2023年5月25日に発表された、株式会社ヨータイ2023年3月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社ヨータイ 代表取締役社長 田口三男 氏
株式会社ヨータイ 常務取締役本社業務部長 竹林真一郎 氏
連結損益計算書
竹林真一郎氏:竹林です。本日はお忙しい中、当社決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。2023年3月期の決算概要、2024年3月期の業績予想についてご説明させていただきます。
2ページは、2023年3月期の連結損益を示しています。2023年3月期は売上高282億5,000万円、増減率は前期比9.0パーセントのプラスとなりました。主要取引先である鉄鋼メーカー向けの需要が堅調だったことなどが増収の要因となります。
経常利益は41億4,300万円、増減率は同0.5パーセントのプラスとなりました。原燃料価格の高騰がありましたが、販売価格の改定とコストダウンなどで対応したことに加え、保有株の売却益があったことが増益の要因となります。
エンジニアリング事業は、多くの工事物件に対応したこと等により、増収・増益となり、売上・利益ともに過去最高となりました。
連結営業利益増減要因分析(前期比)
3ページは、連結営業利益増減要因分析を示しています。2023年3月期は40億1,200万円、2022年3月期と比較して7,600万円の減益となりました。
主な要因は、原燃料及び購入品の仕入単価上昇でマイナス21億3,300万円、生産量の減少による固定費負担の増加でマイナス2億300万円、販管費の増加でマイナス1億5,600万円、販売単価の上昇でプラス19億9,800万円、設備投資によるコストダウンでプラス2億3,200万円、中国現地法人の利益増加でプラス1億1,400万円、エンジニアリング事業の利益増加でプラス5,600万円、太陽光発電によるコスト低減でプラス2,200万円となっております。
耐火物事業
4ページは、耐火物事業における業績推移と当期のハイライトを示しています。売上高は前期比9.1パーセント増の231億700万円、セグメント利益は同0.5パーセント増の49億3,200万円となりました。鉄鋼メーカー向けの需要が堅調だったことなどにより、前期比で増収となりました。
また、利益については、原燃料価格高騰、為替相場変動の影響を受けたものの、増益を確保しました。当期のハイライトとしては、電炉メーカーからの受注が堅調に推移し、また、セメントについてもシェアアップによって受注増となりました。
エンジニアリング事業
5ページは、エンジニアリング事業における業績推移と当期のハイライトを示しています。売上高は、前期比8.6パーセント増の51億4,200万円、セグメント利益は同7.7パーセント増の7億7,100万円と過去最高の売上・利益を記録しました。
当期のハイライトとしては、材工一式の強みを活かした積極的な営業活動が奏功し、 環境装置向けの新規案件の受注が増加しました。これによって、来期以降のメンテナンス売上の増加につながることが期待できます。
また、大型・新規案件を受注し、滞りなく進行できたのは、人財の採用・育成が進み、 戦力化が図れたことが大きいと考えています。さらに、施工が容易な乾式吹付工法を導入し、業務の効率化も推進しました。
連結貸借対照表
6ページは、連結貸借対照表を示しています。流動資産は299億3,700万円で、前期比3億4,500万円の減少となりました。主な要因は、現金及び預金の減少で26億9,600万円、製品の増加で10億3,200万円、原材料及び貯蔵品の増加で13億400万円となっています。原材料及び貯蔵品の増加につきましては、BCPの観点から備蓄体制を強化した結果です。
固定資産は97億800万円で、前期比12億4,000万円のプラスとなりました。主な要因は、建物及び構築物の増加で4億9,100万円、機械装置及び運搬具の増加で3億1,100万円、投資有価証券の増加で4億6,800万円となっています。建物及び構築物の増加は、大型プレス機及び太陽光発電設備の導入などによるものとなっています。
総資産は396億4,500万円、前期比8億9,500万円の増加となりました。一方、負債については、流動負債は69億2,000万円で、前期比3億1,500万円のマイナスとなりました。主な要因は、買掛金の減少で2億6,100万円、未払金の減少で3億7,700万円となっています。
純資産は310億6,500万円で、前期比9億5,500万円のプラスとなりました。主な要因は、利益剰余金の増加で20億1,100万円、自己株式の増加で14億7,600万円となっています。
