2023年4月25日に行われた、リニューアブル・ジャパン株式会社 個人投資家向けIRセミナー 〜with バフェット・コード&IR Agents〜の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:リニューアブル・ジャパン株式会社 代表取締役社長 眞邉勝仁 氏
バフェット・コード 氏
合同会社IR Agents 代表 関本圭吾 氏
リニューアブル・ジャパン株式会社 個人投資家向けIRセミナー 〜with バフェット・コード&IR Agents〜
バフェット・コード氏(以下、バフェット・コード):本日は、再生可能エネルギー発電所の開発や運用・売却に至るまで、サプライチェーンを一気通貫で提供するリニューアブル・ジャパンにお邪魔しています。再生可能エネルギーと聞くと、発電所を作って売電して儲けていると思われがちですが、実はこれはリニューアブル・ジャパンの価値提供のごく一部でしかありません。
自前で建設することもあれば、外から買収もしますし、戦略的に売却して現金化することもあります。まさにイグジットをどうするかを常に考えながら、資産ポートフォリオを管理するアセットマネジメント業こそが同社の強みであり、国内でもユニークなポジションになっています。
本日はそのあたりを深掘りし、できるだけわかりやすく視聴者のみなさまにお伝えできればと思い、ゲストとして眞邉社長にご登壇いただきます。金融でキャリアの大半を積んでこられたため、サバサバしたドライな方かと思いきや、実は人情味あふれるウエットな方ですので、そのあたりの魅力もお伝えできるかもしれません。それでは眞邉社長、よろしくお願いします。
眞邉勝仁氏(以下、眞邉):よろしくお願いします。
バフェット・コード:また、IR Agents関本さんもよろしくお願いします。私も声だけですが、末席から出演します。今日はこの3人で進めたいと思いますので、関本さんにマイクをお渡しし、ここからメインで進めていただきます。
IR Agents:では、まずはアイスブレイクからいきたいと思います。眞邉社長は打ち合わせの時より少し日焼けされましたか?
眞邉:そうですね。10日ほど前に宮古島でトライアスロンの大会に出場しました。トライアスロンは、短いものから長いものまでいろいろな大会があります。日本でも大きな大会が4つあるのですが、その中でもっとも美しいと言われている憧れの宮古島で、11時間くらいかけて完走しました。
バフェット・コード:宮古島では初めてのトライアスロンですか?
眞邉:宮古島のトライアスロンは4年ぶりの開催でした。景色は美しかったのですが、最後に30キロ走るのはメンタルが本当に辛かったです。非常に暑い中、完走できて良かったです。
バフェット・コード:心身ともに健康ということですね。
IR Agents:競技は水泳とランニングと自転車ですか?
眞邉:そうですね。水泳と自転車、そして最後にランニングです。
IR Agents:私はあまり運動しないため、トライアスロンに参加するのはすごいなと思います。
眞邉:誰でもできますよ。世界最高齢のトライアスリートは90歳です。その方は70歳からトライアスロンを始めており、私も一緒に練習しています。良かったら関本さんも一緒にいかがでしょうか?
IR Agents:もちろんです。しかし、これ以上続けているとスポーツの話になりそうですので、本題に移ります。
事前の打ち合わせで、実はけっこう難しいビジネスだとうかがっていますので、今回は基本的なところからうかがえればと思っています。そもそも、なぜこの太陽光という領域でビジネスを始められたのでしょうか? ぜひ事業の成り立ちからうかがえればと思います。
眞邉:私はもともと30年以上前に新卒で証券会社に入り、営業を行っていました。その後、約20年前に日本でも証券化が始まりましたが、その時の証券会社の初代証券化責任者が私です。同じ年代の方は誰でも知っていると思いますが、某不動産会社の宣伝で松本幸四郎さんの「社長、不動産の証券化をご存じですか?」という有名な台詞があります。この頃に証券化を始めました。
外資系証券会社で証券化専門部隊を創設
眞邉:証券会社には18年間勤めていたのですが、営業やその責任者、証券化やその組成、証券化商品の販売などを行っていました。そしてその後は証券化商品を売る運用会社の日本代表を引き受けました。
ただ、そのタイミングでリーマンショックが起きました。リーマンショックでいろいろ大混乱しましたが、一番嫌われたアセットクラスが証券化商品でした。
IR Agents:私もリーマンショック前とその後の相場を見ています。
眞邉:投資するには最高のタイミングですが、資金調達するには最悪のタイミングに移ってしまいました。ビジネスはなかなか難しいです。ただ、そのような中で「日本の機関投資家が投資するものが何かないか?」「私たちの今までのノウハウや知識を使って何かできないか?」と、いろいろ探しました。そして発見したのがインドの太陽光、つまりインフラです。
「インフラなら投資するのではないか?」ということで、インドのFIT(フィード・イン・タリフ)という固定買い取り制度が始まりました。「日本の技術を使いたい」「日本で資金調達したい」ということで、たまたまのきっかけでスタートしました。
証券会社を辞めて運用会社に移り、リーマンショックが起き、投資しているものが証券化商品で「商売上がったり」となり、たまたま探したのが再生可能エネルギーです。これがきっかけになりました。
