先週はジャクソンホール会議が注目されましたが、イエレンFRB議長とドラギECB総裁の講演に今後の金融政策に関する内容はほとんどありませんでした。しかし、為替市場では同会議を契機にドルが大きく下落し、ユーロ/ドルは高値を更新しています。
米雇用統計を控える今週は、トランプ大統領の政府閉鎖発言も絡み、ユーロ/ドルを中心としたドルストレート通貨の行方に注目です。
先週の為替市場振り返り
8月25日にジャクソンホール会議を控えていた先週は、金融市場全体が様子見姿勢となり、まるで市場関係者の夏休みが継続していたかのような値動きとなりました。
しかし、そのジャクソンホール会議でのFRBイエレン議長、ECBドラギ総裁の講演には今後の金融政策に対する言及はほとんどなく肩透かし状態となりました。
ただし市場はイエレン議長の利上げ発言を期待していた部分もあり、失望感からかドルが売られる展開でドルストレート通貨が大きく動きました。
通貨ペアではユーロ/ドルが8月2日に付けた高値を上抜けして高値更新。1.192ドル台で取引を終え、上昇トレンドが継続しています。
また、ドル/円はジャクソンホール会議の前は109円台後半に位置していましたが、109.3円台で週の取引を終えています。1週間の値動きとしては108円台後半の底堅さを確認後、レンジ相場の値動きとなりました。
ドルインデックスが下方ブレイクし、年内安値を更新
ジャクソンホール会議後の注目点は、ドルインデックスが大きく下落したことです。
会議を契機に始まった下落は先週・先々週の2週分の安値を更新した後も止まらず、26日(土)の早朝には8月第1週に付けた年内最安値水準の92.5ポイント台の安値水準を付け、下落が止まったのか、それとも取引終了で強制的に値動きが止まったのか、判断が難しいところでした。
結局、週明け28日は8月の安値水準を割る92.3ポイント台から取引が開始されており、年内の安値を更新しています。
今週の見通し
今週の金曜から9月に入りますが、1日には8月米雇用統計が発表されます。よって今週の為替市場は雇用統計を意識した値動きになると考えられます。
今週の為替市場の方向性を占う鍵はドルインデックスが握っていそうです。ジャクソンホール会議後の下落が週明けも続くようなら、既に上方ブレイクをしておりドルインデックスと逆相関の関係にあるユーロ/ドルは、さらなる上昇の可能性が生じます。
同様に、現在108円台後半のサポート&レジスタンス(サポレジ)に支えられているドル/円も下抜けの可能性が高くなります。
週末の109.2円台から50~60pips程度しかサポレジまでの距離は残されていないので、ドルインデックスがさらに大きな下落に見舞われると、108円台後半のサポレジでは止まらず、4月の108円台前半の年内最安値水準を割れる可能性すら生じます。
また、ファンダメンタル的には、トランプ大統領が「政府を閉鎖してでもメキシコ国境の壁はつくる」と発言した政府閉鎖問題、そして債務上限の引き上げ問題がクローズアップされつつあります。
トランプ大統領と与党・共和党の関係がシックリしない中、この2つの問題をトランプ大統領は対処できるのか注目を集めるでしょう。万が一、政府閉鎖という事態となれば金融市場に大きな混乱が生じる可能性が高いと言えます。
政府閉鎖と債務上限問題はいずれもドルインデックスの値動き=ドルの値動きに大きな影響を与えるので、状況を注視したいところです。
まとめ
ジャクソンホール会議は「大山鳴動して鼠一匹」と評されていますが、ドルインデックスの値動きを見ると、同会議が為替市場の値動きに影響を与えていることがわかります。
今週は雇用統計の週ですが、小康状態の北朝鮮問題に加え、米国の政府閉鎖問題と債務上限問題が新たな市場のテーマとして浮上しつつあります。これらを意識しながら、為替市場を見守りたいと思います。
石井 僚一