2023年2月15日に発表された、株式会社ジーニー2023年3月期第3四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社ジーニー 代表取締役社長 工藤智昭 氏
メッセージ
工藤智昭氏:株式会社ジーニー、2023年3月期第3四半期の決算について私からご説明します。
まず、サマリーからお話しします。当社が最重要視している売上総利益において、引き続きYoY42パーセントという高成長を達成することができました。営業利益もYoY66パーセントと、第3四半期も大きく伸長することができました。
結果的に第3四半期までの累計営業利益は8億円となり、これまでの過去最高を大きく更新しています。それに伴い、当初公開していた通期営業利益の見通しを若干上方修正しています。
事業別ハイライトについてお話しします。広告プラットフォーム事業は引き続き堅調に成長しています。売上総利益はYoY21パーセント成長と、第3四半期としては過去最高数値を更新しています。
当社の成長事業であるマーケティングSaaS事業は、全体に占める比率が23パーセントから29.1パーセントまで上昇しました。ARRも17億円と大きな規模に拡大してきており、単一セグメントとしてもインパクトのある規模感になっているかと思います。
海外事業は利益がYoY172.3パーセントと大きく成長しています。結果として、現時点で通期業績見通しの営業利益を5,000万円ほど上方修正しています。
通期業績予想を上方修正へ
業績予想です。スライドの表の左側が旧数値、右側が今回新たに開示した数字となっています。営業利益を10億円から12億円と予想していましたが、新しいレンジでは10億5,000万円から12億5,000万円と、レンジを5,000万円ほど上方修正しています。
売上総利益、営業利益3Q過去最高益を更新
第3四半期における前年同期比を棒グラフで示しています。売上総利益は、引き続きYoY42パーセントと高成長を遂げることができました。営業利益もYoY66パーセントと、前年の4.8億円から8.0億円へ大きく成長することができています。
パーパス
事業内容についてお話しします。当社は「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」というパーパスを掲げています。年々複雑になっているインターネットのマーケティングをよりシンプルにし、いろいろな広告主や事業者がマーケティングで成功できる世界を創ろうと考えています。
さらに、「日本発の世界的なテクノロジー企業となり、日本とアジアに貢献する」を存在意義として掲げています。日本だけではなく、アジアや世界でビジネスを行い、その知見をローカルに貢献・還元していこうと考えています。
事業領域と提供地域の拡大
スライドは事業領域と提供地域の拡大を表した図です。当社の創業事業である広告プラットフォーム事業は2011年に始まってから拡大し続けており、冒頭にお話ししたとおり、いまだに20パーセントを超えるペースで成長しています。
大きく利益が出た海外事業を濃い青色で示しています。設立3年目から海外展開を進め、大きく利益貢献できるレベルにまで成長しています。
マーケティングSaaS事業は上場前後から始めています。マーケティングで使われるいろいろなSaaSを自社開発や買収によって集めていき、その後も大きく成長を遂げています。
事業領域
スライドは事業領域に関する図です。当社の事業領域は大きく分けて広告プラットフォーム領域とマーケティングSaaS領域に分かれています。広告主から見た時は、広告の配信、データ蓄積と、顧客管理以降のフェーズで区切られています。
ユーザーから見た時は、認知、サイト訪問までが広告プラットフォーム領域で、Webサイトで比較検討に入って以降、優良顧客化までのフェーズがマーケティングSaaS事業においてツールとして行っている領域となっています。
市場規模
当社の手掛けている事業の市場規模です。ご承知のとおり、インターネット広告市場は大きく成長しており、テレビ、ラジオ、新聞の市場規模を大きく超えて、いまだに高い成長率で成長し続けています。
SaaS市場も新型コロナウイルスやDXといった日本のトレンドのもとで高い成長率となっている中、マーケティングや営業に特化した部分で事業を行っています。
市場規模
TAM、SAM、SOMについてです。当社が直近で獲得可能な市場とプロダクト能力は、お客さまの費用対効果が上がるように、年々さらに便利に使いやすく、機能開発しています。これが進むと、1.2兆円の市場規模のうち、何十パーセントかを獲得できる見込みとなっています。
