2 復興特別所得税
「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税の源泉徴収の際に併せて復興特別所得税もかかります。
2037年までは復興特別所得税が源泉徴収されるため、年金額から各種控除を引いた金額に、所得税及び復興特別所得税として5.105%をかけた金額が源泉徴収されます。
2.3 個人住民税
前年中の所得が一定以上となれば、住民税も課税されます。基本的には年金からの天引きで納めます。
ここまで紹介した税金に関しては、所得が一定額を下回る方は課税されません。また、障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
2.4 介護保険料
続いて天引きされる「社会保険料」について見ていきます。
65歳になると、介護保険料は健康保険料と引き離して単独で支払うことになります。
原則として年金年額が18万円以上の方は、介護保険料が年金から天引きされると知っておきましょう。
また、介護状態になれば介護保険料の支払いが終わると勘違いする方もいますが、支払いは一生涯続きます。
2.5 国民健康保険料(税)
年金を受給しながら国民健康保険に加入している場合、「65歳から74歳までの世帯の場合」などの要件を満たすと、保険料(税)が年金から天引きされます。
2.6 後期高齢者医療制度の保険料
原則75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」の保険料も、要件を満たすと原則として年金天引きで納めます。
※国民健康保険や後期高齢者医療制度は、申請により普通徴収(納付書や口座振替)に変えられる自治体もありますが、それでも支払いの義務はあるため、実質年金天引きと負担は変わらないといえます。
※国民健康保険と後期高齢者医療制度はいずれかの加入になるため、同時に天引きされることはありません。
税金と違い、社会保険料はどれだけ所得が低くても負担する必要があります。さらに後期高齢者保険料や介護保険料は、昨今引き上げの動きがあります。
高齢者の負担は今後も上がっていくと予想されます。
実際に天引きされるお金の金額については、6月上旬に送付された年金振込通知書で確認しておきましょう。