ただ、実際にこの会社を作ったきっかけは東日本大震災です。私はアメリカの会社で働いていたのですが、東日本大震災が起きた次の日にビジネスパートナーからメールがきました。「眞邉さん、人はね、困った時は水と電気だ」と言うのです。
東日本大震災後、被災地に浄水機器を自ら届ける
眞邉:太陽光をエネルギーとした浄水器があることはもともと知っていたものの技術にはまったく興味がなかったのですが、「差し上げるから被災地に持って行ってくれ」と言われました。そこで赤十字に連絡し、「すばらしい機械があるので是非受け取ってほしい」と伝えたところ、「お金は送金してください」「機会はご自身で持っていってください」ということでした。
いろいろな方にお手伝いいただき、最終的には、原発で有名な宮城県女川町と岩手県大船渡市の2つの自治体が受け入れてくれました。
被災して1ヶ月が経った段階で車で被災地に入りました。福島県はガタガタしておりメルトダウンも怖かったのですが、被災地に入ると海岸線も全壊していました。テレビで見たことがあるかもしれませんが、全壊している町しかありません。大船渡市と女川町は180キロほど離れており、車で南下していくのですが、全壊もしくは半壊している町ばかりで、地球の線が変わっているのです。
また、山の上のほうにタンカーがあったり、女川町の銀行の主屋が倒れていたりすることも有名な話ですが、それを目のあたりにしました。この壊れた町を見ながら「自分はこの復興に対して何ができるだろう?」と思っていました。
証券会社といっても私は外資にいたため、どちらかというとお金儲けをすることが善の組織でした。しかし、震災をきっかけに「復興のお手伝いがしたい」「お金儲けも大切だと思うが、そうではない生き方もできないか?」と、車の中でずっと考えていました。そして東京に帰ってきて、「事業モデルができてきて、なんとなく実現できそうだ」ということで、このビジネスをスタートしました。
事業を行うには最終的にはお金が必要ですが、お金を持っているのは金融です。そのため、「震災からの復興のために金融界からお金を持ってきて、復興の架け橋になる仕事ができないか?」ということがきっかけです。
IR Agents:長年の経験を含めたプロフェッショナルな部分と震災が契機になったのですね。
眞邉:おっしゃるとおりです。
IR Agents:太陽光をビジネスに、一気通貫でいろいろなことに取り組んでいるということですが、そもそもオペレーションとしてどのようなことを行い、何が売上になっているのかという基本的なところについても教えてください。
眞邉:どのようなビジネスモデルで進めようかと考えたのですが、周りに学ぶべき人がいませんでした。そのため、海外で成功している方たちのビジネスモデルを真似ようと思いました。ヨーロッパやアメリカの方が行っているビジネスモデルが、今からご説明する一気通貫モデルです。
日本でも、上場している会社が一気通貫を行う場合は、まず土地を探してきて、その後、測量しなければなりません。「事業ができるかわからないのに、お金をかけて測量しなくてはならないのか」と思いました。
その後、ボーリングという調査を行ってから造成します。そして、土地を平らにして発電所を作るまでが一気通貫です。
さらに、グローバルで成功している方たちは金融という出口まで持っていくのです。プロジェクトファイナンスで資金調達を行い、エクイティのリターンを最大化して、キャピタルゲインをとって第三者もしくはファンドに売ります。
そのため、発電所を作るところから金融の出口まで一貫して行います。さらにその後、発電所の管理やO&M(オペレーション&メンテナンス)、キャッシュフロー管理のアセットマネジメントにおいて、第三者に売却した後も関わっていきます。このようなことを行って成功している海外の方たちがいましたので、そのビジネスモデルをそのままいただきました。
RJは再生可能エネルギーの開発(発電)事業者
IR Agents:成功事例があり、取り組みやすいケースではありますが、実際に行うのは大変だったと思います。
眞邉:実際に、始めてから「やめておけば良かったな」と思うことは何度もありました。特に土地を探してくるという仕事は大変でした。長靴をはいて農家のおじさんのところに行き、お茶を飲みながら頭を下げて「土地を貸してください」「土地を売ってください」と言う仕事です。金融の人が行う仕事ではないとは思いましたが、始めてしまった以上は仕方ありませんでした。それで今があります。
IR Agents:頭を下げて話を聞いてもらって「土地を利用させてください」と言うのですね。
バフェット・コード:普通の金融マンにはしづらいことですよね。
IR Agents:土地を見つけて測量し、発電所を建設して売電した後、施設にファイナンスを引っ張ってきて売り、管理するまで全部行うということでした。このビジネスモデルを海外から輸入してきたということですが、他に行っている方はいらっしゃるのですか?
眞邉:私はあまり見たことがないですが、唯一、海外のパネルメーカーがあります。パネルメーカーはパネルだけを売ってもほとんど儲からないため、ディベロッパーの事業を行います。彼らも同じようなモデルで行っていますが、私どものような規模で日本で行って成功しているところは、それほどないような気がします。
IR Agents:御社はどちらかというと、キャリア的にもファイナンスから入っているのですが、彼らはモノから入っているのですね。
このビジネスのオペレーションにはいくつかの段階がありますので、それぞれどのような強みがあり、何が難しいのかを聞いていければと思います。最初に土地を見つけるような部分は、先ほどおっしゃったように、けっこう泥臭い部分なのでしょうか?
