2023年5月20日にログミーFinance主催で行われた、第54回 個人投資家向けIRセミナー Zoom ウェビナーの第1部・エブレン株式会社の講演の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:エブレン株式会社 代表取締役社長 上村正人 氏
元・ファンドマネージャー/元・ディーラー 坂本慎太郎(Bコミ) 氏
経済アナリスト/経営コンサルタント 増井麻里子 氏

会社概要(2023年3月末現在)

上村正人氏(以下、上村):それでは、会社概要からご説明します。エブレン株式会社は1973年10月の設立で、本社は東京都八王子市にあります。

八王子事業所の他、東京都荒川区、埼玉県入間市、大阪市東淀川区の国内4拠点と、蘇州エブレンという中国江蘇省蘇州市にある100パーセント子会社の海外1拠点と、合計5拠点で事業活動を展開しています。従業員数は114名です。

事業内容としては、産業用電子機器、工業用コンピュータなどの設計製造販売を行っています。資本金は1億4,301万円、売上高は海外子会社1社を含めた連結で42億5,800万円、経常利益は6億5,400万円です。

事業内容:産業用コンピュータの設計・製造

上村:現在のメインの仕事内容は、通信・電力・鉄道・医療などの「社会インフラ系設備」および半導体製造装置や生産自動化機械などの「産業インフラ系設備」に、コントローラーとして使用される産業用コンピュータの受託設計と受託生産を中心に行っています。

鉄道・電力・通信などの公共性の高い事業会社向け設備の開発や調達は、日本を代表するような大手の装置メーカーが主契約者となっており、私どもはその下で仕事をしています。

主契約者の装置メーカーは、設備やシステムの開発構想に基づき、当社へ委託するコンピュータ製品の「要求仕様書」を作成して提示し、私どもは「要求仕様」に基づいて製品を設計して試作品を作り、装置メーカーへ送って評価と設計検証を受けます。

設計終了後、量産に入るまでには半年や1年、3年くらいかかることもあり、期間を要することが一般的ですが、量産開始以降は中長期的に安定した製品供給を要求されます。

製品区分(1) ボードコンピュータ

上村:私どもの製品イメージについてご説明します。コンピュータに限らず、電子機器には半導体や各種のディスクリート部品、抵抗やコンデンサといった多くの部品を使用しますが、それらをプリント基板の上に実装し、一定の働きを行う回路を作り、積み重ねて、システムとしてまとめたものになります。

スライドに記載したように、大きく2つに分けてお話しします。スライド左側のバックプレーンシステム用ボードコンピュータについてです。規模が比較的大きい電子機器を作る場合、プリント基板の端に付いている白色のコネクタをバックプレーンにつなぎ、複数枚から10枚、20枚、30枚といった多数のプリント回路をつないで、総合的に動かします。

スライド右側のIoT・Edgeシステム用ワンボードコンピュータは、規模が比較的小さいものに採用されます。基本的には1枚のプリント基板上に実装部品を載せて動くようなものになります。身近なものでは、ノートパソコンなどが該当します。複数枚もつなげて大規模に作る必要はないため、マザーボードと呼ばれる1枚の基板の中に、必要なCPU、メモリといったすべての部品を実装します。

半導体のハードウェアとしての規模を表す際、シリコンウエハーの上にトランジスタを何個実装しているかによって表すことがあります。

最近のものでは、1万個や10万個、大規模なものでは100万個ほどのトランジスタを実装しています。私どもはそのような半導体をはじめとした電子部品をプリント基板の上に実装して動かしますが、こちらも電子回路基板の枚数や面積によってハードウェアの規模がわかります。

1枚の基板で基本的な機能を果たすエッジコンピューティング用途などの場合はスライド右側のものになりますが、産業用の機械において圧倒的に多いのは、左側のバックプレーン用の回路基板になります。規模が大きいものでは何百枚から何千枚とつなげることがあります。

