今週は9月20~21日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、終了後にはイエレンFRB議長の会見が予定されています。そこで、テーパリング(量的金融緩和縮小)開始の具体的な時期に言及されれば、為替市場の流れが大きく変わる可能性も予想されます。
先週の為替市場振り返り
先々週末は、ドル/円が107円台に突入して年初来安値を更新。その状態からのスタートとなった先週の為替市場でしたが、ドル/円は週の初めに窓を開けて108円を回復し、そのまま窓を埋めることなくスルスルと110円台まで上昇を続けました。
15日朝の北朝鮮による弾道ミサイル発射の影響で109円台にまで瞬間的に下落したものの、その後再度上昇を開始。最終的には111.2円台までの上昇を見せましたが、週の取引は110.8円台で終えています。
ドルインデックスの値動きを見ると、先週前半の上昇はドル高が主な要因となりますが、14日以降はドルインデックスが下落しているため、15日の上昇は円売りが背景となります。
毎週のように高値を更新していたユーロ/ドルがレンジ相場を形成する中、ドル/円を始めとするクロス円通貨の上昇が特徴的な週となりました。
再び高値更新が始まったアメリカの株式市場
為替の周辺市場で注目したいのは米国の株式市場です。先週はダウ平均、S&P500、ナスダック指数の3指数がいずれも高値を更新。北朝鮮のミサイル問題が生じて以降、値動きに勢いがなくなっていましたが、先週は再び高値更新を開始しています。
北朝鮮の情勢には特段の変化はないものの、米国による対北朝鮮軍事行動の可能性は低いと見た金融市場はリスクオンモードに戻った様子です。先週フロリダを襲ったハリケーン・イルマの被害が予想より少なかったことも、市場心理を好転させる要因となりました。
今週の見通し
今週は19日~20日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催され、イエレンFRB議長の会見が予定されています。
今回のFOMCでは利上げの可能性は低いものの、注目すべきはテーパリング(量的金融緩和縮小)についての発言です。既にテーパリングについてイエレン議長は前向きな発言をしており、9月のFOMCでテーパリングに向けて舵を切るかどうかに注目が集まります。
市場では北朝鮮問題のテーマ化には既に飽きがきているような状態であるため、FOMCでテーパリングについて具体的決定があれば、今後の市場のテーマとして急浮上する可能性もあります。
個別の通貨ペアでは、やはりドル/円の上昇がどこまで進むのかが注目ポイントです。先週および今週18日の上昇で、7月の114円台の高値から約50%戻しを達成しており、上昇が一段落する可能性のある位置と言えます。
特に、15日の上昇が北朝鮮のミサイル発射後に円が売られたことによるもので、ドル要因での上昇ではない点は留意すべきです。ただし、さらに上がるとなれば、7月の高値の114円台が存在しているため、114円台まで上昇の可能性もあります。
また、米国株式市場の上昇に合わせ、先週末には日経平均株価も20,000円目前の水準にまで上昇しています。今秋以降日経平均が20,000円を超えて上昇を続けるようなら、ドル/円の値動きも新しい展開に入る可能性があります。
株式市場が新しいステージに入りつつあり、また10月の衆院解散総選挙の公算が高まっているため、今週の為替市場はこれまで以上に株式市場の状況も注意深くフォローする必要があります。
まとめ
今週は、FOMC後に予定されるイエレンFRB議長の記者会見での発言が最大の注目ポイントです。もし、テーパリング開始の号砲が聞かれるようなら、今週は近年の金融市場の中でも歴史に残る週となる可能性もあります。イエレン議長の発言の内容を充分に理解し、その後の市場に対応したいと思います。
石井 僚一