2023年3月10日に発表された、フリービット株式会社2023年4月期第3四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:フリービット株式会社 代表取締役社長CEO兼CTO 石田宏樹 氏
フリービット株式会社 取締役副社長CFO 清水高 氏

Agenda

清水高氏:フリービット株式会社取締役副社長の清水でございます。本日は、2023年4月期第3四半期の決算説明につきまして、私からご報告させていただきます。

本日のアジェンダにつきましては、スライドのとおりとなっておりまして、3つ目の通期見通しまで私のほうからご報告させていただきます。4つ目の通期業績予想の上方修正並びにインキュベーション領域の展望につきましては、石田CEOのほうからご報告させていただきます。

2023年4月期 第3四半期 連結業績サマリ

まずは第3四半期の連結業績サマリです。売上高につきましては342億1,600万円、EBITDAにつきましては32億1,200万円となっております。

営業利益につきましては、会計上の実績数値としましては31億6,700万円、ベース利益としましては38億9,000万円となっております。ベース利益は当社で使用している表現で、戦略投資を除いて、ほぼ継続的な既存ビジネスの部分が中心の数字となっております。

経常利益につきましては、会計実績として29億6,400万円、ベース利益で36億8,600万円となっております。四半期純利益につきましては16億5,600万円となっておりまして、1株当たり四半期純利益につきましては88円9銭という結果となっております。

2023年4月期 第3四半期 トピックス

サマリをベースに、第3四半期のトピックスについてご説明いたします。売上高につきましては、5G生活様式支援事業の「5G Homestyle」並びに企業・クリエイター5G DX支援事業が堅調に推移しておりまして、前年同期比で7.0パーセント増というかたちとなっております。

営業利益については、期初から今期については戦略投資を継続実行しているところでございます。第2四半期まではこの影響もありまして、会計実績としては前年同期比でマイナスというところがございましたが、第3四半期ではプラスに転じておりまして、会計実績として2.2パーセント増、ベース比では7.8パーセント増となっております。

経常利益については、フルスピード完全子会社化関連の費用が発生しておりましたが、ベース比では4.4パーセント増となっております。親会社株主に帰属する四半期純利益については、税金費用の減少等がございまして、前年同期比で2.1パーセント増となっております。

フルスピードの完全子会社化については、第3四半期の期初で手続きが終了しております。こちらについては本格的なPMIの実行とメーカームーブメントへのシフトに入っております。

以上を踏まえて、業績予想の上方修正を実施しております。こちらについては後ほどご説明させていただきます。

前年同期比差異分析 売上高

前年同期比の差異分析でございます。売上高につきましては、全セグメントとも堅調に推移しております。実績ベースで前年同期比7.0パーセント増の342億1,600万円という着地となっております。

前年同期比差異分析 営業利益

営業利益については、戦略投資を実行しつつというところでございますが、主に5Gインフラ支援事業の堅調な推移によりまして、前年同期比で2.2パーセント増の31億6,700万円、ベース利益では7.8パーセント増の38億9,000万円という数字となっております。

2022年4月期と2023年4月期の戦略投資内訳

戦略投資につきましては、繰り返しですけれども、今期については期首から戦略投資を実行しております。こちらについては、ユーザーの獲得に係る広告宣伝費や新規事業に関する支出が中心になっております。

第1四半期、第2四半期、第3四半期というかたちで、スライドのような数字で推移しております。こちらについては期首の計画値から比べると、効率的に実施できていることもありまして、数字としては期初想定額を下回る水準で推移しております。

第4四半期については季節的な要因がございまして、ユーザーの獲得も他の四半期と比べて数字が大きくなるという見込みを立てております。また、5Gインフラ支援事業の5Gデータセンター整備というところについても、徐々に積み上がってきているといった部分もございます。

このような理由から、第4四半期については戦略投資額としても一定額、他の四半期よりも大きくなるという見通しを立てております。

前年同期比差異分析 経常利益

経常利益については、繰り返しですけれども、フルスピードの完全子会社化の関連費用がございまして、ベース利益では4.4パーセント増加の36億8,600万円という数字となっております。

