「テーマ投資」と聞いて皆さんがイメージするのはどんなことでしょうか。一般的には、新技術や新サービス、新商品などで注目される銘柄への投資と考えられているようですが、東京証券取引所(東証)が公表するテーマをもとに選んだテーマ銘柄は、「IT経営」「女性が活躍する企業」「健康経営」「アナリスト・レポート」「特許価値」「ESG」といった切り口となっています。

今回は、東証が公表している投資テーマとそれに関連する銘柄について見ていこうと思います。

東証が注目するテーマとは

東証は「テーマで見る企業」として、特定のテーマや指標をもとに銘柄を抽出して公表しています。日本を代表する証券取引所である東証が、個人投資家が株式投資を始めるための入り口として用意した接点の一つが、上記のような企業を分析する際のテーマと言えます。

この取り組みは、第1回(2012年7月)の「経営の持続的な成長が見込まれる指標『ESG』」を皮切りに、2017年8月現在までで14回も続いています。ちなみに、ESGというのはEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(統治)の頭文字をとったもので、海外の機関投資家から注目される投資テーマとなっています。

2015年以降は、年3回、様々なテーマで関連する銘柄が公表されています。では、直近のテーマとテーマごとの銘柄を見ていくことにしましょう。

「攻めのIT経営銘柄2017」とは

「攻めのIT経営銘柄2017」は、2017年5月31日に東証と経済産業省が共同で選定、公表した銘柄です。その評価のポイントは、「中長期的な企業価値の向上や競争力の強化といった視点から経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なITの利活用に取り組んでいる企業」ということで、上場企業の中から、財務諸表によるスコアリング、2次評価および最終選考を経て、以下の31銘柄が公表されています。

  • 大和ハウス工業(1925)
  • 清水建設(1803)
  • アサヒグループホールディングス(2502)
  • 東レ(3402)
  • 住友化学(4005)
  • 富士フイルムホールディングス(4901)
  • ブリヂストン(5108)
  • ジェイ エフ イー ホールディングス(5411)
  • 日立建機(6305)
  • NEC(6701)
  • 富士通(6702)
  • 日産自動車(7201)
  • トッパン・フォームズ(7862)
  • 中国電力(9504)
  • 東日本旅客鉄道(9020)
  • 日本郵船(9101)
  • 日本航空(9201)
  • ヤフー(4689)
  • 伊藤忠テクノソリューションズ(4739)
  • IDOM(7599)
  • 三井物産(8031)
  • 日本瓦斯(8174)
  • Hamee(3134)
  • みずほフィナンシャルグループ(8411)
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
  • 野村ホールディングス(8604)
  • SOMPOホールディングス(8630)
  • 東京センチュリー(8439)
  • レオパレス21(8848)
  • LIFULL(2120)
  • セコム(9735)

「なでしこ銘柄」とは

2017年で第5回目となる「なでしこ銘柄」では、「業種ごとに、女性が働き続けるための環境整備を含め、女性人材の活用を積極的に進めている企業」が東証と経済産業省の共同企画として発表されています。2017年のなでしこ銘柄は以下の47社です。

  • カルビー(2229)
  • アサヒグループホールディングス(2502)
  • 石油資源開発(1662)
  • 清水建設(1803)
  • 大和ハウス工業(1925)
  • 積水ハウス(1928)
  • ワコールホールディングス(3591)
  • 大王製紙(3880)
  • 積水化学工業(4204)
  • 日立化成(4217)
  • JSR(4185)
  • 中外製薬(4519)
  • TOTO(5332)
  • ジェイ エフ イー ホールディングス(5411)
  • 住友電気工業(5802)
  • コマツ(6301)
  • クボタ(6326)
  • ダイキン工業(6367)
  • 日立製作所(6501)
  • 富士電機(6504)
  • RVH(6786)
  • ブリヂストン(5108)
  • 日産自動車(7201)
  • 島津製作所(7701)
  • トッパン・フォームズ(7862)
  • 東京ガス(9531)
  • 大阪ガス(9532)
  • 東京急行電鉄(9005)
  • 日本航空(9201)
  • ANAホールディングス(9202)
  • 野村総合研究所(4307)
  • KDDI(9433)
  • SCSK(9719)
  • 双日(2768)
  • 丸紅(8002)
  • 日立ハイテクノロジーズ(8036)
  • ローソン(2651)
  • セブン&アイ・ホールディングス(3382)
  • りそなホールディングス(8308)
  • 三井住友フィナンシャルグループ(8316)
  • 大和証券グループ本社(8601)
  • 東京センチュリー(8439)
  • ヒューリック(3003)
  • イオンモール(8905)
  • スタジオアリス(2305)
  • スリープログループ(2375)
  • JPホールディングス(2749)

