2022年11月9日に行われた、株式会社ベネッセホールディングス2023年3月期第2四半期決算説明の内容を書き起こしでお伝えします。
スピーカー:株式会社ベネッセホールディングス 代表取締役社長CEO 小林仁 氏
株式会社ベネッセホールディングス 常務執行役員CFO 兼 財務・経理本部長 坪井伸介 氏
FY22上期 ハイライト(対前年)
坪井伸介氏:2023年3月期第2四半期の業績概要および通期見通しについてご説明させていただきます。
第2四半期の連結業績は、残念ながら対前期で減収減益という結果となりました。売上高は対前期でマイナス7.1パーセント、154億円の減収です。
この要因については、昨年度のベルリッツの売却による影響が131億円減と最も大きいのですが、これに加え今年度の新型コロナウイルス感染拡大の影響があり、中国の主要都市、特に上海でのロックダウン影響から、K&F事業が35億円の減収要因になりました。
国内教育事業においては、「進研ゼミ」会員の減少により40億円強の減収となる一方で、大学・社会人事業では前期比プラス28億円と大幅な増収となったのですが、国内教育セグメントのトータルでは10億円の減収となりました。
介護・保育事業では、新型コロナウイルスの第7波によって入居率の改善が遅れていますが、新拠点の増加や介護人材会社のM&Aの効果などで、17億円の増収となっています。
一方で、営業利益は対昨年度23億円の減益となりました。今期の上半期はもともと若干の減益を想定していたのですが、新型コロナウイルスの影響で中国事業、介護・保育事業のマイナス影響が大きく、減益幅が我々の想定よりも大きくなりました。
経常利益は同様に22億円の減益です。当期純利益についてはベルリッツの売却による税金費用削減効果があり、前期比マイナス1億3,000万円と減益幅は小さくなっています。
FY22上期 事業別営業利益(対前年)
上半期の事業別営業利益を前年と比較したウォーターフローチャートです。減益の主因については、中国事業のロックダウン影響、これはロックダウンによる出荷ズレ、およびそれに起因する退会影響が中心ですが、これらによりK&F事業が20億円の減益となったことが1つです。
また、介護・保育事業において、今期期初の入居率が、前期比マイナス2.5パーセントの90.1パーセントでスタートしたことのマイナス効果があります。また、光熱費の高騰、新型コロナウイルスの第7波対応の人件費増、そして今期中に入居率を引き上げるための販促費の増加などの費用の先行もあり、26億円と大幅な減益となりました。
これに対し、ベルリッツ売却による赤字剥落のプラス19億円に加え、国内教育事業トータルでは上半期プラス6億円の増益があったのですが、このマイナスをカバーするには至らなかったという状況です。
FY22通期見通し ハイライト(対前年)
通期業績見通しについてご説明します。この上半期の状況を受け、誠に遺憾ながら通期業績見通しを下方修正します。新しい見通しとして、売上高は4,170億円、期初予想比で90億円のマイナス、前期比ではマイナス約140億円です。
営業利益は215億円、期初予想比で35億円のマイナス、前期比では13億円の増益です。経常利益は165億円、期初予想比で30億円のマイナス、前期比では11億円の増益となります。当期純利益は115億円、期初予想比で20億円のマイナス、前期比では104億円の増益としたいと思います。
下方修正ではありますが、ベルリッツ影響が大きい売上高以外の利益ベースでは前期を上回る増益で、営業利益・経常利益は2期連続の増益、当期純利益はベルリッツ売却に伴う、関係会社株式売却損の影響がなくなり、大幅な改善を見込んでいます。
FY22通期見通し 営業利益(対5月発表見通し)
期初予想の営業利益が修正予想に変更された経緯について、ウォーターフローチャートでご説明します。まず、上半期実績でも触れた中国のロックダウンや、新型コロナウイルス感染症第7波が通期に及ぼすマイナス影響について、K&F事業でマイナス17億円、介護事業でマイナス6億円、合わせて23億円のマイナスをみています。