前年同期比差異分析 親会社株主に帰属する四半期純利益

四半期純利益については、前年同期比で2.1パーセント増の16億5,600万円という数字となっております。

連結業績サマリ BS比較

バランスシートの前期末との比較となっております。こちらについては2つの要因がございまして、フルスピード完全子会社化の一連のアクションが終了した部分に伴う影響と、現預金と借入金の返済が進んだというところがありまして、そのような部分で総資産が圧縮できております。その結果、自己資本比率は21.7パーセントとなっております。

FS完全子会社化に伴うBSへの影響

第2四半期末はフルスピード完全子会社化の途中でしたけれども、第3四半期で一連の手続きが完了しておりますので、おさらいという意味もあり、バランスシートの影響というところをスライドにまとめさせていただいております。

我々以外の株主のみなさまから取得させていただいた株式取得費用が37億8,200万円となっておりまして、こちらが資本剰余金と非支配株主持分を相殺するかたちとなっております。その結果、純資産の部分が減っております。

一方で、株式取得に合わせて第3四半期に一部長期借入を実行しており、借入金が16億円増え、それに伴い現預金も16億円増えたかたちとなっております。

1人当たり売上高・営業利益

1人当たりの売上高、営業利益についてでございます。1人当たりの売上高は前年同期と比べても伸びているところがございますので、増える見込みとなっております。1人当たりの営業利益については、前期と同水準で推移する見込みで見通しを立てているところでございます。

セグメント別構成

セグメント別の業績についてご報告させていただきます。各セグメントとも増収というかたちとなっております。その結果も踏まえてスライドにお示しした構成比になっておりますが、これまでと大きな変化はないかたちとなっております。

【業績進捗】5Gインフラ支援事業(モバイル革命領域)

5Gインフラ支援事業には既存事業のほとんどが入っておりまして、中でもMVNE、固定網、クラウドといったところが中心のサービスとなっております。

こちらはB2B向けのモバイルサービスの利用増といったところと、固定網のコスト改善により、ベース利益は前年同期比で25.7パーセント増の13億7,100万円という着地となっております。

5Gインフラ支援事業進捗

戦略投資については、主に5Gデータセンターの整備というところが進んでおります。計画と比べて機器の調達がスライドしてきているところはございますが、第4四半期から来期にかけては、こちらの費用が一定額積み上がっていく見通しで考えております。

【業績進捗】5G生活様式支援事業(生活革命領域)

5G生活様式支援事業については、主に「5G Homestyle」、集合住宅向けのインターネット接続サービスと、トランスフォーメーションゾーンにあります「5G Lifestyle」ならびにインキュベーションゾーンにあります「5G Workstyle」、「Healthstyle」といった事業の内訳となっております。

5G生活様式支援事業進捗

「5G Homestyle」は堅調に推移しております。一方で「5G Lifestyle」については、サービススペックの強化といった部分と販売力強化の施策を実施しております。加えて新規プロダクト群への投資というところも実行しておりますので、利益は前年同期比で2.1パーセント減の19億5,100万円という数字となっております。

5G生活様式支援事業進捗

事業上のトピックスです。次世代オンライン健康相談サービス「TONE Care」では、スマホの使い過ぎに関する専門相談サービスのサービス提供開始をアナウンスさせていただいております。

こちらは「TONE」の端末から「TONEあんしんAI」によってお子さまのスマホ利用状況を検知しまして、保護者さまに注意喚起を行います。保護者さまは専門家等に予約して相談実施を行うという、端末から相談まで一気通貫で提供できるようなサービスをアナウンスさせていただいております。

5G生活様式支援事業進捗

「5G Homestyle」のKPIについては、集合住宅向けISPサービスの提供戸数が前期末比で10.6万戸増となっております。大きなマイルストーンの1つである累計100万戸という数字を突破することができました。

