6月は公的年金の支払月です。国民年金や厚生年金は、原則年に6回、偶数月の15日(土日祝の場合はその前の平日)に支払われます。支給月の前月・前々月の2カ月分をまとめて支給するので、2023年6月15日(木)には4月・5月の2カ月分を受け取ることになります。

現役世代の方にとってはまだ少し先の話となる年金の話。

しかし、老後に受け取る年金、特に厚生年金の受給額は、現役時代の年収や加入期間により人によってバラツキがあります。将来、年金の受け取りが開始した時に、「年金だけでは足りない…」と慌てることのないよう、今のうちから年金について考えておきましょう。

今回は厚生労働省の最新資料を使って、厚生年金の平均受給額を見ていきます。

【注目記事】厚生年金だけで【月平均25万円以上の年金収入】の羨ましい人は日本に何パーセントいるか

1.【日本の年金制度】国民年金と厚生年金の2階建て構造

厚生年金の受給額について確認する前に、まずは日本の年金制度についておさらいしていきましょう。

日本の公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2つの年金制度から成り立ちます。そのため「2階建て構造」などと表現されることも多いです。

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和5年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成

また、日本の年金制度の被保険者は次の3つに区分されています。

  • 第1号被保険者:自営業、20歳以上の学生など
  • 第2号被保険者:会社員・公務員など
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者

3つのうち、第2号被保険者にあたる会社員・公務員などが加入するのが厚生年金保険です。会社員・公務員の方は、1階部分の国民年金(老齢基礎年金)に2階部分の老齢厚生年金が上乗せされるため、2階建ての手厚い年金制度だと言われています。

厚生年金の保険料は報酬に応じて計算され、給与から天引きされています。上限はありますが、現役時代の所得が多ければ多いほど、保険料は高くなり、将来受け取れる年金額も高くなる仕組みです。

では実際に厚生年金を受給するにあたっての平均受給額を確認していきましょう。

2.【厚生年金】平均年金月額はいくらなのか

出所:日本年金機構「令和5年4月分からの年金額等について」

厚生労働省が掲げるモデル世帯「会社員の夫と専業主婦の妻」の場合、厚生年金の受給額は月22万4482円です。

  • 専業主婦の妻(第3号被保険者):老齢基礎年金6万6250円
  • 会社員の夫(第2号被保険者):厚生年金15万8232円(国民年金(老齢基礎年金)部分含む)

これは、およそ月43万9000円(賞与込)の給与で40年間働いた会社員の夫と専業主婦の妻という前提の数字です。

では、実際に今のシニアの人たちは、いくらくらいの厚生年金を受け取っているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

2.1「厚生年金」受給額の分布(男女計)

出所: 厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 1万円未満:9万9642人
  • 1万円以上~2万円未満:2万1099人
  • 2万円以上~3万円未満:5万6394人
  • 3万円以上~4万円未満:10万364人
  • 4万円以上~5万円未満:11万1076人
  • 5万円以上~6万円未満:16万3877人
  • 6万円以上~7万円未満:41万6310人
  • 7万円以上~8万円未満:70万7600人
  • 8万円以上~9万円未満:93万7890人
  • 9万円以上~10万円未満:113万5527人
  • 10万円以上~11万円未満:113万5983人
  • 11万円以上~12万円未満:103万7483人
  • 12万円以上~13万円未満:94万5237人
  • 13万円以上~14万円未満:91万8753人
  • 14万円以上~15万円未満:93万9100人
  • 15万円以上~16万円未満:97万1605人
  • 16万円以上~17万円未満:101万5909人
  • 17万円以上~18万円未満:104万2396人
  • 18万円以上~19万円未満:100万5506人
  • 19万円以上~20万円未満:91万7100人
  • 20万円以上~21万円未満:77万5394人
  • 21万円以上~22万円未満:59万3908人
  • 22万円以上~23万円未満:40万9231人
  • 23万円以上~24万円未満:27万4250人
  • 24万円以上~25万円未満:18万1775人
  • 25万円以上~26万円未満:11万4222人
  • 26万円以上~27万円未満:6万8976人
  • 27万円以上~28万円未満:3万9784人
  • 28万円以上~29万円未満:1万9866人
  • 29万円以上~30万円未満:9372人
  • 30万円以上~:1万4816人

※国民年金部分を含む

受給額の分布を見てみると改めて個人差があることが分かりますね。

ボリュームゾーンは「9~11万円」ですので、モデル世帯と同じ「専業主婦の妻」と「40年会社員の夫」の夫婦の場合、平均の年金月額は約15万6000円~17万6000円となります。

2.2「厚生年金」受給額の分布

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 平均年金月額 男子:16万3380円
  • 平均年金月額 女子:10万4686円

男女で比較すると男女で差があるのも厚生年金の特徴です。これは厚生年金の特徴が大きく影響しています。厚生年金は加入期間や納付保険料に大きく影響するからです。

女性は男性と比べて結婚や子育てで雇用形態が変わる機会が多いことが、男女差の要因の1つと考えられるでしょう。

3. 【厚生年金・年金月額】独身や共働き世帯の平均はいくらか

つづいて、共働き世帯・単身世帯の年金額について見ていきましょう。

3.1「厚生年金・年金月額」独身の場合

まずは単身世帯の場合で考えると厚生年金の平均受給額は、14万3965円。男女の受給額に差が見られましたが、結婚・出産などの働き方の変化がないと想定すると、平均額14万3965円を参考にすると良いでしょう。

3.2「厚生年金・年金月額」共働き世帯の場合

共働きの世帯の場合、配偶者が厚生年金加入者か国民年金の加入者によっても受給額に差が出てきます。夫婦ともに厚生年金の平均受給額を受け取る場合には、男性平均:16万3380円+女性平均:10万4686円=26万8066円となります。

ただしあくまで共働きで、厚生年金を2人とも受給する場合です。単身世帯より収入は多く見込めますが、食費や生活費などの出費も2人分に増えることも忘れてはいけません。

4.現役時代から「自助努力」を

今回は厚生年金に注目して、最新の受給額を眺めてきました。

年金が老後の大切な収入源であることに間違いはなさそうですが、それだけでは足りないと感じるのも事実。そのため、現役時代からの「自助努力」が求められるでしょう。

まずは自身の状況を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などを活用して把握してみてください。老後の大まかな年金収入を把握できれば、ご自身のライフスタイルに合った適切なマネープランを立てることができるでしょう。

参考資料

山本 大樹