これに加え、物価上昇と為替影響がK&F事業でマイナス4億円、介護・保育事業でマイナス7億円、合わせてマイナス11億円とみています。これらの外部環境変化に伴う、いわばアンコントローラブルな減益要因が合計で35億円となります。
介護事業では物価高騰に対応して来月、12月から全施設一律の値上げを実施し、今期においても4ヶ月分で7億円の増益効果を見込んでいます。
一方で、国内教育事業は通期でも対前期で増益とみていますが、年内入試の加速を中心とした事業環境の変化の影響を受け、ゼミ事業、学校事業、塾事業において期初想定していたほどのトップラインの伸びが見込めず、増益幅が鈍化しており、この影響も通期の予想には見込んでいます。
FY22通期見通し 営業利益(対前年)
今回の修正要素を事業別に対前期と比較したウォーターフローチャートです。対期初予想ではマイナスだった国内教育事業は、対前期では13億円の増益を確保します。ゼミ事業では若干の減益となる見込みですが、成長領域と位置づけている大学・社会人事業が約9億円の増益、塾・教室事業や学校事業も増益を維持できる見込みです。
K&F事業は中国ロックダウンの影響は残りますが、通期では減益幅は大幅に縮小する見込みです。介護・保育事業は12月からの値上げもあり、通期では第2四半期に比べ減益幅が縮小する見込みとなっています。
FY20から2期連続の増益となり、水準は残念ながら下がってしまいますが、中期経営計画の「フェーズ1」で掲げた「2年でFY19を超える営業利益」という目標については、なんとか達成したいと考えています。
エグゼクティブサマリー
小林仁氏:先ほど坪井から数字の詳細をご説明しましたが、私からは現在の戦略の進捗や、今考えていることを中心にお話しさせていただきたいと思います。
まず、エグゼクティブサマリーです。1つ目は、FY22については外部要因の影響が大きく、業績の見通しを修正します。営業利益250億円を215億円としたいと思います。
修正の理由は、新型コロナウイルスの影響、物価上昇、円安等の外部環境要因と、教育事業の事業環境変化による影響が出てきているという認識をしています。
2点目として、この後に詳しくお話ししますが、国内教育事業は教育の変化の中でいくつかのアラームが上がってきています。そこに早期に対応策を取ることを現状で考えており、着手していこうとしているところです。
3点目は、その一方で今後、私どもは大学・社会人領域に力を入れて進めていくと以前からお話ししていますが、この事業は確実にこの半期も伸びてきています。十分な機会点を見出すことができていますので、さらに強化を進めたいと考えています。
子どもの学習意欲低下
国内教育領域における環境変化で、私どもが特に留意すべき変化と捉えているものを3点ご紹介したいと思います。
まず1つ目が、子どもの学習意欲低下です。コロナ禍が始まってすでに3年が経とうとしています。コロナ禍による生活変化や学校教育のあり方が模索されていく中で、子どもの学習意欲がなかなか上がっていかず、むしろ下がっているということが非常に大きなことだと思っています。
スライド左側の表は「勉強しようという気持ちがわかない」という子どもの割合です。小学校4年生から6年生では、FY19は33パーセントでしたが、現在は53.7パーセントで、この3年間で20ポイント上がっています。特に小学校4年生から6年生は、1年前と比べてもプラス10パーセントと、なかなか勉強しようという気持ちがわかないお子さまの割合が増えています。
これは3年前ですので、このお子さまたちはコロナ禍が始まった頃は小学校1年生から3年生で、学習のスタイルがまだできあがってない時にコロナ禍が起こり、学校の学びがなかなか安定しない、自分の学びのスタイルが作りきれないという中で今、小学校4年生から6年生を迎えているということです。この学年が一番この傾向が大きくなっています。中学生、高校生においても、今年度の調査の数字が一番良くないということは変わりません。
スライド右側の表は「上手な勉強の仕方がわからない」子どもの割合です。ここも一番ギャップが出ているのは小学校4年生から6年生で、理由は先ほどお話ししたとおり、この3年間が小学校1年生から3年生が4年生から6年生になるところで、自分の学びのスタイルが十分確立できていないということです。