眞邉:私どものスタートは、この会社を作る前からです。事業用地を探そうとした時に、たまたま鹿児島県垂水市の自治体のことを知っている方がおり、そこに連絡しました。これがスタートです。ついこの間、その時にお会いした尾脇市長が第4戦の市長選で当選しました。
尾脇市長は同志です。私のほうが年上なのですが、見た目は若く見えるため、ほぼ同い年です。そのような意味でも、「震災で生き方が変わる。その中で再生可能エネルギー事業に一緒に取り組もうではないか」ということで、初めて会った時にお互いに近いものを感じました。
私はもともと運用会社におり、その後独立して2人でスタートしていますので、持っているものは何もありませんでした。その時の事業は30億円くらいだったのですが、「お金を集められるのですか?」「大丈夫ですか?」と、市役所の方々が心配していました。しかし、市長は「いや、眞邉さんだったらできる」と、ずっと信頼して横にいてくれました。
今は「あの会社が上場までして、ここまで大きくなるのか」と驚いておられますが、付き合って本当に良かったと思っていただいているのではないかと思います。たまたまのきっかけで垂水市とお付き合いして土地を貸していただきましたが、さまざまな自治体への紹介もしていただきました。
IR Agents:最初の実績はご縁があったことによるものであるということは、非常にウエットな部分ですね。
眞邉:常にご縁です。太陽光発電は日射量が多いところが適地になります。しかし、私どもは日射量が多い瀬戸内海、宮崎県、高知県、山梨県、長野県では、ほぼ事業をしていません。たまたまさまざまなかたちでご縁があったところとお付き合いをしていき、その地域で自治体とお付き合いさせていただいて立地協定というパートナーシップアグリーメントを結び、その後、地元の人を雇って事務所を作ります。そして、メインでカバーして発電所を作ります。
先ほどお話ししたように、震災から1ヶ月後に東北に行きましたが、はじめに降りたのは一関市でした。一関市の方々にアレンジしていただいたのです。私どもは震災の復興のお手伝いのために作った会社ではなく、鹿児島からスタートしたのですが、「行けるなら行こう」と言って始めたのが一関市なのです。
バフェット・コード:そこに行っていなければ鹿児島にも繋がっていないということですね。
眞邉:一関市で最もたくさんの量の太陽光発電所を開発し、たくさんの発電所の管理をしているのがリニューアブル・ジャパンです。しかし、隣の平泉市で行っている事業はゼロです。私どもはそのようなご縁を大切にしながらお付き合いしていこうと考えています。
IR Agents:土地は自治体と管理しているのですか?
眞邉:スタートはそうです。その後、民間の方々から買ったり借りたりします。例えば、私どもの会社の人間は地主とコンタクトする際、まず「リニューアブル・ジャパン」という片仮名で名乗ります。東京の会社です。社長は金融です。怪しさ満載ですので、みなさまは「本当に大丈夫か?」と思うわけです。
実績もそれほどあるわけではないため、その時に自治体と立地協定を結びました。そうすると次の日に何が起きるかというと、地元の新聞に印鑑を押している時の写真や市長とニコニコ笑って握手している写真が出るわけです。
そうすると安心していただけるのですよね。そのようにして、私どもはトラックレコードを一つひとつ積み上げてきました。今では、リニューアブル・ジャパンは一関市の会社だと思っていただけていると思います。
IR Agents:やはり実績を作るところからでは、なかなか地元の方も心を開いてくれないため、ご縁のあった垂水市とは本当にすごいスタートを切っており、まさに同志ですよね。
再生可能エネルギー発電所の開発には地域との連携が不可欠
IR Agents:土地は一番の課題になるものなのでしょうか? それ以外の測量なども、何か他社と差別化して強みになったりするのですか?
眞邉:差別化と言いますか、私どもの事業の根本は常に3つなのです。技術、金融、そして地域です。
①地域 ②技術 ③金融
眞邉:事業の一気通貫の中で土地を探してこなければいけないのですが、技術と金融はなかなか融合しない会社が多いです。そのため、技術系メーカーの方たちは金融まで辿り着かないことが圧倒的に多いです。私は金融のバックグラウンドで技術の人間をたくさん採用しましたが、初めはなかなか融合しませんでした。
ある意味、憎しみ合っていました。お酒を飲みながら、技術の方たちが「銀行屋」「金融ならお前は年金を受け取るな」ということを言っていた時期もあったのですが、やっと融合してきたということが1つの強みではないかと思います。
海外では金融と技術はそれほど離れている感じはしないのですが、日本ではなぜか遠いです。最終的には金融商品を作るため、土地を探す時から最後の出口をデザインします。その中のプロセスに技術があります。それがうまくできているのが私どもの強みではないかと思います。
IR Agents:金融・技術・地域ということですが、技術には具体的にどのようなものがあるのですか?
眞邉:技術に関して言うと、FITの期間が20年間ですので、プロジェクトファイナンスも20年間です。実際には17年から18年間のキャッシュフローとなりますが、20年間持つ技術で発電所を作る必要があります。そうでなければお金を貸してもらえません。プロジェクトファイナンスが資金調達できないということがあったため、「20年間、本当に持つのか?」というところからスタートしました。
今は私どもで開発し、発電所も作っています。発電所を管理するチームもいるため、300人弱の社員のうち半分が技術者です。現在、少なくとも太陽光については「リニューアルブル・ジャパンの技術は良いものである」と、金融機関に認められる技術力に到達していると思っています。
IR Agents:技術はかなりハードウェア寄りかと思います。「どのようなものを作っていくか」や「どのような技術で作り上げるか」というところに力を入れているのでしょうか?
眞邉:見に行くとわかるのですが、どの発電所も同じように見えて、けっこう違います。太陽光は平らに見えますが、実際は少し傾いています。私どもが施工した発電所は横のラインの面が揃っています。グローバルスタンダードなものとはかたちが異なります。
IR Agents:斜めになっているのですか?
眞邉:はい。揺れたりもします。こだわりがあろうとなかろうと値段は同じですが、こだわっている技術者がいるということです。
IR Agents:技術については長く続けているため、いろいろなことができるということですが、逆に金融における強みは、どのようなところに表われてくるのでしょうか?