その典型がスーパーコンピュータシステムであり、その場合は、この規模のものを3,000枚、4,000枚とつなぎ、大規模なシステムを作っていきます。

製品区分(2) バックプレーン

上村:バックプレーンは、ボードコンピュータをつなぎ合わせるためのものです。先ほどご紹介した電子回路基板において、スロットを白いコネクタにプラグインするかたちで接続し、全体の回路が働くように電子機器全体の構造を作ります。

スライド左側にはいろいろな種類のバックプレーンを載せています。右側は説明用の図になっており、一番上のバックプレーンに、その左下のボードコンピュータを接続することで、大規模な電子回路をインテグレートし、装置として動くようになります。

バックプレーンにボードコンピュータをスロットインしたものは、最終的にはスライド右下のとおり、金属で作られた筐体の中に収め、箱型として使います。

例として人間の体に置き換えてみます。人間は全身に神経が張り巡らされていますが、電子機器において信号が通る道は神経のようなものであり、CPUは脳のようなものです。人間に血流があるように、電子機器においては電流が流れており、これを供給しないとすべて動かない点は同じだと思います。

人間は血液循環が止まると機能しなくなりますが、バックプレーンは電子機器において脊髄のような通り道と考えていただくとよいと思います。いろいろなところに分岐して接続しており、全体を機能させる役割を果たしています。

製品区分(3) コンピューターシャーシ

坂本慎太郎氏(以下、坂本):バックプレーンや筐体については、コンピュータが普及して時間が経ち、小型化や高性能化などが進んでいると思いますが、この数十年間で大きさや枚数などのトレンドは変わったのでしょうか?

上村:一番大きく影響したことは、やはり半導体が急速に高度化し、性能が上がってきたことです。昔は、トランジスタをプリント基板の上に1個1個実装して回路を組んでいたこともあります。

坂本:手で組んでいた時代もあったということですよね。

上村:先ほど「何万個のトランジスタ」と言いましたが、実はLSI(大規模集積回路)のようなものがなかった時代は、基板の上に1個ずつトランジスタを付けており、実装密度が悪く非常に大きいものになっていました。

坂本:人の手には限界がありますよね。

上村:おっしゃるとおりです。今まで何万個も実装する基板を使っていたのにもかかわらず、切手のくらいの大きさの中に何万個も詰め込もうというのは、実装密度としては飛躍的に効率が高まり、大きさ的には非常に小さくなることになります。

したがって、電電公社があった時代の電話局の装置などは、高さ3メートルくらいのキャビネットの中にびっしりと設置されていました。当時はディスクリートの部品をバラバラに使っていた関係で、問題はなかったのですが、今は圧縮しているため発熱も大きいですが、スピードも非常に上がっています。

実装密度が高まり、電子部品が非常に小さくなってきている反面、内部の発熱は大きいため、冷却ファンなどを使いますが、最近のスーパーコンピュータでは空気以外の冷媒で冷やすように要求されることもあります。このように、小さくなることは良い面だけではないため、「発熱に対してどのように対応するか」という考えの変化もあります。

実装密度を上げて性能を高めるために半導体はどんどん線幅が狭くなっています。

坂本:単位としてはナノメートルがよく使われていますね。

上村:そのとおりです。なぜ、ナノメートル単位で線幅にこだわるかと言いますと、消費電力がまったく異なるためです。最近のスマートフォンは、電池の持ちがずいぶん良くなってきていると思います。

坂本:昔に比べると、電池の持ちがだいぶ良くなりました。

上村:初期のガラケーは頻繁に充電が必要でした。その点で、スマートフォンの機能はガラケーに比べ非常に高くなっている一方で、電池の持ちはどんどん良くなっています。これは、電池の改善以上に半導体が改良されているからです。線幅が狭くなり、実装効率が高まって消費電力が減っているのですね。

電力はいろいろなところで使われるため、今後は「いかに省電力できるか」を考えることが使命になっています。そのため、「過去からどのように変っているか」という質問への回答の1つとしては、消費電力が非常に改善されて来ていることになります。

ただし、昔とは異なり、高度な処理を行う半導体がたくさん出てきており、使用量も生産量も増えている状況です。線幅が細かくなって使用する量が減らせるかと言うとそうではなく、新たな需要が拡大しているということです。

坂本:機械は、古くなっても長く使い続けることがあると思いますが、筐体にいろいろなボードを取り付けていく中で、壊れてしまった時は御社がストックしている当時のパーツを使うのでしょうか? 今でも代替できるパーツがあるのでしょうか?

