起業するときの資金調達方法として、最も人気があるのが日本政策金融公庫(以下、公庫)の創業融資を借りる方法です。無担保・無保証しかも低金利という起業家にとってはとても魅力的な融資制度で、これを利用しない手はないでしょう。
ただ、公庫の創業融資には、通常の融資制度とは違う独特な審査基準があり、ここをクリアできるかが重要なポイントとなります。中でも特に重要なポイントは、自己資金がいくら用意できているかです。
今回は、創業融資と自己資金の関係について見ていきましょう。
1. 自己資金とは
自己資金とは、起業家が借入以外に自分で用意したお金のことです。事業全体にかかるお金の総額のうち、自己資金をどれだけ用意できたかがポイントになります。
融資制度により自己資金割合が変わりますが、自己資金割合の計算方法は、自己資金/創業資金です。公庫の新創業融資制度では10分の1以上が求められます(公庫の新創業融資制度の場合、創業資金が1000万円ならば、100万円は自己資金が最低限必要です)。
自己資金の額は、創業するにあたりどれだけ本気なのかを示す材料になります。ビジネスを始めるにはお金が必要です。自分でもリスクをとり、努力してコツコツ貯めてきたのかを公庫は確認します。
自分で貯めたお金が多ければ多いほど、本気度が伝わり評価が高くなります。起業を考えたのならば計画的に資金を貯めるようにしましょう。
2. 自己資金の確認方法
自己資金がどのように貯められたのかを公庫は厳しくチェックします。
チェック方法は起業家個人の過去半年から1年分の預金通帳の明細を確認していきます。たとえば、自己資金は300万円と主張する場合、その300万円を毎月の給料から預金し、貯めていたとわかれば自己資金として認められます。
3. 貰ったお金は認められるか
ご両親から援助を受けた場合は、自分で貯めてきた場合よりも評価は下がりますが、自己資金として認められる場合が多いです。
その場合は手渡しではなく、ご両親から自分の口座に振り込みでもらいましょう。出どころがわからないお金は自己資金として証明できないからです。
4. タンス預金は認められるか
口座に預金してきたのではなく、引き出しに入れて貯金してきたいわゆる「タンス預金」は原則認められません。これも上記同様、自分が貯めてきたかどうか証明できないからです。
5. 口座に突然大きな金額が入ってきた場合
コツコツ毎月貯めてきたのではなく、いきなり大きな金額が口座に入ってきた場合はどのような経緯で入ってきたのかをチェックされます。退職金が振り込まれたり、生命保険を解約したりした場合などは自分で貯めてきたと説明がつくので問題ありません。
友人から大金が振り込まれた場合はどうでしょうか? 身内でもない限り、大金を貰ったと主張するのは難しいですね。借りたお金と疑われてもしかたありません。
借りたものは返済しなければならないお金のため、自己資金とは認められません。借りたお金を自己資金と主張することを見せ金といいます。見せ金は必ず見抜かれますから避けましょう。
中野 裕哲