2023年2月17日に発表された、株式会社セキュア2022年12月期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。

スピーカー:株式会社セキュア 代表取締役社長 谷口辰成 氏

Mission/Vision

谷口辰成氏(以下、谷口):みなさま、こんにちは。本日はご参加いただき誠にありがとうございます。株式会社セキュア代表取締役の谷口でございます。資料を用いて、当社についてご説明いたします。

当社のミッションとビジョンです。近年、セキュリティが果たすべき役割は広がってきています。生命や財産を守ることが身近な問題になってきた一方で、企業は生命や財産だけではなく、信用や評判、レピュテーションなども守るべき重要な要素となってきました。

当社では、AI(画像認識)技術とセキュリティを掛け合わせて新しい価値を創ることを通して、安心で安全な環境を構築すること、さらにその空間をデータ化して知性を与え、スマートな環境にアップグレードしていくことをミッションとビジョンに掲げています。

安心で安全な環境の構築やスマートな環境にアップグレードしていくということは、社会にとって必要なことだと考えていますので、当社は事業をスピードアップし、より多くのお客さまや社会に対してこれらを実現していかなければならないと強く思っています。

当社の概要

会社概要について簡単にご説明します。現在は120名から130名ほどの体制で、セキュリティソリューション事業を主に日本国内で展開しています。東京、大阪、福岡、福島に加え、2022年は名古屋に拠点を設け、2023年のはじめには大宮、横浜にもオフィスを開設しています。

セキュリティソリューション

当社のセキュリティソリューション事業は、自社開発したソフトウェアと、世界中から優れたハードを調達してAI(画像認識)技術を掛け合わせたセキュリティソリューションを、主に企業向けに提供しています。

商品・サービスの概要

具体的な商品・サービスの概要をご説明します。入退室管理システムの「SECURE AC」、監視カメラシステムの「SECURE VS」、画像解析サービス/その他の「SECURE Analytics」を主にオフィスや工場、商業施設などに提供しています。売上構成はスライド下段のとおりです。

決算サマリー

2022年度の業績についてご説明します。決算サマリーとして、売上高は33億8,000万円と前期比で微増となりました。営業利益はマイナス1億6,000万円となり、赤字での着地です。一方で、導入件数は順調に推移し、「SECURE AC」が960件、「SECURE VS」が2,798件の実績を積み上げることができました。

営業人員を大幅に増員し、約2倍の体制に強化しています。先ほどご説明したとおり、名古屋に営業拠点を開設し、2023年1月に大宮と横浜にもオフィスを開設しました。

P/Lのサマリー

P/Lのサマリーについてご説明します。2022年度は半導体不足や中国のロックダウンによる納期遅れ、為替の急激な変動やインフレなど、当社にとって非常に厳しい年でした。しかし、2022年の後半から納期遅れや期ズレが解消されてきたため挽回することができました。売上高は業績予想を上回り、前期比で微増の33億8,400万円で着地しました。

一方で、当社にとって成長の伸びしろはまだあるため、売上が停滞する中で厳しい状況でしたが、しっかりと踏み込んで成長に向けた戦略的な投資を行いました。したがって販売管理費は増加し、営業利益は1億6,900万円の赤字、当期純利益は2億2,700万円の赤字となりました。

業績予想と実績

商品ごとの業績予想と実績についてご説明します。2022年度下期は、顧客ニーズに柔軟に対応したため、商品構成の実績が計画から一部変動しています。入退室管理システムの「SECURE AC」は、一部で期ズレが継続していることに加え、小規模オフィス市場の需要が減少したことでこのようなかたちでの着地となりました。

小規模案件は、短期的に需要の高い「SECURE VS」に力を注ぎました。入退室管理システムの需要について、足元では出社率の上がった大企業や中小企業での顔認証の需要が増大しています。このようなニーズへのアプローチを行っているため、今後の需要動向は特に問題ないと捉えています。

一方で「SECURE VS」は、期ズレが解消されて、先ほどお話しした中小型案件の需要をしっかりと捉えて案件獲得が好調に進んだことにより、業績予想を上回る着地となりました。

業績推移

売上全体の業績推移についてご説明します。2022年度は前年と同水準の推移となりました。為替の変動やインフレなどで仕入価格が高騰している中でも、付加価値や価格アップの対策が奏功し、売上総利益・総利益率は前年同水準をキープすることができました。こちらは、今後さらなる利益率の向上を図っていく予定です。