上村:性能の良いものが次々に出てくると、生産の打ち切りが心配になると思います。しかしながら、産業用の装置やインフラ設備が、5年や6年で使えなくなっては困ります。

そのため、一般の民生用製品を構成している半導体とは別枠で、「これはインフラ設備に使うため長期間において供給を必要とする」ことを、あらかじめメーカーと話しておきます。工業用の用途においては、一定期間は対応できるようにパーツを確保する枠があります。

坂本:業界としての体制があり、在庫を大量に抱えておく必要はないのですね。

上村:スライドには、先ほどお話ししたバックプレーンやプリント基板が、実際にはこのような箱に収納されているという写真が載っています。箱の奥にある縦縞がコネクタで、バックプレーンに実装されています。

手前からボードをスロットインし、スライダブルに差し込んで使うところは共通しています。ファンや電源が一緒に付くかどうかはものによりますが、このかたちが共通で、基本的には金属の筐体の一番背面にバックプレーンが付き、そこにスロットインして使います。

これを、大きさが2メートルから3メートルくらいのキャビネットの中に、本棚のように重ねていく場合もあります。

スライドの右側は、ワンボード型シャーシです。これは基板を何枚も使うものではなく、基本的には1枚で使います。このような小さい箱の中に、ネジ止めするようなかたちでボードコンピュータが実装され、使用されます。

製品区分(4) 制御用コンピュータ

上村:スライドは、半導体製造装置に使う場合、具体的にどのようなかたちになるのかを表したものです。

手前のCPU、メモリ、通信ボード、画像処理ボードなど機能単位に分かれた各種ボードコンピュータが、バックプレーンに接続できるようなかたちで実装されます。

右側にあるのは半導体製造装置の1つの例ですが、このような装置の中に入れて使います。この半導体製造装置全体の動作をコントロールすることで、役目を果たします。

バックプレーン方式が産業用に多用される理由

上村:バックプレーン方式が、産業用コンピュータに何十年と変わらず採用されている理由をご説明します。バックプレーンには、各種回路基板と接続して、電力供給と信号伝送を相互に行うという役割があります。

この方式のメリットの1つ目は保守性です。ボードコンピュータが着脱可能になることで、動作上、何か問題があれば、その問題を解決するためにボードを切り離して調べたり、スペアを入れて動作を継続し、ゆっくり直したりすることができます。それらを含めた保守は実に大切です。

2つ目は拡張性です。基板単位、ボードコンピュータ単位で増設していくことで、その規模を大きくできます。

3つ目は汎用性です。このような製品は基本的には独自に設計が必要ですが、汎用的に使用できるボードは、市場に流通しています。あえて設計をしなくても、出来合いの良いものがあるなら、それを採用して問題ありません。このことについても、バックプレーン方式のメリットと言えます。

バックプレーンには、国際的に通用するバス規格というものがあります。規格に則り、互換性を持って設計すれば、他社製品を採用して汎用的に使用することができます。

エブレン製品の用途(応用分野)

上村:当社製品の応用分野です。右側の円グラフは、上が2022年3月期、下が2023年3月期の連結売上高構成比です。下の円グラフの中心に書かれた42億5,800万円という数字は、私どもの売上の総額を表わしています。

円グラフの緑色の部分は計測・制御分野で、売上高全体の67.1パーセントを占めています。この大半が半導体製造装置、半導体検査装置に使用されるコンピュータです。

左下の、緑色の丸で囲ったものが半導体製造装置ですが、半導体製造装置と一口に言っても、非常に多くの種類があります。コータ・デベロッパ、成膜装置、エッチング装置、それから洗浄装置など、膨大な種類の半導体を作るには、非常に長い工程が必要となります。

このジャンルにはFA(ファクトリー・オートメーション)と呼ばれる自動化システムに使われるコンピュータも含まれており、それらを合わせて全体の67.1パーセントを占めているということです。

