2023年3月6日に発表された、株式会社JPMC 2022年12月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社JPMC グループCEO 代表取締役 社長執行役員 武藤英明 氏
株式会社JPMC グループCFO 取締役 服部聡昌 氏
2022年の概況
服部聡昌氏:それでは、2022年12月期JPMCグループ決算説明会を開始させていただきます。私はグループCFO取締役の服部と申します。よろしくお願いいたします。
まず、2022年の概況をご報告します。創立以来21期連続増収、営業利益も連続増益を達成しています。特にストック収入が売上高成長を牽引しており、M&Aで取得したJPMCシンエイの成長も寄与しています。
リフォーム事業収入も前年比76.1パーセント増と順調に成長し、JPMCシンエイの管理物件のリフォーム受注も順調に伸びています。
運用戸数は12月末で10万6,704戸、新規申込戸数は9,442戸となっています。
株主還元については後ほどご説明します。
連結決算ハイライト 連結PL
連結決算ハイライトです。まず、連結損益計算書についてご説明します。売上高は前年比プラス5.3パーセント、28億1,100万円増の562億2,700万円、営業利益は前年比プラス3.8パーセント、8,600万円増の23億8,700万円となりました。
経常利益は前年比プラス4.2パーセント、9,600万円増の24億100万円、当期純利益は前年比プラス36.9パーセント、4億2,800万円増の15億9,000万円となりました。
ストック収益は順調に推移しました。2021年7月にM&Aで取得したJPMCシンエイも収益に貢献しています。
リフォーム事業も堅調に推移し、利益成長に貢献しています。
また、後ほどご説明しますが、2022年下期より新基幹システム開発に着手し、2022年度ではシステム投資等の費用として1億1,000万円を計上しています。既存データベースをはじめとした基幹システムの全面刷新に向けて大きく舵を切っています。
2023年12月期 通期計画
2023年12月期の通期計画です。売上高は12億7,200万円増の575億円、営業利益は2億1,200万円増の26億円、当期純利益は1億5,900万円増の17億5,000万円となっています。今期も引き続き人員の増強を図り、来期以降に向けた成長の芯固めをしていきます。
売上区分別の状況
売上区分別の状況です。プロパティマネジメント収入は11億2,600万円増の535億6,500万円、PM付帯事業収入は2億6,200万円増の26億9,000万円となっています。その他収入はフロー収入ですが、このうちリフォーム工事関連で7億4,800万円を計画しています。
KPI(運用戸数・申込戸数)
KPIについてです。運用戸数は期末で64戸増の10万6,704戸、申込戸数は558戸増の9,442戸となっています。こちらの振り返りについては、後ほど代表の武藤からご説明します。
中計の進捗
中期経営計画の進捗についてご報告します。運用戸数・新規申込戸数は、先ほどお伝えしたとおりです。2023年の計画では、売上高575億円、ROE20パーセント以上を目標としています。2022年の結果としては、ROE22.1パーセントと依然として高い水準を維持できました。
配当性向に関しては、2022年は53.2パーセント、進行期である2023年は50パーセント以上を予想しており、配当は通期で51円を予定しています。
ROEとDOE
ROEとDOEです。スライドのグラフで示したように、2022年のROEは22.1パーセントと20パーセントを超え、高い資本効率を維持できました。DOEについても、11.8パーセントと10パーセント超の水準で推移しており、2023年も10パーセント超えを予想しています。
2024年度に過去最高益更新を目指す!
