2023年6月14日に発表された、ANYCOLOR株式会社2023年4月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:ANYCOLOR株式会社 代表取締役CEO 田角陸 氏
ANYCOLOR株式会社 取締役CFO 釣井慎也 氏
2023年4月期通期決算説明会
田角陸氏(以下、田角):みなさま、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。ANYCOLOR代表取締役CEOの田角でございます。2023年4月期の通期決算についてご説明します。
まずはCFOの釣井から、2023年4月期の通期業績報告と、2024年4月期の業績予想についてご説明します。
業績サマリー
釣井慎也氏(以下、釣井):CFOの釣井です。私からは、2023年4月期の業績についてご説明します。売上高は253億4,200万円、営業利益は94億1,000万円、当期純利益は66億9,900万円となりました。2023年3月に公表した業績予想に対しては、概ねインラインの着地となっています。
この結果を受け、2024年4月期の売上高は前年比38.5パーセント増の330億円、営業利益は前年比34.9パーセント増の127億円と見込んでいます。こちらの見通しは、現在活動しているVTuberを基本とし、見込まれる施策をベースに立てたものです。詳細については後ほどご報告します。
2023年4月期 通期決算
2023年4月期の通期決算についてご説明します。我々は、日本国内で展開している「にじさんじ」、英語圏の配信者を起用している「NIJISANJI EN」、インドネシア語や韓国語など、その他で配信している配信者から生じる収益の3つで、売上を区分しています。
今期全体で大きく成長したのは、英語圏向けのサービス「NIJISANJI EN」です。こちらのサービスは2021年5月に開始され、現在約2年が経過しています。特に、2021年の年末から2022年の年明けにデビューしたLuxiemやNoctyxなどが主力となり、売上に貢献しました。
加えて、日本国内の「にじさんじ」も今期全体で約50パーセント成長しています。2023年2月に5周年を迎え、引き続き力強い成長の過程にあると認識しています。「にじさんじ」収益には、2018年、2019年頃のサービス開始初期から活動しているライバー、2023年にデビューした新人ライバーなど、さまざま所属していますが、それぞれが売上にバランスよく貢献しています。
費用項目については、大きく2種類に分けています。1つは直接変動費で、こちらは売上高に応じて発生する費用であり、売上原価の一部を構成しています。具体的には、配信やグッズ販売等に関するプラットフォームの手数料、VTuberへの報酬、グッズ製造やイベント開催にかかる原価などが含まれます。
これらを直接変動費と呼んでおり、今期全体の売上高に対する比率は前年同期比で2.2ポイント改善し、48.3パーセントとなりました。2.2ポイントの内訳は、各費用項目に対して細かな改善を継続的に試みた結果だと認識しています。
もう1つは、直接変動費以外の売上原価と販売費及び一般管理費です。こちらは大きく分けて、人件費関連、オフィス関連、外注費、その他を計上しています。これらは売上原価に計上しているものと販管費に計上しているものがあり、売上原価に計上しているものは、直接変動費とは別に「上記以外の売上原価」として示しています。
これらの費用は売上高に比例して増えるわけではなく、一定の規模のメリットが出ています。その結果、営業利益率は前年同期比で7.5ポイント改善し、37.1パーセントで着地しました。
売上高推移(四半期)
「にじさんじ」と「NIJISANJI EN」における、四半期ごとの売上高の推移です。我々はそれぞれにおいて、ライブストリーミング、グッズ販売を中心としたコマース、企業案件等のプロモーション、リアルイベント開催の4つの事業を行っています。
どちらの売上高も、第4四半期が前四半期比でやや落ち着いていますが、前年比では伸びています。その理由としては、昨年、一昨年と同様に、年間予算に対して超過ペースで進んでいる中で予算とインラインでの着地とすべく、コマースやプロモーションの領域において、第4四半期で調整を行ったことによるものです。
すなわち、コマースの発送時期や発売時期の調整、プロモーションの実施時期の調整などです。第4四半期に行われるこれらの調整は、5月から始まっている2024年4月期に力強いスタートを切るための準備期間だと捉えています。
営業利益率推移(四半期)
コスト面、費用面、利益面での四半期推移についてご説明します。