5G生活様式支援事業進捗

あわせて、ギガプライズを中心に新しいサービスも発表させていただいております。1つは、提供パートナーと連携するかたちで「セルフ内覧」のサービス提案・提供をスタートしております。

それに加えまして、ギガプライズで提供している着脱式Wi-Fiアクセスポイント「PWINS」で、Wi-Fi6に切替え可能な無線ユニットを4月1日から販売開始というところをアナウンスさせていただいております。

【業績進捗】企業・クリエイター5G DX支援事業(生産革命領域)

次に、企業・クリエイター5G DX支援事業でございます。内訳としては、主にフルスピードグループを中心としたインターネットマーケティング、アフィリエイトサービスと、「Creator Maker」の領域である「StandAlone」等のサービスがございます。

企業・クリエイター5G DX支援事業進捗

スライドの数字をご覧いただくとおわかりのとおり、売上高・営業利益ともに大きく伸長することができております。そのような影響もありまして、利益は前年同期比8.1パーセント増の5億7,600万円となりました。

新しいインキュベーション事業に関しては、第4四半期に向けて「StandAlone」の多面展開についても開発ならびにプロモーションを積極的に実施していこうと考えております。

企業・クリエイター5G DX支援事業進捗

事業のトピックスでございます。アフィリエイトネットワークの「afb」で、業務提携の展開を加速していきます。2月28日に「セゾンポイントモール」との業務提携をアナウンスさせていただいておりまして、約2,500万人のユーザーへのアプローチが可能になっております。

それに加えまして、SHEIN JAPAN、The LEGO Groupといったグローバル企業に対しても、パートナーシップ展開を強化しております。このような顧客サイドとプラットフォームサイドの両軸を強化するかたちで、メイン展開を実行している状況でございます。

2023年4月期 通期連結業績予想の上方修正

通期の見通しでございます。先ほどお話ししたとおり、第3四半期までの結果を踏まえて通期の業績見通しを上方修正させていただいております。上方修正の内容としましては、スライドに記載のとおりとなっております。

売上高は460億円、営業利益は35億円、経常利益は32億5,000万円、純利益は16億5,000万円、1株当たりの当期純利益は87.74円という数字を発表させていただいております。

売上高については、当期の期初予想と比べて、事業全体の進捗としては堅調に推移していますけれども、売上構成が当初の予定とずれている部分がございます。結果として、通期見通しについては前回の発表から変更せず、460億円というかたちで考えております。

一方で、営業利益については、前回の29億円に対して6億円増の35億円というかたちで考えております。

業績予想修正 要因分析(営業利益)

営業利益については、第3四半期までの既存ビジネスのベース利益が5億3,100万円の増加となっております。あわせて、戦略投資の部分についても効率的に進んでいるというところで、費用としては抑えることができている部分もございまして、6億6,700万円増という結果になっていることを踏まえての発表となっております。

第4四半期については、これまでのベース利益については堅調に推移するかたちで考えている一方で、来期および次期中期経営計画「SiLK VISION 2027」に向けた施策も弛まず実施していきます。

また、資産等の評価見直しというところも、来期の計画を踏まえて一定額発生する見込みですので、そのような結果が一部入っているかたちでございます。

純利益については、営業利益・経常利益までの増益を踏まえつつというところでございますが、先ほど営業利益の部分でも一部お話ししたとおり、資産項目の計上部分についての見直しもございます。最終利益の部分についても、固定資産の部分で一部資産の評価の見直し等々が発生しうるという見込みを踏まえて、こちらの数字を発表させていただいております。

以上、第3四半期の連結業績から通期見通しまでについてご報告させていただきました。以降につきましては、主にインキュベーションゾーン領域における展開という部分を中心に、石田CEOからご報告させていただきます。

業績予想修正 要因分析(営業利益)

石田宏樹氏:こんにちは、CEOの石田でございます。清水に続きまして、私からは2023年4月期通期連結業績予想の上方修正、ならびにインキュベーション領域の展望についてご説明させていただきます。