次のパートでもお伝えしますが、2019年からストックビジネスによる成長を目指しています。ストックの成長は持続的な成長を可能としており、現在、持続的成長は安定した増配につながっています。また、2024年にはストック中心で過去最高益の28.5億円を目指しています。
ストックとフローの粗利 長期間の推移
武藤英明氏:続いて、私から、2022年の総括および中長期成長へ向けたPropTechへの挑戦、M&A戦略、社会課題への取組についてご説明します。
まず、2022年の総括です。従前より、当社はストック重視で取り組んでいくとお伝えしてきました。過去の推移をグラフを交えてご覧ください。
まず、2018年に過去最高益を出しました。グラフで一目瞭然ですが、フローが利益にかなり貢献していました。ご存じのとおり、我々にとって売買仲介、所有物件の売却は相当な利益を生みますが、社会情勢や経済環境により大きく左右されます。
2018年から2019年にかけて、「かぼちゃの馬車」という記憶に新しい事件がありました。以降、不動産融資が非常に厳しくなり、JPMCアセットマネジメントの売買仲介など、いわゆるフローに関する事業が大幅に停滞し、その結果、減益となってしまいました。
一方で、グラフのオレンジ色が示すように、昨今、当社が特に力を入れているビジネスについては順調な成長を果たしています。期待を裏切らず、我々が予測したとおりに目標を達成する、予実管理が非常にしやすい分野がストックです。そのため、これから投資家のみなさまの期待を担うためにも、ストック中心の堅実で確実な成長を果たしていこうと考え、ストックビジネスに特に力を入れています。
新規申込戸数
新規申込戸数については、コロナ禍という予測不可能な事態があったものの、我々の本業そのものにはそれほど影響はないと感じていたのですが、残念ながら、新規のお客さまやオーナーへの営業に関しては、やはり「face to face」での取引が重要であるという結論に達しました。
さまざまなデバイスを活用したZoom営業や、中間にあたる現地パートナー企業の社員にデバイスを持ち込んでもらうなど、いろいろな方法を試したのですが、それぞれのオーナーご家族の重要な資産である賃貸住宅を預ける決断をいただくには、やはり「face to face」の営業や数回にわたる営業で信頼関係を築いていく必要があると感じました。
実数を見ていただくとわかるとおり、主に我々が得意としてきた地方のオーナーからのパートナー経由での受託がコロナ禍で大きく減り、それに反比例するように銀行からの紹介案件が非常に増えました。それ以降についても、金融機関からの紹介数は変わっていません。
ただし、パートナー経由がかなり劇的に復活しているため、金融機関の比率は下がってきました。それぞれの地域の不動産会社・建設会社は、この2年半の停滞による損失分を取り戻したいと非常に強い意欲を持っています。
また、オーナーも今後の賃貸経営に引き続き不安を持っていることには変わりないと思います。パートナー経営が劇的に回復しても、銀行経由は特別増えてはおらず、減ってもいません。絶対数としてはイーブンで維持しています。
パートナーズ大会 3年ぶりリアル開催!
特にこの流れを体感したのが、昨年6月に20周年を記念して行ったパートナーズ大会です。本来は毎年6月に、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の当社事業所のある地区で順番に開催していたのですが、コロナ禍の影響で3年ぶりのリアル開催となりました。
4年に1度は本社のある東京に戻ってくるサイクルで開催しており、本来、東京開催時は1,000人近い集客なのですが、まだ若干コロナ禍の影響があったのか、今回の参加者はおよそ3分の2の600人程度でした。
それでも、パートナーのみなさまの「失われた2年半を取り戻したい」という意欲を非常に感じました。これが先ほどの実数にも表われていると思います。
コロナ禍 新規申込戸数増加へ
我々自身も、他律要因でパートナー案件の復活だけを待っているわけにはいきません。パートナーズ大会のリアル開催により、これは間違いなく復活すると確信したため、営業チャンネルをさらに強化していきたい考えです。
社内的には営業スタッフの増強を行っています。採用を強化したいのは他社も同じだと思いますが、実際の局面では私どもも採用できていません。人材紹介エージェントからは、当社はまだ成功している部類だと言っていただくのですが、それでも定足数を満たせません。