先ほどお話しした内容と重複しますが、第4四半期における直接変動費率は48.3パーセントで、今期全体と比較すると、これまで50パーセント前後だったところから数ポイントずつ改善してきています。第3四半期と比べて大きく改善した要因は、プロモーションや企業案件の比率が大きかったことで、こちらは引き続き改善傾向にあります。
また、第4四半期は「その他原価+販管費率」で19.7パーセントを計上しています。我々は毎年第4四半期に、従業員に決算賞与を支給しています。今期は約2.5億円の賞与が支払われ、四半期売上高に対して約4パーセント強の割合となりました。
その結果、第4四半期単体の営業利益率は32パーセントと、落ちたようにも見えますが、スライドのグラフを見ていただくと、前年同期比では着実に改善していることが確認できると思います。
VTuber数、YouTube再生時間、ANYCOLOR IDの推移
財務数値以外の数値面についてご報告します。まずはVTuber数です。日本国内では126名が活動しており、前年比で17名増加しました。今期は20名が新規デビューし、3名が卒業しました。
「NIJISANJI EN」では12名がデビューし、2名が卒業しました。卒業は一定数ありますが、全体としては例年どおりの状況だと考えています。新規デビュー数については、概ね計画どおりに進捗できたと思っています。
YouTube再生時間について、日本国内は順調に推移していますが、「NIJISANJI EN」は前四半期比でやや落ちています。これは足元でショート動画やミュージックビデオ、切り抜き動画などの短尺動画が流行しているためだと考えています。また「NIJISANJI EN」においては、1名から2名のライバーの増減の影響が数字に出やすいフェーズにあることも要因だと考えています。
一方で、YouTube再生時間全体を考えると、ここ数年のユーザーの消費の仕方が、切り抜き動画やショート動画の視聴へと変わってきています。加えて、我々の収益構成も配信以外の部分が大半を占めており、YouTube再生時間を会社の業績に関連する指標として見ることにギャップが生じてきているのではないかと考えています。
スライド右側のANYCOLOR ID数は、グッズやイベントなどへの参加・購入に必要なユニークID数です。2023年4月末時点で93万4,000アカウントと、四半期ベースで見ると約10万アカウント増加しており、引き続き新規ファンの流入が一定数あることが見て取れます。
従業員数
従業員数の状況です。従業員数は、今期1年間で約100名増加しました。大きく分けると、ビジネスの領域で約60名、それ以外では約40名増加しています。
ビジネスを進めていく上で、売上高と比例して従業員数を増やす必要はありません。しかし、活動するVTuberやグッズ、イベント、その他の施策の増加に応じて、よりよいものをファンのみなさまに届けるために、一定の人員増加は必要だと考えています。
2023年4月期 新規VTuberデビュー
2023年4月期の新規デビューの状況です。先ほどお伝えしたとおり、「にじさんじ」で20名、「NIJISANJI EN」で12名がデビューしています。
今期は男性・女性、日本国内・国外、単体・グループなど、さまざまなバリエーションでデビューさせることができました。総じて、どのグループもスムーズにデビューしており、収益に一定の貢献をし得る質の高いVTuberだと考えています。
2023年3月、4月にデビューした8名はデビューから間もないため、ここで詳しくお伝えできるようなお話はまだありません。しかし、2022年5月、7月、2023年1月に日本国内でデビューした3組、2022年7月、12月に「NIJISANJI EN」でデビューした2組は、会社としても非常にうまくいった成功例と認識しています。
今後も引き続きオーディションなどを通じて、積極的にデビューを図っていきたいと考えています。
2023年4月期 第4四半期に販売した主なグッズ等
グッズやコマースの状況です。さまざまな物を販売しているため、すべてを紹介することは難しいのですが、第4四半期のトピックとしては「にじさんじ 5th Anniversaryグッズ」と「にじさんじタロット」の2つ施策が特に成功したと認識しています。
これらの施策は、過去に会社として取り組んできたいずれの施策と比較しても、圧倒的に強い数字を示しています。この四半期に2つの施策を打ち出したことは、足元での力強さを表していると考えています。
第4四半期に発送しているものはあまり多くないため、この貢献は次の四半期に反映されると思いますが、足元で販売したグッズの売れ行きから見て取れる力強さは、非常に大きいと感じています。
2023年4月期 ライブイベント
