2023年3月10日に発表された、株式会社共和電業2022年12月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社共和電業 代表取締役社長 田中義一 氏
会社概要
田中義一氏:おはようございます。共和電業代表取締役社長の田中でございます。本日はお忙しい中ご出席を賜り、誠にありがとうございます。
本日は、当社の会社概要、2022年12月期の決算状況の概要、2022年よりスタートした中期経営計画「KYOWA New Vision 75」の取り組み状況、トピックスをご説明します。
まず、当社の概要です。当社は東京都調布市にあり、設立は1949年で、今年で創立74年になります。連結子会社として国内6社、海外3社、合計9社があります。
グループ会社・事業系統図
当社グループの概要です。山形共和電業では、当社の主力製品である「ひずみゲージ」や各種センサを、甲府共和電業では測定器や記録器の生産を行っています。
共和計測は、製造と計測コンサルの2つの分野にまたがっています。この会社では、試験装置や検査装置などの設計・製造のほか、ニューテックとともに各種計測機器の設置やデータ収集・データ解析等の計測コンサルティング業務を行っています。
共和サービスセンターでは、当社製品の修理・校正・点検や各種校正証明書の発行を行っています。タマヤ計測システムでは、ダムの堤体観測機器や気象環境観測機器等の設計・製造販売を行っています。
このように、主に当社グループで製造した製品・サービスを、当社を通じて販売する垂直統合型の構成となっています。
売上高・営業利益推移
2022年12月期の決算概要についてご説明します。受注高は、前期のような高速道路向けの設置型車両重量計の大型受注案件がなかったため、前期より約4パーセント減少の147億100万円となりました。一方で、企業の設備投資意欲が旺盛だったため、この大型案件の影響を除くと、全体として受注高は増加しています。
売上高は、前期より約5パーセント減少の138億2,300万円となりました。電子部品等の調達遅延に伴う生産リードタイムの長期化の影響で、汎用品売上が減少したことが要因です。また、前期にスポット物件として、海外における自動車衝突試験関連の大型システム案件がありましたが、その反動も影響しています。
この結果、部品の調達遅延による生産の遅れに伴い、当期末における受注残が前期末と比べて約9億円増加しました。部品の早期調達や代替製品の提案などの対策を図り、受注残増加分を今期の業績に寄与できるよう対応していきます。
営業利益については、原価率の改善が見られる一方で、コロナ禍に伴う行動制限の解除を受け、展示会をはじめとした積極的な営業活動を促進した結果、販管費が増加しました。営業利益は6億4,600万円で、前期に比べ約25パーセントの減益となりました。
収益の増減内訳
収益の内訳です。営業利益は、不採算案件の減少や減価償却費の減少に伴う原価率の改善効果として、2億3,600万円の増益となりました。一方で、売上の減少や販管費の増加に伴う利益減で、合わせて4億5,300万円の減益となりました。差し引きで2億1,600万円の減益です。
経常利益は、営業外損益で為替差益など2,300万円の収益がありましたが、前期にあった雇用調整助成金収入がなくなったため、差し引きで400万円の減益となりました。結果として、2億2,100万円減益の7億5,300万円となっています。
当期純利益については、保有株式の見直しに伴う株式売却益等がありましたが、前期に比べ1億1,800万円減益の5億7,600万円となりました。
主要事業分野の売上高
主要事業分野別の売上状況です。自動車試験分野は部品入手難の影響に加え、海外における特定ユーザー向けのリピート案件や、先ほどお伝えしたタイの大型システム製品の減少により、約22パーセントの減収となりました。当期が国内自動車関係の衝突試験関連システムの更新需要のはざまであったことも、売上が減少した要因の1つと考えています。
運輸・交通インフラ分野においては、高速道路向け設置型車両重量計が前期に比べ減少しましたが、鉄道車両の熱検知システムをはじめ、鉄道分野、航空宇宙分野における汎用品売上が堅調に推移しました。
環境・防災・エネルギー分野は、前期は洋上風力発電の大口売上がありましたが、ダムの堤体観測装置の更新需要が伸びたことから、ほぼ前期並みの実績となりました。
工業計測分野は、自動車試験分野と同様に部品入手難の影響が大きく、汎用品の売上は減少しましたが、特注・システム品の大口案件の寄与により、ほぼ前期並みの実績となりました。