眞邉:すばらしい仕組みを作ったとしても、金融機関や投資家の中には、「この仕組みは美しくてかっこいいですね」と言って投資する人は誰もいません。きちんとした技術で作られているかや、管理している人たちがきちんとしているかが最も大切です。会社を設立してから約8年かけて、機関投資家の中で安心感やブランドを作ることができたと思います。
ただし、ルールは国や電力などによってさまざまに変わります。FITからNon-FITの時代に変わろうとしている中で、ルールも変わっていきます。
私どもは事業者であり、金融的にはエクイティプレイヤーです。私のバックグラウンドにも関連しますが、資金調達、特にコレクトファイナンスについてはよく理解しています。ルール変更をはじめとしたさまざまな足枷がある中で、スピード感を持って短期間で解決することが非常に大切です。
金融には特許がないため、誰かが解決すれば、いずれは可能になります。しかし、真っ先に解決するのは私どもの役割だと思っています。フロントランナーとして金融の問題を解決し、エクイティプレイヤーとして進んでいくと、他の方たちが同じように真似していくと思っています。全部で7回このようなイノベーションをしてきました。
バフェット・コード:金融におけるイノベーションを起こしてきたということですね。
眞邉:ただし、地域の方に助けられての技術です。直近で言えば、去年12月にプロジェクトボンドを出しました。今まで、ノンリコースローン、プロジェクトファイナンスやプロジェクトボンドは、FITの期間中のキャッシュフローのみをベースにしてどれだけ借り入れできるかということを出しており、これが常識でした。私どもはそれに加えて、Non-FIT期間が10年です。
これは私どもが「やりたい」と言って、できるものではありません。格付け会社や機関投資家がきちんと認めてくれることが大切だと思っています。FITプラスNon-FITではなく、今後につながってくるNon-FITだけの世界への架け橋を作ることができました。これは1つのイノベーションだと思います。
IR Agents:固定買い取りは値段が決まっているため、「どのくらい作っていくらで売ると、このくらいの収益になるため、このくらいの資金を借りられる」というのがFIT期間のボンドです。しかし、Non-FITになり価格が市況に拠るようになる部分もあれば、わからない部分もあります。このあたりもしっかりとクリアし、Non-FITもきちんとできたというのは、やはりすごいことだと思います。
眞邉:今回はそこまでではないです。今あるFITに対して、FITが終わったとしても、その後も事業を継続できるかたちです。しかし、それでも今まで誰も認めてくれなかったことでした。今おっしゃったように、100パーセントNon-FITの世界になると複雑になります。期間を何年にするか、誰を相手にするか、また、通常は固定の価格も変動ありになります。このようなさまざまな変数があり、自分たちで電力マネジメントしなければならない中で事業を行っていくということです。
ただし、少し難しい話になりますが、今まで太陽光で作られてきた電力は約60ギガワットです。政府が策定した2030年に向けたエネルギー基本計画では、同じくらいの電力を今後7年間で作るとしています。しかも、そのうち半分以上はNon-FITです。さらに、2050年にはカーボンニュートラルにすると菅元首相が言っていました。つまり、今60ギガワットの電力を、200ギガワットから300ギガワットに持っていくということです。
また、エネルギー基本計画によると、2050年にはほぼ100パーセントNon-FITとなります。事業者が事業を行わないと、カーボンニュートラルには近づきませんので、私どもはその中で事業を行っていかなくてはいけません。したがって、Non-FITは「できたらいいね」ではなく「やらなければならない」なのです。
IR Agents:お見それしました。基本的な質問で恐縮ですが、太陽光発電の場合、儲かると思う積算はどのように調べているのですか?
眞邉:第三者レポートなどと呼ばれる、「発電所をこのような設計で作ります」「この場所にこのようなかたちで作ります」という計画書を作り、第三者のレポート会社に提出します。その後、「この発電所は大体これくらいのリターンが取れるはず」というレポートが出されるため、それを金融機関に提出します。そして金融機関は「このキャッシュフローをベースに、このくらいの資金調達ができます」と判断する、という流れが事業性を固める際の通常のルールです。
ただし、事業者である私どもにとっては厳しいルールです。発電所を作るために土地の購入費を払わなくてはならないのに、3年くらい待たないと事業性がわかりません。
IR Agents:第三者機関からレポートが戻ってくるまでの期間が約3年ということですね。
眞邉:そのとおりです。どのような設計にするかなどがまだ固まっていないため、すぐにはレポートが出せないのです。しかし、私どもからすると、リスクマネーを張る前に、発電所がいくらで売れて、どのくらい儲かるかがわかったほうが安心です。
IR Agents:リターンは投資の前段階から計算する必要がありますよね。
眞邉:その計算を精緻に出せないかということで、私どもはモデルを作ってシミュレーションしたのです。
バフェット・コード:数値を精緻に、かつ早く計算するということですね。
眞邉:結果的にそうなりました。私どもがターゲットにしているのは、高圧あるいは特別高圧と言われる大型の太陽光発電所で、現在およそ30ギガワットが稼働しています。まったく同じかどうかはわかりませんが、社内でシミュレーションをしたものは13ギガワット、すなわち全体の40パーセントにあたります。日に日に増えているため、今は14ギガワットになっている可能性もありますが、そのようなことを日々行っている会社です。
当初は自分たちですべて開発していましたが、今は人から持ち込まれるほうが圧倒的に多く、100件の持ち込みがあったとしても購入できるのは3件くらいです。価格で落ちるのが約9割であり、残りは技術面で落ちるイメージです。
IR Agents:かなり厳しく見ているのですね。
眞邉:そのようにして、年間70メガワットから80メガワットくらいを購入してきました。
IR Agents:購入した物件は、技術も事業性もしっかりしていると判断されたということですね。
眞邉:人が作った発電所ですので、自分たちが作った発電所のようにはいきません。
IR Agents:100パーセント把握できるものではありませんよね。
眞邉:先ほどお伝えしたように、それほどきれいでない見た目でも購入します。ただし、お金をかけて直したり、発電所を管理する部隊がしっかりと管理したりすることで、持続性を持たせていきます。私どもは、価格面でも技術面でも、「金融商品として売れないものは買わない」と徹底して決めています。私どもがアレンジして、最終的に機関投資家に迷惑をかけないレベルに仕上げていくことが、私どもにとってのブランドだと思っています。
IR Agents:先ほどおっしゃったように、モノを作るところから最終的な出口まで行うということですね。
眞邉:おっしゃるとおりです。
IR Agents:他の会社が出口を設定しないのは、難しいためでしょうか? シミュレーションなどに時間がかかるので取り組みにくいという理由があるのでしょうか?
