内閣府の「男女共同参画白書 令和3年版」によると、大学への進学率は男子が57.7%、女子が50.9%となっており、男子女子ともに約半数が大学へ進学していることがわかります。

子どもが大学への進学を希望している場合、親としてはできるだけ希望をかなえてあげたいものですが、大学にかかる費用は高額になることが多く、家計に与える影響も大きくなります。

しかし、2020年4月から大学無償化制度が開始され、一定の要件を満たした場合、大学などへ進学する際の費用の支援を受けられるようになりました。

この記事では、大学無償化制度の対象者や支給額などについて解説していきます。

【学費】国公立・私立大学にかかる費用一覧

大学無償化制度(正式名称「高等教育の修学支援新制度」)についての概要を解説する前に、大学に進学する際にかかる費用の目安を確認しておきましょう。

今回は文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」「2020年度学生納付金調査結果」「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」をもとに、国立・公立・私立(文系・理系・医歯系)ごとの初年度納入金を下表にまとめてみました。

出所:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」「2020年度学生納付金調査結果」「令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額(定員1人当たり)の調査結果について」をもとに筆者作成

大学の初年度合計額

  • 国立大学:81万7800円
  • 公立大学:92万8493円
  • 私立大学(文系):118万8991円
  • 私立大学(理系):156万6262円
  • 私立大学(医歯系):489万539円

初年度納入金は、国立大学が最も安く約82万円で、私立大学(医歯系)が最も高額で約490万円かかります。

大学無償化制度の概要

大学無償化制度(「高等教育の修学支援新制度」)とは、大学等の入学金や授業料が減額または免除される制度と返済不要の給付型奨学金の支給を主な支援内容とする制度です。

なお、大学無償化制度といっても対象となる学校は大学だけではなく、短期大学・高等専門学校(4年・5年)・専門学校も対象となります。

大学等に進学したいけれども学費が不安という学生の「学びたい気持ちや意欲」をサポートしてくれる制度です。

大学無償化制度の対象となる学生の条件

大学無償化制度の対象となるのは、「世帯収入」や「資産要件」、「学習意欲」の条件を満たす学生全員です。

世帯収入

世帯収入条件として、当制度の対象となるのは住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯です。

非課税世帯に該当するかどうかは家族構成や所得などにより異なります。支援の対象になるかどうか知りたい場合は、「高等教育の修学支援新制度」サイトの「進学資金シミュレーター」で確認できます。

支援金額は、世帯収入に応じて3段階の基準で決まります。たとえば、4人家族(本人(18歳)・父(会社員)・母(専業主婦)・中学生)で、本人がアパートを借りて私立大学に通う場合で見てみましょう。

出所:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」

世帯年収が270万円以下(第Ⅰ区分)の場合は上限額まで、300万円以下(第Ⅱ区分)の場合は上限額の3分の2まで、380万円以下(第Ⅲ区分)の場合は上限額の3分の1までの支援となります。

なお、世帯年収の目安は、子どもの人数や年齢などにより異なります。

資産要件

大学無償化制度の対象になるには世帯の資産要件を満たす必要もあり、生計維持者が2人の場合は2000万円未満、生計維持者が1人の場合は1250万円未満の世帯が該当します。

なお、資産とは現金やそれに準ずるもの、預貯金や有価証券などのことです(不動産は対象外)。

学習意欲

大学無償化制度の対象となるには、本人の学業成績や学習意欲に関する要件を満たす必要もあります。高校の評価平均値が3.5以上であることや、3.5未満の場合にはレポートや面談などにより学習意欲などを確認します。

大学生の場合は、大学の平均成績が上位2分の1以上であることなどが条件です。

大学無償化制度の給付型奨学金の支給額

住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)に該当すると、返済不要の給付型奨学金として下表の金額(年額)が支給されます。

出所:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」をもとに筆者作成

たとえば大学私立で自宅外通学の場合、約91万円です。

なお、第Ⅱ区分、第Ⅲ区分の場合は、それぞれ第Ⅰ区分の額の3分の2、3分の1の支給額です。

入学金・授業料の減免

給付型奨学金の対象となる学生は、授業料と入学金の減額または免除を受けることもできます。住民税非課税世帯(第Ⅰ区分)に該当する世帯の減免(年額)は下表の通りです。

出所:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」をもとに筆者作成

たとえば大学私立の場合は入学金で約26万円、授業料で約70万円です。

なお、第Ⅱ区分、第Ⅲ区分の場合は、それぞれ第Ⅰ区分の額の3分の2、3分の1です。

大学無償化制度も確認を

大学に進学する場合に支払う初年度納入金は、最も安い国立大学で約82万円、私立大学(医歯系)では約490万円かかり、高額な学費を一度に支払うのは負担が大きいです。

しかし、非課税世帯やそれに準ずる世帯に該当すれば入学金や授業料の免除が受けられたり、給付型奨学金が支給されたりします。

また、文部科学省は2023年4月4日に、2024年度から修学支援新制度を多子世帯や理工農系の学生などの中間層へ対象を拡大する予定だと公表しています。

子どもが希望する進路に進ませてあげられるよう、制度に該当するかどうかを確認し、申し込み条件やニュースなどをよく確認したうえで手続きを行いましょう。

参考資料

木内 菜穂子