東京・青山の地で1970年から親しまれてきたパン屋さん「青山アンデルセン」が2017年7月31日をもって営業を終了することになりました。東京メトロが進める表参道駅バリアフリー化などの改修計画に協力するためとのことですが、東京のパン好きの間からは惜しむ声も聞こえてきます。

実はアンデルセンは広島発祥で、デニッシュペストリーを日本に紹介したことでも知られます。それから約半世紀、今やパンの種類は非常に多彩です。食パンやバターロールのようなシンプルなものから、カレーパンや焼きそばパンといった総菜系、クリームパンやあんパンなどのスイーツ系、フランス・ドイツのハード系、最近ではトーストせずに食べる「生食パン」も人気のようです。

どういったパンが好きかは人それぞれですが、パンに使う金額という側面から見てみると、驚くべき地域性が浮かび上がってきます。

パンへの支出金額が多いのは圧倒的に関西!

総務省の家計調査のデータをもとにつくられた1世帯当たりの年間支出金額に関する都道府県庁所在市と政令指定都市をあわせた52都市のランキング※によれば、パンへの支出金額の上位5都市は次の通りとなっています。

※ 2人以上の世帯の品目別年間支出金額(2014年~2016年平均)。政令指定都市は2010年4月1日現在で政令指定都市であった都道府県庁所在市以外の都市(川崎市、相模原市、浜松市、堺市、北九州市)。

【パンへの支出金額(全国平均30,004円)】
第1位 京都市:40,571円
第2位 神戸市:38,137円
第3位 堺市:37,346円
第4位 岡山市:36,854円
第5位 大阪市:36,181円

なんと、トップ5のうちの4都市が関西で、大阪は2都市がランクインしています。また、関西の他の政令指定都市も奈良市が6位、大津市が8位、和歌山市も12位と、関西は圧倒的な「パン大国」なのです。実際に京都市内や神戸市内のパン激戦区ともなれば、徒歩10分圏内に数軒のパン屋さんがあったりもします。

一方、関東の各都市のランキングを見てみると横浜市の10位が最高で、その次はさいたま市の13位、東京都区部は15位と、パンへの支出金額は決して突出したものではありません。

ちなみにアンデルセン発祥の広島市は7位となっています。

なぜ関西人はパンが好きなのか? 様々な通説

他の地方と比べてみても、関西のパン好きは相当なものに感じられます。では、なぜそこまで関西人はパンが好きなのでしょうか。近畿農政局が公表している「平成22年度近畿食料・農業・農村情勢報告」の中の「数字で見る近畿の食卓」には、関西人のパン好きに関して次のような記載があります。

“この近畿に見られるパン好きの傾向には、いろいろな通説があり、例えば、
・関西人は新しい物好きだから
・商人が多くすぐ食べられる利便性が受け入れられた
・関東では食パン1斤が6枚切り、関西は厚めの4~5枚切りが好まれるから
・江戸時代、江戸では朝ごはんを炊いたが、関西では昼に炊いていたため、朝ごはんのパン食が増えた、などが言われています。“

(近畿農政局「平成22年度近畿食料・農業・農村情勢報告」の「数字で見る近畿の食卓」より引用)

こうして見てみると思わずなるほど、と納得してしまいそうになりますが、実際のところはどれも通説で決定打といえるものはなさそうです。これ以外にも港町・神戸から多くの西洋文化が入ってきた影響や「粉モノ文化」の地域性などもありえそうですね。

まとめ

いかがでしたか。地域によってパンへの支出金額には大きな差があります。主食としてはもちろん、ちょっとしたスイーツのようにも食べられるパン。みなさんにとってのパンは一体どのような存在でしょうか。

LIMO編集部