また、社内公募制は従前より設けていましたが、4月と10月に「このようなポジションが空いている」と社内リリースを出しました。社内制度も大きく見直し、社員のやる気を引き出そうと、コンサルタントへの営業手当を大幅に支給しました。社内公募による異動についても、さっそく手を挙げてくれた社員がおり、1月1日に有為な人材を営業部門へ異動させることができました。
さらに、サイドからのサポートとして、さまざまな業務システムの見直しを行いました。例えば、フロントで営業以外の業務に携わる、バックヤードのグループセクレタリーいわゆるアシスタントや、本来は運営担当であるプロパティマネージャーなどです。
社内で引き受けられるもの・別部門で引き受けられるものはできるだけ引き受けたり、ペーパーレスの実施やDX化によって、実際にフィールドで活躍する営業スタッフの負担をどんどん減らしています。こちらはすでに2回の大幅な改革を行っています。
組織体制についても、より営業しやすいよう、地域で分けるのではなく職性で分けています。ダイレクトセールスをするダイレクトマーケティング部、インダイレクトセールスをするパートナー事業本部と、2色にはっきり分けた組織変更で、より一層営業に特化しやすく、1つの職能に長けた人材を投入しやすくしました。
サービスラインナップ強化
サービス拡充も行っています。JPMCシンエイのM&Aから遡ること1年前、リニューアル・リフォーム・リノベーションを自社でできるJPMCワークス&サプライを設立しました。これまでもリフォームパートナーと組み、スーパーリフォームというかたちで物件の再生を行ってきましたが、JPMCワークス&サプライは一級建築士事務所であり、東京・名古屋・大阪など、我々がダイレクトセールスできる地域で、実際にリフォームができる会社です。
さらに、単にリフォームするだけではなく、「スーパーリユース」というスタイルで、運用もセットでお客さまに提供できるよう、コンセプトを変更しました。
建築偽装や建築基準法違反などプレハブメーカーの不祥事が続き、法人の社宅として借りていた方が大切な社員を建築偽装物件に住ませにくい環境が生まれ、メーカー離れが進みました。そこで我々はノウハウを知るメンバーを集め、法人部門を専門に立ち上げました。
我々のような規模のサブリース会社で法人部門を持っていなかったのは、恥ずかしながら当社だけだと思います。そこで満を持して、法人をアテンドする「JPMCエージェンシー」という新しい法人を作り、法人入居斡旋事業を開始しました。
受注は非常に好調ですが、残念ながら現時点では当社グループの物件数が11万戸しかありません。オーダーは入っていますが、92.9パーセントの高入居率のためアテンドできる部屋が足りず、お客さまの要望に応えられていないのが実情です。こちらは間違いなく将来的に期待できる分野だと考えています。
従前からお伝えしているとおり、我々はこれまで、職業が不安定な方やペットと暮らしたい方、高齢の方にソリューションを提供してきました。JPMCファイナンスによる滞納保証やサービス付き高齢者向け住宅を全国に展開する「ふるさぽ」というサービスです。
そして、外国人への入居斡旋にもようやく着手し始めました。フォースバレー・コンシェルジュやYOLO JAPANに出資し、彼らが職業斡旋した際には我々の賃貸を紹介してもらうスキーム作りに取り組んでいます。
このように、我々は負の遺産となる新築物件を建てるのではなく、今ある賃貸を活かすための、時代に叶ったワンストップサービスを提供できる企業へと変貌しつつあります。
社名変更
中長期成長に向けたPropTechへの挑戦についてご説明します。当社は2022年6月7日に創立20周年を迎えました。21年前は社員が私一人しかいない会社でした。オーナーに安心感を持ってもらうために会社をあまり小さく見せないよう、サブリース事業を全国展開する「日本管理センター」として創業しました。
10年が経過して東証二部に上場した時には、今後はいろいろな技術を取り入れていかなければならないということで、そのような言葉の意味を持つ「JPMC日本管理センター」に変更しました。社名変更まではしていませんが、パンフレットのロゴマークに「JPMC」という言葉を入れるなどしていました。
そして、この「JPMC」というロゴを使い始めて10年が経ち、いよいよ「PropTech」という言葉を前面に押し出し、外見のみならず中身も変えていこうということで「JPMC」という社名に変更しました。
ビジネスモデル
