時代とともに変化する新・三種の神器
最近、家電の分野で「新・三種の神器」という言葉を目にすることがあります。
そもそも「三種の神器」とは、皇位のしるしとして歴代天皇が継承してきた三種の宝物、すなわち「八咫鏡(やたのかがみ)」、「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」、「八坂瓊曲玉(やさかにのまがたま)」のことを言います。
その三種の神器という言葉が耐久消費財の世界で最初に使われたのは、1950年代中盤のことでした。朝鮮戦争後の神武景気と呼ばれた好景気の頃です。当時の三種の神器は冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビ。これらは“あこがれの製品”として急速に家庭に普及していきました。
1960年代になると、カラーテレビ、クーラー、自動車(カー)が新たな三種の神器として注目を集めることになります。これら3つの頭文字はいずれも「C」であることから「3C」とも呼ばれていました。
それから長い間、新しい三種の神器は生まれませんでしたが、2000年代になるとデジカメ、薄型テレビ、DVDレコーダーが新・三種の神器、あるいは、デジタル三種の神器として注目されました。
しかし、スマホやクラウド化の進展、さらにアジア企業との競争激化などにより、2010年代になるとこれらの製品の存在感はほとんどなくなってしまいました。
このように新・三種の神器は、時代ともに顔ぶれが変化してきたことがわかります。
最新の新・三種の神器は本当に普及しているのか?
では、最新の三種の神器とはどのようなものでしょうか。一般的にはロボット掃除機、全自動洗濯乾燥機、食器洗い機の3つを指すことが多いようです。
いずれも、AI(人工知能)などのテクノロジーを活用することで家事にかかる時間を減らすことに寄与するため「時短家電」とも言われます。
とはいえ、あまりピンとこないとお感じの方も多いのではないでしょうか。
実際、総合マーケティング支援を行なうネオマーケティングが共働きの男女2万8,123人を対象に実施した調査結果によると、現在使用していると回答したのは、「乾燥機付き洗濯機」が43.5%、「食洗機」が29.4%で、「ロボット掃除機」では8.5%に留まっています。
そのため、最近、新・三種の神器という言葉を聞くことが増えたのは、メーカーや家電量販店サイドの売れてほしいという期待の表れ、あるいは積極的に宣伝を行っているからなのかもしれません。
”常に寄り添う家電”を目指すパナソニック
とはいえ、メーカーサイドが消費者のライフスタイルの変化に合わせた製品開発に注力していることも忘れるべきではありません。
そのことを強く感じさせるのは、パナソニック(6752)が8月25日から公開している2分間のCM「MONO・GATARI(もの・がたり)篇」です。
出演しているのは綾瀬はるかさん、西島秀俊さん、遠藤憲一さん、奥貫薫さん、水原希子さん、駒井蓮さんといった豪華キャストですが、よく見ると、同社の創業者である松下幸之助氏や現社長の津賀一宏氏の姿も見られます。
このCMでは、来年100周年を迎える同社のこれまでの製品を振り返るとともに最新の製品も紹介されており、そこには新・三種の神器も含まれています。
また、これを見終えると、「Creative!」をコンセプトにした「毎日をちょっとクリエイティブにする家電で、これからの暮らしに、もっとゆとりを、おいしさを、健康を、心おどる体験を。次の100年をつくるために、私たちの挑戦は続きます」というメッセージに込められた思いも伝わってきます。
時短家電は社会のニーズにマッチしている
ちなみに、パナソニックは「新・三種の神器」という言葉は使ってはいませんが、家電については共働き世帯をメインターゲットに据えた新製品の開発を強化しています。
その背景は言うまでもなく日本の社会構造の変化です。
1980年に1,114万世帯あった専業主婦世帯は2016年には664万世帯にほぼ半減した一方、同じ期間に共働き世帯は614万世帯から1,129万世帯にほぼ倍増しています(注:内閣府男女共同参画局「男女参画白書平成28年版」、総務省統計局「労働力調査」)。
よって、今求められる家電は、忙しい共働き世帯における家事の「時短」に貢献するロボット掃除機、全自動洗濯乾燥機、食器洗い機製品ということになるわけです。また、冷蔵庫であれば、食料品のまとめ買いが可能となる600リットル台の使いやすい大型冷蔵庫ということになります。
モノがあふれる世の中でも、時代のニーズに合っていれば、まだまだ家電製品も需要を掘り起こせるということでもあります。こうしたことを念頭に、今後もパナソニックなど家電メーカーの取り組みに期待していきたいと思います。
LIMO編集部