円グラフの青色の部分は交通関連で、売上高全体の11.2パーセントを占めています。左上に新幹線の写真がありますが、鉄道関係はまず安全性が大切です。鉄道関係のATS(自動列車停止装置)やATC(自動列車制御装置)といった、万が一の際の安全確保のための装置に当社製品が使われています。

他にも、信号システムや、線路に異常がないか常時感知・確認する装置など、幅広い目的で産業用コンピュータが使われています。新幹線のコックピットに載っているものもありますし、床下に載せて線路を監視するもの、また、通信しながら安全を確保する高速列車における地上装置もあります。

鉄道の左側は、高速道路の料金収受システムやITS(Intelligent Transport Systems)関連のもので、ここでも私どもの産業用コンピュータが採用されています。

円グラフの黄色の部分は電子応用で、売上高全体の10.5パーセントを占めています。下段中央の黄色で囲った写真ですが、これは医療関係で、MRIやCTスキャナ、超音波診断装置といった映像系の医療機器に、私どものコンピュータが使用されています。

映像系以外では、血液分析装置などが挙げられます。血液は私どもの生体を表わす情報メディアとして非常に優秀な媒体で、血液を調べれば大半の病気がわかってしまう時代になりました。

その右側はHPC(スーパーコンピュータ)です。ディープラーニングを目的としたものからゲノム解析まで、私どもの実績としてこのような用途への応用もあります。

円グラフの赤色の部分は通信・放送で、売上高全体の6.8パーセントを占めています。中央の赤色の丸で囲った部分が通信で、有線、無線、モバイル、ブロードバンド、衛星通信、海底ケーブルに至るまで多岐にわたる方式がありますが、そのようなところにも使用されています。

放送関係については、放送・映像装置やビデオサーバなどに採用されています。

その下には電力関係の監視ルームの写真を載せています。電力は発電・変電・送電を繰り返しながら、電力需要に沿って供給するシステムのため、それらを結ぶテレメータなどの用途にも使われています。

円グラフの水色の部分は防衛・その他で、売上高全体の4.4パーセントを占めています。防衛関係にも、私どもの製品が採用されています。

増井麻里子氏(以下、増井):49期から50期にかけて、計測・制御のシェアが伸びて、交通関連が少し下がっていますが、この背景を教えていただけるでしょうか?

上村:計測・制御のシェアが伸びた背景としては2つあります。1つ目は、中長期的に半導体関係が重要な産業であるとの認識が、近年非常に高まっていることです。今までは世界中で買うことができ、そのどれも採用できたのですが、世界の陣営が分かれてきたことで、やはり国内で作れるようにしなければ危ないと指摘されるようになりました。

世界中で分け合っていたものを国内で作るということは、半導体製造装置や工場を新たに用意する必要があります。そのため、半導体製造装置の需要が高まっています。

2つ目は、半導体の活用範囲が非常に広がってきていることです。最近経験したことですが、半導体がないため車を作れないということがありました。半導体と車とは一見関係なさそうに思われますが、実は車というのは電子機器の塊で、高度な電子装置をたくさん積んでいます。さらには、自動運転もあります。

他には環境問題など、いろいろな分野で半導体が必要になっています。このように、過去には考えられなかった分野でも半導体が使われており、その分需要が増えています。この傾向は、これからさらに加速していくと思います。

したがって、中長期的な需要を満たすために半導体の製造体制が必要になってきていることが、計測・制御のシェアが伸びた最大の背景だと思います。

また、交通関連のシェアが微減となった背景には、コロナ禍があります。コロナ禍で旅行も減り、電車に乗る方も減りました。そのため、直近の2年から3年は交通関連の設備投資は減ったのですが、鉄道各社は黒字回復するなど、最近は流れが変わってきています。前期は、そのような影響を受けました。

主要納入先 (直接納入,間接納入を含む)

上村:スライドには、私どもが製品を供給している、主要な納入先を記載しています。

生産拠点の分散

上村:生産拠点についてです。私どものような産業・社会インフラに関わる製品を生産する会社の場合、何かの問題が起こって生産および製品の供給が滞ると、非常に大変なことになります。