我々が何を目指していくのかは大事なことですので、繰り返しご説明します。これまで業界ベスト5の企業といえば、大東建託、レオパレス21、積水ハウス、大和ハウス工業、東建コーポレーションでした。これらはすべて、主にプレハブのアパートを建築してオーナーに提供する、建てることがメインの企業です。自社で建築・仲介・管理し、サブリースする垂直統合のモデルです。
しかし、地域やマーケット、オーナーの土地の形状によって建てるべきものは変わってきますし、入居者の好みも変わってきます。また、これまで提供してきたワンルームには住まない人が多い地域もあります。
我々は、単に金太郎飴のように画一化した物件を作り続けるのではなく、土地に合った物件を作ったり、無理に作るのではなく現在の躯体を延命したり、一般の若者向けの賃貸で入居者が見込めない地域でサービス付き高齢者向け住宅にしたりすることを考えました。
これまではメーカーがサブリースを提供してきたため、サブリースなしでは融資も下りにくく、オーナーも安心して建築できませんでした。そこで、「プレハブメーカーに負けないサブリースを提供しよう」ということになりました。
我々は、それぞれの地域を知り尽くした地元の管理会社や仲介会社に管理・仲介、運営をしてもらい、地域・物件・時代に合ったサービスが提供できるスキームに変換しよう、ゲームチェンジしようという思いで会社を作りました。
スクラップ&ビルドからリユースへ~日本の賃貸住宅経営の担い手に~
これからの時代は、スクラップ&ビルドを繰り返していてはいけません。そのために、我々は「スーパーリユース」というサービスを生み出し、10年間で2万6,300戸を提供しました。2016年には経済産業省から表彰も受けています。こちらは今後より広がりを見せるビジネスだと確信しています。
JPMCワークス&サプライおよびJPMCシンエイのセットだけを見ても可能性はまだまだ高いと考えています。特に「持続可能な賃貸経営」「スクラップ&ビルドを繰り返さない」というSDGsの観点からも、これほどこの業界に寄与できるビジネスはないと信じています。
賃貸住宅経営の最先端へ
我々はさまざまなサービスを提供しています。繰り返しになりますが、内製化したサービスにより、いろいろな方に賃貸住宅を提供できます。サービス付き高齢者向け住宅は業界3位ですが、外国人の入居斡旋についても上位を狙っていこうと考えています。
また、DXやデジタル化という観点では、「スマート仲介」「コンシェルジュアプリ」などがあります。入居者向けとオーナー向けではまったく内容が違いますが、我々はアプリケーションだけを提供する企業ではありません。
アプリケーションを作れば、その先にはすでにお客さまがいます。例えば、約11万戸の先には20数万人の入居者の方がいますし、当社の物件は8,000棟近くあるため、オーナーアプリを作れば、その先に8,000人近い富裕層のオーナーがいます。我々にはすでにお客さまがいるため、オーナーアプリや入居者アプリを作る一企業とは背景がまったく違います。
このような財務基盤や最先端の賃貸住宅経営のノウハウを武器に、他社との差別化をさらに図っていこうと考えています。
Efficiency is vital for us ~効率化の徹底追求!もっとエクセレントカンパニーへ~
特に差別化を図りたいのは効率化です。今年の標語は「Efficiency is vital for us」です。財務的にいうと、高い家賃をオーナーに提案しても、販管費を減らせば減らすほど我々には収益が残ります。また、コンペチターとして、ハウスメーカー、プレハブメーカーの子会社の管理会社やサブリース会社も、自社建築だけではなく他社物件のサブリースを取りにくる可能性が高いと思っています。
その時に彼らとコンピートしても、事業効率が高くて販管費率が低ければ、家賃を高くしても勝てます。また、負けたとしても彼らに利益が残ることは少なく、事実上の勝利となります。我々は、まさに「Efficiency is vital for us」という思いでこれを標語にしています。
PropTechの開発・導入
一般的なプレハブメーカーは建築の営業部隊を持っているため、1人あたり約25戸から50戸の運用戸数です。
一方、当社は新築を建てておらず、営業部隊もありませんが、事業効率を高めてきました。最初からそのような意図で企業を作り、1人あたり424戸を運用しています。
PropTechの開発・導入
それをさらに1,000戸に高めていきます。
効率性の追求 10年後の想定
現在は一時的に投資しているため、販管費率が少し上がっていますが、新規の投資がなければ基本的に6パーセント台です。こちらを3パーセントにまで下げていくことが我々の目標です。
新データベースプロジェクト 始動!