「SECURE AC」業績推移

入退室管理システム「SECURE AC」の業績推移についてご説明します。先ほどお話ししたとおり、売上高は前年比増収となっていますが、一部の期ズレ継続と小規模オフィスマーケットの需要減少により計画を下回りました。

数十人程度の小規模オフィスはリモートワークを実施する企業が多いため、需要が減少したと感じています。一方で、100人以上の中規模オフィスや24時間のフィットネス、食品工場、物流施設などでの需要が非常に伸び、このようなかたちとなりました。直近では勤怠管理と顔認証を連携する需要も増えています。

2022年は大企業での出社率が上がってきたことで、カードの運用に不都合を覚えている企業での新たなニーズが増えています。また、新築の大型ビル案件などにおいて、顔認証の需要や大型の需要も増えてきているため、2023年度以降はこのあたりを狙っていこうと考えており、需要動向はとくに問題ないと捉えています。

「SECURE VS」業績推移

監視カメラ「SECURE VS」の業績推移です。売上高は、需要調整と期ズレがあったものの、中小型案件の獲得増により、計画以上で着地することができました。これまでのビル施設や小売店舗の需要に加えて、医療介護施設や食品工場、物流施設、データセンターでの導入が増えました。

そのため、一部の大口顧客への依存度が低下し、導入件数自体は前年比122パーセント程度の水準に到達しました。

「SECURE Analytics/その他」業績推移

「SECURE Analytics」はスライドに記載のとおり、順調に推移しています。

四半期売上高比較

スライドのグラフは四半期売上高比較です。左側の薄い色で示しているのが2021年度の売上高で、右側の濃い色のほうが2022年度の売上高となっています。ご覧のとおり、上期は「SECURE VS」の落ち込みが影響して前年同期比で減収となりましたが、下期でだいぶ挽回することができ、増収で推移しました。

第2四半期、第3四半期で厳しい状況を脱し、ピークアウトしたと思っています。価格転嫁や中小型案件の獲得、営業体制の強化が奏功しつつあり、第4四半期は売上高10億円を突破できました。

営業利益増減要因分析

営業利益増減要因分析についてご説明します。売上高および売上総利益は昨年と同水準となっていますが、販管費は成長に向けた人件費や戦略費などの先行投資をおおむね計画どおり実施しました。

かなり難しい判断ではありましたが、計画どおり実施できたことに胸をなでおろすとともに、数字だけでなく内容も質の高い投資ができたと考えています。その他販管費についても、オフィスの拡張など投資に近いものが多くを占めている状況です。

2022年12月期 3つの重点アクション実績

2022年度の年初に掲げた3つの重点アクションの実施状況をご説明します。1つ目の「セールス・マーケティング部門の大幅な強化」は予定どおり実施し、倍増近い体制を構築することができました。

2022年度内での生産性アップにはまだ直結していませんが、現在新しいメンバーへのトレーニングは順調に実施しており、良いかたちで組織作りができています。今後も継続してセールス・マーケティング部門のさらなる強化を図っていく予定です。

2つ目の重点アクションの「セキュリティソリューション事業の展開幅を広げる」についても、しっかりと展開、実現ができたと思っています。

データセンターや物流施設等の新たな分野への開拓やソリューション開発を実施することができ、拠点展開としても2022年に名古屋オフィス、2023年に大宮オフィスと横浜オフィスを開設できました。今後も引き続き、拠点展開を図っていく予定です。

3つ目の「AI Storeを事業化へ」については、さまざまな企業とのPoCなどの取り組みを通し、水面下での準備をしっかりと整えることができたと思っています。

今後の方向性として、1つ目に本業であるセキュリティ、2つ目に無人化・省人化というアプローチ、3つ目に店内分析(インストアアナリティクス)、4つ目にOMOというテーマで、事業の展開を考えています。

すでにシリコンバレーの企業との業務提携について発表していますが、2月下旬に開催される展示会「リテールテックJAPAN」にて新しい取り組みの一部を発表する予定となっています。ぜひご期待ください。

B/Sのサマリー

B/Sのサマリーです。半導体不足はピークアウトしてきた印象ですが、まだリードタイムは長い状況です。機会損失回避のため、通常時より高い水準で継続的に在庫を確保しています。有利子負債は若干増加しましたが、自己資本比率は40パーセントをキープしています。