この結果、自己資本比率は78.4パーセントとなり、前期比0.7ポイントのプラスとなりました。ROEは9.7パーセントとなり、前期比0.3ポイントの低下となりました。
連結キャッシュ・フロー計算書
7ページに、連結キャッシュ・フロー計算書を示しています。営業活動によるキャッシュ・フローは、17億8,100万円のプラスとなりました。プラス要因としては、税金等調整前当期純利益40億8,900万円、減価償却費10億4,600万円、マイナス要因としては、棚卸資産の増加で24億900万円、法人税等の支払額で12億9,200万円などとなります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、19億5,400万円の支出となりました。これは、有形固定資産の取得による支出18億9,700万円などによるものです。設備投資の主なものは、日生工場の大型プレス機導入、瑞浪工場の太陽光発電設備導入などがあります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、25億3,600万円の支出となりました。これは、自己株式の取得と配当金の支払いが主な要因です。結果としまして、現金及び現金同等物の期末残高は、前期から26億9,600万円減少し、58億4,100万円となりました。
連結業績予想
9ページに、2024年3月期の連結業績予想を示しています。売上高は前期比2.7パーセント増の290億円、経常利益は同1.4パーセント増の42億円を見込んでおります。主に鉄鋼向けの需要が堅調に推移すると想定しますが、引き続き、ロシア・ウクライナ問題などを背景とした原材料価格・エネルギー費の高騰や為替相場の変動などの不透明要因に注視してまいります。
業種別売上実績【単体】と見通し
10ページでは、単体ベースの業種別2023年3月期の売上実績と2024年3月期の見通しを示しています。
鉄鋼については、2023年3月期は需要が堅調だったことなどにより売上が増加し、2024年3月期も堅調な事業環境が続くことを見込んでいます。当社が強みを持つセメントについては、シェアアップに伴って2023年3月期は売上が増加し、2024年3月期も同水準の売上を見込んでいます。
非鉄金属については、2024年3月期は売上拡大を見込んでいます。環境装置、電子部品についても、堅調な事業環境が続くことを見込んでいます。
私からの説明は以上です。ありがとうございました。
第一次中期経営計画の進捗状況と今後の戦略
田口三男氏:田口です。私からは、第一次中期経営計画の進捗状況と今後の戦略について説明させていただきます。
ちなみに11ページの写真は、昨年2月に導入した貝塚工場の太陽光発電設備(容量750キロワット級)、及び、昨年11月に導入した瑞浪工場の太陽光発電設備(容量660キロワット級)です。
第一次中期経営計画の基本方針
第一次中期経営計画の基本方針です。2021年度から2023年度の第一次中期経営計画は、「『目指す企業像』の実現に向けて体制作りを行う期間」と位置づけ、「高い収益力・高い財務健全性」の維持を図りながら、「ヒト・モノ・情報」などへ、リソースを集中的に投資し、持続的成長を支える経営基盤を構築することを目指します。
そのための具体策として、「収益力の維持」では、「①製品・サービスの質の向上による売上拡大」「②低コスト・安定供給体制の強化」「③新たな収益源の育成」に取り組みます。
「ESG経営の推進」では、「④ESGの推進による経営基盤の構築」に取り組みます。
第一次中期経営計画期間中の業績推移
13ページは、第一次中期経営計画の「数値目標」と期間中の業績推移であります。2024年3月期において、売上高260億円、経常利益36億円、親会社株主に帰属する当期純利益24億円、ROE8パーセント、連結配当性向30パーセントを目指しており、2023年3月期ですべての目標を前倒しで、達成できています。
中期経営計画2年目のハイライト
14ページでは、第一次中期経営計画2年目のハイライトを示しています。重点施策を着実に実行し、数値目標を上回るペースで推移しています。
セグメント別にご説明します。耐火物事業は、原材料価格・エネルギー費の高騰があったものの、鉄鋼など主要分野で回復した需要を確実に取り込んだ結果、増収・増益となりました。また、エンジニアリング事業は、材工一式の強みを活かし、過去最高の売上・利益を達成しました。「ヒト・モノ・情報」への投資もほぼ計画通りに進捗しています。