ライブイベントについてです。2023年4月期は、四半期に1回程度の頻度で開催しました。特に四半期ごとに開催すると決めていたわけではありませんが、今期は偶然にもそのような頻度での開催となりました。いずれにしても、ファンの熱量の高まりなどが感じられるよい機会になったと考えています。
また、イベントチケット単体の売上だけではなく、それに伴って販売されるグッズの売上や、その結果として高まるファンの熱量を総合的に勘案すると、このビジネスは会社として非常に意義や価値のあるものだと考えています。
2024年4月期 業績予想
2024年4月期の業績予想です。先ほどもお伝えしたとおり、現時点で、売上高は前年比30.2パーセント増の330億円、営業利益は前年比34.9パーセント増の127億円と見込んでいます。
こちらの計画策定の前提として、現在活動しているVTuberや、現在計画中で明確になっているコマースやイベントなどの施策をベースにしています。また、配信や企業案件に関しては、まだはっきりしていないものも多いため、大まかなアプローチとしています。
先ほどからお話しているとおり、我々のコスト構造は直接変動費とそれ以外の人件費を中心としたコストで成り立っています。現時点では、アグレッシブに変動比率を改善したり、コスト構造を一新したりして規模のメリットを取っていく前提にはしていません。
まだ期初の段階ですので、会社として確実に達成できる水準で計画を策定しています。そのため、期初である現時点においては、売上高に関する個別領域ごとの内訳やコスト項目ごとの内訳などは、あえて開示していません。足元では、会社全体でこの数字を着実に達成するために取り組んでいきたいと考えています。
この数字に表しきれていない部分について、今期は日本国内におけるファン獲得を拡大していくことに加え、海外にいるファンにも、グッズやイベントへの出展などのいろいろなかたちでタッチポイントを増やしていきたいと思っています。
また、コスト改善の観点では、一つひとつの施策に対する効果的な費用のかけ方について、効果測定を十分に行っていく中で、今期全体を通じてより改善していこうと思っています。以上で、2023年4月期および2024年4月期の状況についてのご報告を終わります。
メディア業界におけるパラダイムシフト
田角:私からは、今後のANYCOLOR社の成長戦略およびビジョンについてご説明します。我々は、日本を代表して世界で活躍するグローバルカンパニーを目指していくことをビジョンとしています。
日本を代表して世界で活躍するグローバルカンパニーを目指す理由として、現在の日本企業を数十年スパンで見た場合、世界におけるプレゼンスが低下しているように見えることが挙げられます。加えて、今後、人口減少や高齢化社会が進む日本において、世界で活躍することが日本企業にとっての生存戦略であり、成長戦略だと考えているからです。
そして、日本を代表して世界で活躍するグローバルカンパニーを目指していくためには、日本企業が日本企業である強みや特徴を活かして、世界で活躍できる市場で戦うことが非常に重要だと考えており、その数少ない市場の1つに、日本のアニメコンテンツ市場が挙げられます。
VTuberの構想のきっかけにもつながりますが、現在のメディア業界では、日本のアニメコンテンツ市場に対して非常に大きなパラダイムシフトが起きています。これは、2つの大きな顧客ニーズが変化していることが要因だと推測しています。
1つ目は、一方向で非同期的なコンテンツ・メディアの形態から、リアルタイムで双方向にコミュニケーションが取れるコンテンツ・メディアへの変化です。2つ目は、画一的でプロフェッショナルなコンテンツ・メディアから、UGC(User Generated Content/一般ユーザーによって作られたコンテンツ)でユーザーの多種多様なニーズに応えられるコンテンツ・メディアへの変化です。
このような大きな2つの顧客ニーズの変化によって、いわゆる伝統的なテレビやラジオなどから、「YouTube」などのSNSへとメディアの形態が移り、メディア業界で非常に大きなパラダイムシフトが起きていると考えています。このパラダイムシフトに対応するかたちで、日本のアニメコンテンツ市場に変化をもたらしていくことを構想したことが、VTuber事業を手がけるきっかけとなりました。
VTuberの活動の拡がりに伴うTAMの拡大
また、日本のアニメコンテンツの市場規模は約2.7兆円であり、そのうち国内の需要による市場が約1.4兆円、海外の日本のアニメコンテンツに対する需要が約1.3兆円と、日本企業が世界で活躍できる土壌が成立している市場だと考えています。
