「年金だけでは足りない」というシニア世代の声を多く聞きますが、その受給額事情を詳しく知る現役世代は決して多くはないかもしれません。
老後の収入の柱となる大切な公的年金。現役世代に一生懸命仕事を頑張ってきたら、老後は悠々自適に過ごしたいと考える人が大半でしょう。
今回はいまのシニア世代がどのくらいの公的年金をもらっているのかを1歳刻みで確認していきたいと思います。
【注目記事】【老齢年金の一覧表】厚生年金・国民年金「60歳~80歳代」平均的な年金月額はいくら?
1. 日本の公的年金は「2階建て構造」
日本の公的年金制度は、「国民年金」と「厚生年金」の2つの年金制度から成り立っており、「2階建て構造」とも呼ばれています。
国民年金、厚生年金それぞれ加入対象や違いについては、つぎで確認していきましょう。
1.1 国民年金(1階部分)
- 加入対象:原則、日本に住む20歳から60歳未満の方
- 保険料:一律(年度ごとに見直しが行われます)
- 年金額:満額79万5000円(※)✕調整率(未納期間がある場合は差し引かれます)
※2023年度の年額
1.2 厚生年金(2階部分)
- 加入対象:主に会社員、公務員など
- 保険料:報酬比例制(毎月の報酬により決定)
- 年金額:加入期間や納付保険料によって決まります(国民年金に上乗せで支給)
国民年金は加入対象が広く、保険料も一律のため受給額に大きな差は出にくいという特徴があります。
しかし、厚生年金は現役世代の収入や加入期間によって受給額に個人差が出ます。また、男女差も生じやすいです。
2. 【老齢年金】年金額と物価上昇率の関係
一般的に公的年金の受給額は、現役世代の賃金や物価上昇率を考慮して年度ごとに見直しが行われます。2023年度の公的年金は、3年ぶりに引き上げとなりました。
とはいえ、日々の生活で物価上昇を感じる近年、十分な引き上げ額だと感じる方は多くないでしょう。
2.1 2023年度:国民年金と厚生年金の年金額例
新規裁定者(67歳以下の人)
- 国民年金(老齢基礎年金の満額):6万6250円
- 厚生年金(会社員の夫と専業主婦のモデル夫婦):22万4482円※夫婦2人分の国民年金を含む
国民年金は、国民年金保険料を40年間の全期間納付した場合に満額受け取ることができます。未納期間がある場合は月数に応じて満額から差し引かれます。
また、上記の厚生年金のモデル夫婦が受け取る年金額は「平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で、40年間就業した場合の、老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の受給額です。
実際の受給額は年金加入状況などにより個人差がでるため、あくまでも参考としておさえておきましょう。
つぎでは、60歳~90歳以上の各年齢の公的年金平均額を確認します。
3. 【老齢年金】みんなの平均ひと月いくら?「国民年金」年齢別・1歳刻みの受給額
では、厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、60歳から90歳以上までの公的年金の平均受給額を確認していきましょう。まずは国民年金の受給額からみていきます。
3.1 国民年金【年齢別】平均年金月額
【国民年金・60歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 60歳:3万8945円
- 61歳:4万150円
- 62歳:4万1904円
- 63歳:4万3316円
- 64歳:4万3842円
- 65歳:5万8078円
- 66歳:5万8016円
- 67歳:5万7810円
- 68歳:5万7629円
- 69歳:5万7308円
【国民年金・70歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 70歳:5万7405円
- 71歳:5万7276円
- 72歳:5万7131円
- 73歳:5万7040円
- 74歳:5万6846円
- 75歳:5万6643円
- 76歳:5万6204円
- 77歳:5万6169円
- 78歳:5万5844円
- 79歳:5万5609円
【国民年金・80歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 80歳:5万5483円
- 81歳:5万7204円
- 82歳:5万6981円
- 83歳:5万6815円
- 84歳:5万6828円
- 85歳:5万6404円
- 86歳:5万6258円
- 87歳:5万5994円
- 88歳:5万5560円
- 89歳:5万5043円
【国民年金・90歳以上】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 90歳以上:5万1382円
65歳以降の平均受給額はほぼ5万円台と、年齢間での差があまりありませんが、65歳以前の平均月額は65歳以降の平均月額と比べて少なくなっています。これは「繰上げ受給」を選択した人の年金額となっているからです。
「繰上げ受給」は年金の受給開始年齢を60歳から64歳の間に前倒しして受け取る代わりに、繰り上げた月数に応じて年金が減額される制度です。
近年では働き方の変化などにより「繰下げ受給」も注目されています。老齢基礎(厚生)年金は、65歳で受け取らずに66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取る制度です。
4. 【老齢年金】みんなの平均ひと月いくら?「厚生年金」年齢別・1歳刻みの受給額
次は、厚生年金の平均受給額も1歳刻みでみていきましょう。
4.1 厚生年金【年齢別】平均年金月額
厚生年金には国民年金(基礎年金)の受給額を含むため注意が必要です。
【厚生年金・60歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 60歳:8万7233円
- 61歳:9万4433円
- 62歳:6万1133円
- 63歳:7万8660円
- 64歳:7万9829円
- 65歳:14万5372円
- 66歳:14万6610円
- 67歳:14万4389円
- 68歳:14万2041円
- 69歳:14万628円
【厚生年金・70歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 70歳:14万1026円
- 71歳:14万3259円
- 72歳:14万6259円
- 73歳:14万5733円
- 74歳:14万5304円
- 75歳:14万5127円
- 76歳:14万7225円
- 77歳:14万7881円
- 78歳:14万9623円
- 79歳:15万1874円
【厚生年金・80歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 80歳:15万4133円
- 81歳:15万6744円
- 82歳:15万8214円
- 83歳:15万9904円
- 84歳:16万349円
- 85歳:16万1095円
- 86歳:16万2007円
- 87歳:16万1989円
- 88歳:16万952円
- 89歳:16万1633円
【厚生年金・90歳以上】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 90歳以上:16万460円
国民年金と同様に、厚生年金も65歳未満の受給額が65歳以降に比べて低いことがわかります。
これは、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引上げにより、主に定額部分のない、報酬比例部分のみを受け取る人の年金額が反映されていることが一因として考えられます。
5. 人生100年時代「長生きリスク」に負けないお金の準備を!
今回は、いまのシニア世代が受け取っている公的年金についてくわしく確認しました。人口の減少により年金を支える世代が少なくなりつつあるなか、いまのはたらく世代がもらえる将来の年金受給額は、同じ水準とは考えにくいでしょう。
とはいえ、公的年金が老後生活の柱となることに変わりはありません。プラスアルファでいまからできる準備をしっかりと行うことが重要といえます。
将来どのくらいの公的年金が受け取れるかは「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で確認できます。
将来のライフステージを考えて、少しずつでも豊かな老後の対策を始めていけたら良いですね。
5.1 【ご参考】公的年金にまつわるデータまとめ
参考資料
田中 友梨