都市の持つ成長可能性を数値を用いて可視化

地方都市の人口減少が急速に進んでいます。政府も地方創生に向けた取り組みを進めていますが、むしろ、進学先や就職先を求めて、東京一極集中の流れが強くなっているようにも思います。

地方から東京に来る人の中には「地方では将来像が描けない」と語る人もいます。それに対して、地方にも成長のポテンシャルが高い都市が多数あるという、興味深い調査の結果が発表されました。野村総合研究所(NRI)が7月5日に発表した「成長可能性都市ランキング」です。

同調査は、都市圏の人口規模などを考慮して選定した国内100都市を対象に、今後の成長性を左右する「産業創発力」の現状や将来のポテンシャルを分析したものとのこと。

都市の産業創発力を、「多様性を受け入れる風土」、「創業・イノベーションを促す取り組み」、「多様な産業が根付く基盤」、「人材の充実・多様性」、「都市の暮らしやすさ」「都市の魅力」という6つの視点から、131の指標を用いて総合的に分析しています。

こうした、都市の持つ成長可能性を数値を用いて可視化したことに大きな意義があると言えるでしょう。調査資料では、「統計データだけでなく、各都市の住民を対象とするウェブアンケートを実施し、情緒的な要素(他者への寛容度等)を指標化」したとされています(詳しくはこちら)。

総合トップは東京。福岡、京都が続く

「成長可能性都市ランキング」の結果から言えば、「総合ランキング(実績および将来のポテンシャルを含めた総合的な産業創発力)」のトップは東京23区、2位は福岡市、3位は京都市でした。「なんだ、1位はやっぱり東京じゃないか」と思うかもしれませんが、2位、3位が、大阪、名古屋の三大都市圏ではないことに特徴があります。

さらに注目すべきは、「ポテンシャルランキング」です。調査では「ローカルハブになるポテンシャルを有した“成長可能性都市”」と定義しています。つまり、これまでの実績だけでなく、今後の“伸びしろ”が大きい都市というわけです。

「ポテンシャルランキング」の1位は福岡市、2位は鹿児島市、3位はつくば市(茨城県)でした。

調査では、福岡市が1位にランキングされた理由として、「多様性に対する許容度が高く、自由で起業家精神にあふれている都市」、「空港、港湾、新幹線駅へのアクセスが良好でビジネス環境が整っている」、一方で「環境はあるものの大企業や外資系企業の立地が少ない」ことが伸びしろが大きい理由だとしています。

アジアに近い立地を生かした国際的な産業形成が期待できる点も評価されているようです。

意外なあの都市が、ランキング上位に入る

「成長可能性都市ランキング」では、人々が志向する多様なライフスタイルに対応するランキングも作成しています。

その内容は6つ。「移住者にやさしく適度に自然がある環境で働く」、「リタイア世代が余生を楽しみながら仕事ができる」、「子育てしながら働ける環境がある」、「起業スピリッツがあり、スモールビジネスにも適している」です。

「リタイア世代が余生を楽しみながら仕事ができる」ランキング1位は鹿児島市でした。

「子育てしながら働ける環境がある」ランキング1位は松本市(長野県)です。

「起業スピリッツがあり、スモールビジネスにも適している」ランキング1位は東京23区ですが、2位にはつくば市(茨城県)が入っています。

「ライフサイクルランキング」には、意外な、というと失礼ですが、政令指定都市ではない中規模の都市がいくつもランクインしています。たとえば「リタイア世代が余生を楽しみながら仕事ができる」ランキング3位は松山市(愛媛県)、7位は前橋市(群馬県)です。前橋市は「子育てしながら働ける環境がある」ランキングの2位にも入っています。

一方で、今回算出した12のランキングで目立ったのが九州の都市の強さです。特に福岡市は全てのランキングで10位以内に入っていることが注目されます。

下原 一晃