潜在的な市場は2.8兆円ほどあります。人が行っている領域や開発の領域などまでソフトウェアで取り込んでいくと、かなり広大な市場規模があると見ています。
FY2022 決算サマリ
第3四半期の業績です。売上収益は、昨年の数値がIFRSの広告総額計上となっています。今年からIFRSの広告純額計上の数値となっているため、ご覧になるサイトによっては決算の数値が比較しづらくなっているかもしれません。
純額で比較すると、売上収益はYoY38.1パーセントの伸びを見せています。売上総利益はYoY41.9パーセント増と、第3四半期まででかなりの高成長を実現できています。営業利益もYoY67.7パーセントと高成長しており、通期の見通しで10億5,000万円から12億5,000万円のレンジで終わると予想しています。
当社は下期偏重型で、営業利益をはじめ、売上総利益、売上収益も10月から3月までに多く出る傾向にあります。企業の決算後にたくさんの予算が使われるため、第3四半期、第4四半期は、上期よりも大きな営業利益を見込んでいます。
FY2022 四半期毎業績
四半期毎の数値の棒グラフです。第3四半期としては、売上高、売上総利益、営業利益でそれぞれ過去最高の数値を出しています。下期偏重型の需要特性から、第4四半期にもう一度大きな波が作れないかと考えています。
セグメント別ハイライト
セグメント別のハイライトです。広告プラットフォーム事業は20パーセント以上の成長を実現できています。セグメント利益は約16億円で、全社の共通費を配布した後の営業利益も10.5億円です。高成長事業でありながら、収益も生み出している事業となっています。
トピックとしては、引き続き新規媒体の開拓やECサイトの需要を取り込み、シェアが拡大しました。また、屋外広告の分野でGoogle社が提供するツールとの連携を開始し、新たな需要を取り込めるようになっています。
マーケティングSaaS事業は、セグメント損失がほぼゼロとなり、全社費用などを含めると営業損失4.6億円で赤字になっています。
トピックとしては、「GENIEE SFA/CRM」がクラウド型コールセンターシステムと連携し、「GENIEE CHAT」は昨年買収した「Engagebot」というツールが大きく成長しました。また、昨年から加わった新しい会社のCATSが売上貢献を開始したほか、完全子会社化したHypersonic社の拡販が少しずつ始まっています。
海外事業も大きく成長しており、セグメント利益で3.1億円、営業利益で2.6億円となりました。
広告プラットフォーム事業
広告プラットフォーム事業について、あらためてご説明します。広告主向けのプラットフォームとして「GENIEE DSP」を提供しています。広告主が自社サービスをWeb上でプロモーションする時に、活用していただくことができるものです。
また、日本のさまざまなブログサイトや新聞社に広告を届けるサービスが「GENIEE SSP」です。インターネットメディアの収益化を支援するプラットフォームを提供しています。
広告プラットフォーム事業 売上総利益推移
売上総利益のグラフです。第3四半期もYoYで20パーセントを超える成長を見せています。
広告プラットフォーム事業 KPI
社数と社単のKPIです。繁忙期に差し掛かっているため、社単が上がってきているのに比べ、社数はそこまで変わっていません。しかし、社単が上がることで、今期の成長を実現できています。
マーケティングSaaS事業
マーケティングSaaS事業には現在、スライドに示しているようなツール群があります。いずれも、企業のマーケティングや営業活動で使われるツールです。複数のプロダクトを導入してくださっているお客さまもいます。
マーケティングSaaS事業ハイライト
財務状況やKPIのサマリです。売上収益は前年同期比で約73パーセント増と、高い成長率を実現できています。売上総利益率は73.4パーセントで、SaaSとして健全な数値になっていると思っています。
ARRは17億円を超えており、100パーセント超の成長を果たしています。リカーリング比率は前年同期比で6ポイント近く伸びており、より健全なSaaSモデルとして成長しています。
マーケティングSaaS事業 売上収益推移
結果的に、売上収益がYoYで82.9パーセント増とかなりの高成長を遂げ、国内のSaaS企業の中でもトップクラスの成長を実現できています。マーケティング系のSaaSを提供する会社はいくつも上場していますが、その中でも、おそらく最も高い成長率を実現できていると考えています。