まずは基幹となるシステムが必要です。これまでも「JJMS」という基幹システムがありましたが、残念ながらその仕組みも古くなってきました。そこで将来を見据え、フレキシブルな仕組みに変えるため、我々は3年間かけて5.5億円という大型プロジェクトを組みました。高品質で持続可能な賃貸経営をサポートする仕組みで、さらにそれをリーズナブルに、また、実はこれまで入居者サービスはほとんど行ってきませんでしたが、入居者アプリの検討も始まり快適な自由生活を提供できる仕組みになりました。
後ほど詳細をご説明するM&Aにも関連する話ですが、我々には全国に1,400社のパートナーがいます。例えば、そのうちの700社は不動産会社です。すべてのパートナーの不動産会社がそうだとは言いませんが、多くの地方の不動産会社は人手不足が解消できず、労働力も確保できません。
したがって、内向きな仕事やこれまで抱えている仕事をするしかありませんでしたが、我々がバックヤードの仕事を引き受け、パートナーがフロントの営業業務に特化できるとなれば、どちらにもメリットがあります。さらに、両社の結びつきを深化させるメリットがあることからも、このシステムへの投資は我々にとって非常に優位であると判断しました。
加えて、当社はパートナー企業で後継者がいない方や今後のビジネス展開に悩んでいる企業と友誼を結んでいます。我々も中身をわかっており、先方も当社のことをよく知っている友好関係のもと、一体となってビジネスを進める提案ができればと考えています。
基幹システムの刷新
現状の機能に不足はありませんが、可変性が少なくフレキシビリティに欠けるところがありました。現在、デジタル分野は日進月歩を超えるスピードで変化していますが、それにいち早く対応できる仕組みにはなっていません。常に最適なSaaSと組み、サービス提供できるよう、現行システムでなく、新しいシステムの開発に着手しました。
基幹システムの刷新
スライドをご覧のとおり、新しい基幹システムは上から下へということで、こちらの仕組みによる開発を目論んでいます。
入居者向けのサービスは、入居者アプリをはじめとしたワンストップのサービスです。当社の口座に家賃を入金してもらうため、口座の管理も含めて、いろいろなサービスやサポートができると思います。
我々は当然オーナーの口座に送金していますので、お金周りだけとっても、さまざまなサービスが提供できると考えています。
賃貸住宅業界をめぐるDX化の波
今後見逃せないのは、近い将来、我々の賃貸業界に間違いなく大きな変革が起きるという事実です。今までは、雑誌で物件を探して不動産屋に行き、車に乗って内見してカウンターに戻ってきていましたが、現在は雑誌がスマホに変わりました。
実は変化があったのはそこだけですが、我々の業界では、これからいよいよ本当の意味でのDX化が進んでいきます。スマホで物件を探して内見もでき、契約まで可能であれば、当然そちらに移行すると思います。
すべての物件とはいいませんが、1R・1K・1LDKのように間取りが決まっており、不動産仲介会社の説明を不要とする物件であれば、売買まで波及しないにせよ、賃貸のDX化は非常に進むと思います。
スマホで物件を探し、その物件がある管理会社にLINEで連絡します。すると、サブリース会社に連絡が行き、スマートキーの解除キーが送られてきます。その後、Googleマップで調べて現地へ行き、見たい部屋のロックを解除します。
時間で区切られているため、その時間内では自由に内見できますし、夜中でも内見できます。時間さえ連絡していれば、待ち合わせの必要がなく、いつでも好きな時間に内見できます。
内見が終われば、自宅に戻り「IT重説」を受けます。「IT重説」は、3年前に国土交通省が許可したものです。ZoomやSkypeのような仕組みを使って重要事項説明を受け、「DocuSign」「IMAoS」「クラウドサイン」「freeeサイン(旧、NINJA SIGN)」などで決済し、初期費用は自分のクレジットカードで決済します。
すると、仲介の現場が劇的に変わり、今まで仲介手数料として請求されていた家賃1ヶ月分がいらなくなります。利便性が上がり、金額も抑えられます。使わない人がいるでしょうか?