清水の説明にありましたとおり、今期に関しましては、既存事業のベース利益が順調に推移しております。また、戦略的投資も2年目となり、さまざまなところが効率化していることによりまして、非常に上振れしてきているような状況でございます。

第4四半期に関しましては、こちらも清水から説明がありましたとおり、ベース利益は引き続き堅調に推移する見込みであり、次期の「SiLK VISION 2027」に向けた施策も実行していきます。また、戦略的投資に関しましては、例えば「トーンモバイル」の獲得が繁忙期に大きくなるという季節要因などもあります。

併せて、資産の評価、見直しなどを検討いたしまして、総合的な観点から営業利益35億円に上方修正させていただきたいと思っております。この35億円という数字は、営業利益としてはフリービット創業以来の過去最高益となっています。

2023年4月期 通期連結業績予想の上方修正

営業利益以降に関しましては、経常利益は32億5,000万円で22.6パーセント増、親会社株式に帰属する当期純利益は16億5,000万円で135.7パーセント増、そして1株当たり当期純利益は87.74円としました。このようなかたちで第4四半期をしっかりと迎えていきたいと思っております。

フリービットグループの中長期の成長イメージ

戦略投資がかなり効率的になっていることにより、予想よりも6億円ほどのマイナスになっておりましたが、インキュベーションゾーンにおける新しい取り組みは非常に良いかたちで進んでおります。そのことに関しましては、次のページでご説明いたします。

2022年4月期と2023年4月期の戦略投資内訳

スライドに記載のとおり、2年にわたる戦略投資を行ってきまして、第4四半期もご覧のような投資を予定しております。これによりまして、これから迎える次期中期に対するセットアップがかなり順調に進んでいる状況でございます。

フリービットは既に Exponential な技術を保有

スライドに記載のとおり、今後新しく出てくる非連続な技術、あるいはその延長線上にないような技術発展として「Exponential」という言葉を中期経営計画で使っておりました。AI、データ、IoT、5G、ブロックチェーンなどに対する投資をしっかりと行っております。

我々のような通信を中心にした企業体から、次の時代へのトランスフォーメーションをしっかり行っているところでございます。中期経営計画を発表した当時は「Trusted Internet」という言い方をしておりましたが、現在は「web3」という言葉が広く知られるようになってきました。このブロックチェーン、データを利用したweb3領域につきまして、本日すでに発表させていただいた内容もありますが、進捗をご説明させていただきたいと思っております。

freebitのweb3戦略

この分野につきましては、実は2017年からスタートしております。詳細は後ほどご説明いたしますが、ようやくこれらの戦略の詳細をお話しできるような状態になってきました。

俯瞰して見ますと、コンピューターの歴史は、メインフレームから始まる集中型の世界と、パソコンやインターネットなどの分散型の世界があり、言ってみれば集中・分散を繰り返していくことになります。

1990年代後半にインターネットが生まれたことによりまして、インターネットに対する過剰な期待が出てきました。しかし、当時はまだ世の中がダイヤルアップ接続や常時接続ではない状態だったことなどによりまして、期待値に応えきれませんでした。技術が足りなかったために、「.comバブル」が崩壊し、株式市場や期待値がいったん収縮した時代がありました。

これに対して、インターネットの分散とは異なるクラウドという超集中の世界が出現しました。これによりまして、1990年代後半に期待されていた新しいインターネットの世界をプラットフォーマーたちが実現していくことで、株価や市場も含めて、以前よりも拡大していくことになります。

ただし、クラウドを中心としたプラットフォーマーが、通常の課金型のビジネスからデータを使った異なるビジネスを生み出したことによりまして、データの集中化などのさまざまなプラットフォーマー問題が発生してきております。そこで、もう1度分散型の世界に戻ろうということで、ブロックチェーンなどの新しい技術を使ったweb3という新しいムーブメントが出てきております。

我々は初期からずっと事業運営を行っているわけですが、web3の現在地を見ていますと、インターネット黎明期のワクワク感や、ある意味での危うさなどを肌で感じております。