業界全体の課題であるCO2排出量削減については、太陽光発電設備や省エネ設備、EV車の導入などを実施してきましたが、今後も引き続き、さらなる長期的な設備投資が必要となります。また、地政学リスクの高まりに伴い、BCPの観点から在庫の積み増しを実施し、安定供給体制を強化しています。
さらに、2022年10月には、柴田窯業原料の耐火物原料の製造事業を譲り受け、当社の瑞浪工場・土岐製造所として操業開始し、ムライト原料やコージライト原料を生産しています。ちなみにコージライト原料はリチウムイオン電池用正極材焼成用耐火材には欠かせない原料であります。また、リサイクル原料生産の評価試験にも着手しています。
主な成果 (1)製品・サービスの質の向上による売上拡大
15ページをご覧ください。重点施策の1つ目、「製品・サービスの質の向上による売上拡大」の主な成果です。
スライド左側の「製品」については、カーボンニュートラルに向けた要請が強まる中で、環境負荷の低い製品の開発を進めており、低CO2排出 不定形耐火物や不焼成耐火物、循環型社会対応耐火物、省エネルギー不定形耐火物を拡販しました。資料に記載しています貝殻は、瀬戸内で沢山廃棄される牡蠣殻の有効活用で、環境に配慮しています。
「技術営業」については、新製品を拡販するため、技術営業員を増員して、営業体制の強化を図っています。2023年3月期は、25名のキャリア採用を行い、うち3名が技術営業員です。また、技術サービス員の育成が順調に進んだこと、即戦力となる人材をキャリア採用したことで、新規・大型案件を滞りなく遂行でき、成果が表れています。
「顧客対応」では、北海道地区における営業体制を強化し、新規開拓に成果が出ています。加えて、エンジニアリング事業部の貝塚出張所の増員により、関西地区の焼却設備の基幹工事への対応を強化しました。
主な成果 (2)低コスト・安定供給体制の強化
16ページは、重点施策の2つ目、「低コスト・安定供給体制の強化」の主な成果です。「原料調達」では、中国リスクを低減するため、瑞浪工場や吉永工場はレイアウトを変更して原料保管スペースを確保し、約8ヶ月分の原料を備蓄しています。
また、2022年10月付けで、柴田窯業原料の耐火物原料の製造事業を譲り受けた、当社瑞浪工場土岐製造所の写真を添付しています。写真の手前が製品タンクで、奥の建屋に原料焼成用のロータリーキルンがあります。
「合理化・効率化」では、製造工程における継続的な原価低減活動を進めるとともに、品質向上・生産性の効率化を図るため、各工場へ大型プレス機や高効率プレス機の導入を進めています。
日生工場においては、2022年4月の3,000トンプレス機に加え、本年9月には1,000トンプレス機が稼働予定です。1,000トンプレスはこれからグリーンスチールの要求が高まる鉄鋼用電気炉向けマグカーボンれんが用であります。
吉永工場においては、2022年8月に1,500トンプレス機が稼働しました。写真は完成式の様子で、吉永工場では最大規模となり、生産性向上に寄与しています。
貝塚工場は、来月に稼働予定の1,500トンプレス機の自動化設備があります。電子部品焼成用道具材を効率よく作るためのもので 原価低減に期待しています。また、2024年2月稼働予定の1,000tプレス機の導入に向けた準備を進めています。瑞浪工場は、2022年9月に850t高効率プレス機が稼働しました。
これからも随時、最新のものに置き換えていきます。また、貝塚工場の焼成用トンネルキルンは、焼成温度管理と省エネルギー推進に向けて、焼成トンネルキルンの「見える化設備」を導入しました。これにより計測器や制御器やセンサーを追加し、そのデータをクラウド管理し、ICT技術の活用を広げていきます。
次に、全社の業務効率化を推進するため、今年の10月には全社のネットワークである新基幹システム 未雲(みくも)の稼働を予定しており、情報セキュリティの強化も順次進めています。また、AI-OCRとRPAを活用した業務効率化を継続しています。2022年3月期は1,888時間、2023年3月期は2,432時間の労働時間削減を実現しました。
2024年3月期は、経理部門での適用範囲の拡大と労務部門での活用で、さらなる業務効率化を見込んでおり、2,900時間の労働時間削減を計画しています。このような取り組みで当社なりのDXを推進してまいります。
主な成果 (3)新たな収益源の育成
17ページは、重点施策の3つ目、「新たな収益源の育成」の主な成果です。「開発体制」では、研究開発のスピードアップ、及び、顧客への迅速な技術対応を図るため、技術研究所、新材料研究所の人員を増強し、また写真に示した高性能な最新設備を導入しレベルアップを図っています。
