テーマ投資とはどのようなものでしょうか。今回はテーマ投資とは何か、テーマ投資の始め方、テーマ投資の注意点について考えてみたいと思います。
目次
3 テーマ投資の種類
3.1 新しい技術やサービスに関する
3.2 政策に関するテーマテーマ
3.3 イベントに関するテーマ
3.4 各国地域・経済に関するテーマ
3.5 株価評価(バリュエーション)に関するテーマ
4 テーマ投資の始め方
4.1 松井証券の「テーマ投資ガイド」
4.2 FOLIO(フォリオ)のテーマ投資
4.3 テーマ型投資信託
1 テーマ投資とは
「テーマ投資」というと皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
真っ先に思い浮かぶとすれば、株式市場でホットなトピックのテーマ、いわゆる投資テーマがあり、そのテーマに関連する銘柄に投資をすることではないでしょうか。
例えば、1990年代後半であればIT関連、2000年半ばであれば環境関連、最近で言えば、ロボットやAI(人工知能)、ドローン、電気自動車などが株式市場でよく取り上げられるテーマでしょう。
ちょっと込み入ったテーマであれば、ファイナンスとテクノロジーを融合させたFinTech(フィンテック)、シェアリングエコノミーといったテーマも注目されています。
とはいえ「投資で注目されるテーマ」といっても、みんなが話題にしてさえいればよいかといえばそうではありません。株式市場で注目が集まりやすいテーマとは、産業構造を大きく変えるような、それでいて将来その中で大きな利益を生み出しそうなテーマです。
1990年代後半に世界で注目を浴びたIT関連テーマは後に「ITバブル」とも揶揄されたりもしますが、その中から、現在の日本株でいえば、ソフトバンク、米国でいえばアマゾンなどが出てきていることも事実です。当時はインターネットによって新しい産業が生まれることに期待をし、のちに競争の中から巨大な企業が生まれているのです。
2 テーマ投資は個人投資家だけの投資スタイルなのか
では、テーマ投資というのは、個人投資家のためだけのものでしょうか。それもそうではありません。「テーマ」をより広くとらえれば、年金や投資信託を運用する機関投資家と呼ばれるプロ投資家もテーマに基づいて投資をしています。
例えば、時価総額が比較的小さな企業を中心にポートフォリオに組み込む小型株ファンドのファンドマネージャーの多くはテーマが大好きです。では、どのようなテーマが好きかといえば、先ほどにも挙げたように産業構造の変化です。そして、その中で成長できる企業を選択しポートフォリオに組み込みます。小型株ファンドには「○○小型株成長ファンド」といったような名称がついていることがありますが、実際ポートフォリオの構成銘柄を見ると、そうしたテーマに関連した銘柄が入っています。
また、時価総額の大きな大型株ファンドマネージャーにも企業の成長を重視したグロース型や、株価評価(バリュエーション)のより割安な銘柄を中心としたバリュー型のファンドマネージャーもいます。グロースやバリューといった切り分けも大きな意味での投資のテーマといえます。
これから投資をしようとしている企業がどのような事業をしていて成長するのかどうか、またそのバリュエーションは高いのか安いのかといったことを気にするのは個人投資家であろうが、プロ投資家であろうが変わりがないでしょう。いずれにせよ、投資において何らかのテーマを持たないで投資をすることなどありえません。
3 テーマ投資の種類
さて、投資におけるテーマには様々なものがあるということを見てきましたが、ここでは改めてどのようなテーマがあるのかをまとめてみましょう。株式市場で話題となっているテーマといっても実際は様々な内容が含まれています。以下は、どのようなテーマがあるのかを分類してみたものです。
3.1 新しい技術やサービスに関するテーマ
株式市場で取り上げられるテーマとしてよく話題になるのが、新しい技術やサービスに関するものではないでしょうか。例えば、以下のようなテーマは現在株式市場でも熱量の高いテーマです。
- ロボット
- AI(人工知能)
- ドローン
- 電気自動車
- 自動運転
- 燃料電池
- 全固体電池
- IoT(モノのインターネット)
- サイバーセキュリティ
- 再生可能エネルギー
- スマートグリッド
- 省エネ
- AR(オーギュメントリアリティ)・VR(バーチャルリアリティ)
- 音声認識
- 有機EL
- 3Dプリンター
- 自動化
- インダストリー4.0
- インダストリアル・インターネット
- iPS
- 炭素繊維
- シェアリングエコノミー
いかがでしょうか。いずれもよく目にするテーマではないでしょうか。これらの技術をきっかけに新しい産業やサービスが誕生し、これまでの産業構造が変わることで新たな企業の活躍が期待できます。