主要な海外地域別の売上高
海外の地域別売上状況についてご説明します。海外売上高は19億8,100万円となり、前期に比べ11パーセントの減収となりました。海外売上比率は14.3パーセントで、前期に比べ1.1ポイントの減少となっています。
中国は前期の景気が非常に良く、売上が大きく伸びました。しかし、当期はゼロコロナ政策の影響で経済活動が停滞し、約16パーセントの大幅な減収となっています。
タイは前期が4億8,400万円と非常に好調でしたが、このうち2億4,000万円ほどが自動車衝突試験関連の大型システム製品の売上でした。その大幅な減少を除くと順調に伸びています。
アメリカは売上としては伸びていますが、円安の影響もあり、ドルベースではほぼ前期と同水準という結果になりました。
欧州については、工業計測分野の売上は伸びましたが、自動車向け高温用ゲージの大口案件が減少したため、約16パーセントの大幅な減収となっています。
財務のポイント
財務の状況についてです。部品入手難に伴う在庫の積み増しの影響により、仕掛品や原材料等の棚卸資産が8億7,100万円増加しています。これらの棚卸資産が今期の売上に寄与できるように確実な納期対応を図っていきます。
また、純資産は株主還元の充実および資本効率の向上を目的として、昨年12月に自己株式を約28万株、金額にして約1億円取得したことにより、自己資本比率は0.7パーセント減少の69.9パーセントになりました。
配当について
配当についてです。期初の段階では11円の配当を予定していましたが、株主のみなさまに対する利益還元の充実をはかる観点から2円増配し、13円として今回の株主総会に諮ります。
また、自己株式を取得したことにより、総還元性向は79.0パーセントとなりました。なお、取得した自己株式については、今年2月15日付ですべて消却しています。今期の配当については、1株あたり13円、配当性向で51.2パーセントを予定しています。
中期経営計画概要
2022年からスタートした中期経営計画「KYOWA New Vision 75」の取り組み状況についてご説明します。最初に、今回の中期経営計画の考え方についてです。スライドの図をご覧ください。中期経営計画の策定にあたり、社員が会社の目指す方向性を常に意識して行動することができるように、社是から順に下に降ろし、基本戦略に落とし込んでいます。
「社是・信条」は、当社グループで働くすべての人々の行動規範や心構えとなるものであることから、経営としての解釈や考え方を「KYOWA WAY」とともにポケットサイズの「KYOWA WAY手帳」というかたちでまとめ、グループ社員全員に配布しました。理念やビジョンのさらなる浸透、社内の「対話」の活性化を図っています。
また、これまでの企業理念や企業ビジョンを見直し、自社の存在意義と社会への貢献のあり方について「経営ビジョン」として再定義しました。その上で、当社が行うべき6つのミッションと、それを実現するための4つの戦略を策定しています。
中期経営計画概要
このスライドは、「経営ビジョン」を社内で浸透させるために作成したポスターです。経営ビジョンを、文章、イラスト、簡単なストーリーで表現しています。イラストの中央には「株主様」「関連会社、お取引先」「お客様」を、左側には「共和電業グループ」を、右側には「社会」を描きました。
当社グループは、計測ツールである各種測定器やセンサ、計測システム、または計測そのものをお客さまに提供しています。「お客様と共に、当社製品による計測を通じて、社会を構成する人や地域の安全の実現に寄与し続けていくこと」を目指しており、今後も安心な未来づくりに向けて貢献していくことをイメージ化しています。
また、当社グループを支えている社員一人ひとりが、当社の企業活動を通じて目指している「安全な社会」「安心な未来」、そしてその家族、親戚、友人、地域、社会を通じてつながっている、ということも意図しています。
計数目標
中期経営計画の計数目標については、当初計画から変更は行っていません。2027年度の売上目標を190億円、中間期となる2024年度の売上高目標を163億円としています。
目標とする指標として、営業利益率とROEを掲げています。2027年度における営業利益率は10パーセント、ROEは8パーセント、中間期となる2024年度における営業利益率は8.2パーセント、ROEは5.2パーセントを目指しています。
なお、今期の目標は売上高で前期比111パーセントの153億円、営業利益で前期比155パーセントの10億円、経常利益で前期比133パーセントの10億円を見込んでいます。