その中で、VTuberという存在は、IP(キャラクター)とタレント(インフルエンサー)の両方の特徴を持っています。タレント(インフルエンサー)として、例えばアイドルや音楽の市場に展開したり、IP(キャラクター)として、メディアミックス化してコミックやゲーム市場に展開したりすることで、日本のアニメコンテンツに関連する周辺市場にも変化をもたらしていきたいと考えています。
このような変化をもたらすことによって、「日本を代表して世界で活躍するグローバルカンパニー」を目指していきたいと考えています。
持続的に顧客層を惹きつける成長モデル
ANYCOLOR社の今後の成長モデルおよび成長戦略についてご説明します。我々が成長モデルおよび成長戦略を考える上で非常に重要視している考え方は、量と質をバランスよく成長させていくことです。
こちらは、他のどの事業にも共通する部分かもしれませんが、「量だけを追い求めると質が下がってしまう」「質だけを追い求めると量が下がってしまう」という偏りを危惧しています。これまでも、我々は「にじさんじ」というブランドやコミュニティを成長させていく上で、量と質をバランスよく成長させていくことに注力してきました。
VTuber事業における「量と質」として、量的指標にはVTuber数やVTuberのファン数、質的指標にはVTuber当たりの売上高やファン当たりの売上高などがあります。これらの量的指標と質的指標の掛け算によって、我々のVTuber事業の売上高が成り立っていると考えることができます。
これらの指標にバランスよくアプローチし、新規のVTuberをプロデュースして「にじさんじ」全体のファン層を拡大すること、既存のVTuberをプロデュースし「にじさんじ」全体のファン層を拡大すること、VTuber当たりの売上高を向上させるためにさらなる活躍の機会を作っていくことなどが、我々が注力する領域の目的として重要になります。
スライド下部には、注力する領域について具体的に3つ掲げています。1つ目が「ユニット展開の強化と収益機会の拡大」、2つ目が「バーチャルタレントアカデミーの強化」、3つ目が「コンテンツ制作強化」です。
ユニット展開強化と収益機会の拡大
1つ目の「ユニット展開の強化と収益機会の拡大」についてです。こちらでは、複数のVTuberでユニットを組成し、音楽、番組、イベント、グッズなどのコンテンツなどをプロデュースしていきます。
ユニットというかたちでコンテンツをプロデュースしていくことで、1つの施策で複数のVTuberのコンテンツをプロデュースできるため、施策効率が非常によくなります。また、タレント同士のコミュニケーションやタレント同士の関係性により、相乗効果も期待できます。
さらに、ユニットごとにターゲットを決め、新規のファン層や収益機会を拡大できるという特徴も持っています。
バーチャルタレントアカデミー(VTA)の強化
2つ目の「バーチャルタレントアカデミー(VTA)の強化」についてです。「バーチャルタレントアカデミー」は、歌唱や演技、ダンス、企画力など、VTuberとしての基礎的なスキルやVTuberとして必要なマインドの育成の期間を経た上で、「にじさんじ」に所属するVTuberとしてデビューしていく養成課程です。
「バーチャルタレントアカデミー」の研修やレッスンを受けることで、中長期で活躍し「にじさんじ」全体のファン層を拡大できるVTuberを、安定してプロデュースできる体制作りを強化していきたいと考えています。
直近でも、2023年3月にはVTAバーチャルアーティスト1期生、2023年5月にはVTA5期生を募集するなど、定期的にオーディションを開催し、将来の「にじさんじ」VTuber候補生を確保しています。
コンテンツ制作の強化
3つ目の「コンテンツ制作の強化」についてです。こちらでは、通常の配信やコンテンツ販売に加え、VTuberとしての特徴を活かしたさまざまな活躍機会の拡大に注力していきます。
先ほども少し触れましたが、VTuberという存在は、タレント(インフルエンサー)とIP(キャラクター)の両方の特徴を持っています。そのため、タレント(インフルエンサー)としては、例えば音楽活動や大会での活動を行うことで、ファン層や収益機会の拡大を図ります。
また、IP(キャラクター)としての特徴を活かし、例えばライセンスアウトのビジネスやメディアミックス、ノベルやコミックなどのメディアミックスの展開を行い、ファン層や収益機会を拡大していきたいと考えています。
国内需要、海外需要ともに「ユニット展開の強化と収益機会の拡大」「バーチャルタレントアカデミー(VTA)の強化」「コンテンツ制作強化」の3つに注力することで、VTuber事業の質と量をともにバランスよく成長させていきます。それにより、日本を代表して世界で活躍するグローバルカンパニーとなることを目指していきたいと考えています。
以上で、我々からのご説明を終了します。
