クルマ好きであるだけでなく、クルマいじりもこよなく愛する私。自分でできるならばとりあえずやってみよう!という欲求が強いために、自宅玄関前の駐車スペースは毎週末さながら小さな自動車整備工場と化す。

「お宅はクルマ屋さん、なんでしょ?」

その様子を見て我が女房は、まるで映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の鈴木オート商会だと言い、顔を合わせても挨拶程度のお付き合いに留まるご近所さんからは、「あそこのヒゲ面のオジサンは間違いなくクルマ屋さんだ」と思われているらしい。

自宅の前をわんこのお散歩でよく通る奥様から、「エンジンのかかりがよくないのだけれど、一度診てくださらない?」と、愛機の下に潜ってレンチとスパナを手に格闘している真っ最中に話しかけられたこともある。

確かに、週末のたびにクルマの下に潜っては油まみれになっているオジサンは他には見かけない。どちらのお宅もピカピカな最新型の新車が納まり、洗車する姿は休日の午後にでも見かける程度。

そんな佇まいの家がほとんどの中で、朝からクルマの下に潜ったりとか、タオルを頭に巻いて電動ポリッシャーを回してボディを磨き込んでいるヒゲ面は、どうしたって労働基準法にやたら詳しい人事畑のサラリーマンには見えっこない。

もし、我が家の愛機達がディーラー整備バッチリの新車ばかりであったならば、こんな私でもご近所のご主人たちと同じく、週末は専らゴルフに専念し、たまに家の前で慣れない手つきでクルマを洗ってみる…というダンディなオジサマになれたのかもしれない。

愛用のポリッシャー

入れ替わり立ち替わり「ちょっと古めのクルマ」が並ぶ我が家

しかしながら現実には、我が家の前には常に「ちょっと古めのクルマ」ばかりが並ぶ。自宅前に3台、数軒先の神社の軒下に1台の計4台を愛でているのだが、この4台のそれぞれは比較的短いスパンで入れ替わる。

ある時は2年目の車検の前に、またある時は3回ほど出勤のお供をしただけの3週間後に…といった具合だ。こうした短い周期も、ご近所に「あそこの家はクルマ屋さんに違いない」と思わせてしまう要因になっているのだろう。

おまけに、入れ替わり立ち替わり我が家の愛機になり、そして卒業していくクルマたちには一貫性がない。クルマ好きのオジサンたちによくある傾向は、私は絶対〇〇党とか免許取ってから×××ひと筋、といった方々。

我が家の近所も、買い替えてもまたメルセデス・ベンツのお宅や、夫婦揃ってきれいなBMWが並ぶお宅、といった比較的保守的な輸入車ブランドの比率が高いエリアである。

ところが我が家といえば、トヨタセルシオの代わりにボルボワゴンが来たかと思えばそれがいつの間にかスバルレガシィに…。はたまたメルセデス・ベンツSLがシボレーコルベットになったあと、ある日それは真っ赤なフェラーリF355スパイダーになっていた。

あるいはBMW3シリーズがポルシェ911になり、BMW M5を経てなぜだかダッジラムトラックになっていた…などなど。とにかく脈絡がないのである。

これが全て新車から新車への入れ替えだったら我が家はとっくのとうに破産しているのだが、そこは元ヤナセ出身でセールス経験者。すべてのクルマは上手に安く手元に引き寄せ、卒業の際はできるだけ高く私のもとを飛び立っていく、といった入れ替えにより今に至っている。

中古車を自分の「愛機」にする方法

これらの車種の新車なんてこの先一生買えない!と割り切れる程度の稼ぎなので、常に中古車ばかりが入れ替わっているのだが、たとえ中古車であっても次なるクルマへの買い替えはドキドキしてワクワクして、かなり楽しいものである。そして、我が家に「新しい中古車」がやってくると、まるで儀式の如く私の愛情たっぷりの作業メニューがスタートする。

たとえば、中古車である以上よほど前オーナーが神経質でない限り、間違いなく足周りはヘタっている。この足周りのリフレッシュ、実はびっくりするくらいクルマがシャキッと蘇るのである。なので自宅の軒先でジャッキアップしてウマかけて、ショックアブソーバー交換、なんてことは朝メシ前のちょちょいのちょい♪でやってしまう。

また前オーナーがジーンズなどで運転することが多かった個体などは、内装の革シートなどが擦り切れたり経年劣化している場合が多い。そんな時には革靴の補修剤であるコロンブスのアドカラーや、染めQスプレーなどを使いながら、これまでのオーナーたちの使い込んだ跡をきれいに消して、革本来の滑らかなハリのある状態に戻していく。

一方、電気系のメニューとしては、汎用品のHIDをヘッドライトやフォグランプにインストールしたり、昔懐かしいカセットラジオのユニットをi-Pod対応のCDレシーバーに入れ替えたり、純正の安っぽいスピーカーからきれいな音が出せるものにトレードインしつつ、ドア内側を全面デッドニング処理してみたり…。

時には内装からシートまで全部外して、きれいに配線の取り回しをした後に、また苦労して組み付けるといったかなり大掛かりな作業も好んで行う。こうした作業は、新車であれば普通に標準で装着されてくるものがほとんどだ。休日のほぼ全てを費やして、わざわざ苦労して取り付ける必要などないのである。

しかし、一度手元に来たならば、とにかく何か自分の好きなように手を入れて、自分だけのこだわりの1台にしたいのである。ひとつひとつ手を加えていくことを通して、どこかの誰かが乗っていた中古車の名残が消えてなくなっていく代わりに、だんだんと自分の「愛機」と呼べる愛しい存在になっていく楽しみがそこにあるのだから。

鈴木 琢也