「健康経営銘柄」とは

東証と経産省が共同で選定する「健康経営銘柄」は、2017年で第3回を迎えます。経産省が実施した「平成28年度 健康経営度調査(従業員の健康に関する取り組みについての調査)」の回答結果と財務指標を勘案し、選定するというプロセスです。以下の24社が2017年の健康経営銘柄となっています。

  • 大和ハウス工業(1925)
  • LIFULL (2120)※当時は社名はネクスト
  • ローソン(2651)
  • 味の素(2802)
  • ワコールホールディングス(3591)
  • 花王(4452)
  • 塩野義製薬(4507)
  • テルモ(4543)
  • バンドー化学(5195)
  • TOTO(5332)
  • 神戸製鋼所(5406)
  • リンナイ(5947)
  • サトーホールディングス(6287)
  • ブラザー工業(6448)
  • デンソー(6902)
  • トッパン・フォームズ(7862)
  • 伊藤忠商事(8001)
  • 大和証券グループ本社(8601)
  • 東京海上ホールディングス(8766)
  • 大京(8840)
  • 東京急行電鉄(9005)
  • 日本航空(9201)
  • 東京ガス(9531)
  • SCSK(9719)

テーマ銘柄のパフォーマンスをチェック!

さて、今回は東証が公表している「テーマ銘柄」の中から、2012年7月11日に公開された第1回「経営の持続的な成長が見込まれる指標『ESG』」に入った銘柄の株価パフォーマンスを追ってみたいと思います。

ESG銘柄で選ばれた企業は以下の通りです。

  • アサヒグループホールディングス(2502)
  • 出光興産(5019)
  • 東レ(3402)
  • ツムラ(4540)
  • 日産自動車(7201)
  • アサヒホールディングス(5857)
  • コマツ(6301)
  • 日本電産(6594)
  • KDDI(9433)
  • 大阪ガス(9532)
  • 東京急行電鉄(9005)
  • 伊藤忠商事(8001)
  • ファーストリテイリング(9983)
  • 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
  • リコーリース(8566)

そもそもESGというテーマは長期的なテーマです。また、テーマ投資は短期的なパフォーマンスは取れるが、長期はどうかという点を確認する上で、5年間は長期として評価するのには適当だという前提に立っています。

ESG銘柄の株価パフォーマンスは意外な結果に

下図は、東証が公表したESGテーマの15銘柄に関して、2012年7月11日の終値を100とし、2017年8月25日までの株価を追ったものです。

出所:SPEEDAをもとに投信1編集部作成

図が示すように、アベノミクスを挟んでいるためTOPIXでも約2倍の211となっています。ただ、15のESG銘柄のうちTOPIXを上回ったのは日本電産やKDDIなど5銘柄のみ。残りの10銘柄はTOPIXのパフォーマンスを下回っています。

また、15銘柄を2012年7月から同額ずつ保有していた場合のパフォーマンスは209ですので、TOPIXのパフォーマンスを若干下回っているということになります。

まとめにかえて

こうしてみると、「ESGのテーマ銘柄は15銘柄に絞っている割には市場平均と変わらないのではないか」という指摘もあるかもしれません。ただ、より重要なのは、テーマ投資で選定された15銘柄の中から、さらに日本電産やKDDIのような銘柄に絞り込んでいく作業ではないでしょうか。いずれにせよ、定期的に良い銘柄へ入れ替えることが重要と言えるでしょう。

LIMO編集部