質疑応答:上振れ要因や来期以降の成長見込みについて
釣井:「今期の会社計画は保守的な目標だと認識していますが、上振れの要因等が何かあれば紹介してください。また、来期以降はどれくらいの成長が見込まれると考えていますか? 国内と海外に分けて考えを教えてください」というご質問です。
田角:先ほどご説明したとおり、新規および既存のVTuberプロデュースを行っていく予定ですので、これらがしっかりとユーザーに受け入れられる、あるいは想定以上の受け入れられ方をすることが上振れ要因になり得ると考えています。
また、来期以降の成長については、概ね30パーセントの成長を目指していきます。特に、グローバル需要に対するアプローチは、まだ大きな成長余地があると考えています。
先ほどご説明した、日本のアニメコンテンツ市場における需要が国内と海外で1対1くらいであることを考えると、我々の会社としての貢献収益も1対1くらいを目指していきたいと思っています。
質疑応答:「ANYCOLOR ID」の国内外の利用比率について
釣井:「『ANYCOLOR ID』の国内外の分解について、開示できるようなら教えていただけますか?」というご質問です。
「ANYCOLOR ID」は日本国内のユーザー向けのため、一部に海外が混ざっている可能性は否定できませんが、基本的には日本国内のみとお考えいただければと思います。
質疑応答:「NIJISANJI EN」の前期の評価について
釣井:「『NIJISANJI EN』に関して、前期の評価や手応えを教えていただけますか?」というご質問です。
田角:市場ニーズの高まりとともに「NIJISANJI EN」を立ち上げましたが、2023年4月期は、コマース領域における成長が著しかった期だったと思っています。
一方で、課題として挙げられるのが、プロモーション領域とイベントの領域です。これらは国内事業と比較しても、「NIJISANJI EN」においてまだ大きな拡大余地がある部分です。それを含め、2024年4月期以降に取り組みたいと思っています。
質疑応答:YouTube再生時間に代わるKPIについて
釣井:「『YouTube再生時間と収益との関係性が落ちてきている』というお話がありましたが、それに代わるKPIで開示できるものはありますか?」というご質問です。
まずは私からお答えします。社内でも、開示の可否を含め、収益の先行指標になり得る指標についていろいろ見てはいますが、定量的なもの以上に、各種SNSでの定性面での盛り上がり方が、個々のVTuberやユニットの人気、ひいては「にじさんじ」の人気を表す指標になっていると考えています。
そのため、現時点で開示に沿ったかたちでの指標を出すことは、なかなか難しいと思っています。
田角:KPIというより考え方という意味では、先ほどご説明したVTuberの質的指標と量的指標の部分を、売上を分解した上でウォッチしていくことになると思っています。「適切にVTuberをプロデュースできているか」「新規のファンを獲得できるようなコンテンツが展開されているか」という部分を非常に重要視しています。
質疑応答:VCの売却状況について
釣井:「VCの売却状況を教えてください。売却以降のファンドの現金化は終了したのでしょうか?」というご質問です。
現在、会社として主体的に関わっているものは特にありません。株主名簿を見ても、足元のVCの比率は順調に下がってきている状況です。大規模な動きは基本的にはないと認識しています。
質疑応答:技術への投資や新領域への展開について
釣井:「技術への投資や新たな取り組み、新領域への展開などあれば、アップデートいただけますか?」というご質問です。
田角:現時点で明確に決まっているものはありません。ただし、昨今の新しい技術や、VTuberの需要拡大に伴って必要となる技術については、投資していく可能性があります。
質疑応答:海外プロモーション案件について
釣井:「海外プロモーションが立ち上がってきていますが、どのような案件でしょうか? また、今期は案件を獲得できそうですか?」というご質問です。
この海外プロモーションとは、「NIJISANJI EN」のVTuberを起用した企業案件です。クライアントには欧米や中華圏だけでなく、日本の企業もいます。日本国内はもちろん、中華圏のゲーム企業からいただく案件などは比較的大きなものになりやすい傾向があります。
今後の案件の獲得可能性に関しても、「NIJISANJI EN」のVTuberが世界各国、地域を問わず人気を獲得していく中で、企業からのお声がけは増えていくと考えています。
田角:日本アニメの特徴を持ったコンテンツですので、グローバル展開を狙う日本企業や、英語圏への拡大を検討されている中華圏の企業の案件が中心になっています。今後はそれ以外の領域にも拡大していきたいと考えています。