そのため、生産拠点はあえて分けており、国内に4拠点、海外には中国蘇州市に1拠点があります。各工場に共通して主要設備を配置することで、万が一地震などの災害が起きて、ある事業所において生産が続行不可能となっても、データを別の工場に移して生産を続けることができます。

BCP(事業継続計画)の観点から、そのような体制を取っています。

2023年3月期(第50期)決算実績

上村:2023年3月期決算実績をご説明します。

売上高は42億5,800万円で前期比8.6パーセント増、営業利益は6億5,600万円で前期比22.1パーセント増、経常利益は6億5,400万円で前期比23.4パーセント増、当期純利益は4億2,600万円で前期比23.4パーセント増という結果になりました。

2023年3月期 (第50期)応用分野別概況-1

上村:決算の背景について、応用分野別の概況をお話しします。計測・制御(半導体製造装置)関係の話が中心になりますが、先行的な調達で、出荷停止はなんとか回避できました。しかし、この期は部材の調達に大変苦労しました。

メモリ供給過多の影響でメモリ半導体製造装置関係の設備投資が一部凍結されることもありました。また、中国輸出規制の影響でロジック半導体製造装置の生産調整も一部発生しました。

しかしながら、世界的なロジック半導体不足解消に向け、設備投資は継続して増加してきました。マイナス影響をプラス影響が上回り、結果として計測・制御関連の売上は前年同期比11.6パーセント増となりました。

交通関係については、移動制限の影響による鉄道会社の業績悪化に伴う設備投資の延期がありました。また、海外向け鉄道関連の入札延期や設置工事の遅延もありました。

顧客側の半導体の調達遅れにより、こちらが納入制限を受けることもあり、私どもの準備不足というよりは、「他がそろわないから少し入れるのを待ってくれ」ということが頻発した時期でした。交通関連の売上は、前年同期比14.1パーセント減となりました。

2023年3月期 (第50期)応用分野別概況-2

上村:通信・放送関係については、第4四半期にネットワーク機器では特需が、電力関連では新機種の量産開始があり、売上は前年同期比19.2パーセント増となっています。

医療関係を中心とする電子応用については、第1四半期に中国のロックダウンの影響で納入が滞る事態がありました。第2四半期以降はロックダウン解除により復調し、第3四半期から順調に増加に転じています。売上は前年同期比8.8パーセント増でした。

防衛・その他についてです。現在、防衛関係は非常にホットな話題になっているものの、この分野の情報収集は難しく、よく分からないというのが本音ですが、売上は前年同期比23パーセント増となっています。

2023年3月期 (第50期)応用分野別売上

上村:スライドは、応用分野別の連結売上高推移を示したグラフです。グレーの部分は半導体製造装置を中心とする計測・制御関係で、圧倒的なシェアがあります。

一番下の緑色が防衛・その他、黄色が交通関連、グレーが半導体製造装置を中心とする計測・制御、オレンジ色が電子応用、一番上の水色が通信・放送を示しています。

グラフ一番上の青色の数字がトータルになります。2022年3月期の39億2,200万円から42億5,800万円に増加し、前年同期比8.6パーセント増という結果になりました。

2023年3月期(第50期) 業績 – 財政状態

上村:財政状態についてです。流動資産は43億2,500万円、固定資産は12億7,800万円、資産合計が56億400万円となっています。

流動負債は10億1,400万円、固定負債は3億9,300万円、負債合計が14億700万円です。純資産は41億9,700万円、負債純資産合計が56億400万円となっています。

自己資本比率は74.9パーセントと、大きな変化はありません。

2024年3月期 (第51期) 通期予想

上村:当期の見通しについてです。一言で言うと「前年並み」になります。

坂本:御社は前々期にかなり業績を伸ばしています。理由としてメインである計測・制御が良かったという話もありましたが、前期は数字がほぼ横ばいとなった理由があれば教えてください。

上村:ご承知のとおり、前期は最初からメモリが供給過剰になり、メモリが暴落しています。年間を通じてメモリがあふれたということです。後半においてはメモリだけでなく、ロジック半導体も供給過剰になってしまいました。ただし、部材の調達難という点においては、当社は今でも困っています。

