2023年度より、老齢年金の「特例的な繰下げみなし増額制度」が開始します。
そもそも年金の受取方法の一つに「一括受給」があるのですが、これまではほとんどメリットのない方法でした。
今回の改正により、有利になるポイントがあるのです。
「特例的な繰下げみなし増額制度」についてくわしく解説します。
【注目記事】厚生年金だけで「ひと月平均20万円以上の年金収入」という羨ましい人は男女で何割か
1. 老齢年金(厚生年金・国民年金)を受け取る時期はいつ?
老齢年金には、厚生年金と国民年金(基礎年金)があります。
これらは原則として65歳からの受給開始となりますが、この限りではありません。
1.1 繰上げ受給:65歳より前に受け取る
老齢年金を60歳~65歳に繰り上げて受け取ることを「繰上げ受給」と言います。
早く受け取れることがメリットである一方、1か月あたり0.4%減額される点には注意が必要です。
たとえば60歳まで老齢年金を繰り上げるとしましょう。
このとき「60か月×0.4%=24%」の減額となり、さらにこの減額は生涯にわたり続くこととなります。
1/3
出所:日本年金機構「年金の繰上げ受給」
1.2 繰下げ受給:66歳以降に受け取る
66歳以降に老齢年金を受け取ることを、繰下げ受給と言います。
年金開始までの資金の確保は課題ですが、1か月遅らせるごとに0.7%が増額されます。
2/3
出所:日本年金機構「年金の繰下げ受給」
70歳まで繰り下げると「60か月×0.7%=42%」の増額、75歳まで繰り下げれば「120か月×0.7%=84%」の増額です。
また、老齢基礎年金と老齢厚生年金をセットで繰り下げることも、いずれか一方のみを繰り下げることもできます。
1.3 老齢年金の一括受給
老齢年金を繰下げていた場合でも、5年前までさかのぼって一括受給することができます。
例えば大きな病気になったときなど、一時的にお金が必要になる場面などで選択されます。
この場合、繰下げ受給ではなく一括受給となるため、せっかく待機していても受給額は増額されません。
そのため、一括受給のメリットはあまりないとされていました。こちらが2023年度より改正となるのです。
2. 2023年4月から「特例的な繰下げみなし増額制度」が開始
2023年4月から、「特例的な繰下げみなし増額制度」が開始となります。
これにより、70歳到達後に繰下げ申出をせずにさかのぼって本来の年金を受け取ることを選択した場合でも、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができるようになります。
3/3
出所:日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されます」
3. 特例的な繰下げみなし増額制度の対象者
特例的な繰下げみなし増額制度の対象となるのは、次のいずれかの要件を満たす方です。
- 昭和27年4月2日以降生まれの方(令和5年3月31日時点で71歳未満の方)
- 老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日以降の方(令和5年3月31日時点で老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して6年を経過していない方)
※80歳以降に請求する場合や、請求の5年前の日以前から障害年金や遺族年金を受け取る権利がある場合は、特例的な繰下げみなし増額制度は適用されません。
※過去分の年金を一括して受給することにより、過去にさかのぼって医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金等に影響のある場合があります。
特に注意したいのは、税金や社会保険料に影響が出るかもしれない点です。
年金の金額に応じてこれらの金額が決まるため、遡って適用されれば追加で支払うお金が生まれる可能性もあります。
制度を利用した場合の見込額等については、年金事務所等で個別に相談することも可能です。
4. 2023年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行
2023年4月1日、老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されることにより、特例的な繰下げみなし増額制度が開始されます。
これにより、遡って本来の年金を受け取るときには請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができるようになります。
ただし、手続き時点から5年以上前の年金は時効により受け取ることができない点には注意しましょう。
年金生活に向け、年金の受け取り方も重要となります。あらゆる方法を知っておきましょう。
参考資料
太田 彩子