Web 1.0/2.0とWeb3の価値の比重の違い

我々がTrusted Internetに進出しようと考えたきっかけとなった、非常に有名な論文と言いますか、ブログがあります。それが2016年に発表された『Fat Protocols』でございます。

Web1、Web2の時代は、例えばキャリアや接続事業者と言われるインターネットのプロトコルを支えているレイヤーの価値よりも、アプリケーションレイヤーと言われるような、プロトコルの上でアプリケーションを書く業種にバリューが集まる時代でした。当時もキャリアやISPは「ほとんど土管である」と言われておりました。

web3ではどのように変化したかと言いますと、TCP/IPの1つ上にプロトコルレイヤーを置くことによりまして、ブロックチェーンを流れるデータ自体の信頼性を、コンセンサスアルゴリズムやプロトコルによって保証することができます。そのため、今後はプロトコルレイヤーが非常に厚みを増していくだろうと言われております。

さらに、これまではXaaSと言われるクラウドプラットフォームの上にさまざまなベンチャー企業が事業を構築してきた訳ですが、例えば「Ethereum」ですと、ブロックチェーン自体にこのようなプログラムを実行する仕組みが入っております。そのため、今の新しいweb3の企業はサーバーすら借りる必要なく事業がスタートできるような時代になってきております。

我々は、もともとあったプロトコルレイヤー側からブロックチェーンを見ていきます。アプリケーションレイヤー側から見ている人たちには見えないような視点でブロックチェーンを見ていきたいと考えております。

web3(Blockchain)の問題点

どうしてそう思ったのかと言いますと、実はブロックチェーン自体にはかなりの問題点があります。我々がなぜこのことに気付いたかと言いますと、インターネットの黎明期から事業に取り組み、「インターネットには何が足りないのか?」という観点で運営してきたためだと思っております。

レイヤー1ブロックチェーンのノード数(自社調べ)

1つの問題点としては、流通価値に見合うノード数に到達していないということがあります。たくさんのノードやサーバーが、分散型でブロックチェーンを動かすことによって、その51パーセントの処理能力を取るためにかなりのコストがかかるため安全だと言われております。しかし実際には、最大規模の「bitcoin」でも1万5,000台くらいのノード数しかないということがわかります。

クラウド事業者にとって、1万5,000台のクラウドサーバーを立ち上げるのはそれほど難しいことではありません。 その結果、何が起こっているかと言いますと、59兆円という最大の時価総額を持ち、さまざまな取引のベースとなる「bitcoin」でも、ハッキングするコストが1時間あたり1.3億円しかかかりません。その程度で不正なことができてしまうということで、そもそも無理なことを行っているということになります。

2022年9月のThe MergeによりNodesやValidatorは増加・分散するも、Validatorの多くがステーキングプロバイダーに集中している状況

さらに、その15,000台しかないノードの所有者は、かなり偏っています。「Ethereum」は「Ethereum2.0」となり、さらにノード数を増やしましたが、実はそのノードを運用している事業者の上位10位までがステーキングプロバイダーで、全体の約58パーセントを占めています。サーバーがもしいっぱいになったとしても、管理する団体がこれだけ集まっていますので、意思決定ができてしまいます。

ブロックチェーンによるエネルギーの大量消費を解消できるか:動き出したイーサリアムと「PoS」の潜在力

「Ethereum」はこれからPoSに移行していきますが、PoWはコンピューターの処理能力を競い、最も早く回答した者が通貨を得られるという仕組みであるため、非常に環境負荷が高いと言われています。

「bitcoin」のマイニングにかかる年間の電力消費量は、スウェーデンやウクライナといった国の年間消費量よりも多い現状があり、さらに大きくなればとんでもない電力を消費します。

現在流行しているNFTも、1枚発行するために必要な電力量は、英国の平均的な家庭の年間消費電力の2倍以上といわれています。「Ethereum」が「Ethereum2.0」になることによって、99.5パーセントの電力を削減すると言われていますが、それでも1枚のNFTを発行するために4日分の家庭用電力が必要になります。