マーケティングSaaS事業 KPI
KPIです。有料アカウント数は、YoYで40パーセント近く伸びています。カスタマーサクセス、カスタマーサポートをより強化することで、解約率もさらに下がっています。有料アカウント数の増加と解約率の低下の両方の効果から、第3四半期もかなりの高成長が実現できています。
マーケティングSaaS事業における販管費の売上に対する比率
SaaS事業の販管費の内訳等の数値です。営業やマーケティングの比率が上がり、R&Dの比率は若干下がっています。G&Aの比率は若干上がっています。
GENIEE、GENIEE Auto Adsの提供開始
「GENIEE SSP」は新しい機能を追加しました。Webページの長さやユーザーの行動に応じて、広告の配信制御や広告の表示方法を自動化するサービス「GENIEE Auto Ads」を提供しています。こちらはすでに、多くのパブリッシャーに導入されています。
GENIEE DOOH、ドワンゴと業務提携
「GENIEE DOOH」ではドワンゴと提携し、池袋に設置されている日本最大級のオンラインビジョンにアクセスできるようになりました。「GENIEE DOOH」のネットワークの一部として、こちらも販売しています。
GENIEE、ディーアンドエムと業務提携
ディーアンドエムと連携して、我々のマーケティングSaaS事業のツールを、ディーアンドエムの企業、およびその取引先に提供しています。
計画の前提
今期は、売上総利益が40パーセントを超える成長ができており、来年もかなりの高成長を目指しています。販管費を絞り切るよりも、プロダクト投資を大きく継続して行い、来年、再来年の高成長を目指しています。
スライドの下部に記載しているような施策を順次行い、各プロダクトの強化をどんどん進めています。当社は複数のプロダクトを持っているため、グループ間のそれぞれのプロダクトのデータ連携を推進しています。
マーケティングSaaSの事業では、タクシー広告等のマーケティング施策を行っています。また、パーパス実現のために、今期もM&Aの実行を推進しています。
FY2022通期業績予想
2022年の通期の予想は、こちらのスライドのとおりです。営業利益等を上方修正した数値で開示しています。
FY2022四半期毎業績予想
四半期毎の業績の予想数値です。第4四半期が広告業界の最繁忙期となっているため、第3四半期よりもう1段高い山を作るべく、目下邁進しています。
中期方針
中期経営方針は、3年ほど前に作った内容から変更はありません。現在推進している当社のパーパス実現のため、また、日本とアジアにおけるマーケティングテクノロジー領域のリーディングカンパニーになるため、それぞれの事業を拡大しつつ、特にマーケティングSaaS事業の急成長を目指しています。
プライム市場への上場も、重要なマイルストーンの1つとしています。今期はまず経営成績とガバナンスのクリアを目指すべく、各施策を推進しています。
FY2023数値目標
来期の財務指標や数値目標についても、数年前に公開したものと変わらず、目標を追っています。売上収益は90億円から100億円、売上総利益は80億円から90億円が目標です。
営業利益は数年前から、20億円から25億円をめがけて取り組んでいます。第4四半期の経営においても、目標を変えず達成できるようにと考えています。
株価の推移
第3四半期の決算の発表後、株価は直近で若干反応してきています。IR活動も3月、4月と活発化させていこうと思っています。以上が、第3四半期の決算のご説明でした。
質疑応答:広告プラットフォームの新規媒体の開拓について
「広告プラットフォームの新規媒体の開拓とはなにか?」というご質問をいただきました。
サプライサイドのビジネスで言いますと、エンタープライズを除くミドルサイズからスモールサイズの領域では、当社はかなりシェアを持っている認識です。その領域の新規開拓を継続して行っています。
メディア内でのプラットフォームシェアも、常に見ています。ミドルサイズのパブリッシャーの中でも、もう1段シェアが上がったと思っています。
「具体的にどのようなアプローチになるか?」ということについて、我々の場合、基本的には直販でミドルサイズのパブリッシャーと取引しています。スモールな個人のサイトについては、協業先やOEM先に渡しています。生産性を考慮して、個人の企業にはツールのみ提供し、協業先に取引してもらう体制となっています。