眞邉:例えば、発電事業者やIPPと言われる、人に売らないビジネスモデルがあります。一般的には日本のインフラ大手で、ガス、電力、石油、自動車、通信のような方々が再生可能エネルギーに再参入しました。
そのような会社は「発電所を所有したいが、人には売らない」というビジネスです。一方で、私どもは所有も販売も行っています。当初は自分たちで開発したものをファンドに売っていましたが、最近では自分たちも保有するかたちをとっています。
さらに、私どもは発電所も作り上げましたが、これを金融商品と関係なく「売ります」という方たちもけっこういます。一方で、私どもは金融と連携しています。私どもと同じようなところは日本では少ないと思います。
IR Agents:金融商品として売るには、リスクをしっかり管理し、収益面をきちんとシミュレーションして十分な利回りを確保するなど、かなり高い水準が求められるという理解でよいでしょうか?
眞邉:おっしゃるとおりです。
IR Agents:今、一気通貫モデルで行う方はいないというお話がありましたが、広い意味では、独立系発電事業者などが競合になると思いました。
眞邉:そのとおりです。発電所を開発して保有するという意味では一緒だと思います。
IR Agents:彼らとの差別化要因としては、今までおっしゃったような、「ご縁で土地や地域が見つかる」「技術をしっかり見ることができる」「先陣を切るようなエンジニアリングができる」「シミュレーションや利益の計算ができる」といったところでしょうか?
眞邉:おっしゃるとおりです。みなさまも同じようにできると思うのですが、私どもはより精緻にできるということです。とはいえ、最も大切なのはスピード感だと思います。私どもは日本を代表するような会社ではありませんので、「スピード感なしでは生きていけない」と社員にも伝えています。
IR Agents:私もいろいろなビジネスや会社を見ていますが、例えば、翌月にはテスト製品を持ってくるようなメーカーが有名になるというように、早いというのはそれだけですごいことだと思います。
ビジネスフローや強みについておうかがいしましたが、中長期の成長戦略として、ビジネスをさらに伸ばしていくためのポイントを教えてください。
眞邉:5つの成長ドライバーがあり、私どもはそれぞれ「第2ステージ」や「第3ステージ」と言っています。第2ステージは高FITの発電所の開発と保有です。今後は発電所をどんどん増やすよりも、開発した高FITの発電所を売っていくことになると思います。
各ステージで目指すこと
眞邉:加えて、O&Mが思ったよりもうまく進んでいるため、中期経営計画を上方修正しました。もともと上場前に約1ギガワットであったものを、4年後の2025年には倍にするとしていたのですが、2.3ギガワットに上方修正しています。このような点はうまく行き始めていると思っています。
また、第3ステージの中でがんばるとお伝えしていた、海外・風力・その他のアセットクラス・Non-FITの中で、意外にも海外がうまくスタートできたと思います。
今後の長期視点としては、バランスシートを増やさずに事業を拡大していきます。さらに、拡大してきたものに関しては私募、もしくはパートナーに売却していくかたちです。
まずこの5つをしっかり進める中で、伸びていくためには、どのくらいうまく開発を増やしていけるかがポイントになると思っています。
IR Agents:国内FITをきちんと売っていく、バランスシート・ポートフォリオを管理していく、海外、Non-FITやO&Mを行うなど、多くのポイントがあると思います。ぜひ、一つひとつ確認できればと思いますが、中期経営計画の数字をパッと見ると、フロー収入が少ないように感じていたところが、金額だけ見るとかなり上に持ち上がっています。これは発電所の売却を行ったためということでよいのでしょうか?
眞邉:おっしゃるとおりです。私どもはもともとフロー収入に頼っていた会社です。フローで開発してファンドに売るか、第三者を受け入れて開発報酬を得て、そのお金を人件費に回していました。要するに、アーリーステージでは売らないと会社として存続しなかったのです。
上場前後でストック収入が積み上がり、販管費をストック収入でカバーできるようになってきましたので、わざわざ売らずにバランスシートを保有し、ストック収入で安定した事業を行うステージに入りました。
ただし、「バランスシートを広げるばかりが脳ではない」という株式市場の声もありました。この3年間はバランスシートをコントロールしつつ、事業をきちんと拡大する方向になってきています。
バランスシートをそのまま増やさないようにすると、事業が拡大した際にアセットを売らなくてはならなくなります。私どもは第三者に完全に売却してしまうのではなく、ファンドに売却します。もしくは、事業パートナーと一緒に共同投資するかたちを選ぶため、事業が増えることによってフロー収入が増えていきます。
ただし、私の感覚では、25億円から30億円くらいのフロー収入を長くキープできればよいと思っています。この3年間でフロー収入は少し増えていますが、これは海外の事業がさらに伸びるというサインだと考えています。もう少し数字を見ていくとわかりますが、フロー収入よりもストック収入の伸びのほうが高いです。
IR Agents:まずはバランスシートを管理しながら開発も行いますが、そうでない分は売ることで規律を保った体質を作ろう、ということですね。
眞邉:おっしゃるとおりです。
IR Agents:しかし、売った後もO&Mなどで回していきますよね。O&Mについてあまりうかがっておらず恐縮ですが、中期発表が終わった段階で約1.3ギガワットとあります。中期経営計画によると、約2.3ギガワットまで伸ばすということでした。そもそもO&Mにおいて、他社と比べて預けてもらえる強みはどのようなところにあるのでしょうか? 土地を見つけることや、技術・金融に強みがあるように、O&Mにもポイントがありましたら教えてください。
眞邉:もともとO&Mは行っていましたが、第三者に対するサービスをスタートした理由には、バランスシートの問題があります。バランスシートを使わずに事業を拡大することもできますが、今まで私どもは、開発をして機関投資家に持っていただく部分で発電所や資金の管理をするという、アセットマネジメントを行っていました。
私どもが持つ技術・ノウハウはO&Mの他にも、AMやプロジェクトマネジメントなどいろいろあります。そのようなノウハウを第三者の方たちに対してサービスとして提供し、フィービジネスを行うということです。その第1弾がO&Mです。
IR Agents:すでにある発電所の運用保守を任せてもらい、手数料をいただくということですね。
眞邉:おっしゃるとおりです。ただし、昔からうまくいっていたわけではなく、この3年間くらいで一気に変わった印象です。例えば、FITが36円から40円の頃は、1メガワットに対する契約のコストは、1年間でおよそ200万円から250万円くらいでした。今もそれよりも高く契約している方はいますが、私どもは100万円からとしています。
IR Agents:安くしているのですか?
