5月14日(日)は母の日です。普段は離れていても、ふと両親のことを思い出すきっかけになる1日ですね。
すでに親世代が「年金生活」に入っているという方もいるでしょう。
一昔前は「年金生活=悠々自適な暮らし」というイメージがあったかもしれませんが、一概にそうとも言えません。
「ふと親の通帳を確認すると、老齢年金をほとんどもらえていないことに気づいた」というケースも見受けられます。
年金が少ない場合、子世帯が援助しなければいけない可能性も出てくるでしょう。
今回は「低年金・無年金」になる理由や背景を見ていきます。
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1. 【老齢年金】みんなの厚生年金や国民年金は月額いくら?
現役世代の方たちは、現状の年金支給額をあまり知らないということも少なくありません。
まずは厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、今のシニア世代が受け取る老齢年金(国民年金・厚生年金)の月額を見ていきましょう。
1.1 国民年金(老齢基礎年金)の「平均額とボリュームゾーン」
〈全体〉平均年金月額:5万6368円
- 〈男性〉平均年金月額:5万9013円
- 〈女性〉平均年金月額:5万4346円
- 1万円未満:7万27人
- 1万円以上~2万円未満:28万4152人
- 2万円以上~3万円未満:90万3006人
- 3万円以上~4万円未満:274万9550人
- 4万円以上~5万円未満:463万6048人
- 5万円以上~6万円未満:791万730人
- 6万円以上~7万円未満:1500万3006人
- 7万円以上~:187万2466人
1.2 厚生年金(老齢厚生年金)の「平均額とボリュームゾーン」
〈全体〉平均年金月額:14万3965円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3380円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4686円
※国民年金の金額を含む
- 1万円未満:9万9642人
- 1万円以上~2万円未満:2万1099人
- 2万円以上~3万円未満:5万6394人
- 3万円以上~4万円未満:10万364人
- 4万円以上~5万円未満:11万1076人
- 5万円以上~6万円未満:16万3877人
- 6万円以上~7万円未満:41万6310人
- 7万円以上~8万円未満:70万7600人
- 8万円以上~9万円未満:93万7890人
- 9万円以上~10万円未満:113万5527人
- 10万円以上~11万円未満:113万5983人
- 11万円以上~12万円未満:103万7483人
- 12万円以上~13万円未満:94万5237人
- 13万円以上~14万円未満:91万8753人
- 14万円以上~15万円未満:93万9100人
- 15万円以上~16万円未満:97万1605人
- 16万円以上~17万円未満:101万5909人
- 17万円以上~18万円未満:104万2396人
- 18万円以上~19万円未満:100万5506人
- 19万円以上~20万円未満:91万7100人
- 20万円以上~21万円未満:77万5394人
- 21万円以上~22万円未満:59万3908人
- 22万円以上~23万円未満:40万9231人
- 23万円以上~24万円未満:27万4250人
- 24万円以上~25万円未満:18万1775人
- 25万円以上~26万円未満:11万4222人
- 26万円以上~27万円未満:6万8976人
- 27万円以上~28万円未満:3万9784人
- 28万円以上~29万円未満:1万9866人
- 29万円以上~30万円未満:9372人
- 30万円以上~:1万4816人
国民年金も厚生年金も、平均額に満たない方は一定数います。中には月額5万円未満という方も。
特に厚生年金の場合は、現役時代の報酬が受給額に影響するため、個人差が出やすいという性質があります。
しかし、極端に少ない場合は別の要因が潜む可能性もあるのです。
2. 「低年金・無年金」になる理由2つ
老齢年金の支給額が少ない、あるいは受給できない理由として、現役時代の報酬の低さ以外に2つのケースが考えられます。
2.1 受給資格期間が足りない
受給資格期間が足りない場合、年金の受給資格が得られないため無年金となります。
具体的には「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」の合計が10年必要です(合算対象期間を含めることが可能)。
かつては25年必要とされていましたが、現在は緩和された形です。
その他の期間で年金保険料を支払っていても、10年に満たなければまさに「払い損」ということになります。
もし未納の期間があるという方は、早急に確認しましょう。
2.2 年金の不整合記録問題
日本の公的年金は2階建て構造となっており、1階部分にあたる国民年金の加入者は第1号~第3号被保険者に分類されます。
このうち第3号被保険者とは、第2号被保険者(公務員や会社員など)に扶養される配偶者のことを指します。
「第3号被保険者」は個人で年金保険料を負担する必要はありません。
しかし、自身が働くようになって扶養を抜けた場合や、配偶者が第2号被保険者でなくなった場合などには第1号被保険者となり、保険料負担が発生します。
このときの手続きが漏れてしまうことを、「3号不整合記録問題」といいます。
救済措置もあるので、気づいた際にはすぐに年金事務所に相談することが大切です。
これまでの年金の加入記録については、ねんきんネットやねんきん定期便などで確認するようにしましょう。
3. 「親の年金が少ない」場合はどうすれば
年金収入が極端に少ない場合、国の給付を受けられる可能性があります。
- 年金生活者支援給付金(2023年度の基準額は5140円)
- 生活困窮者自立支援制度
- 生活保護
この他にもさまざまな福祉制度があります。
自治体独自の支援がある可能性もあるので、まずは自治体の窓口に相談してみるといいでしょう。
4. 老後の準備は早めにする
老後不安を抱える方の多くは、老後資金の準備を始めていることと思います。
預貯金だけでなく、iDeCoやNISAなどを活用している方も多いでしょう。
一方で、公的年金の受給資格や見込額をしっかり確認している方は多くありません。
いざ年金生活に入るとき、「想定以上に少なかった」ということがないようねんきん定期便などは定期的に確認しましょう。
最悪の場合、受給資格を満たしていないという可能性もゼロではありません。
この機会に、未納期間等を確認してみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「合算対象期間」
- 日本年金機構「3号不整合記録問題とは何ですか。」
- 厚生労働省「[年金制度の仕組みと考え方]第3 公的年金制度の体系(年金給付)」
- 厚生労働省「福祉・介護 制度の紹介」
太田 彩子