質疑応答:「ANYCOLOR ID」の海外比率について
釣井:「『ANYCOLOR ID』の海外比率を教えてください」というご質問です。
ANYCOLOR IDは主に「にじさんじオフィシャルストア」という国内向けのeコマースのウェブサイトで会員IDとして使われています。日本国内で開催されるイベントのチケット購入などで必要になるものですので、利用者は基本的に日本人のみとお考えください。
質疑応答:今期の新規デビュー人数の見通しと目指す方向性について
釣井:「日本国内と『NIJISANJI EN』のそれぞれにおいて、今期の新規デビュー人数の見通しと、新規IPで目指す方向性について教えてください」というご質問です。
田角:国内および「NIJISANJI EN」において、それぞれ一定数のデビューを考えています。新規IPで目指す方向性については、2023年4月期に引き続き、方向性を決め切らずに多様性を持ったコンテンツのプロデュースを行う予定です。さまざまなターゲット層に向けてバランスよくプロデュースしていきたいと考えています。
質疑応答:国内外における四半期の季節性について
釣井:「各四半期の季節性はどのように考えたらよいでしょうか? 国内および『NIJISANJI EN』のそれぞれについて教えてください」というご質問です。
季節を要因とした売上高の変動はゼロではありませんが、数値として大きく表れてくることはないと考えています。ただし、2023年4月期のように、施策の偏りによって四半期ごとの売上に少しばらつきが出る可能性はあります。
2024年4月期に関しては、現時点で特にどの四半期の数字が強い、もしくは弱いかをお伝えすることは時期尚早だと思います。まだ期が始まったばかりですので、しっかりとよい数字を出せるようにスタートダッシュを切っていきたいと考えています。
また、「NIJISANJI EN」は30人弱のグループですので、日本国内の120人を超えるグループと比較すると、打てる施策数の集中度合いが大きくなります。その意味では、四半期単位で見た時のボラティリティは、日本国内よりも「NIJISANJI EN」のほうが比較的大きい傾向にあると思います。
我々としては、今後VTuberの数をより拡大していく中で、もう少しボラティリティを下げていきたいと考えているところです。
質疑応答:YouTube売上におけるGoogle AdSense収入の割合について
釣井:「ライブストリーミング収益のうち、動画配信に連動するGoogle AdSense収入の割合は何パーセントでしょうか?」というご質問です。
収益構造について、具体的な比率は開示していないため正確な数字はお伝えできませんが、配信やライブストリーミングの収益に対して「YouTube」がその大半を占めています。
その上で「YouTube」の収益を分解すると、Super Chat、メンバーシップ、Google AdSense、YouTube Premiumの4つに分けられます。Google AdSenseとYouTube Premiumはほぼ同様の性質を持った収益のため、我々は1つの括りとして見ています。
この中で今一番大きな比率を占めているのはチャンネルメンバーシップで、半分以上の割合です。Google AdSenseは、全体に対して1割から2割弱というイメージです。
質疑応答:海外コマース拡充に向けた取り組みについて
釣井:「海外コマースの拡充に向けた取り組みについて、具体的なものがあれば教えてください。海外向け販売サイトの立ち上げなどは検討されていますでしょうか?」というご質問です。
田角:海外向けのコマースについては、2023年4月期に多くの施策を展開しました。この時点で、海外向けの販売サイトとして「NIJISANJI EN Official Store」を立ち上げています。
しかし、海外の購入者に向けたコマースの課題はまだまだあると思っています。現段階では具体的にお伝えできませんが、コマースの拡大に向けて課題を解消する取り組みをしていければと思っています。
質疑応答:中期的なファン層の広がりについて
釣井:「中期的なファン層の広がりについては、アニメに親しみのある層を取っていくイメージになるのでしょうか? もしくは、それ以外にも波及する可能性があると見ていますか?」というご質問です。
田角:日本のアニメコンテンツ市場の潜在的な消費者の方々がベースになると思いますが、VTuberはタレント的な特徴も持っていますので、中期的には音楽やアイドル市場などにもファン層を広げていけると考えています。
また、メディアミックスによるコンテンツ展開を行うことで、ゲームやコミックなどアニメの周辺市場の消費者の方々もターゲットになり得ると考えています。