2023年(令和5年)度の公的年金額は、3年ぶりのプラス改定に。6月に支給される「4・5月分」の年金額から、改定後の支給額となります。
前年度からの増え幅を見ると、67歳以下で2.2%、68歳以上で1.9%です。確かに支給額は増えましたが、昨今の物価上昇には追いついていないというのが現状でしょう。
今回は、働き盛りの現役世代が気になる、今のシニア世代の年金事情について見ていきます。60歳~90歳以上の各年齢の平均月額を、国民年金と厚生年金に分けて整理していきましょう。
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1. 年金制度のおさらい
日本の公的年金制度は、「国民皆年金」となっています。
20歳以上の全ての人が加入する「国民年金」と、会社員や公務員などが上乗せ加入する「厚生年金」によって成り立っている、いわゆる「2階建て」と呼ばれる構造です。
国民年金のみに加入している人(自営業者などの第1号被保険者)は、年金保険料を自分で納付します。
厚生年金や共済年金に加入している人(会社員や公務員などの第2号被保険者)は、毎月の保険料を会社と折半で負担し、保険料は給与からの天引きで納めるしくみです。
第2号被保険者に扶養されている配偶者は「第3号被保険者」に区分され、個人としては保険料を負担する必要はありません。
このように、公的年金制度は、基本的に日本国内に住む20歳から60歳の全ての人が保険料を納め、その保険料を高齢者などへ年金として給付する仕組みとなっています。
1.1 国民年金・厚生年金「年金保険料&男女の平均月額」を知る
2. 【国民年金】60歳~90歳以上「みんなの受給額」を1歳刻みで確認!
ここからは厚生労働省が公表する「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を参考に、公的年金の月額平均を1歳刻みで確認していきます。まずは国民年金から。
2.1 国民年金【年齢別】平均年金月額
【国民年金・60歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 60歳:3万8945円
- 61歳:4万150円
- 62歳:4万1904円
- 63歳:4万3316円
- 64歳:4万3842円
- 65歳:5万8078円
- 66歳:5万8016円
- 67歳:5万7810円
- 68歳:5万7629円
- 69歳:5万7308円
【国民年金・70歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 70歳:5万7405円
- 71歳:5万7276円
- 72歳:5万7131円
- 73歳:5万7040円
- 74歳:5万6846円
- 75歳:5万6643円
- 76歳:5万6204円
- 77歳:5万6169円
- 78歳:5万5844円
- 79歳:5万5609円
【国民年金・80歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 80歳:5万5483円
- 81歳:5万7204円
- 82歳:5万6981円
- 83歳:5万6815円
- 84歳:5万6828円
- 85歳:5万6404円
- 86歳:5万6258円
- 87歳:5万5994円
- 88歳:5万5560円
- 89歳:5万5043円
【国民年金・90歳以上】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 90歳以上:5万1382円
国民年金の受給権者のうち、65歳未満の年金額が低くなっていますね。これは、年金の「繰上げ受給」を選択した人の年金額だからです。
繰上げ受給は、年金を65歳よりも前に受け取り始める代わりに、受給額が減るしくみです。1カ月繰上げるごとに0.4%の減額率が適用されます。いったん減額された年金額は生涯続く点には注意が必要でしょう。
3. 【厚生年金】60歳~90歳以上「みんなの受給額」を1歳刻みで確認!
では、厚生年金についても同じように見ていきましょう。
3.1 【厚生年金・60歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 60歳:8万7233円
- 61歳:9万4433円
- 62歳:6万1133円
- 63歳:7万8660円
- 64歳:7万9829円
- 65歳:14万5372円
- 66歳:14万6610円
- 67歳:14万4389円
- 68歳:14万2041円
- 69歳:14万628円
【厚生年金・70歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 70歳:14万1026円
- 71歳:14万3259円
- 72歳:14万6259円
- 73歳:14万5733円
- 74歳:14万5304円
- 75歳:14万5127円
- 76歳:14万7225円
- 77歳:14万7881円
- 78歳:14万9623円
- 79歳:15万1874円
【厚生年金・80歳代】年齢別老齢年金受給権者数及び平均年金月額
- 80歳:15万4133円
- 81歳:15万6744円
- 82歳:15万8214円
- 83歳:15万9904円
- 84歳:16万349円
- 85歳:16万1095円
- 86歳:16万2007円
- 87歳:16万1989円
- 88歳:16万952円
- 89歳:16万1633円
- 90歳以上:16万460円
※厚生年金には国民年金(基礎年金)の月額を含む
厚生年金保険(第1号)についても、65歳未満の平均年金月額が低いですね。
これは、65歳未満の厚生年金保険(第1号)の受給権者は、特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の引上げにより、主に定額部分のない「報酬比例部分」のみを受け取っているからです。
4. 年金だけで安心できそう?老後に向けてできる対策とは
老後に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況によって大きく変わります。働き盛りの現役世代であれば、いまの働き方が老後の年金収入に響くことも、ぜひ忘れないでおきたいところですね。
公的年金「だけで」暮らせる世帯は決して多数派ではないでしょう。
預貯金にプラスして、「つみたてNISA」や「iDeCo」といった資産運用がこれまで以上にクローズアップされ、興味や関心をもつ方も増えてきたように思います。
いずれも「老後の資産形成」を主な目的として始まった制度です。
これは、「自分の力でも老後の資金を準備してください」という国からのメッセージのようにも感じ取れます。
2024年からNISA制度の大きな改定も予定されています。自分のお金は自分で守り、育てていく必要があるのです。
「気になってはるけど、なかなか行動には移せていないな」という方は、まずは情報収集から始めてみてはいかがでしょうか・
参考資料
荻野 樹