北朝鮮問題がいったん沈静化を見せた反面、白人至上主義問題を機にトランプ政権リスクが急浮上しています。そのような中、今週は北朝鮮が猛反発している米韓合同軍事演習が予定されています。北朝鮮とトランプ政権という2つの大きなリスク要因を抱えて、夏休み明けの市場はどのような値動きを見せるのでしょうか。
先週の為替市場振り返り
先々週、北朝鮮のミサイル問題により市場は一気にリスクオフに傾きました。先週はその行方が注目されていましたが、米国側の強硬姿勢に対し北朝鮮が留保を示唆したことで地政学リスクはいったん沈静化。米国株式市場は、北朝鮮問題での下落分を一気に取り戻す値動きとなりました。
しかし、バージニア州で白人至上主義団体と反対派が衝突し反対派に死亡者が出る事件が発生すると、トランプ大統領の「双方に責任がある」という発言に批判が沸騰。思わぬ形でトランプリスクが急上昇し、金融市場は再びリスクオフの状態となり、株式市場も大きく値を下げることとなりました。
為替市場では、ドル/円は月曜から金曜日でほぼ“行って来い”の状態。109円台前半からスタートしましたが、地政学リスクの沈静化とともに111円目前まで上昇。しかしトランプリスクの浮上と共に16日遅くより下落を開始し、18日には再び109円台前半にまで値を戻し取引を終えています。
激しく動くVIX指数、トランプリスク浮上で再上昇
北朝鮮をめぐる地政学リスク上昇とともに急騰したVIX指数(別名、恐怖指数)は北朝鮮のトーンダウンとともに下落し、リスクオフ状態解消の値動きが見られました。しかしながら、トランプリスクの浮上と共に再上昇し、11日の年初来高値の更新こそなされていませんが、年内の高値付近で週の取引を終えています。
また、有事の際に買われる傾向にある金価格に大きな値動きは生じていないものの、18日には直近高値の更新となるなど上昇トレンドが継続しています。
北朝鮮とトランプ問題を抱え夏休み明けを迎える金融市場
先週いったん沈静化した形の北朝鮮問題ですが、実態としては何ら問題解決はなされていません。そんな中で、北朝鮮が猛反発している米韓合同軍事演習が21~31日の日程で予定されています。
また、トランプリスクが表面化することとなった白人至上主義問題は、18日には遂にトランプ大統領の最側近にして保守強硬派のバノン首席戦略官の辞任に繋がる結果となるなど、北朝鮮問題、トランプ政権問題いずれも、今週は新しい展開を見せる可能性が高くなっています。
今週から夏休みを取っていた市場関係者が徐々に市場復帰しますが、夏休み明けの金融市場は大きな値動きを見せることがあります。代表例は2015年8月のチャイナショックです。
現在の状況は2015年のように明確なファンダメンタル要因は生じていないものの、北朝鮮問題にトランプ問題という2つの爆弾を抱えている状態であり、一方でも問題が拡大すれば、市場に対する影響が大きくなる可能性があります。
通貨ペアでは、ドル/円の108.7円付近に形成されている非常に強いサポート&レジスタンス(サポレジ)近辺での値動きが注目されます。18日に108.6円台に突入した後に大きく買われ、一気に109円台を回復しましたが、108.7円付近のサポレジは6月にも形成されており、市場が非常に注目している価格帯となっています。
2017年の安値水準は4月の108.1円台であり、現在の値位置からは約1円程度の距離です。108.7円が明確に割れると大きな下落の可能性があり、年初来安値の更新が現実味を帯びるので注意が必要です。
まとめ
北朝鮮およびトランプ政権問題を抱える市場ですが、今週25日にはジャクソンホール会議でFRBイエレン議長とECBドラギ総裁の講演が行われます。両者の発言次第では大きな値動きが生じる可能性もあります。
夏休み明けの週は2015年のチャイナショックの例もあるため、値動きに注意を要します。今年の為替市場はどのような値動きを見せるのか、注目したいと思います。
LIMO編集部