キャッシュフロー(CF)

キャッシュ・フローです。2022年度は先行投資を進めて赤字になったことで、営業キャッシュ・フローはマイナスとなっています。また、オフィス拡張や拠点拡大などを行ったため、投資キャッシュ・フローも支出が増加しましたが、その分長期借り入れを増やし、手元流動性を確保しています。

業績予想 2023年12月期

2023年度の業績見通しについてご説明します。半導体不足などの影響による期ズレがほぼ解消されたため、2023年度の売上高は前期比で21パーセント増の41億円を見込んでいます。商品別で見ても、「SECURE AC」と「SECURE VS」はそれぞれ20パーセント程度成長すると見込んでいます。

営業利益は、さらなる売上成長を実現するための先行投資を継続しつつ、1億円の黒字化を計画しています。

四半期売上推移と2023年12月期の位置付け

四半期売上推移と2023年12月期の位置付けです。2022年度の第4四半期では、売上高10億円を突破することができました。また、セールス・マーケティング部門の人員についても直近で大幅に増員しています。

今年は、物不足や資材の高騰などによる外的要因に対してしっかりと対処しながら、昨年行った投資・種まきの結果を回収しつつ、さらなる成長の種をまく年にしていきたいと思っています。継続したセールス・マーケティング部門の強化に加え、研究開発や新たなアライアンスパートナーとの関係構築にも力を注いでいく予定です。

3つの成⾧戦略

最後に、当社が掲げる成長戦略についてご説明します。当社では、3つの成長戦略を掲げています。1つ目は、既存のセキュリティソリューション事業の継続的な成長と収益力アップです。2つ目は、リテールDXということで、AI STORE事業の収益化です。3つ目は、大きな成長の可能性のある韓国・ASEAN地域での事業展開です。こちらの3本柱で事業成長を実現させていく計画となっています。

成⾧イメージ

既存のセキュリティソリューション事業で基盤を固め、SaaSやAIなどを活用した新たなビジネスで成長を加速させ、安心安全でスマートな社会の実現を目指します。

冒頭にご説明したとおり、当社のビジネスは社会的に大変意義のあるものだと思っています。引き続き株主のみなさまの期待に応えられるよう、一丸となって励んでいきますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上でご説明を終わらせていただきます。ご視聴ありがとうございました。

質疑応答:今期の採用や退職率について

司会者:「大量採用に関連し、退職率などをどのように見ているのでしょうか? また、今期の増員数はどの程度を計画しているのでしょうか?」というご質問です。

谷口:採用については、2022年の頭に人事の責任者CHROを選任し、強化を図っています。退職率はそれほど高くなく、今のところ、役職者や役員の退職は基本的にない状況です。

今年については、セールス・マーケティング部門を中心に、20名から30名程度の増員、R&D部門やコーポレート部門についても、若干名の採用を計画しています。

質疑応答:今後のセキュリティシステムの需要について

司会者:「昨今の強盗事件や飲食店におけるトラブルの報道について、関連するサービスなどに、潜在的な需要はあるのでしょうか?」というご質問です。

谷口:昨今の報道を受け、個人的にも本当に痛ましい事件だと思っており、飲食店業界の風評については非常に残念に感じています。足元では、個人宅での引き合いがやはりだいぶ増えていると思います。

また、飲食店におけるトラブルに関しては、フードディフェンスということで、飲食店に限らず、例えば工場や物流関係、売り場も含めて、食に関わる業種のセキュリティ意識は、以前から高いものがありました。

今回のような不正といいますか、痛ましいような事件が起きてしまった時に、例えば異物が混入してしまった場合などは、自分たちの過失によって入ったのではないことを証明しない限り、事業主体側に非があると見なされてしまいます。

ですので、そのような観点においても今後は、売り場や調理場、製造工程、場合によっては流通経路に対しても、その安全性を担保するために監視カメラのようなセキュリティシステムが導入されていくということが起き得るのではないかと感じています。

質疑応答:競合について

司会者:「競合について教えてください。日本国内で入退室管理・監視カメラサービスで重要な競合はありますか? あるいは、将来的に参入してくる可能性がある競合は考えられますか?」というご質問です。

谷口:競合については、最近スタートアップ系の企業が多く出てきています。固有名詞は控えますが、上場している企業やクラウドの監視カメラ、スマートロックといったサービスを提供している企業とは、競争になってくると思っています。

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