眞邉:安くしていますし、よい仕事をしています。
IR Agents:安くてよい仕事、ですか。
眞邉:そのとおりです。昔はとりあえず契約しなければ、プロジェクトファイナンスとして引けませんでした。そのため、日本を代表する企業と契約していたのですが、評価はあまりよくありませんでした。
メンテナンスフリーと言われていた時期もありましたが、今はきちんとした仕事をしなければなりません。したがって、私どもは100万円で契約して、競争力のある価格でよいサービスを提供します。また、私どもも儲けなければなりませんので、3割程度の収益を上げていくかたちです。
特に投資家からすれば、私どももコアビジネスは発電事業者です。地域には営業の方が多くいるため、例えば「壊れたら直すのをお手伝いしますよ」という感覚が非常に受け、私どものサービスが評価されたのだと思います。先月発表しましたが、実は契約が1.5ギガワットにまで増えました。
IR Agents:一気に500メガワットも増えたのですね。
眞邉:おっしゃるとおりです。1ギガワットの発表をしたのが13ヶ月前ですので、一気に伸びています。その理由として、私どもが行っている営業があります。つまり、競争力のある価格でよいサービスが提供できるということですが、これだけでは成功したことにはなりません。
成功の要素は全部で3つあるのですが、1つ目は価格の部分、2つ目は事業性を担保することです。3割程度の粗利を目指していますが、内製化やITを使うなどの自助努力によって、35パーセントから40パーセントまで増やしていく予定です。技術の部分もありますが、もし競争環境が厳しくて95万円で契約せざるを得なくなったとしても、事業を拡大することができます。
3つ目は採用と教育です。発電所を管理する電気主任者は国家ライセンスが必要ですが、老齢化と人材不足がエネルギー業界の問題になっています。そこで、民間の私どもが「RJアカデミー」という学校を作り、新卒の高校生や高専の学生を雇用して、10年間かけてどこに出しても恥ずかしくないエンジニアを育てます。また、既存の方たちに再教育するかたちでエンジニアのレベルも上げていきます。さらに、今までエンジニアがいなかった地域での雇用も生み出していきます。
RJアカデミー(電気主任技術者育成制度)で、技術力向上を目指す
眞邉:高専に行った時に、校長先生から「ぜひ中学校に行ってプレゼンテーションしてきてください」と言われたことがあります。「〇〇高専の電気学科に行ったら、リニューアブル・ジャパンで雇ってくれますよ」「地域で両親と一緒に暮らしながら仕事に就けますよ」「それなりのレベルになると、いい給料をずっともらえますよ」と言っていた校長先生もいました。
そのため、このコンセプトは地域の組長にも非常に評判がよく、「新卒だけではなくUターン組も教育してもらいたい」と言われることもあります。発表した段階でもお伝えしたのですが、私どもは会社の内部だけではなく、外部の方々にも「RJアカデミー」での教育をサービスとして提供していきたいと考えています。
したがって、ポイントは3つです。営業で増やして事業性を担保し、利回りを上げていき、採用・教育します。この3つが揃わない限り、成功しないと思っています。私どもは現在2位ですが、次回は自主的にトップを狙っていきたいと考えています。
IR Agents:ここでも「地域」というワードが出てきて、やはりウエットなビジネスだと感じました。
眞邉:もちろんです。
バフェット・コード:地方自治体に大変刺さっているということですね。
IR Agents:なぜ、価格を安くしても儲かるのですか?
眞邉:それは内製化です。外部に対して払っていたコストを自分たちで賄っています。簡単に言えば、草刈りです。
IR Agents:けっこう草が生えているイメージがありますよね。
眞邉:そのとおりです。それを第三者に頼むのではなく、自分たちで行います。また、発電所が完成した時点での点検や年次点検も自分たちで行います。これも外部にサービスを提供していこうと考えていますが、まずは内製化して外部のコストを抑えることによって、全体的な部分で収益力を確保するかたちです。
IR Agents:しかし、内製化には「事業性を高めていく」という部分が必要だというお話がありました。内製化するためには、採用して育成することも大事になってきますよね。
眞邉:おっしゃるとおりです。
IR Agents:採用・育成は、御社以外ではどのような方が行っているのでしょうか? 高専などで育ってきた方をそのまま採用するということですか?