ただし、CtoCにはならず、CtoBの中で完結すると我々は考えています。すべての賃貸オーナーが、入居者に対応して広告を打てるわけではないからです。そうなると、物件の管理あるいはサブリースをしている会社に必ず連絡が行きます。
この業界が大きく変わる節目が、すぐそこに来ています。その時に、我々は「物元」という有利な立場をさらに他社に先んじて差別化するために、この最先端のデジタル化を進めていこうと考えています。
M&Aの対象戸数
M&A戦略についてご説明します。中期経営計画の達成のためにも将来に向けても、M&Aは不可欠だと思っています。
まず、5,000戸以上の管理会社のうち、我々がM&Aの対象にできる管理会社の物件数だけで300万戸あります。2,330万戸のうち、少なく見積もっても300万戸あります。パートナーの管理物件だけでも約120万戸前後ありますので、これをまず対象にしていくのが、我々の戦略の第一になります。
賃貸住宅業界は二極化へ
賃貸住宅業界に限らない話ですが、ある一定のリテラシーが経営陣にあり、実働できる部隊があり、DX化に成功し業務効率化を実現することで、お客さまの満足度を高めていくことができます。
「勝ち組」「負け組」は少し言い過ぎかもしれませんが、成功する会社と、悩みがなかなか解消できない会社の2つにわかれると思います。必ずしも、成功した会社に後継者がいて、難しい会社に後継者がいないとも限りませんが、経営の基盤を変更する考えをどうしても持たざるを得ないと思います。
その時に、我々は相手のことがわかっており、先方も当方のことがわかっています。このような関係からスタートできるM&Aと、まったくの初対面で仲介会社が間に立って行うM&Aでは、ずいぶん違うと思います。我々はこのような有利な立ち位置から、今後もM&Aを積極的に進めていきたいと考えています。
事業承継支援室設立
事業承継支援室を設立しました。当社は360人余りの中小企業ですので、今までは恥ずかしながら、トップやCFOも自ら部門長として、現場でいろいろな業務を行ってきました。
現在は、パートナー事業本部長の専務やダイレクトマーケティング本部長の常務を2トップとして、ほぼすべてのグループ会社を指揮下に入れて監督しています。また、CFOも思い切って実務から切り離して本来のあるべき姿にし、CFO業務に専念してもらうことにしました。
さらに、現場をよく知る元プロパティマネジメント事業部長を、事業承継支援室長にしました。彼には弊社のほとんどの不動産パートナーと面会実績があり、また、パートナー事業本部の副本部長として周辺の建設会社も含めてリレーションがあります。
今までは、その時だけのプロジェクトとして有機的に集まってプロジェクトに取り組む体制でしたが、これからはこの3者で、積極的に常時取り組むことができる体制となりました。
オペレーションから切り離されたメンバーで取り組む体制を、ようやく作ることができました。「これからさらにM&Aを力強く推進しよう」という強い意志の表れだと感じていただけたら幸いです。
パートナー企業
我々の第一の対象になるのは、300万戸のうち約3分の1を占める、弊社のパートナーになっている地場の有力な賃貸管理会社です。
地元オーナーのつながりもあり、長年当社と友誼もあり、契約もあり、取引もありますので、お互い中身がわかっています。このようなパートナー企業の事業承継に、まずは積極的に取り組んでいきたいと思っています。それ以外にも、いろいろな会社からの紹介があれば、もちろん積極的に取り組みます。
また、弊社のパートナー企業の運用戸数はだいたい数が決まっており、500戸から2万戸くらいまでの間の会社が多くなっています。もっと大きな会社については紹介を受けながら、一緒になったほうがよりシナジーがあるのであれば、ご一緒したいと思っています。
具体的な範囲は決めていませんが、より大きな会社は紹介によって、そしてある一定の企業については主にはパートナー企業の後継者問題をフックに、M&Aの対象としたいと思っています。
JPMCのM&A実績
JPMCのM&A実績として、大阪琺瑯、みらい少額短期保険、JPMCシンエイの3社があります。特にフォーカスしたいのが、同業他社で、2021年7月20日に我々にグループインしたJPMCシンエイです。
M&A JPMCシンエイの入居率の改善
