あなたは生命保険に入っていますか。20代ではまだ少ないかもしれませんが、30代以降の方なら何らかの生命保険や医療保険に入っているのではないでしょうか。

公益財団法人生命保険文化センターが3年ごとに実施している「生命保険に関する全国実態調査」の最新調査(2015年9月公表)によれば、生命保険の世帯加入率は89.2%。実にほぼ9割の世帯が保険に加入しています。

一方、保険に加入しているといっても「安かったからとりあえず」「勧められてなんとなく」という人が非常に多いと言われれば、身に覚えがある方もいるのではないでしょうか。

実際に、今自分が加入している保険で本当に良いのかと悩んでいる方も多いと思います。今回は、ある外資系生命保険会社でトップ営業マンとして活躍する中川さん(仮名)に「よい保険」「悪い保険」についてお話を伺いました。

内容もわからず何十年もお金を払い続けている? あなたの生命保険の種類は

本題に入る前に生命保険の仕組みについてざっと整理しましょう。生命保険は基本的に「主契約」と「特約」との組み合わせで成り立っています。「主契約」という基礎の部分に「特約」付加して主契約の保障内容を充実させるイメージです。

また、保険には保険金がどういった場合に払い込まれるのか、保障が一定期間なのか一生涯なのかなどによって「定期」「養老」「終身」「医療」など複数の種類があります。

ここで「へー!そうなんだ」と思った方がもしかしたらいるかもしれません。そう、保険の種類などは入っている人も意外と知らないものなのです。実際に「定期」と「終身」の違いを理解せずに保険に加入して後々痛い目にあった、という人が多く存在すると中川さんは指摘します。

「ざっくりいうと定期保険=掛け捨て。月々の保険料は安いですが、一定期間を過ぎると保険契約が終了します。保険の期間中に亡くなった場合は定められた保険金が支払われますが、その期間を過ぎれば何もありません。

一方、終身保険では一生涯死亡保障が続きます。また、払い込んだお金は積み立てられていき、将来年金的にも使えます。早期死亡に対するお守りにも、老後の資金対策にもなるというわけです。ただし月々の保険料は高く、仮に定期保険が月5千円だとすれば、終身保険は2万円というイメージです。

ですが、ほとんどの方が多少月々の保険料が高くても終身保険を希望されますね。働き盛りに万が一のことが起きる確率よりも、60歳を過ぎても元気な確率のほうが圧倒的に高いわけですから当然といえば当然です」(中川さん)。

「一生涯の保障+貯蓄性」、加入者の多くにはこうしたニーズがあるようです。しかし中川さんによれば、一生涯保障が続く終身保険のつもりで入った「定期付終身保険」でトラブルが起きがちだといいます。

「保険料が安いのに保障は充実!」には注意が必要?

定期付終身保険に関する問題は従来からも指摘されてきましたが、その名前などから内容を誤解する人が多く、かなり根が深い問題のようです。

定期付終身保険とは、主契約を終身保険とし、特約に定期保険・医療保険等の保険を付加したものです。

こう聞くと「なんだ、主契約が終身ならいいじゃないか」と思われる方がいるかもしれません。しかし、このときの保障内容はしっかり見たほうがいい、と中川さんはアドバイスします。

「極端な例ですが『終身10万円+定期990万円=合計保証額1,000万円』という定期付終身保険で、1,000万円の保障が一生涯続くと誤解して加入してしまうケースがあります。月々の保険料も『最初の10年は1万円』などと安さをアピールされることもあります。でも、こわいのは定期の部分の『更新』です。

たとえば30歳で加入した場合、定期部分が10年後に更新されるものだとすると、更新時の保険料は30歳で契約したときのものではなく、40歳の人が新たに契約する場合の保険料になるのです。このとき保険料はおおよそ倍になるイメージです」(中川さん)。

つまり、30歳のとき月々1万円だった保険料は、40歳からは2万円に、50歳からは4万円になるというのです。さらに恐ろしいことには、定期保険の場合、一定年齢以上は更新ができないことが多いといいます。

「定期付終身保険でありがちなのが、本当に保障が必要な時には保障がなく、満期になっても戻ってくるお金はわずか、というケースです。60歳までに1,000万円近く払っているにもかかわらず、60歳過ぎたら定期部分は更新できず保障もなく、終身部分はほんの数十万円などということもあります」(中川さん)。

加入当初に保険料だけで判断していないか(させられていないか)、保障内容は自分の希望をカバーできているのか、気になる方は一度見直したほうがいいかもしれません。

定期付終身保険は「悪い」保険なのか

では、定期保険や定期付終身保険は買ってはいけない「悪い保険」なのでしょうか。そう尋ねると中川さんは「目的に合っていたら、定期保険も定期付終身保険も意味があります」ときっぱり。

「私自身も定期保険に入っていますよ。子供が大学を卒業するまでの間に万が一のことがあった場合に、残された家族の生活費に充てたいという考えからです。このように保障が必要な期間や目的が決まっているという場合は保険料が安い定期保険は有用だと思います。

また、定期付終身保険も終身部分がしっかりした保障内容であればよいのです。実際に、終身の積立部分がかなり大きく設定されていたので老後に車を買い替えることができた、という方もいます。ご本人は気づいていなくて予期せぬボーナスだと喜んでおられましたが(笑)。

逆に、必要もないのに不安を煽って終身保険を勧めてくるような保険セールスには注意したほうがよいです。保障は一生涯!だけど保険料の払い込みも一生涯!というような保険もあります。年金の減額が言われる中で80歳過ぎても払い込まなければいけない保険料があっても大丈夫か、そうしたこともよく考えて、セールスには何でも質問して納得したうえで保険を決めてほしいです。ご自身の大切なお金を多く投じることになるわけですから」

中川さんはこの言葉に力を込めました。

まとめ

いかがでしたか? 「よい保険」なのか「悪い保険」なのかは自分の求める保障内容次第といった側面があるようです。今入っている保険がいざというとき本当にあなたの役立つのか、一度見直してみるのも良いかもしれません。

LIMO編集部