クレジットカードとブロックチェーンの処理速度の比較

処理速度が遅いという問題もあります。スライドで示しているように、クレジットカードとBlockchainを比べますと、1秒あたりのトランザクション数がまったく異なります。

web3(Blockchain)の問題点

その他にも、一般ユーザーが利用するまでの敷居が非常に高いことや、ボラティリティが10倍になることもあるほど高いこと、法的整備が国によってまちまちであることが問題点として挙げられます。

インフラサイドから真剣に見ていきますと、そもそも無理があるということがわかります。web3のいわゆるバブルが起こったために、「web3の冬」と言われるような状況が生まれたと考えております。

「.comバブル」が起きた時に、「インターネットは終わった」と言われていましたが、その後も何倍もの成長を果たしました。我々は、それと同じようなことを考えておりますし、そこに我々の将来の多くの部分を賭けていきたいと思っています。クラウドが生まれた時のように、どのように問題を解消していくのかが重要だと考えています。

フリービットグループは、インフラの変革期に独自技術で成長してきた

フリービットグループは、技術的なビフォーアフターを独自の特許技術で突破してきました。また、そのようなトランスフォーメーションの時期に、我々は一番成長してきたという実績があります。

今後は「Web2からweb3に行けるのか?」「4Gから5Gに行けるのか?」といった本丸がやってきます。インターネットおよびインターネット上で動く信頼できるプロトコルの変化に対して、中期経営計画でもご説明しましたように、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。

Building Blocks

繰り返しになりますが、フリービットはBuilding Blocksというレゴブロックのようなものを持っており、その組み合わせを変えることでMVNOをはじめとしたさまざまな事業にサービスを転換、ご提供してきました。

先ほどの『Fat Protocols』の論文について、2017年5月に出井伸之さんと話し合った時に、「信用の所在地」を担保していく技術を、企業としてどのように作っていくかが重要ではないかという話が出ました。

2017年から今まではそのような技術を目指して、新しいブロックチェーンを中心とした技術開発や、機械学習をどう組み合わせるか、安全安心のためにどうAIを使うかといったプロトコルレイヤーの拡張を行ってきました。

freebit web3 Blocks

本日発表しましたように、フリービットはweb3領域において、インフラサイドからの問題を解消する新しいブロックのコンポーネント「freebit web3 Blocks」を作りました。 こちらは、先ほどご説明したweb3(Blockchain)の問題解決に挑むものです。

「freebit web3 Blocks」はパブリックでもプライベートでも、非常に大きなかたちで、新しいレイヤー1のブロックチェーン、つまりコミュニティに適応したブロックチェーンをどんどん作り出すことができます。 また、そのノードは、サーバーはもちろんのこと、スマートフォンを含めたモバイル端末でもUIの機能だけでなく、レイヤー1のブロックチェーンを作ることができます。

Maker Movement 1/社会の変化

我々の「freebit web3 Blocks」は、1つの大きな非連続の技術だと思っています。「なぜそのようなことが言えるのか」という考え方自体をご説明します。

従来のweb3/freebitの提案

まず、従来のブロックチェーンとは、「bitcoin」や「Ethereum」などの、レイヤー1チェーンという非常に大きな基礎のブロックチェーンです。それに対して、web3の世界はブロックチェーン技術とそれを使うコミュニティだと言われています。

ブロックチェーンは「コミュニティがどのような分散化した意思決定をできるか」という手段としても使われます。1つの大きなブロックチェーンで、さまざまなコミュニティのニーズを満たそうとするわけです。

もしも満たせない場合は、レイヤー2チェーンという拡張するチェーンを使って展開しますが、1個のブロックですべてを支えなくてはいけないという考え方が基にありますので、先ほどお伝えしたような電力やトランザクションの問題が出てくるわけです。

