日本は超高齢社会といわれます。総人口に占める65歳以上人口の比率(=高齢化率)が2015年に26%を超え、世界に類を見ない水準に達していますが、この比率が今後も上昇を続け50年後の2065年には40%直前にまで高まると推計されています。

そう、2060年代には総人口の5人に2人が65歳以上という時代になるわけです。今回は、その時代にはどんなことが起きるのか整理してみます。

高齢者増ではなく少子化の影響

我々は高齢化率40%の時代を2つの視点で理解しておくべきだと思います。

1点目は、高齢者が増え続けるわけではないという点です。

国立社会保障・人口問題研究所の人口推計(2017年4月発表)では、65歳以上人口はせいぜい2020年くらいまで増え続けますが、その後は横ばいか、さらに先には減少に転じるとしています。

それにもかかわらず高齢化率が上昇を続けるのは、現役世代が大幅に減少することによる総人口の減少が影響しています。20-64歳の人口は2015年の7100万人から2065年には4200万人を下回り、これからの50年間にこの働く世代が3000万人という大きな規模で減少します。そのため、総人口は2060年代には9000万人を割り込むと見られています。

これまでの高齢化率の上昇は高齢者の増加が主因だったのですが、これからは現役世代の減少によってもたらされる総人口の減少からくる高齢化率の上昇なのです。少子化の影響が表面に出てくる時代といえます。

2点目は、これがこのコラムを読んでいただいている皆さんの、そして私の問題だということです。

2065年と考えるとずいぶん先の話のように思えますが、2040年にはもう3人に1人が65歳以上の時代になります。その時には現在の40代は高齢者の仲間入りをしていますし、50代は70代、60代は80代となっています。

現役世代の減少からくる高齢化率の上昇の時代にもたらされる影響を大きく受けるのが、まさしく今の現役世代だということです。

生活コストの断層的な増加

超高齢社会だから「公的年金は安心できない」と考えている人は多いと思います。しかし、公的年金制度そのものがダメになると心配することはないと思います。ただ、受け取れる年金で生活が十分カバーできるかと聞かれると、これはかなり心配です。

しかも支出面では厳しさが一段と増します。健康保険制度などは加入者と受給者のバランスが大きく崩れることになりますから、高齢者の負担増は避けられないでしょう。そのほかの高齢者向けサービスは、高水準の高齢者と大幅減少する現役世代によってもたらされる、高水準の需要持続と供給力の大幅低下から相対的な価格上昇圧力が強まるはずです。

今は想定できないものの、20年後、30年後に社会構造が変わり、なくてはならないサービスが登場し、そのコストは思いがけないものとなるかもしれません。昔、団地になかったエレベータは今や高層住宅には不可欠です。郊外の大型店の登場で近所のお店がなくなり、高齢者の買い物が不便で割高になりました。こうした変化が今後も断層的に起きる可能性があります。

現在の現役世代の不満の一つは「高齢者の生活を支えるための負担増」だといわれていますが、我々が高齢者になるときには現役世代はその負担に耐え切れなくなっているかもしれません。だからこそ、我々は自分のための準備を今の退職者世代以上に考える必要があるのです。

日本の将来人口推計(単位:千人、%)

出所:国立社会保障・人口問題研究所データをもとにフィデリティ退職・投資教育研究所作成

注:総人口,年齢3区分(0~19歳、20~64歳、65歳以上)。年齢構造係数:出生中位(死亡中位)推計。各年10月1日現在人口。平成27(2015)年は,総務省統計局『平成27年国勢調査による基準人口』(国籍・年齢「不詳人口」を按分補正した人口)による。

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史