たとえば、シェアリングエコノミーは今後株式市場では大きなテーマになってきそうです。Aibnb(エアー・ビー・アンド・ビー)やUber(ウーバー)といったように、シェアリングエコノミーのテーマで成長する企業も出てきそうですし、これから上場すると報道されているメルカリもこのテーマを代表する銘柄となるでしょう。
また、突然登場したとは言い切れないものの、人々の中でライフスタイルとして確立されつつある商品、サービス産業も株式市場では人気のテーマです。
- ペット(と暮らす)
- コーヒー
- ビューティー
- ヘルスケア
- グルメ
こうしたライフスタイルの変化により新しいサービスや産業が確立されてきている局面も恩恵を受ける産業や企業が存在します。
3.2 政策に関するテーマ
株式市場が取り上げるテーマとして政策関連もよく見かけます。規制緩和といったものから働き方改革といったライフスタイルに関係するものまで、政策に関係するテーマです。政策変更により、新たな需要が生まれたり、新たなプレーヤーが生まれてくるからです。政策に関するテーマであれば、以下のようなテーマがあります。
- 働き方改革
- 観光立国(インバウンドを盛り上げるための)
- 電力自由化
- クール・ジャパン
- インフラ輸出
- マイナンバー制度
- 地方創生
- 消費税増税
- ふるさと納税
- 宇宙開発
- 防衛
- カジノ構想
「政策に関係するテーマ」は「新しい技術やサービスに関するテーマ」と同様に機関投資家も常にウォッチしているテーマです。
3.3 イベントに関するテーマ
一口にイベントといっても様々なものがありますが、ここでいうイベントは継続的ではないものの、単発のイベントとしてインパクトが大きなものを分類しています。株式市場が注目するイベントとしては以下の様なものがあります。
- 企業決算
- 金融政策決定会合
- 東京オリンピック
- ハロウィン
- トランプ大統領誕生
- 英国EU離脱
企業決算は業績と会社予想の乖離や業績予想と市場コンセンサスのずれが株価を大きく動かします。ヘッジファンドをはじめとした機関投資家中心に注目度が高いイベントの代表例です。
また、株式市場で注目されるのは、金融政策に絡んだ金利やインフレ率などです。結果、為替レートが大きく動いたりすることで株価を動かすことになります。
「イベントに関係するテーマ」はヘッジファンドなどが常に注目し、時には市場が乱高下する要因となります。
3.4 各国地域・経済に関するテーマ
経済成長率は株式投資にとって欠かせない要素です。経済成長率の高い地域への興味は投資家にとっては大きなテーマの一つです。先進国よりも新興国の経済成長率が高いことが多いですが、そのボラティリティが高いことは注意すべき点です。
- BRICs
- アフリカ
- 東欧
バランス型投資信託ではアセットアロケーターと呼ばれる資産配分を決定する担当者によって、どの資産をポートフォリオに組み込むかを決めるだけではなく、各地域などの比率も考慮して運用されています。
また、上記のような大きな区分けではなく、より細分化した地域もテーマ投資としての考え方はあります。
たとえば、日本でいえば、京都府には任天堂をはじめ、村田製作所、京セラ、日本電産、島津製作所、GSユアサ、SKエレクトロニクスなどといったテクノロジー企業が集まっています。
愛知県でいえば、トヨタ自動車を筆頭にデンソー、アイシン精機などの自動車関連企業がひしめき合っていますし、大阪府もパナソニックやシャープといった電気機器メーカーも多いです。
3.5 株価評価(バリュエーション)に関するテーマ
バリュエーションはプロ投資家にとっては非常に重要なテーマです。バリュエーションを基準として大きく以下の2つに分けることができます。
- グロース
- バリュー
なぜプロ投資家がバリュエーションを大事にするかといえば、投資先のリターンに関係しているだけではなく、自分が運用しているポートフォリオのバリュエーションを資金の出し手やコンサルティング会社に評価され「このポートフォリオを運用しているファンドマネージャーは○○という属性の人」と分類されてしまうからです。
もっともポートフォリオを構成する前段階でファンドマネージャーは自分が好きな銘柄やスタイルはどういったものかを理解しているのが普通です。
バリュエーションが市場平均よりも高い(利益成長率も高い)企業が多いポートフォリオはグロースファンドと呼ばれ、バリュエーションが安い銘柄が多く含まれるポートフォリオはバリューファンドと呼ばれます。
グロースとバリューのいずれかが優れているという比較の話ではなく、投資家の好みによるところが大きいため、投資家の中のテーマということができます。
4 テーマ投資の始め方
テーマ投資を始めるにはどうすればよいでしょうか。以下、テーマ投資を簡単に実行できる証券会社とその手順を解説していきます。
4.1 松井証券の「テーマ投資ガイド」
松井証券の口座開設(無料)をすることでテーマ投資の関連する銘柄をすぐに見つけることができる「テーマ投資ガイド」を利用することができます。
