【2023年の商船三井の株価】市況の底打ち感を背景に、懸念材料は本格的な下落材料にならず

2022年度第三四半期決算発表では業績見通しの部分に懸念が残る内容でした。

第三四半期までの利益のけん引役となっていたONE社のコンテナ事業ですが、第4四半期の3カ月については前年同期比▲82%と大幅な減益見通しに。これが重しにもなり、ONE社の通期決算も12%の減益見通しとなっていました。

商船三井株式会社「2022 年度(2023 年 3 月期) 第3四半期決算説明会(オンライン形式) 主な質疑応答 」では、2023年度にはコンテナ船事業が赤字になるリスクに対する質問も出るなど、投資家の懸念も高まっていたものと考えられます。

こうした要因が一時は株価に下落圧力をもたらすかに見えましたが、結局は2月以降も株価は堅調な推移となりました。ここでは、次の二つの市況動向が商船三井の株価に影響を与えたと考えられます。

一つは為替の動向で、商船三井自身も有価証券報告書にて業績変動のリスクとして記載しているように、同社のビジネスの多くは海外との海運取引で、収入は米ドル建てとなるケースが多いです。そのため円安は増益、円高は減益要因となる場合があります。

米ドル円の為替相場の推移(縦軸:円)(2022年6月1日~2023年2月28日)

出所:各種資料をもとに筆者作成

2022年は総じて円安でしたが、2022年の秋以降から円高が進行していたため、為替が商船三井の減益圧力をもたらすリスク要因となっていました。しかし、2023年1月半ばごろから円高に歯止めがかかり、再び円安トレンドを示している点が、株価のサポート材料になったと考えられます。

もう一点は、主力事業の一つであるコンテナ船運賃が挙げられます。コンテナ船運賃について、英バルチック海運取引所が発表する、外航不定期船の運賃指数である「バルチック海運指数」を2021年1月~2023年3月22日まで確認してみましょう。

出所:各種資料をもとに筆者作成

2022年の半ばから徐々にコンテナ船運賃が下落傾向にあったことがわかり、これは海運事業において業績の悪化要因となる可能性があります。しかし、直近を見ると下げ止まりの兆しが見られることがわかります。

コンテナ船運賃の底打ちが商船三井の業績下支えになるとの期待も、株価の上昇要因となったと考えられます。