9月29日は「クリーニングの日」
9月29日は「クリーニングの日」です。これは、全国クリーニング環境衛生同業組合連合会が1982年に制定したものですが、「ク(9)リーニ(2)ング(9)」の語呂合せとなっています。やや苦しい語呂合わせですが、消費者にもっとクリーニングを利用してもらい、業界自らもクリーニング技術の向上を目指すことが制定の主旨となっています。
クリーニング店を利用したことのある人は多いはず
多くの方々が、少なくとも数回はクリーニング店を利用したことがあるのではないでしょうか。
スーツや高価な服だけでなく、毛布などの寝具も含めて、自宅の洗濯機では対応できないものが数多くあります。独り暮らしの人の中には、下着と靴下以外は全てクリーニング店に出す人もいるかもしれません。
余談ですが、筆者は収入が低かった新入社員時代、Yシャツは全て自分で洗濯しました。しかし、アイロン掛けがなかなか上手くいかず、結局は多くのYシャツを早々にダメにしてしまった苦い経験があります。それ以降、スーツはもちろんのこと、Yシャツといえどもクリーニング店に出しています。
直近18年間で約4割減少したクリーニング店の数
さて、実は、昨今のクリーニング業界はかなり厳しい状況に陥っています。まず、クリーニング店の店舗数の推移を見てみましょう。
クリーニング店には、洗濯設備を備えた「一般クリーニング所」と、単なる取り次ぎを行う店舗の「取次所」があります。平成27年度(28年3月末)の店舗数は、一般クリーニング所が29,423店舗、取次所が72,888店舗、合計102,311店舗数となっています。
過去のピークと推察される平成9年度には164,225店舗あったため、18年間で約▲62,000店舗の減少、率にすると▲38%減となりました。これはかなり大きな減少と言えましょう。
なお、一般クリーニング所、取次所とも同じくらいの割合で減っています。“言われてみると、家の近くにあったクリーニング店が少なくなったなぁ”と実感する人も少なくないと思われます。
コインランドリーの設置数拡大も一因だが・・・
こうした統計を見て、“クリーニング店の代わりに、自分でコインランドリーを利用しているのでは?”と思う方もいるでしょう。確かに、コインランドリーの設置数は増えています。
厚労省の調査統計によれば、コインランドリーの設置数は1997年の10,793店舗から16年後の2013年には16,693店舗へ急拡大しています。2016年は19,000店舗以上と推測されていますので、年間平均+5%の伸び率です。
最近のコインランドリーは、複数枚の布団も洗濯できる大型機械や、除菌機能付き機械などが多く設置され、消費者のニーズに合致しているようです。
こうしたコインランドリーの店舗数増加は、クリーニング店減少の一因と言えましょう。しかし、約20年間で増加したコインランドリーの店舗数は10,000未満です。コインランドリーの増加だけで説明できるでしょうか?
激減した1世帯当たりのクリーニング代
ここでもう一つ、違うデータを見てみます。それは、総務省家計調査にある1世帯当たりの年間クリーニング代です。
ちなみに、この代金には通常のクリーンング代に加え、コインランドリー使用料金も含まれています。結論としては、ピークだった1992年の19,243円から2016年は6,615円まで激減しており、24年間で約3分の1まで落ち込んでいるのです。尋常ではない減少です。
ということは、コインランドリーを除くクリーニング代は、3分の1への激減どころでは済んでいないと見ていいでしょう。もちろん、こうした家計調査には実態を表さないという批判もありますが、それを勘案しても、クリーニングにお金を掛けなくなったことは間違いないと考えられます。
洗濯機の進化で家で洗濯する人が増えたのか?
こうした状況は、単純に“家で洗濯をするようになった”と考えれば説明できます。そして、その背景にあるのが、あまり目立ちませんが、洗濯機の大幅な技術革新でしょう。実際、これまでクリーニングに出していたデリケートな素材の衣料を洗えることを打ち出す製品もあります。
先日、筆者はドラム式洗濯機が故障したため約12年ぶりに買い換えましたが、家電量販店のメーカー担当者は「ずいぶん長く使いましたね」と驚いていました。その担当者によれば、家庭用洗濯機の平均寿命は約7年(注:使用状況で異なる)ということです。
この7年をベースにすると、クリーニング店の店舗数が減り始めて以降、最大で3世代の“技術革新”が行われたことになります。確かに、平成初期の頃の洗濯機と、現在の洗濯機では、その性能は比較できないほど進化しています。ガラケーからスマホへ移行したのと同じくらいと言うと言い過ぎでしょうか。
それでもクリーニング店は必要不可欠
一方で、最初に記したように、洗濯機の技術進歩があっても、どうしてもクリーニング店に頼まざるを得ない品があることも確かです。やはり、クリーニング店は必要不可欠です。生き残りを目指したクリーニング業界の取り組みにも注目したいと思います。
LIMO編集部