眞邉:新卒のエンジニアを採用する会社はゼロとは言いませんが、なかなかないと思います。採用しても、昭和のおじさんたちに厳しくされていなくなったら困るため、教育システムをきちんと作らなければならないからです。
「RJアカデミー」は実地で行われています。埼玉県で施設を借りて、実際に機械を触って勉強しています。座学もありますが、家に帰って週末に「YouTube」を見るなどして勉強できる時代です。したがって、そのようなものもどんどん活用してほしいと思っています。
IR Agents:時代に合わせて変わっていくものですよね。「単価」「事業性」「採用・育成」という3つのポイントを踏まえた結果、O&Мの受託容量も上がっています。これはやはり競争力があるポイントですし、しっかり伸ばしていけると思います。
「中計期間中に1.3ギガワットから2.3ギガワットに上げます」とお話しされていましたが、第1四半期で1.5ギガワットというのは、なかなかよい進捗ではないでしょうか?
眞邉:おっしゃるとおりです。今年の目標は340メガワットですが、第1四半期で210メガワットですので、この勢いで進めば第2四半期で予算を達成するかもしれません。
IR Agents:力強いですね。国内のFITについては、買い取ってポートフォリオを作り、バランスシートを保っていきます。また、O&Mは売ったものも受託も含めてどんどん引き受けていきます、ということでした。Non-FITや海外についてもお聞きしたいのですが、資料ではスペインで行われているということでした。そもそも海外の太陽光発電は儲かるのでしょうか? ぜひ、そのあたりのお話からうかがいたいと思います。
眞邉:私どもが事業を行う時に大切にしているのは、「売れないものはやらない」ということです。つまり、金融商品として作り上げた時に、事業性や仕組み、技術が機関投資家に売れないものは開発も投資もしません。これが大原則であり、海外でも同じだと考えています。
また、どの地域をどのように選んでいくかについては、たまたまご縁があり、コロナ禍で資金繰りに詰まったデベロッパーの方が弊社に来て、「一緒に事業をやりたい」と言ってくれました。そのポートフォリオの1つにスペインがありました。
コロナ禍で飛行機が飛べない時期だったため、第三者レポートを出しているスペインの会社に連絡して、具体的な案件を東京支社からスペイン本社に連絡し、デューデリジェンスしてもらいました。
実際にその会社の方やディベロッパーの方とはご一緒しませんでしたが、いろいろ調べてみた結果、「これはおもしろそうだ」ということでスタートしました。
実は現在のスペインのヘッドは私の友人で、以前は競合他社のヘッドを務めていました。ちなみに彼もトライアスロンをしており、今年「アイアンマン・バルセロナ」に一緒に参加するのですが、彼が「リニューアブル・ジャパンがスペインで事業をスタートするなら、ぜひ私を雇ってほしい」と言ってくれました。
「日本語が話せて、日本でも開発を行っていて、マネジメントもできるし人も採用できる」という人たちが来てくれて、結果的には非常によいスタートが切れたと思っています。
チームを作って半年で2つの案件を買うことができ、現在は多くのパイプラインがあります。ただし、「バランスシートは増やさない」と決めているため、どのように取り扱おうか考えています。
2022年9月にスペインにて初の海外案件を取得。12月にも追加取得し今後も案件獲得を拡大
IR Agents:確かに、海外の案件を買うとバランスシートが膨らんでしまいますよね。
眞邉:おっしゃるとおりです。どちらかといえば、日本ではNon-FITが小型化しています。環境アセスメントで許認可があるため、30メガワットを超える発電所はそれほど多くありません。一方、スペインは私からすると平地しかありません。スペインは太陽の国であり、日射量が日本の約1.5倍あります。
IR Agents:日本と比べたら平らな土地ばかりですよね。
眞邉:そのとおりです。土地は日本の約1.3倍ですが、人口は3分の1です。車で移動していると、平らな土地しか見えません。また、雨はあまり降りませんし、天災も多くありません。日本には台風や地震がありますし、雨もたくさん降ります。
したがって、日本の場合、雨が降った時に水を貯めるための調整池を作らなければなりません。大きな発電所では、その費用が億単位になります。また、発電所を作る際にはさまざまな天災に備えて、余分なコストがかかります。
一方、スペインの発電量は日本の1.5倍で、調整池を作る必要もありません。天災も多くないため、余分なコストがかかりません。加えて、土地が広いため、発電量をアップさせるための工夫ができます。
IR Agents:先ほどのお話で、日本では土地を平らにして作っているということでした。
眞邉:そもそも造成がありません。トラッキングといって、パネルを太陽に合わせて動かします。
IR Agents:日当たりをよくするのですね。
眞邉:おっしゃるとおりです。1軸トラッキング、2軸トラッキングなどといいますが、1軸トラッキングで両面パネルで売電できるものは、おそらく世界水準で最高の技術だと思います。
日本に持って来ることもできますが、動かすにはパネルとパネルの距離を広げなければなりません。しかし、そのような土地は日本にありません。したがって、さまざまな部分でスペインのほうが事業性が高いということです。
日本とスペインの違い
IR Agents:それがけっこうおもしろいということですね。
眞邉:そのとおりです。また、スペインは金融も日本よりずっと進んでいます。これを日本の金融機関に言うと「え?」となりますが、残念ながら3年は進んでいます。
IR Agents:理解が早そうですよね。
眞邉:すでにこなれていると感じました。また、スペイン人は日本人と同様に英語があまり得意ではありません。タクシーに乗ると英語は通じませんし、地方に行くとレストランではスペイン語のメニューしか出てきません。
IR Agents:ヨーロッパは全員英語が話せるというわけではないのですか?