カーボンニュートラルに向けた耐火物製品は、製造プロセスで大量消費する化石燃料を非化石燃料へ置換する基礎技術の構築を進めるほか、CO2排出量削減に貢献する不定形耐火物・不焼成れんがの新製品開発を推進しています。
主な成果 (4)ESGの推進による経営基盤の構築
18ページは、重点施策の4つ目、「ESGの推進による経営基盤の構築」の主な成果です。
E(環境)については、工場への太陽光発電設備の設置やバッテリーリフト、業務用EV車の導入を行いました。今後も中期経営計画に沿って、各種取り組みを進めていきます。また、サステナビリティ基本方針、マテリアリティ、TCFD提言に基づく気候関連情報を2022年6月に開示しました。
S(社会)については、人権の尊重をはじめ、ダイバーシティの推進、働きやすい職場づくり、健康経営の推進など、持続的な成長に向けた取り組みを展開しています。人権に関しては、コンプライアンス教育の取り組みを継続的に実施しています。ダイバーシティに関しては、女性活躍推進に向け、実態調査のためのアンケートの実施を決定しました。
働きやすい職場づくりに関しては、働き方改革の推進、新人事評価システムの運用開始、職場改善に向けたエンゲージメントサーベイの実施、ベースアップや休日増加、持株会の奨励金増加など、従業員の処遇改善を実施しました。また、2024年の健康経営優良法人認定に向けた取り組みを進めています。さらに、持続的な成長に向けて、従業員の新規採用の積極化や、新卒社員の初任給増額を実施しています。
G(ガバナンス)については、監査等委員会設置会社への移行を決定し、今年の6月の定時株主総会に付議する予定です。また、内部監査室の専任スタッフを1人増員し、内部監査体制を強化しました。
2024.3期の重点取り組み
19ページは、2024年3月期の重点取り組みです。左側からご説明します。
耐火物事業では、鉄鋼、非鉄金属、環境装置、電子部品などの分野で、需要の確実な取り込みを図ります。特に、カーボンニュートラルへの要請が強い鉄鋼業界では、グリーンスチール用電気炉向けの需要を取り込んでいきます。
加えて、16ページでご説明したように、大型プレス機、高効率プレス機の活用による安定生産と生産性向上に取り組んでいきます。また、BCPの観点から、原材料備蓄体制のさらなる強化を目指します。具体的には、貝塚工場は年内に、日生工場は来年3月までに新倉庫を完成させる予定です。
次に、エンジニアリング事業では、建設業2024年度問題への対応が必須です。また、旺盛な需要に対応するため、東京に拠点を設置することの検討や、継続的な人員採用・育成、技術伝承も行っていきます。その他、営業支援活動の強化を実施していきます。
投資スケジュールと進捗状況
20ページは、「ヒト・モノ・情報・その他」への投資の進捗状況です。ヒトへの投資については、人事評価制度の改定、人事情報の一元化・活用を実施しました。モノへの投資については、生産性向上のための1,500トン以上の大型高圧プレス機を導入しました。
また、新製品開発設備として、高性能な解析装置や特性評価設備を導入しました。情報への投資については、新基幹システム 未雲(みくも)の稼働に向けた準備を進めています。
資金配分の状況
21ページは、資金配分の考え方です。まず、投資50億円の内訳については、合理化、効率化投資において3年間で14億円を計画しており、2023年3月期に6億5千万円を実施しました。
戦略的な設備の導入、脱炭素の投資、BCP投資においては、23億円の計画のうち、9億7,000万円を実施しました。これ以外の投資についても、IT投資で8,000万円、その他で1億円を実施しました。
株主還元については、連結配当性向30パーセントの目標を定めており、2023年3月期の連結配当性向は30.5パーセントの予定です。加えて、経営環境の変化に対応した資本政策の遂行を可能とするため、機動的な自己株式の取得を行っていきます。
株主還元
22ページは、株主還元です。2023年3月期の年間配当については、業績等を踏まえ、前年から2円増配の45円を予定しています。自己株式の取得については、102万株、14億9,900万円を取得しました。
2024年3月期は、1株当たり年間配当金50円、連結配当性向32.7パーセントに加え、150万株 または15億円を上限に、自己株式の取得を進めてまいります。
SDGsへの取り組み
23ページは、当社のSDGsへの取り組みの一例を示しております。SDGsの実現に向け、ヨータイとして何ができるかを考え、実行してまいります。
私からの説明は以上です。ありがとうございました。