工業用などで使われるものは、依然として充足していません。一方、スマートフォンやクラウドサーバー、パソコンなどに使われるものは、大量に使われるため、最初に回復してきています。

そうすると、オーバーシュートしてしまいます。オーバーシュートの影響で、第1四半期はまだ大丈夫ですが、第2四半期、第3四半期に生産が減少に傾くと予測しています。ただし、メモリも含めておそらく第4四半期には回復するのではないかと思っています。

坂本:生産調整も終わって、部材も入ってくるということですね? 

上村:おっしゃるとおりです。そのようなストーリーになると予想しているため、前年並みになってしまうということです。

坂本:御社の製品は汎用的なものも使える部分があると思っています。そこの仕入価格が下がっているので、利益はけっこう出るのではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょうか?

上村:世の中は苦戦していますが、「エブレンは順調だよね」と言われます。やはり生産台数が増えているということが最大のポイントだと思います。これは量産効果になります。

私どものようなモノづくりのメーカーにとって、量が増えることは本当にうれしいことで、量産効果で利益が変わってきます。それが一番大きいところです。

坂本:前期も量が伸びたおかげで、一気に利益が伸びたということですね。

上村:おっしゃるとおりです。量が増えればもっと業績は良くなります。

2024年3月期 (第51期) 見通し

上村:今期の見通しとしては先ほどお伝えしたとおりです。中盤は少し苦労しますが、後半はおそらく大丈夫だろうと考えています。

2024年3月期 (第51期) 見通し

上村:通信・放送や電子応用については、ウクライナ問題の長期化などで先行きに不透明感がありますが、良い点として、ChatGPTなどはGPUを大量に使うという要素があり、AIディープラーニング向けHPC投資に期待しています。

坂本:AIなどが発達すると御社にとってプラスの業績になるのですか?

上村:NVIDIAのGPUのように設備投資が必ず拡大します。

坂本:そこから御社への発注が来るだろうということですね。

上村:そのように考えています。防衛の部分については、先ほどもお話ししましたが、はっきりは分かっていません。

2024年3月期 (第51期) 応用分野別売上予想

上村:今期の売上高は43億1,000万円と予想しています。前期が42億5,800万円ですので、スライドのとおり、ほぼ変わらず前年並みという状況です。

直近10年間の業績推移

上村:当社の成長を表している、直近10年間の業績推移のグラフです。青色の棒グラフが売上、ピンク色の棒グラフが経常利益になります。

この10年間で売上は25億円から42億円になり、経常利益は1億4,000万円から6億5,000万円になったということで、成長しているという部類に入ると思っています。

当面の目標

上村:当面の目標についてです。業績と言えば売上よりも利益ですので、スライドのピンク色の矢印に沿った成長路線を目標としています。

ただし、先ほどの話にもありましたが、薄いピンクで示している2024年3月期の部分がほとんど横ばいです。当社の場合、やはり半導体製造装置の影響を強く受けるという背景があるためです。

坂本:供給も需要もある程度平常であれば、取引先も広がっているため、このような成長は見通せるということですね。

成長戦略

上村:今後の成長戦略についてです。さらに成長していくために、コア事業の強化、受託範囲の拡大、現在力を入れているボードコンピュータ事業の強化、中国子会社の戦略的活用など、いろいろな取り組みや新規の開発を行っています。

(1)コア事業の強化

上村:コア事業についてです。今、リソース不足でお客さまも大変苦労しているため、私どもがお手伝いできるところは積極的に行っていきたいということです。

(2)受託範囲の拡大

上村:当社の製品は、どのような段階からでもお客さまに買っていただけますが、なるべく付加価値を上げて、完成品に近いかたちでの供給体制を整備・拡充していきたいと思っています。

(3)ボードコンピュータ事業強化

上村:ボードコンピュータ事業強化の取り組みとして、現在、新規開発しているものについてです。風力発電関係、次世代ワイヤーボンダーコントローラー、フィールドバス対応ロードセルアンプ、スーパーコンピューター関連やAI画像処理システムなどがあります。

