2019年に「老後2000万円問題」が取り沙汰されてから早4年。特に若い世代が貯蓄に興味をもつきっかけになった話題です。

しかし、「老後 = 2000万円不足する」を鵜呑みにすると、貯蓄した金額がぜんぜん足りない、という事態も起こり得ます。

今回の記事では、老後2000万円問題をおさらいし、厚生年金と国民年金の平均額と老後対策の方法についてお伝えします。

1. 老後2000万円問題をおさらい

2019年に話題となった「老後2000万円問題」をおさらいしていきましょう。

ことの発端は、金融庁が「2017年の高齢夫婦無職世帯の実収入から実支出を差し引くと、毎月の赤字額が約5万5000円(30年間で2000万円に相当)になる」というモデルケースを発表したのがきっかけです。

出所:金融庁「厚生労働省 提出資料」

老後30年間で2000万円程度の赤字が出る、というのはあくまで試算です。実際は各世帯によって収支が異なるので、一概に「いくら不足」するかは分かりません。

とはいえ、この問題をきっかけに資産形成に興味を持った若年層の方が増加したのは、非常に良い兆候といえるでしょう。

次章では、厚生年金と国民年金の平均額を最新データから紐解いていきます。

2. 厚生年金と国民年金の平均月額【2023年6月支給分から改定】

厚生労働省が公表した、2023年6月支給分からの厚生年金と国民年金月額の例は以下のとおりです。

  • 国民年金月額(1人分の満額):67歳以下は6万6250円・68歳以上は6万6050円
  • 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額):22万44825円

出所:厚生労働省「令和5年度の年金額改定について」

国民年金は20歳〜60歳までの40年間納め続けた場合の満額となり、厚生年金は夫が平均標準報酬43万9000円で40年間就業した場合の専業主婦世帯でのモデルケースとなっています。

つまり「40年間、標準的な収入を得て年金を納めていたサラリーマンと、その配偶者である専業主婦の世帯」に当てはまらない世帯だと、実際の受給額が変わってきます。

実際の受給額について、次項で最新データを紐解いていきます。

2.1 厚生年金の実際の受給額

厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」に掲載された、厚生年金の平均月額と受給者数は以下のとおりです。

【平均年金月額】※国民年金の金額も含む

  • 男女の平均年金月額:14万3965円
  • 男性の平均年金月額:16万3380円
  • 女性の平均年金月額:10万4686円

【受給者数】※()内の表記:(男性:女性)

  • 1万円未満:9万9642人(7万366人:2万9276人)
  • 1万円以上~2万円未満:2万1099人(1万4136人:6963人)
  • 2万円以上~3万円未満:5万6394人(5875人:5万519人)
  • 3万円以上~4万円未満:10万364人(1万580人:8万9784人)
  • 4万円以上~5万円未満:11万1076人(3万1646人:7万9430人)
  • 5万円以上~6万円未満:16万3877人(7万694人:9万3183人)
  • 6万円以上~7万円未満:41万6310人(17万8892人:23万7418人)
  • 7万円以上~8万円未満:70万7600人(26万5042人:44万2558人)
  • 8万円以上~9万円未満:93万7890人(25万7224人:68万666人)
  • 9万円以上~10万円未満:113万5527人(28万4196人:85万1331人)
  • 10万円以上~11万円未満:113万5983人(35万8936人:77万7047人)
  • 11万円以上~12万円未満:103万7483人(44万6960人:59万523人)
  • 12万円以上~13万円未満:94万5237人(52万9551人:41万5686人)
  • 13万円以上~14万円未満:91万8753人(62万4724人:29万4029人)
  • 14万円以上~15万円未満:93万9100人(72万5289人:21万3811人)
  • 15万円以上~16万円未満:97万1605人(81万5769人:15万5836人)
  • 16万円以上~17万円未満:101万5909人(90万3637人:11万2272人)
  • 17万円以上~18万円未満:104万2396人(96万5471人:7万6925人)
  • 18万円以上~19万円未満:100万5506人(95万3315人:5万2191人)
  • 19万円以上~20万円未満:91万7100人(88万9人:3万7091人)
  • 20万円以上~21万円未満:77万5394人(75万1043人:2万4351人)
  • 21万円以上~22万円未満:59万3908人(57万7586人:1万6322人)
  • 22万円以上~23万円未満:40万9231人(39万8787人:1万444人)
  • 23万円以上~24万円未満:27万4250人(26万7701人:6549人)
  • 24万円以上~25万円未満:18万1775人(17万8056人:3719人)
  • 25万円以上~26万円未満:11万4222人(11万2141人:2081人)
  • 26万円以上~27万円未満:6万8976人(6万7929人:1047人)
  • 27万円以上~28万円未満:3万9784人(3万9296人:488人)
  • 28万円以上~29万円未満:1万9866人(1万9670人:196人)
  • 29万円以上~30万円未満:9372人(9237人:135人)
  • 30万円以上~:1万4816人(1万4455人:361人)

男女合計のボリュームゾーンは9万円以上〜11万円未満です。

男性では17万円以上〜18万円未満、女性では9万円以上〜10万円未満の厚生年金を受け取っている方が多い結果となりました。

現在厚生年金を受け取っている世帯では、女性は専業主婦だった割合が多かったことから、このように年金額で男女差が生じていると考えられます。