ロングセラーはつらい
明治のカールが東日本での販売を今夏にやめると報道され、話題になりました。ロングセラー商品は製造が安定し、莫大な販売経費をかけなくても一定の売上が出るため、商売上は現金を産む金の卵です。
しかし、変わらぬおいしさは長い目で見れば陳腐化を意味する場合もあります。じわじわと売上が減ってくるときにはなかなか思い切った手が打てません。広告効果が大きいわけではありませんし、全面リニューアルでは古くからの顧客を失うリスクを負います。自社で競合製品を出すことも勇気がいる決断です。
このように、ロングセラー商品は長期にわたって儲けが出てきただけに、売上の縮小が続いてもなかなか思い切った決断ができないという悩みを持っています。
大正製薬ホールディングスの悩みはリポビタンDの売上減
この問題は大正製薬ホールディングス(4581)にも当てはまります。
同社は市販薬と医療用医薬品の双方を手掛けていますが、収益的には市販薬を扱うセルフメディケーション事業が柱です。
セルフメディケーション事業は売上高1,800億円、セグメント利益301億円を産みますが、主力は栄養ドリンクのリポビタンシリーズ(売上高585億円)、風邪薬のパブロンシリーズ(同263億円)、発毛・育毛剤のリアップシリーズ(161億円)です。
ちなみに、リポビタンシリーズは1962年に誕生して以来のロングセラーであり、「レッドブル」開発のヒントになったとも言われています。
同社にとって悩ましいのは、売上規模が最大で稼ぎ頭と見られる、このリポビタンシリーズです。決算短信を紐解くと、2000年3月期には同シリーズの単体売上は972億円とされていますが、2017年3月期の売上は585億円で、長期的に見ると▲40%も減少しています。
業績は軟調、株価は新安値
主力製品の減収傾向は同社の業績にも影を落としているようです。同社の業績を見ると、2014年3月は売上高2,960億円、営業利益417億円でしたが、2017年3月期は2,800億円、320億円まで減少しています。2018年3月期の会社予想もそれぞれ2,790億円、285億円と減収減益とされました。
株価の方の過去1年間の推移もじり安傾向で、最近は連日新安値を付けています。現在の株価は一株当たり純資産の1.05倍まで低下しています。
リポビタンDをどう守るのか
リポビタンDと言えば、一昔前までは「ファイト一発」というTVCMが有名でしたが、最近は野球の大谷選手やサッカーの三浦選手の「Have a Dream」に変わり、やわらかいイメージに一新されました。「肉体疲労時の栄養補給」から「何かを達成したいときに」というメッセージに変わり、好感を持てる内容です。
このCM、客層と使用シーンの広がりをもたらすという意味で製品の寿命を延ばす効果が期待できそうです。その昔リポビタンDを愛飲していた方々も年齢を重ね、別の飲料を飲んでいるのかもしれませんので、呼び戻しに効果があるでしょう。
しかしこれだけでは十分ではないでしょう。新しい若い客層にどのような価値を届けることができるのか、大正製薬ホールディングスのチャレンジはこれからだと思います。
ファイト一発、大正製薬!
LIMO編集部