老後に対して不安を抱える人は少なくありません。
年金受給開始の時期や定年が延長となり、60歳を過ぎても働くことが当たり前になりつつある昨今。
「健康なうちはできるかぎり働きたい」という方も多いでしょう。
60歳以上のキャリアを考えたとき、知っておきたいのが「在職老齢年金」と雇用保険の「高年齢雇用継続給付」です。
年金がカットされる給与の目安や、最大で賃金の15%分が支給される制度についてしっかり押さえておきましょう。
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1. 在職老齢年金とは
まず押さえておきたいのが在職老齢年金制度についてです。
厚生年金に加入して働き続ける一方で厚生年金も受け取る場合、「基本月額」と「総報酬月額相当額」の合計額が48万円を超えると、年金が減額されたり支払停止になったりします。
- 基本月額:加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額
- 総報酬月額相当額:(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
ボーナスを含めた月収と年金額の合計が48万円を超えそうな方は注意が必要になるでしょう。
とはいえ、多く働くほどに給与が増えますし、将来の厚生年金額も増やせるという側面を考慮すれば、必ずしもデメリットばかりともいえません。
働く方を優先したい方もいるでしょう。
2. 高年齢雇用継続給付とは
続いて高年齢雇用継続給付について解説します。
高年齢雇用継続給付とは、60歳以上65歳未満の方のうち、賃金が低下してしまう方を支える制度です。
具体的には、雇用保険の被保険者期間が5年以上ある場合で、60歳以降の賃金が60歳時点と比べて75%未満に低下して働く方が受給できます。
2.1 支給要件(以下すべてを満たした場合)
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者である
- 被保険者の期間が5年以上ある
- 60歳時点と比較して、60歳以後の賃金が75%未満となる
- 後述する高年齢再就職給付金については、再就職の前日における基本手当の支給残日数が100日以上ある
2.2 支給額
60歳以後の各月に支払われた賃金の原則15%
2.3 種類
- 高年齢雇用継続基本給付金
- 高年齢再就職給付金
3. 65歳未満は老齢厚生年金と高年齢雇用継続給付の併給に注意
65歳になる月までは、賃金が低下した方は高年齢雇用継続給付が受けられます。
ここで気になるのが、年金との兼ね合いについて。65歳より前に、特別支給の老齢厚生年金を受給している方もいます。
高年齢雇用継続給付を受ける場合は、在職による年金の支給停止に加えて年金の一部が支給停止されるのです。
手続きは原則不要ですが、年金事務所への届出が必要となるケースもあるため、詳しくはお近くの年金事務所等にご相談ください。
4. 老後の働き方は現役時代から考える
最近では働くシニアが増えています。
正社員のままとは言わずとも、何らかの形で働き続けたいと考える方も多いのではないでしょうか。
特に60歳~65歳の期間は、これまでの会社で継続して働くという方も。
しかし、制度について正しく知っておかないと、思わぬ年金の支給停止や調整の対象となることがあります。
決してマイナス面ばかりではないですが、知らなければ後悔してしまうこともあるでしょう。
年金の受給開始年齢が65歳より前になる方は、給与と年金、そして高年齢雇用継続給付との関係をしっかり押さえておきましょう。
参考資料
- 日本年金機構「年金と雇用保険の高年齢雇用継続給付との調整」
- 日本年金機構「失業給付・高年齢雇用継続給付を受けるとき」
- 日本年金機構「老齢厚生年金を受け取りながら会社に勤めています。高年齢雇用継続給付金を受け取りますが、何か手続きは必要ですか。」
- 日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」
- 厚生労働省「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」
太田 彩子