公務員はもともと共済年金に加入していましたが、2015年(平成27年)10月に、厚生年金に一元化されました。

そのきっかけは「共済年金が厚生年金より優遇されている」という指摘があったためです。

そのため、共済年金は「官民格差を解消するため」という目的で、厚生年金に一元化されることになったのです。

しかし、共済年金が厚生年金に一元化されたとはいえ、それ以前の2015年9月まで共済年金に加入していた公務員の人々の場合であれば、共済年金に加入していた期間に応じた職域加算分は支給されます。

そうなると、実際の「職域加算分って、いくら支給されるの?」と思うかもしれませんね。

今回は、かつてあった公務員の共済年金の制度と、職域加算がいくら支給されるのかを解説します。

【注目記事】厚生年金だけで「ひと月平均20万円以上の年金収入」という羨ましい人は男女で何割か

1. 公務員の年金「職域加算額」目安は報酬比例額の「約2割増し」

公的年金制度は、すべての国民が加入する基礎年金制度(国民年金)に、会社員や公務員とその配偶者が加入する被用者年金が上乗せされた2階建てとなっています。

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成

被用者年金とは会社員が加入する厚生年金のことですが、かつては公務員が加入する共済年金があり、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私立学校教職員共済が含まれていました。

被用者年金制度(共済年金や厚生年金)は、1階部分は全国民が共通の基礎年金制度(国民年金)、2階部分は加入者の報酬に基づいて算定される報酬比例という2階建てです。

さらに共済年金については、「職域加算額」が上乗せされていたため3階建てになっていました。

なお、民間企業においても、企業ごとで加入する確定給付企業年金等があれば3階部分の年金が支給されています。

しかし、2015(平成27)年10月1日に、厚生年金と共済年金という2つの被用者年金が厚生年金に一元化され、新たに「年金払い退職給付」が創設されました。

まずは、厚生年金が一元化された2つの理由を説明し、その後、「年金払い退職給付」について解説します。

2. 厚生年金と共済年金(被用者年金)が統一された理由

  1. 今後の少子・高齢化の進展に備え、一元化で年金財政を安定させる
  2. 会社員と公務員が、同じ保険料※を負担することにより、年金制度の公平性を確保する

※:保険料率の上限は「18.3%」です。

被用者年金が統一されることで、共済年金は2015年10月で廃止となりました。

しかし共済年金には、それ以前に共済年金を受給されている人(または受給権を有している方)、または、2015年9月まで共済年金に加入していた人で、10月以後に年金の受給権を取得する予定の人々がいました。

その方々の「共済年金に加入していた期間」についての取り扱いは、次のとおりです。

2.1 2015年(平成27年)9月までに退職していた場合

2015年9月までと同じ取り扱いとなり「職域加算額」の支給が継続します。また、「障害共済年金」や「遺族共済年金」を受給されている方も、年齢に関係なくその権利がなくなるまで同様に支給されます。

2.2 2015年(平成27年)10月以降に退職する場合

2015年9月までの加入期間分の「経過的職域加算額」と、2015年10月以降の加入期間分の「年金払い退職給付」が支給されます。

職域加算額は次の計算式で求めます(従前保障額の場合)。

《2003(平成15)年3月まで》

  • 月給の平均額×1.5/1000×平成15年3月以前の月数

《2003(平成15)年4月以降》

  • 〔(月給+賞与)÷12〕×1.154/1000×平成15年4月以後の月数

これより、職域加算額の目安は、通常の老齢厚生年金(報酬比例)の2割増しと捉えるとよいでしょう。

ただし、共済年金に加入していた期間が20年に満たない場合は乗率を1/2として計算します。

出所:国家公務員共済組合連合会「平成27年10月から共済年金は厚生年金に統一されます」※画像では「現在の」とありますが、改正前の制度を表しています

次は、2015年10月以降から新たに始まった「年金払い退職給付」制度の概要を紹介します。

3. 被用者年金制度の一元化後に創設された「年金払い退職給付」とは

新たに創設された「年金払い退職給付」は、民間企業でいうところの企業年金制度のような位置づけの制度です。

企業年金制度は、民間企業の全てが導入しているわけではありませんが、企業独自の年金を会社と社員が半分ずつ負担して、公的年金に上乗せする仕組みです。

そのため、公務員は、厚生年金保険とは別に年金払い退職給付分の保険料(労使あわせて1.5%。従来の保険料率に加算される)を負担することになりました。

出所:国家公務員共済組合連合会「平成27年10月から共済年金は厚生年金に統一されます」

年金払い退職給付は、原則、65歳から支給開始されますが、60歳~ 70歳の間で選択することもできます。

実際に年金払い退職給付をもらうときは、半分が終身年金、残り半分が有期年金(10年または20年のいずれかを選択)となります。さらに、有期年金部分は、一時金としてもらうことも可能です。

もし本人が亡くなった場合は、終身年金部分は終了となりますが、有期年金の残余部分は遺族に一時金として支給されます。

出所:国家公務員共済組合連合会「平成27年10月から共済年金は厚生年金に統一されます」

4. 公務員の年金のまとめ

共済年金の時代にあった職域加算額は、被用者年金制度の一元化により廃止されました。

2015年10月以降に公務員になった人には、職域加算額は支給されません。

もし、民間の会社員と同じ報酬で同じ加入期間であれば、1階・2階の年金は、同じになります。

参考資料

舟本 美子