眞邉:都会でホテルに行けば話せます。
IR Agents:地方では話せないのですね。
眞邉:したがって、私はスペイン語でのネットワークを持つことが一番大切だと思います。
IR Agents:そのような意味では、よい方をスペインに送れたことは強みでしょうか?
眞邉:ご縁ですので、ラッキーでした。
IR Agents:ありがとうございます。わかりにくいところも整理ができたと思います。バランスシートを整える前提で、O&Mを増やしていきますし、海外も作っていきます。作った分はキープしていくので、売っていくとフロー収入が増え、O&Mや保守運用が増えていくため、ストック収入も増えるということですね。
眞邉:おっしゃるとおりです。
IR Agents:売上が増えていくところが見えて、非常にわかりやすかったです。一方で、コストはあまり増えないという予想です。現在は、固定費が多いイメージでしょうか?
眞邉:そのとおりです。まず発電所の管理をするため、人は増えます。1.5ギガワットを2ギガワットにするとなると人手が必要です。この部分は経営的にはバリアブルコストです。また、減価償却費等もあります。基本的に開発等の部分で人は増えると思いますが、どんどん増えていくかたちにはならないと思います。
IR Agents:売上・粗利の伸びと比べると固定費は伸びないということですね。しかし、今回の中期経営計画では、当期純利益は7.5億円、10億円、14億円となっています。トップラインと利益の伸びは徐々に利益に落ちてくるというのがこれからのフェーズだということですね。
眞邉:EBITDAが増えるとストック収入も増えますが、それに加えて含みも増えます。
IR Agents:資産として売った時のバリューもあるということですね。
眞邉:また、中期経営計画で示しているように、当期純利益の確度を7.5億円、10億円、14億円と上げていくのが私の仕事だと思っています。リターンの高いものが開発できると、リターンがそこそこのものは売却していきます。その時に、またキャピタルゲインが出てきます。その結果、当期利益が増えていけばよいと考えています。
IR Agents:今回の中計期間は、バランスシートを見て規律を保ちつつ、ポートフォリオのクオリティを高め、ストックも増やしていくことになりますが、この業界でどのようなプレイヤーになりたいのか、長期的なビジョンについても教えてください。
眞邉:私どもは、資金を常に循環していくことが必要だと考えています。また、私どもには一定のファンがいますので、その方たちに金融商品を提供していくことも、非常に大切なことだと思っています。
日本で培ったノウハウを活かし、海外でも循環モデルを活用
眞邉:一方で、IPPを中長期で見ると、太陽光で1ギガワット、風力で1ギガワット、海外で1ギガワットです。今はバランスシートを増やさないと決めていますが、どこかの段階では、そのような発電所を多く保有することも考えていきたいと思っています。
上場(2021年)来10年以内に目指す、RJが保有する設備容量
眞邉:また、日本もNon-FITは3年目になりますが、1年目はなかなか進みませんでした。昨年は少し進みましたが、まだまだだと感じています。
私どもは事業者として、日本の再生可能エネルギーを増やしていきます。先ほどお話しした役割の中で、金融をうまく活用しながら事業を伸ばしていくフロントランナーになり、日本のカーボンニュートラルに近づけたいと考えています。
IR Agents:Non-FITはいずれしなければなりませんが、変数も増えて見通しが難しくなってきています。その中で御社がファイナンスと技術の両面でフロントランナーとして切り開いていけたら、2030年、2050年に向けて広がっていくと思います。
眞邉:以前、海外の有名な雑誌の方がインタビューに来た時に、「さまざまな問題があるが、私はできると思うし、がんばらなければいけないと思う。あきらめないこと、そして信じること」とお話ししました。
また、最後にその方に「3年後に来た時に、まずあなたは何と言いますか?」と質問されました。英語でやり取りしていたのですが、私は「I told you.=ほら、言ったとおりなったでしょ?」と答えました。
IR Agents:かっこいいですね。
眞邉:「全部ではないかもしれないけれど、僕はそう思う」と言いました。
IR Agents:では、3年後に「言ったとおりでしょ?」と答えるということですね。
眞邉:私はそのように信じています。
IR Agents:あらためて3年後に「言ったとおりでしょ?」という動画が撮れたらおもしろいと思いました。
眞邉:私もそう思います。
IR Agents:ビジネスモデルからわかりにくいところまで、一通りお話ししました。また、中長期についても整理ができたと思います。話し足りないことや、眞邉さまから投資家に向けてメッセージなどがあれば、最後にお聞きできればと思います。
眞邉:私がよく言うのは「弊社が成長することは再生可能エネルギー、カーボンニュートラルに一歩近づくことだ」ということですが、今、本当に考えているのは株価です。これは私の勝手な意見ですが、当期利益50億円を作って時価総額1,000億円の会社にすることが、上場会社の市民権だと思っています。
現在、株価は低迷しているため、1,000億円がゴールだとは思っていませんが、それを1つの出口としながら、経営をデザインしていくことにフォーカスしていきたいと考えています。
IR Agents:さすが金融ご出身ということもあって、株主の方を見ていただいている意見を本当にありがとうございます。ぜひ今後もビジネスなど、いろいろ掘っていければと思います。
眞邉:今日はどうもありがとうございました。
バフェット・コード:ありがとうございました。今日は眞邉社長にお越しいただき、いろいろお話をうかがってきました。動画でお伝えできたと思っていますが、事業のすばらしさやビジネスモデルを非常にわかりやすくお話ししていただきました。金融やテクノロジーなど、外部から見るとわかりづらかったところも非常にわかりやすかったと思います。また、眞邉社長の人情味溢れる部分も多聞にお伝えできたと思っています。本日はどうもありがとうございました。