今期の計画達成に向けて、昨年末の受注残高は約55億円と、汎用品を中心に前期に比べ約9億円の増加となっています。この要因は先ほどお伝えしたとおりで、電子部品等の供給不足による生産停滞や原材料費高騰等に伴う経済活動への影響が依然として残っており、先行き不透明な状況です。
その中で、リスクとなる部品調達に対して関連部門が連携を強化し、部品をしっかり手配することや、なかなか入る見込みのない部品については代替製品の提案や、設計変更を行うことで確実な納期対応を図り、数値目標の達成を目指していきたいと考えています。
今期の注力分野としては、自動車試験分野でEV仕様の新車開発が加速しており、衝突試験の増加が見込まれる中、お客さまのニーズに応えることで、確実な受注・売上の確保に努めていきます。
また、再生エネルギー需要の高まりに伴い、ダムの堤体観測システムの点検・更新需要も増加しており、中期経営計画の施策で掲げている「フィールドビジネスへの対応力強化」により、確実な受注・売上の確保を図っていきます。
加えて、材料費や調達物流コストの高騰を受け、昨年10月の受注分より、ひずみゲージやひずみゲージ式変換器等の一部汎用品について、10パーセントの値上げを実施しました。この価格改定の定着化を図ることで、汎用品の収益改善につなげていけると考えています。
なお、価格改定については、昨年の段階ではひずみゲージとひずみゲージ式変換器に限りましたが、測定器や記録器等についても、部品調達の状況等を勘案しながら今後検討を進めていく予定です。
中期経営計画概要
中期経営計画において、経営ビジョンとして掲げた「計測を通じ、お客様と共に社会と人の安全を実現し、安心な未来をつくる」ために、当社が計測器メーカーとして社会やお客さまに向けて行うべきことを6つのミッションとしました。
それを実現するために、4つの基本戦略に落とし込んで活動を進めています。昨年の主な取り組み状況についてご説明します。
中期経営計画 KYOWA New Vision 75 基本戦略①
最初に、「計測事業のさらなる拡充」についてです。高速鉄道車両向けの台車温度検知装置の新設・更新に伴う設置業務等をはじめとしたフィールドビジネスへの対応強化や、JCSS 振動加速度の校正技術者およびASNITE(アズナイト)加速度校正技術者の増員など、社内体制を整備してきました。
「コト売り」の一環である校正事業は、人材の育成も行いながら、製品の信頼性と顧客への提供価値を高めることで事業の拡大を図っていきます。
中期経営計画 KYOWA New Vision 75 基本戦略②
「デジタルを活用した販売力の強化」についてです。お客さまの利便性向上のため、「Amazon」による販売のための社内システムを構築し、今年2月からひずみゲージ中心のラインナップで運用を開始しました。今後は、取扱製品の拡大と海外向けWeb販売の検討を進めていきます。
また、昨年11月には、当社で初めての試みとして、当社グループとその他計測関係の会社を含めた合計7社の参加により、各種センサ・測定器から計測サービス・コンサルティング業務までを一堂に紹介するオンライン展示会を主催しました。
当社の製品と親和性の高い製品を持っている計測機器メーカーと合同開催することにより、多様な分野への幅広い対応力をアピールするとともに、遠方のお客さまや既存のお客さま以外へのアプローチができたのではないかと思っています。これらの取り組みにより、お客さまからのお問い合わせが増加するなど、効果が出てきています。
また、さらなる認知度の向上やWebサイトの利便性を高めるため、現在、自社のWebサイトの再構築を進めています。
中期経営計画 KYOWA New Vision 75 基本戦略③
「変革を促す組織基盤の強化」についてです。現地・現物・現実を見つめた的確なQCDの確保に向けて、生産工程の全体最適化・効率化の促進を図るため、ひずみゲージをはじめとする生産プロセスの計画を検討してきました。具体的には、グループ会社である山形共和電業の生産工程を見直しています。
また、経営ビジョンの実現と社員の幸福感を向上させるための取り組みとして、CFT(クロスファンクショナルチーム)活動を立ち上げました。「多様化した働き方への対応」「社員の成長とリーダー育成」について、今回の中期経営計画の最終年である2024年に向けて、順次具体的な施策を立案し、実行できるように取り組んでいます。
中期経営計画 KYOWA New Vision 75 基本戦略④
「ESGへの取り組み」としては、2030年までにCO2排出量を2015年比で46パーセント削減することを目標としています。このため、グリーン電力や省エネ対応生産設備を導入するなど、各種施策の検討を進めています。