JPMCシンエイの入居率の改善についてです。これまでもIRの場で「リフォームを行ってどんどん改善していく」とご説明してきましたが、残念ながらJPMCワークス&サプライとM&AしたJPMCシンエイとのシナジーでは、このリニューアル・リフォーム・リノベーション、スーパーリユースは、我々がもくろんだほど数は進んでいません。
それでも、M&A時点の2021年で81.3パーセントだった入居率が、2022年12月末には85.1パーセントに改善しています。これがグループ平均の92.9パーセントまで上がれば、それだけでオーナーの満足も当社の収益もともによくなります。それほど、我々にはノウハウがあります。
築20年から築40年の古い物件の大規模補修が中心なのでニーズは非常にあるのですが、リニューアル・リフォーム・リノベーションが思ったほど進んでいないのは、内装材を含めてプレカットの部材、木材、資材がなかなか入ってきません。施工が完了しないと売上利益にならないのですが、受注残は抱えているものの、なかなか工事ができていません。
しかし、この状況はこれから改善されていきます。まだ部材高が進んでいますが、もし一定レベルになってくれば、一気に進むことは間違いありません。
また、本来であれば100棟くらいリニューアルできているはずだったのですが、進捗度は20パーセント程度に留まっています。それにもかかわらず、これだけ入居が改善しています。手前味噌ですが、我々のノウハウもなかなかのものであることが、この数字に表れていると思います。
M&Aによるシナジー
本来はスライドの「くじらの絵」のように、リフォーム事業で収益をストック&フローで上げていこうと考えていました。リニューアル・リフォーム・リノベーションの受注は来ており、営業は順調なのですが、残念ながら今のところ、工事の進捗としては「部材が高い」「入ってこない」「施工管理技士がいない」の3つが泣き所になっています。
もちろん手当てはしていますが、この高騰については我々だけではどうにもできません。今は一生懸命、施工管理技士の育成を行い、工事できる体制を整えつつあります。
住む論理とは 社会の課題と向き合い 持続可能な賃貸経営を追求すること
社会課題への取組についてご説明します。ご存じのとおり、人口は減っていきます。
JPMCが解決すべき社会課題 ①空室率
2018年時点でも21.4パーセントも空室があります。例えば、100戸アパートがあると、どうあがいても入居者は78人しかいません。
それにもかかわらず、毎年30万戸を超える新築が供給されています。そのうちの4分の3が、先ほどお話しした5大プレハブメーカーのプレハブのアパートです。それで果たして、入居者満足が得られているのでしょうか? これだけライフスタイルが変化しているのに満足しているのでしょうか?
人口動態や家族構成だけ見ても大きく違います。「シングル=1R・1K」の時代はとっくに終わっています。なぜなら、シングルは、60歳代以上が6倍、50歳代が4倍、40歳代が2倍に増えているからです。
今のシングルは1R・1Kではなく、1LDKの高齢者向け賃貸に住んでいます。作られているものと、家族構成・人口動態・社会がまったくマッチしていません。これを是正することが、我々にとっての一番の社会課題であると感じています。
住む論理とは 社会の課題と向き合い 持続可能な賃貸経営を追求すること
今までどおり、金太郎飴のプレハブのアパートを作り出す時代は終わったと思います。オーナーにとってのみならず、社会、ひいては地球にとっても負の遺産になります。やはりこれを変えていかなければなりません。
JPMCが解決すべき社会課題 ①空室率
繰り返しますが、毎年30万戸を超える新築が供給され、そのうちの4分の3がプレハブメーカーのアパートです。空室率は下がる見込みがありません。まさにこれこそが、我々が一番取り組まなければならない負の遺産です。
さらに、これを続けていくと、過去に竣工した物件やすでにお持ちの物件、すでにある賃貸住宅を持続できません。やはり今ある躯体を活かして延命し、今の入居者に合ったスタイルに変えていくことも、我々の社会課題のソリューションだと考えています。
持続可能な賃貸経営を
そこで我々は、スーパーリユースに取り組みます。新築をどんどん作っていくのではなく、今の社会のニーズや入居者のニーズを捉えながら、古い躯体を無駄にせず、使える状態にして延命します。スクラップ&ビルドを繰り返さないことは、地球のためにも、社会のためにも、オーナーのためにもなります。我々の社会課題の取り組みとして、持続可能な賃貸経営を目指します。