あるいは、学校の学びにおける変化が非常に多い中で、社会が模索していたというところが子供たちに影響しているというのが表されているのではないかと思っています。
この変化による脅威としては、学習意欲の低下は校外学習事業を中心に当然影響を及ぼしています。例えば「進研ゼミ」の入会・継続意向に具体的な数字が出ています。「進研ゼミ」退会後に「次の学習法は?」と質問したところ「何もしない」という層が、我々の経験値からすると非常に多くなっているという認識を持っています。もちろん、ここに機会点はあるわけです。
もともとこのような状態が日本中のお子さまの中で起こっているわけで、これは社会の課題だとも思ってます。ここにしっかり向き合って子どもの学習意欲を引き出していくということは、保護者の方々のニーズとしても大きくなっていますし、教科学習だけでない多様な学びの拡大を含めて、しっかりとこの課題に対して向き合っていきたいと思っています。
大学受験における年内入試拡大
2つ目の環境変化です。今まで一般的に推薦やAOと言われていた、大学受験における年内入試の割合が年々広がっており、さらに将来的にも広がっていくであろうということが起こってます。
スライド左側の表は、私立大学の入試方式別の入学割合で、赤い折れ線が年内入試で私立大学に入学する方の割合です。かなり以前から50パーセントを超えているのですが、現状ではもう60パーセントに近づいています。一般入試との差は今後さらに広がっていくだろうと言われています。
スライド右側の表は大学入試センター試験、1月に行われる共通テストの志願者数を示しています。もちろん私立大学の年内入試の割合が増えるにつれて、共通テストを受ける生徒の数が減っていきます。今年度はまだ確定しておらず調査レベルですが、昨年度は53万人だったところが、今年度は23,000人以上減っていくだろうと言われています。
これによって起こる脅威としては当然、一般入試対策ニーズの減少が起こってきます。共通テスト対策の「進研模試」受験者数に影響するでしょうし、塾では高校3年生の生徒のみなさまが「夏くらいでだいたい受験の目処がついている」ということが起こるということが、当然脅威になっていきます。
一方で、機会点もあります。スライド右下に「拡大するニーズへの対応」とありますが、まず将来の進路をしっかりと考えながら大学を選ぶということが、より必要になってきます。自分に合った進路選択をいかに充実感を持って進めていけるか、あるいは進路が多様な学校における基礎学力や学習力の支援も機会点になります。
年内入試で学ぶ意欲、あるいは必然性が落ちていくわけです。そうすると十分な基礎学力を身につけないまま、年内入試で合格し大学生活に入っていくことになり、これは非常に大きな社会的課題になっていきます。ここに対しても十分に機会点があるし、向き合っていかないといけない課題であると捉えています。
GIGAスクール構想の進展
環境変化の3点目としては、GIGAスクール構想が進んでいます。一人一台端末がコロナ禍によって普及したわけです。学校でのデジタル活用はこの3年間でずいぶん進んできています。学校と家庭の垣根も低くなってきているという変化が起こっていると認識しています。
スライド左側の表は、授業で教員がICT機器を活用する頻度です。それぞれ小学校低学年から高等学校までの3年間で、2021年と2022年の2年比較でも、かなり進んできています。
スライド右側の表は、自治体の有償ソフト導入率です。2021年4月は約60パーセントの自治体で採用されていました。現状での見込みでは、約60パーセントだったものが2023年3月には約85パーセントの自治体で有償ソフトの導入が広がっていくということです。
この脅威としては、学校と家庭の学びの垣根がさらに低くなっていきます。「進研ゼミ」や塾・教室の優位性の低下が起こる恐れは、当然あると捉えています。一方で機会点としては、この端末は、2025年にリプレイスを控えています。リプレイスというのは端末をもう1回配り直す、あるいは個人負担で購入していただくということです。
これはまだ国の政策としても十分に決まっていないところですが、このリプレイス時に、No.1のシェアで展開している我々の有償ソフト「ミライシード」のシェアの拡大という可能性が十分にあると捉えています。
