2023年3月31日に少子化対策のたたき台の一つとして児童手当の拡充案が公表され、注目が集まっています。6月の「経済財政運営と改革の基本方針 2023」(「骨太の方針 2023」)に向けて、具体的に検討される予定です。

児童手当の拡充案の一つに、現行では中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の支給期間を、高校卒業までに延長するという案があります。

では、児童手当が高校生まで支給になると支給額は総額でどれくらいになるのでしょうか。

児童手当の拡充案を確認しながら、教育費などがかさむ子育て世帯はどれくらい貯蓄があるかも確認してきます。

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児童手当の拡充案3つ。支給期間延長や所得制限の撤廃など

まずは今年の3月に公表されたこども政策担当大臣「こども・子育て政策の強化について(試案)」から、児童手当の拡充案を確認しましょう。

出所:こども政策担当大臣「こども・子育て政策の強化について(試案)」

具体的な施策の決定はまだですが、児童手当の「所得制限の撤廃」や「支給金額の増額」、「支給期間を高校卒業までに延長」の3つが検討されています。

では、実際に高校生まで支給になった場合を想定して、具体的に見てみましょう。

【児童手当】高校生に支給となれば総額いくらになるか

先程の拡充案から、たとえば支給期間が現在の中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)から、高校卒業まで延長となった場合は総額でいくらの児童手当を受け取ることができるのでしょうか。

内閣府「児童手当のご案内」によると、現在の児童手当の支給額は以下のとおりです。

出所:内閣府「児童手当のご案内」

児童手当の支給額

児童の年齢           児童手当の額(一人当たり月額)

  • 3歳未満           一律1万5000円
  • 3歳以上小学校修了前     1万円(第3子以降は1万5000円)
  • 中学生            一律1万円

たとえば高校生の支給額が一律で月1万円とした場合、最大支給額は234万円(1万5000円×36カ月+1万円×108カ月+1万円×36カ月+1万円×36カ月)です。

現在の児童手当は最大支給額が198万円のため、36万円支給額が増えることになります。ただし、実際には生まれ月により異なりますので、注意しましょう。

また、現状の児童手当には先程の拡充案にあった通り、所得制限があります。

現状の所得制限は以下の通り。

出所:内閣府「児童手当のご案内」

たとえば、夫婦どちらかが年収960万円以上※になると、所得制限の対象となるため「特例給付」となり月額一律5000円となります(※児童2人+年収103万円以下の配偶者の場合)。また、目安年収1200万円以上で、児童手当を受け取れなくなりました。

児童手当の所得制限は、世帯年収でなく年収であること、またそもそも所得制限があることなどが疑問視されていました。

所得制限が撤廃されれば、今まで児童手当をもらえなかった世帯も児童手当を受け取ることができるようになります。

子育て世帯の貯蓄額はいくらか

最後に子育て世帯の貯蓄額を確認しましょう。

厚生労働省が公表する「2021年 国民生活基礎調査の概況」によると、子育て世帯の平均雇用者所得(給与など)は695万1000円です。

出所:厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」

子育て世帯以外も含む「高齢者世帯以外の世帯」の平均雇用者所得は539万円なので、子育て世帯の年収水準は高いことがわかります。これには共働きが増えているなどの理由が考えられるでしょう。

では、貯蓄はどれくらいあるのでしょうか。

厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、子育て世帯の平均貯蓄額は723万8000円です。

出所:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」

一方で、子育て世帯以外も含む「高齢者世帯以外の世帯」の平均貯蓄額は1017万6000円となっています。

共働きが増えていても、お子さんが小さいうちは夫婦どちらかが働き方をセーブして家事育児を担うご家庭も多いでしょう。

子育て世帯は教育費や養育費などがかかるだけでなく、住宅ローンを払いながら、老後資金に備える「人生三大支出」を抱えるご家庭も多いですが、一方で育児にかける時間がありますから、なかなか働く時間を増やせないというご家庭もあるものです。

児童手当拡充の動向の確認を

現時点では、児童手当の具体的な拡充内容は決まっていません。

子ども政策担当大臣「こども・子育て政策の強化について(試案)」によれば、「骨太の方針2023」までに具体的な改善内容を決めるとのことです。

子育て世帯や、将来子どもを持つかもしれない世帯は、今後の動きに注目しましょう。

参考資料

苛原 寛