使いやすい点
日本のインターネット証券(ネット証券)の老舗である松井証券はテーマ投資を一覧にしています。
また、過去72時間のアクセス数に応じた「アクセスランキング」、24時間前から現在までのアクセス数増加による「急上昇テーマランキング」、テーマ別騰落率ランキングを見ることができます。
各テーマをクリックすると、そのテーマに関係する銘柄をリストアップしているほか、株価や騰落率、関連度なども表示してくれています。
関連度はテーマ投資の初心者はわかりにくいので、そうした基準があるとどの銘柄がよりそのテーマに関係しているのかが一目で理解できて便利ですね。
使いにくい点
「テーマ投資ガイド」はどのような投資テーマが人気があるのか、またその関連銘柄を教えてくれます。
一方、最終的には投資家が銘柄を選別し、売買をしなければなりません。そこがテーマ投資の初心者には難しいところでしょうか。
結局は銘柄分析を自分で行わなければなりませんので、個別銘柄の調査の経験が少なかったり、分析の方法を良く知らないような株式投資の初心者には難しいかもしれません。
※松井証券のテーマ投資ガイドのデータは株式会社エムサーフが提供しています。
4.2 FOLIO(フォリオ)のテーマ投資
実に10年振りのネット証券業界参入となったフォリオ。フォリオの特徴は、フォリオが準備した投資テーマを10万円から購入することができるというものです。
フォリオのサービスのイメージをさらに詳しく知りたいという方は以下の動画をご覧ください。
使いやすい点
フォリオの投資テーマには10銘柄が含まれていて、同一テーマ内で銘柄分散がされています。10銘柄はフォリオが選択してくれるので株式投資の初心者でも銘柄選びで迷うことはありません。
テーマ投資を始めたいといっても個別の銘柄を最小売買単位で複数銘柄保有しようとすれば数十万円以上が必要になることもあるでしょう。フォリオのサービスを活用すれば10万円からポートフォリオとして手軽に始めることができます。
フォリオのサービスであれば、株式市場で注目されているテーマはもちろんのこと、テーマ型投資信託でも品揃えがないテーマに今後投資できるので、テーマ投資の初心者にはありがたいです。
また、投資を始めてポートフォリオのリバランス(再調整)のタイミングも教えてくれるので、投資しっぱなしということもなく、またリバランスのタイミングも自分で選ぶことができます。
使いにくい点
唯一あげられるとすれば、個別銘柄に対して自分で好きに投資ができないことがあげられるでしょうか。
4.3 テーマ型投資信託
テーマ型投資信託はこれまでもテーマ投資好きの投資家に活用されてきました。以下、その長所と短所を見ていくことにしましょう。
使いやすい点
投資信託なので、運用はポートフォリオマネージャーが銘柄選択から実際の運用をしてくれます。したがって、一度購入すれば運用面での手離れが良いです。
使いにくい点
テーマ型投資信託はアクティブファンドがほとんどなので、信託報酬が比較的高い水準のファンドが多く、保有にともなうコストは高めの傾向にあります。
また、運用会社が設定した投資信託しか購入ができないので、投資家がいまこのテーマに投資をしたいといっても、必ずしこ購入できるわけではありません。
投資信託を購入する前にネット証券に口座を開設しよう
尚、投資信託を購入する場合には証券会社に口座開設をする必要があります。
5 気を付けたいテーマ投資のリスクと注意点
テーマ投資で気を付けておきたいのは株式市場での熱量が冷めてしまったり、株式市場全体が軟調となると大きく値を下げる場面があります。
その一方で、テーマ投資の中から時間が十分に立った後に大化け銘柄も出てくることもありますが、そこまで耐えられずに売ってしまうという投資家も数多くいます。
テーマ投資は旬が過ぎたらもうおしまいというわけではなく、その中から本当の勝ち組企業をさらに選別していくことで大きな超過収益を得ることも可能です。
テーマの選別もさることながら、その後のメンテナンスも重要ということがポイントです。
6 まとめ
いかがでしたでしょうか。一口にテーマ投資と言っても様々なテーマ投資があることがわかります。
今回は深くは触れませんでしたが、世界で最も著名な投資家であるウォーレン・バフェットの投資のアプローチをまねて投資をしてみるとか、米国大手投資信託会社フィデリティのポートフォリオマネージャーのピーター・リンチ、アンソニー・ボルトンといった凄腕の運用者の投資アプローチも参考になるでしょう。パフォーマンスの良かった運用者の投資アプローチをまねたテーマというのもあってもよさそうです。
ネット証券の元祖松井証券や次世代ネット証券フォリオのようなサービスが登場することで、私たちの投資に「テーマ投資」という選択肢が増えたといえます。ぜひ活用したいものです。
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LIMO編集部