スライドの一番下に記載しているショットピーニング用AEセンサーモジュールというのは、エッジコンピューティングの活用になります。これらについては、私どもは風力発電でプロペラを作っているのではなく、あくまでもそれらのシステムに使われるコンピューターを開発しているという話になります。

質疑応答:10年後の未来について

坂本:「エブレンが描く10年後の未来を教えてください」というご質問です。

3年後までのイメージとしては、中計において10パーセントから15パーセントの成長を目指すというお話でした。10年後というのは難しいですが、「何が起こって、当社はこうなります」というイメージがあれば、よろしくお願いします。

上村:技術の変遷や世の中の変化など、我々が過去に経験したことのない激変が、短期間のうちに起こっていると感じています。正直、来年や再来年のこともよく分かりません。10年後については答えにくいところはあります。

一方で、世の中はデジタル化が進み、半導体が広く使われるかたちで社会が高度化していくことは変わらないと思います。加えて、環境問題への取り組みが本格化してきています。

我々は、子どもや孫たちが快適に生活できるような地球環境を作っていくことに対して、もっと取り組みを強化する必要があると思います。したがって、環境システムに対する当社の貢献を、長期的な展望として描いている部分はあります。

質疑応答:海外拠点の拡充について

増井:「中国以外の拠点などは考えているのでしょうか?」というご質問です。

上村:今のところ、中国以外への具体的な展開の計画はありません。

当日に寄せられたその他の質問と回答

当日に寄せられた質問について、時間の関係で取り上げることができなかったものを、後日企業に回答いただきましたのでご紹介します。

<質問1>

質問:熱エネルギーを吸収して動作エネルギーとして再生させる方策も進めているのでしょうか?

回答:私共が顧客に納めた製品がそのような用途に使われることはあるかもしれませんが、弊社は直接そのような開発テーマには現在取組んでおりません。

<質問2>

質問:冷却ファンが未だに筐体上部に置かれて使われているのですね。もっと効率的に冷媒を用いる方法はないものでしょうか?

回答:冷却に液体の特殊冷媒を用いた液浸冷却も過去に納入したスーパーコンピューター製品でありましたが、冷媒の熱変換の為の大掛かりな配管設備が必要となります。ヒートパイプを採用した局所冷却方式等もありますが、汎用性と経済性に優れ、環境自由度の高いオーソドックスな空冷構造が弊社の製品構成でも大多数を占めています。

<質問3>

質問:防衛関係の用途の詳細は社長も十分把握されていないのでしょうか?

回答:何に使われるか用途は把握しておりますが、最終的な装置をいつ何台作るか等の先行情報は機密に属する為入手し難く、案件が具体的になる迄正確には分からないという主旨の発言となります。

<質問4>

質問:​​大型巨大データセンターの新設は今後も盛んに行われると思います。御社の売り上げ、業績にどう影響して行きますか?

回答:そのような需要は半導体の需要増大、半導体製造装置の投資拡大につながり、業績に影響してきます。また、サーバー等のデーターセンター設備の設計・生産に関わる案件が増加する可能性も大きくなります。

<質問5>

質問:​​製品の需給ひっ迫感は単価の上昇、御社の業績に大きく影響しそうですね?

回答:物によっては購入単価が以前の10倍以上になったり、納期も1年以上かかるようなものも出ています。そのような部材は代替品を顧客側に提案したり、代替えが困難な部材の仕入値高騰に関しては、幸い価格の見直しをお客様に認めてもらえており、業績には大きな影響がなく済んでおります。

<質問6>

質問:​​上場している競合他社の資料に2023年1-3月については受注が減少しており、理由として「米国における金融不安などの影響で、お客様の発注に関わる意思決定に遅れが生じた」という事が挙げられています。御社についてもそのような感触はありますか?

回答:金融不安やそれを源にした景気悪化懸念の影響も多少あるとは思いますが、当社の場合はそれ以上に、中長期的な半導体需要の影響と、短期的には部材の充足に関わる影響が大きいと感じております。

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