もう少し詳しくご説明しますと、自治体で有償ソフトを導入する時には5年契約が基本になっています。最近では1年から2年契約も少し増えてきていますが、つまりこの5年契約が終わった段階で、さらにシェアを増やす機会点があるということです。
もう1つは、学校事業とゼミ事業の連携強化をより強くしていくということで、新たな事業モデルの構築が機会点になるだろうと考えています。具体的に言いますと、例えば「進研ゼミ」であれば、現在、受講費の中にタブレットを付けています。
これについても、リプレイスの際にデバイスが個人負担になった場合には、「進研ゼミ」で「BYOD」が可能となります。1つの端末の中で、学校の学びと「進研ゼミ」の学びをつなげられれば「BYOD」の可能性も十分に起こってくるだろうと考えています。そのような機会点をしっかりと捉えていきたいと思っています。
国内教育:「進研ゼミ」の現状を踏まえた打ち手
このような大きな3つの環境変化の中から、今、事業別にどのようなことを考えているのか、あるいは打ち手を講じているのかについてご紹介します。
まず「進研ゼミ」の現状を踏まえた打ち手について紹介します。先ほどお話しした環境変化の中で、「進研ゼミ」が直近で向き合っていかないといけないのは、やはり子どもが学びに気持ちが向かない、意欲が湧かないということに対して、「進研ゼミ」でしっかりと応えていくことだろうと捉えています。
そのような意味で、すでに発表しましたが、2023年3月あるいは4月から、「進研ゼミ」の中に新しい学びを入れ込んでいくことを考えています。VR学習あるいは「Nintendo Switch」とのタイアップで子どもの学習意欲を引き出すような新サービスを始める用意をしており、リリースに向けて取り組んでいるところです。
課題は、先ほどお伝えした受験競争倍率の低下や、コロナ禍の長期化を受けて、お子さまの学習意欲が低下していることです。ここに対してしっかりと「進研ゼミ」で向き合うということです。
取り組みとして、「勉強が好きなキミ、はじまる。」というキャンペーンを、この販売の山場であるハイタイムにしっかりと打っていくことで、お子さま、あるいは保護者の気持ちに応えていきたいと思ってます。
今、打ち手は具体的に3点考えています。1点目が、スライド左側の「チャレンジ サポート電話」です。これにより「進研ゼミ」をお送りするだけでなく、活用の状態もわかります。一人ひとりの学習データをもとに、「まなびアドバイザー」を展開し、お子さまに直接しっかりと働きかけしていくことでより学習意欲を高めていこうと思っています。
2点目は、VRを用いた「これまでにない学び」の展開です。「ハイリコム学習」というネーミングで、さまざまな学びに対して抽象的な学びではなく、より自分で見て、体験して、学びに入り込めるというものです。新中学1年生にあたる、小学6年生の中学準備講座より提供を開始し、新しい学びを展開していこうと思っています。
3点目が、本日、プレスリリースしました「進研ゼミ得点力アップシリーズ for Nintendo Switch」です。任天堂さまの「Nintendo Switch」とタイアップすることで、新しい学びのかたちとして取り組んでいきたいと思っています。
このサービスで、日常的に勉強を行うきっかけづくりと、「勉強がわかるようになった」「楽しくなった」という経験を多くつくることをぜひ実現していきたいと考えています。まずは、新小学5年生から新中学1年生の3学年の「進研ゼミ」の会員限定で、学費内でサービスをリリースしていく予定です。
国内教育:「進研ゼミ」のマーケティング変革
「進研ゼミ」のマーケティング変革についてです。いかにマーケティング効率を上げながら、「進研ゼミ」へのご入会を考えていただくかという問題を持っています。現状として、夏販売の中で1つの大きな成果が見えてきています。それは、進化していく「進研ゼミ」の価値にしっかりと触れていただく「体験型マーケティング」です。
今までも体験型については行っていたのですが、この夏は、体験教材を丸ごとお送りすることで、「進研ゼミ」の解説のわかりやすさや教材の使いやすさといったことを今まで以上に体験してもらうことにチャレンジしました。