我々はweb3の重要な要素であるコミュニティごとに、また、コミュニティによってニーズが異なりますので、ニーズ毎に適応するレイヤー1チェーンをそれぞれが運用していくというまったく異なる考え方を持っております。

従来のweb3は、レイヤー1チェーンにすべて集めるいわゆる集中型でした。それに対して、レイヤー1ブロックチェーン自体を分散させるために、我々は「freebit web3 Blocks」を作りました。1つではなく、コミュニティごとに分散したブロックを作っていくことが特徴です。

従来のスマホアプリ/After web3 Blocks

「freebit web3 Blocks」のもう1つの特徴が、スマートフォンで動かせることです。今までのスマートフォンアプリは、ほとんどUI/UXの機能しかありませんでした。処理やデータの保存を行うのはWeb2の世界で動くクラウドデータセンターであり、そこにさまざまな集中が起こっています。 我々は、これらをスマートフォン上で動かすことを考えています。

iPhoneのiOSやAndroidなど、スマートフォンのOSはもともとUNIXサーバーに使われていたオペレーションシステムがベースになっています。スマートフォン上でブロックチェーンアプリ自体が動き、しかもアプリごとにブロックチェーンを動かすことができる世界を考えています。

これが実現することによって、事業者はサーバーが不要になり透明性が高くなります。また、ユーザーにとってはプライバシーの保護や、自分のデータを外に持ち出せるなどさまざまなメリットが生まれます。

そして透明性が高くなると、ユーザーにとってはプライバシーの保護や、自分のデータが外に持ち出せるなど、さまざまなメリットが出てきます。理論的に言うと、サーバーなしで、今までのようなサービスはすべて動き始める世界になります。

1番大きなポイントとしては、スマートフォンの余剰電力や余剰リソース、余剰CPUなどを使ってこれらのものを動かすため、非常にサステナビリティです。

2022年5月 発表 TONE Labo

このようなかたちで「freebit web3 Blocks」を開発しまして、その1号案件として、2022年5月に「TONE Labo」というサービスを開始しました。この実証実験にご参加いただくと、「E22」という最新端末を1万円割引します。

TONE Coin

「TONE Labo」のサービスの1つとして、充電中にプログラムを動かすだけで「TONE coin」が貯まっていく新しいポイントシステムにご参加いただきます。こちらは待機電力を使い、「Ethereum」互換のブロックチェーンで、スマートフォン上で動かすという仕組みです。

本日発表

本日発表しますのは、「TONE coin」がわずか10ヶ月で、先ほどのノード数で世界5位になったことです。ご覧のような並み居るブロックチェーンのレイヤー1チェーンがあるわけですが、「TONE coin」のノード数は世界5位に入ります。

1位の「bitcoin」はサービス開始から174ヶ月が経過していますが、「TONE coin」はわずか10ヶ月で5位に入りました。世界的に見ても、この規模のものを作ることができました。以前に発表していれば眉唾もののお話だと思いますが、本当に動いたわけです。

「TONE」は、1つのコミュニティのために3,000台のノードが動いています。世界で5番目に入るノード数が動いて分散しています。ユーザーは1人1サーバーしか持っていません。1人1端末しか持っていないため、オーナーも極度に分散しているというかたちになります。

従来のweb3/freebitの提案

このように1つのコミュニティで、世界5位のノード数の規模を持った専用のサービスがあります。「TONE coin」を使えますし、「TONE」ユーザーのためにDAOを行うだけのブロックチェーンですが、処理能力も担保することができます。

freebit web3 Blocksによる問題解決

我々は、この部分に関してさまざまな問題を解決してきました。法的整備については我々ではできませんので、それ以外について、ご覧のようなかたちで取り組んでまいりました。

現在のフリービットの目指すもの

「SiLK VISION 2024」ではショールームとして、さまざまなサービスを立ち上げます。ここで作ったショールームを、次の「SiLK VISION 2027」によって広げていき、プラットフォームメーカーになります。