その一環として、山形共和電業の敷地内に太陽光発電設備の導入を計画し、今夏には稼働できるよう取り組んでいます。この設備を導入すると、2021年の当社グループの総排出量の約10パーセントである年間約400トンのCO2が削減できます。
中期経営計画 KYOWA New Vision 75 基本戦略④
サステナビリティ基本方針の策定や推進体制の設置などの検討も進めています。基本方針については、今月末に提出予定の有価証券報告書および自社Webサイトで開示する予定です。
また、コーポレートガバナンスの強化に向けた取り組みの一環として、株主の視点に立った経営に取り組み、より一層の企業価値向上を図るため、役員報酬制度の見直しと、譲渡制限付株式報酬制度(RS)の導入を決定しました。これは今月開催する株主総会に諮る予定です。
さらに、社外取締役を増員し、全取締役の3分の1以上を選任しています。女性取締役も社外から1名選任しています。
企業価値の向上に向けた取り組みの状況
企業価値向上への取り組みについてです。当社はプライム市場の上場維持基準に対し、2022年は配当性向の向上や自社株買いにより、総還元性向を向上させる取り組みを行ってきましたが、「流通株式時価総額」と「1日の平均売買代金」の2項目が未達となっています。
1日の売買代金は、2022年の出来高が前年比126パーセントと増加し、今年の1月から2月においても前年同期比170パーセントと増加傾向にあります。施策の成果が徐々にあらわれてきていると考えており、引き続き企業価値向上への取り組みを推進していきます。
企業価値の向上に向けた取り組みの状況
プライム市場の上場維持基準の適合計画への課題である、流通株式数の増加と株価上昇のため、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資するべく、中期経営計画の達成に向けた取り組みを継続的に行っています。
株主還元施策の充実や、当社の情報がより多くの投資家のみなさまの目に触れる機会の創出に向け、スピード感をもって臨むことが投資魅力を高め、企業価値の向上につながるものと考えています。
引き続き計画に基づく取り組みを着実に推進するとともに、適時・適切なコーポレート・アクションを実施し、プライム市場上場維持基準への適合を目指していきます。
トピックス① BOLT EYE
最後に、トピックスをご紹介します。1つ目は、ボルト軸力センサ製作サービスの「BOLT EYE(ボルトアイ)」についてです。一例ですが、生産ラインにおいて、生産設備や治具のボルトが振動で緩むと製造物の品質低下を招く恐れがあります。しかし、ボルトにかかる軸力を測定することでボルトの緩みを検知でき、予知保全や品質維持に役立てることができます。
お客さまから提供していただくボルトに穴を開け、ひずみゲージを用いたボルト軸力センサを製作するサービスで、国内外問わず、さまざまなお客さまからお問い合わせをいただいています。
プリント基板に使用する小さなボルトから、橋梁などの大型構造物で使用される大型ボルトなど、幅広い大きさへの対応が可能なことや、温度変化などさまざまな環境下で使用できることがこの製品の強みです。
この強みを活かし、大型構造物の長寿命化に向けた予知保全やインフラ維持管理などの社会課題の解決に寄与する、新たな計測ソリューションの創出を図ります。
なお、スライドに記載のとおり、各メディアで取り上げられていますので、ご興味のある方はQRコードからご覧ください。
トピックス② 認知度向上に向けた取り組み
もう1つは、認知度向上への取り組みの一環として、TOKYO MXで放送されている『カンニング竹山のイチバン研究所』にて、今年2月に当社が紹介されました。この番組ではさまざまな業界の「イチバン」を紹介しており、当社は「ひずみゲージの国内総生産数量のイチバン」として紹介されました。
今後もさまざまな取り組みで当社の認知度向上を図り、業績向上につなげていきます。
なお、番組では「ひずみゲージとは何か?」「共和電業はどのような会社か?」といった点もわかりやすく説明されています。5分から6分程度の内容ですので、ぜひ当社の公式YouTubeチャンネルからご覧いただき、理解を深めていただければ幸いです。
企業価値向上に向けて中期経営計画の各施策を確実に実行し、計画達成に向けて引き続き取り組んでいきますので、これからもご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
本日はご清聴いただきありがとうございました。