2022年10月下旬、厚生労働省は国民健康保険料の上限金額を、2023年度から現在の額よりも2万円引き上げる方針を固めました。

この上限額の引き上げはどのような考え方に基づいて決定されたのでしょうか。

また、今回の引き上げに該当する人の所得金額の目安についても解説します。

国民健康保険料の上限金額見直しとは

国民健康保険制度において、保険料の負担は加入者の負担能力に応じて、公平に決める必要があるとされています。

ただし、そこまで医療機関を利用していないのに収入が多いために高い保険料を負担していると感じる人もいることや、保険制度を円滑に運営していく必要があるという考えから、被保険者の保険料負担額には上限が設けられています。

そして、この上限額の見直しはこれまでも繰り返し行われており、実は今年度(令和4年度)も3万円引き上げられたばかりです。

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出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」

出所:厚生労働省「国民健康保険の保険料(税)の賦課(課税)限度額について」

その前の見直しは令和2年度で、この時も3万円の引き上げが行われています。

上限金額を引き上げなかった場合の影響

現在の日本では、少子高齢化が進んでいる一方で、就労者の所得が伸びない状況が続いています。

このような中で、上限金額を引き上げず、国民健康保険料の保険料率の引き上げだけによって保険料収入を確保しようと考えると、おのずと高所得層の負担は変らないにもかかわらず、中間所得層の負担が重くなるという問題が発生します。

上限金額を引き上げた場合の影響

しかし、保険料率の引き上げとともに、上限金額の引き上げも合わせて行うことで、高所得者の負担は増えるが、中間所得層の負担を抑えることになり、結果的に中間所得層に配慮した保険料の設定が可能になります。

国民健康保険料の上限金額見直しによって影響を受ける所得金額

今回の見直しにより、影響を受ける所得金額はどのくらいなのでしょうか。国民健康保険料額は収入や年齢、家族構成によって異なりますし、自治体によっても異なります。

今回は横浜市を例にみていきます。ちなみに横浜市の令和4年度の保険料率や均等割額、上限金額は以下のとおりです。

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出所:横浜市「令和4年度保険料の料率等について」

出所:横浜市「令和4年度保険料の料率等について」

40歳以上、独身の場合

独身で年齢が40歳以上になると、介護保険料の支払いも必要です。そうなると、所得金額が890万円以上になると、上限金額に該当することが分かります。

今回の見直しによって40歳以上の独身の人が影響を受ける所得金額890万円で、令和5年度からは上限金金額が現在の102万円から104万円になります。

世帯主が40歳以上、専業主婦(40歳以上)、16歳以下の子ども1人の3人家族の場合

では、世帯主が40歳以上で、妻も40歳以上(専業主婦)、そして16歳以下の子どもが1にいる3人家族の場合、上限金額に該当する所得はどのくらいになるのでしょうか。

計算の結果、該当する所得金額は830万円となり、830万円以上の所得がある人は、令和5年度の国民健康保険料が104万円になります。

世帯主が40歳以上、専業主婦(40歳以上)、子ども2の4人族の場合

さらに、世帯主が40歳以上で、妻も40歳以上(専業主婦)、そして子どもが2人(16歳以上19歳未満、16歳未満がそれぞれ1人)にいる4人家族の場合、上限金額に該当する所得は790万円です。

ただ、ここで使用している金額は所得金額です。収入金額で考える場合は、経費の額を上乗せする必要がある点に注意してください。

国民健康保険の加入者は自営業者やフリーランスなどですので、給与所得者は関係ありません。

ただ、上で試算した結果で考えると、所得金額が890万円ということは、給与収入に換算すると約1100万円以上になります。家族構成によっては1000万円でも対象になることが分かります。

年収1000万円前後の人は国民健康保険料の額に注意しておこう

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Yusuke Ide/istockphoto.com

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今回の試算では、令和4年度の保険料率を適用しています。そのため、来年度保険料率が改正され、料率が上がった場合、年収1000万円以下の人でも引き上げ後の上限金額が適用される可能性があります。

特に子どものいる家族世帯では、保険料以外に教育費などの負担も引き続き考慮しなければならず、また、住宅を購入しているなら住宅ローンの返済も引き続き発生します。

特に子どもが高校生や大学生など、一番教育費がかかる年齢だと、月2000円程度の保険増加でも家計に負担がかかる可能性は十分に考えられます。

中間所得層の負担に配慮した結果の上限額引き上げといわれていますが、本当に中間所得層の負担に影響がないのかについては、正直疑問に感じるところです。

また、このような見直しが今後も続くかもしれないことを考えると、社会保険料負担増加のために、何らかの対策を立てておく必要があるといえそうです。

参考資料

新井 智美