そのために、1つの方法としては5Gのブロックを使います。もう1つは「TONE coin」のような「freebit web3 Blocks」を使います。さまざまなレイヤーのブロックチェーンやコミュニティを迎えて、それを展開していくことになります。これが「SiLK VISION 2024」で設定した10年戦略と、これからはじまる「SiLK VISION 2027」に向かってのセットアップになります。

将来的なビジネスモデルの可能性

「freebit web3 Blocks」のビジネスモデルはたくさんあります。1つは「freebit web3 Blocks」を使う会社に対して投資していきます。web3の会社としては、まったくリスクはありません。「Ethereum」互換で動いているため、同じプログラムがまったく変更なしで、我々の「freebit web3 Blocks」の中で動きます。

ボラティリティがなく、分散していますので、何もデメリットはありません。以前、レッドハット株式会社が無料のLinuxをサポートしてインテグレーターになったように、我々はこのレイヤー1ブロックチェーンを使いたい、または作りたい企業やコミュニティに対して、インテグレーションしていくビジネスも行っていきます。こちらはもともとフリービットの得意分野だった領域です。

そして、例えば「TONE」のチェーンを「Ethereum」互換で貸し出します。「Ethereum」のガス代というプログラムを動かすための代金は、いくつかの調査にありますが年間約2兆円です。もし1パーセントだけ取れた場合でも200億円になります。

その上で、さまざまな実際のアプリケーションのサービスを行いますし、インテグレーション方法がわからないところに対して、さらにサポートすることを考えております。

従来のweb3/freebitの提案

また、レイヤー1チェーンを「TONE coin」のコミュニティで助けるという方法があります。これは1万何千台しかないのですが、「bitcoin」のユーザーは何百万人もいらっしゃいます。その人たちが使っているアプリケーションに、今回の「freebit web3 Blocks」である「TONE coin」を入れることによって、ユーザーがこのチェーンを監視することができます。

1万5,000台のサーバーではなくて、何百万台もの仕組みをユーザーコミュニティが支えていけるようになります。分散化がより進んでいくことが可能ではないかと思っております。

フリービットグループの中長期の成長イメージ(現在地)

中長期のイメージとして、我々は「SiLK VISION 2024」において、インキュベーションゾーン、トランスフォーメーションゾーンということで、さまざまな事業のセットアップをほぼゼロの状態からスタートしました。そして、ヘルスケアやデータなどさまざまな領域に進出してきております。子会社のギガプライズは、みなとみらいでライフスタイル提案などを行います。

今お話ししたのはブロックチェーンの領域だけのお話になります。これを、中期経営計画で、今後さらに進めていくように考えています。

2021年から2030年にかけての10カ年計画

「SiLK VISION 2020」からトランスフォーメーションタームで、さまざまな事業のオンバランス、オフバランスを図ってきました。そして、「SiLK VISION 2024」の2年目が今終わろうとしています。

我々は売上高500億円、営業利益50億円を目標に動いておりますが、「SiLK VISION 2024」の2年目の今期の業績に関しては、上方修正することができました。しかし、重要なのは今後どのようにアクセルを踏んでいくかということになります。来期に関しても投資を続けていくかたちになると思っております。

前回の「SiLK VISION 2020」が終わってから次の中期に入るまでの1年間に、トランスフォーメーションタームという準備タームを入れました。今回は、さまざまなセットアップに関して、1年から半年ぐらい前倒しでできていることもあり、中期内でトランスフォーメーションタームを十分に持って、「SiLK VISION 2027」に対して展開していきたいと思っております。

2022年4月期と2023年4月期の戦略投資内訳

web3関連や「TONE Labo」、IoT領域、5Gデータセンターなどに戦略投資を実行していきます。5Gデータセンターは半導体の納期の影響があり1年遅れているため、その部分はシフトする可能性がございます。また、中国危機のリスクといったことも言われておりますので、そちらにも対応していきたいと思っております。

石田より上方修正のご説明と、インキュベーションゾーンの中核となるweb3戦略についてご説明させていただきました。以上でございます。

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