3. 厚生年金が14万円あれば老後は安泰?
では、仮に厚生年金が平均並みの14万円を受給できるのであれば、老後は安泰なのでしょうか。
総務省の「家計調査報告(2021年)」によると、65歳以上、無職単身世帯の生活費は月々14万4747円とされています。
生活費を切り詰めればなんとか暮らせる、と思った方もいるかもしれません。
一方で、「厚生年金に加えて国民年金(老齢基礎年金)ももらえるから大丈夫」という意見も見られますが、これは誤解です。
そもそも日本の年金制度は、下図のように国民年金と厚生年金の2階建て構造となっています。
3.1 国民年金(1階部分)
- 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満の方
- 保険料:一律(年度ごとに見直し)
- 年金額:納付期間によって決定。2023年度の満額は月額6万6250円(67歳以下の場合)
3.2 厚生年金(2階部分)
- 加入対象:主に会社員、公務員など
- 保険料:報酬比例制
- 年金額:加入期間や納付保険料により決定
上記から、先程の厚生年金に加えて国民年金が受け取れると誤解している方もいるのですが、厚生労働省が公表する厚生年金額には国民年金も含まれています。
つまり、両方を足した金額が平均で約14万円ということなのです。
厚生年金の単体でいうと、7万3750円となります。
思ったより少ないと感じる方も多いのではないでしょうか。
老後の生活費が平均どおりということも考えにくいです。自分自身の老後生活をシミュレーションし、不足額を把握することが大切ですね。
4. 老後に向けて現役時代から対策を
厚生年金(国民年金を含む)を月額14万円以上受け取っている人の割合は、全体の51.9%でした。
約半分は平均をクリアしているとはいえ、厳しい男女差や個人差もうかがえます。
さらに、年金の水準はその時代の物価や現役世代の賃金等によっても変化します。
6月15日支給分からの年金は増額されることが決まっていますが、それでも物価上昇には追いついていないのが現状です。
ねんきんネットやねんきん定期便などで目安額を確認し、自助努力で老後資金をつくることが大切になるでしょう。
iDeCoやつみたてNISA、あるいは個人年金保険なども含め、有効な老後対策について考えてみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況2021(令和3)年度」
- 総務省「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)Ⅱ総世帯及び単身世帯の家計収支」
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和5年度版」
太田 彩子