JPMCが解決すべき社会課題 ②外国人への住居提供
少し壮大な話になりますが、若年労働力の不足は目に見えています。我々自身も、事業拡大のために若い有為な人材が欲しいと思っても、なかなか集まりません。しかし、これは当社だけの課題ではないと思います。
若年労働力の不足を解消するために、日本で働きたいという海外の方に来てもらうことになると思います。これまでの集団就職のように、一挙に来てもらうのではなく、インディビジュアルにそれぞれの方が仕事を選んで住居を選ぶ時代が間違いなく来ると思います。
JPMCが解決すべき社会課題 ②外国人への住居提供
この時代のために、我々はフォースバレー・コンシェルジュやYOLO JAPANと組んで就労支援を行います。その際に、住みたい住居をセットで紹介する取り組みを進めていきます。住居と仕事の提供をセットにして、ワンストップで海外から有為な人材を招くことで、日本経済にとってもプラスに作用すると確信しています。
住む論理とは 社会の課題と向き合い 持続可能な賃貸経営を追求すること
特にスーパーリユースは、直面する課題に一番フィットする、我々の商品・サービスだと思います。単にリフォーム・リニューアルするだけではなく、現在のオーナーが課題を解決でき、さらにその子々孫々まで持続した賃貸経営を行えます。
今まで作ったものを無駄にしないことは、二酸化炭素の排出量の側面のみならず、オーナーのため、オーナーの後継者のため、あるいは社会のため、ひいては地球のためになると確信しています。
リユースの促進
このようなさまざまな過去からある、あるいは生まれてきた社会課題に対して、我々は賃貸のプロとして、持続可能な賃貸経営をいろいろな面から提供できる会社です。
入居者も新しいマーケットを開拓します。そして、今ある躯体も今のままではなく、アップデートして今のマーケットに合った状態にすることによって持続可能にしていきます。
もし、暮らす場所に困っている高齢者にとってよい場所であれば、更地でも使われてない土地でも、サービス付き高齢者向け住宅や住宅型有料老人ホームとして賃貸者契約をしにいきます。
まさに「我々の事業そのものが、社会課題に対するソリューションなのだ」という思いで、全社一丸となって事業に取り組んでいます。
リユースの促進 リフォーム事業への取組
自社で建築すると建築利益が一番大きくなりますので、どうしてもその利益に目がとらわれがちです。しかし、本当にオーナーのためになっているのでしょうか? 畑の中央に建築して、入居者は10年後も入るのでしょうか? そして将来、オーナーご一家にとって、あるいは社会にとって、負の遺産にならないのでしょうか? これらの疑問に対して設立したのが当社です。
我々は自社で建築していません。建つ余地があるところや、建て替え需要で今もマーケットがしっかりあるところには、我々ももちろん積極的に取り組んでいきます。また、少しオフセットした場所で一般賃貸が厳しければ、サービス付き高齢者向け住宅や、住宅型有料老人ホームにしていこうと考えています。
今ある躯体も、今のままでは今の入居者に選んでもらえません。そこで、今の若者やDINKs、高齢夫妻が住みやすいかたちに変えていきます。
例えば、今までのマーケットでは若者が多かったため、ワンルーム17平米だったとします。若者が減少した場合、34平米の1LDKに変えると、若年層から一定年齢までの夫婦、あるいは1人ぐらいお子さまがいる夫婦が住みやすくなります。このような取り組みを、JPMCシンエイとJPMCワークス&サプライのセットで行っています。
持続可能な賃貸経営をサポートするJPMC
法人入居斡旋、外国人入居、物件再生、いろいろな方に貸せるように自前の滞納保障、セットで入る家財保険など、我々には全国の賃貸マンションオーナーの「持続可能な賃貸経営」をサポートするさまざまなサービスがあります。
賃貸経営を代行する我々JPMCの周りを固めるサポーターとして、すべて自前で用意してワンストップでオーナーにマーケットに提供できます。
「住む論理」の追求で持続可能な社会を目指します
「建てる」ほうにではなく、入居者サイドや持ち主サイドの「住む論理」に立ったコンセプトで、持続可能な賃貸経営と持続可能な社会を目指すJPMCです。
以上で、私からのご説明を終了させていただきます。ご清聴、誠にありがとうございました。