2023年3月31日、小倉内閣府特命担当大臣から「異次元の少子化対策」のたたき台が発表されました。
少子化が加速する中で、子育て世帯にどのような支援策が実施されるのか、大きな注目を集めています。
今回は「異次元の少子化対策」から注目したい支援策や、現状の課題について解説します。
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「異次元の少子化対策」たたき台で目玉となる2つの政策
「異次元の少子化対策」は、子育て世帯に対してさまざまな方面からの支援が検討されています。
その中で、特に注目したいポイントは「給食費の無償化」と「児童手当の拡充」の2つです。
家計のやり繰りにおいて、給食費や児童手当は重要な問題なので、それぞれの改正案や現状の課題について解説していきます。
1. 給食費の無償化
文部科学省が2023年1月27日に発表した「令和3年度学校給食実施状況等調査」によると、給食費の平均月額は小学校で4477円、中学校で5121円でした。
給食費の無償化の取り組みは、自治体でも取り入れられています。
東京都に限ると、2023年4月から新たに葛飾区、品川区、中央区、奥多摩町などで給食費が無償化されました。
もし給食費が無償化となると、小学校で約32万円、中学校で約18万円、あわせて約50万円の負担が軽減されます。
2018年7月27日に同省が公表した「平成28年度の学校給食費の徴収状況」によると、給食費が未納となっている割合は、小学校で「0.8%」中学校で「0.9%」でした。
「異次元の少子化対策」たたき台では、給食費が無償化されるタイミングや対象となるケースは発表されていません。
今後は、全国で無償化が継続してできるかがポイントになるでしょう。
2. 児童手当の拡充
次に注目すべき支援策は「児童手当の拡充」です。
児童手当は、中学校卒業までを対象にした給付制度です。
政府は、現行の児童手当から以下の3点を充実させる案を発表しました。
- 所得制限の撤廃
- 対象年齢の拡大
- 多子世帯への給付を増額
所得制限の撤廃とは、手当額が子ども1人5000円になる「所得制限限度額」や、手当が受けられなくなる「所得上限限度額」を廃止します。
次に拡充を検討しているポイントは「対象年齢の拡大」です。
現行制度の「中学校卒業まで」を「高校卒業後」まで延長をする方向で検討しています。
仮に、毎月1万円が高校卒業後まで延長されて給付されると、子ども1人あたり36万円が増額となる見通しです。
最後に「多子世帯への給付を増額」する案も、検討事項に盛り込まれました。
現行制度では、第3子以降の児童手当は中学生になるまで1万5000円が支払われます。
拡充案では、第3子以降の子を持つ多子世帯に給付額を増やす方向で検討していくと明記されました。
とはいえ、給食費の無償化や児童手当の拡充は正式に決まっていません。
現状、浮き彫りになっている課題について確認しましょう。
「異次元の少子化対策」で浮き彫りになっている課題
今回のたたき台における、最大の課題は「財源」です。
給食費の無償化や、児童手当の拡充は、長い間継続的に実施できるだけの財源が必要になります。
社会保険料で賄うという意見も見られますが、他の税負担も重くなる可能性もゼロではありません。
今後の動向に注目が集まります。
6月までに予算や財源を決定する見通し
2023年5月17日に開催された「こども未来戦略会議」で、岸田首相は6月の骨太方針の決定までに予算や財源を取りまとめるように指示しました。
財源についての報道が過熱していますが、5月24日の内閣官房長官記者会見においても、各種報道については承知しており、内容や財源について検討中であると答えるにとどまっています。
また5月25日のこども未来戦略会議においても、財源の確保が議論されています。
それぞれの政策にかかわる財源のあり方は、次回の会議で集中的に議論を進める見通しです。
少子化の解消につながる支援策に期待
子育て世帯が注目する支援策「給食費の無償化」「児童手当の拡充」を解説しました。
新たな支援策を実施しても、少子化の解消につながるのかが焦点となります。
2023年6月の「骨太の方針」で、財源の大枠が決まる方向です。
今後の制度設計がどのように決まるのか、引き続き注目していきましょう。
※本記事は2023年5月時点の最新公開データをもとに執筆されたものです。
参考資料
- 文部科学省「令和3年度学校給食実施状況等調査」
- 文部科学省「平成28年度の学校給食費の徴収状況」
- 内閣府「児童手当制度のご案内」
- 内閣府「こども未来戦略会議」
- 首相官邸「令和5年5月24日(水)午前」
川辺 拓也