体験型マーケティングを行ったものとそうでないものを比較したところ、結果として1人あたりの獲得コスト(CPO)が4割程度減少している例もあります。このような方法をハイタイムにもしっかりと導入しながら、進研ゼミの販売効率をより追求していきたいと考えています。
国内教育:学校事業
高校事業は、先ほど課題と環境変化として年内入試についてお話ししました。まず、ここに向き合っていくということが非常に重要だと思っています。
また、小・中学校事業については、先ほどGIGAスクール構想における環境変化についてお伝えしましたが、2025年にリプレイスという大きな機会点があります。ここを見据えて、現状でもナンバーワンシェアである「ミライシード」の商品力を徹底的に強化することにチャレンジしていこうと考えています。
高校事業においては、年内入試拡大の影響を受けて、今年度も高校3年生を中心に「進研模試」の受験者が若干減少しています。上半期の累計受験者数は、対前年でマイナス1.5パーセントでした。このうち少子化の影響がマイナス0.9パーセントほどありますが、0.6パーセントくらいは年内入試の影響を受けていると認識しています。
そのような中での打ち手としては、年内入試で受験されるお子さまが増えていくことは事実であるため、そのお子さまに対して年内入試にしっかりと向き合う、あるいは大学に向けて学びの準備をしていくというニーズに応えていくことです。
高校事業では、進路支援コンテンツの「進路達成プログラム」あるいは「志望理由書・自己PR対策パック」をしっかりと強化するための準備をしていこうと思っています。
また、小・中学校事業においては、GIGAスクール構想の進展に伴い、今も順調に「ミライシード」の受注数が増えてきています。2021年4月に6,000校から始まり、現状2023年3月末は9,000校が視野に入っています。
さらに、2025年の端末リプレイスにおいて「ミライシード」を選んでいただくために、しっかり商品を強化し、対応をしっかりと取っていこうと考えています。
国内教育:塾・教室
塾・教室については年内入試拡大の影響により、特に高校生を中心に、「TKG(東京個別指導学院)」「アップ」が苦戦していることが上期で見えてきています。我々の塾も、年内入試の指導強化や中学受験対応を拡大して、高校生中心だったものから在籍構造を改革していくようなチャレンジを進めていこうと思っています。
スライド左側にあるのが、足元の在籍数の状況です。9月の在籍数について「鉄緑会」は前年度を上回り、今も非常に順調に推移しています。一方、「TKG」や「アップ」「お茶ゼミ」は高校生を中心に若干苦戦しているのが現状です。
これに対する打ち手は、2点考えています。1点目は、高校生中心だったものを成長領域である中学受験あるいは年内入試対応への新しい構えをつくって、事業領域の拡大をしていくことです。次に、特に学生にとって競争環境がある首都圏の難関大学への受験事業の強化についてしっかりと進めていくことです。
具体的には、「アップ」の関西でのノウハウを首都圏にしっかりと持ち込んで、首都圏の中学受験に進出します。すでにリリースしていますが、来年2月に「進学館ルータス」を開校します。ここでしっかりと、中学受験のニーズに応えられる塾を新たに展開していきます。また、2022年度内に「アップ」と「お茶ゼミ」が統合します。統合により、首都圏の難関大学への受験の事業の強化をしっかりと進めていきます。このような打ち手をすでに講じているところです。
国内教育:大学・社会人
大学・社会人領域については、しっかりと伸びていくという姿が確認できており、さらに強化していくことをサマリーでお話ししました。リスキリング(DX・IT人材育成)ニーズの高まりと、年内入試の増加を機会点に、現状は順調に進捗しており、さらにそこを強化していくということです。
スライド左側は「Udemy」の導入状況です。「Udemy Business」というもので、対法人で展開しています。1年前の2021年は導入社数が517社でした。2022年9月末は、前年同期比で77パーセントアップして916社となり、非常に大きな伸びを示しています。このニーズはさらに高まっているため、ここはしっかりと伸ばせるという確信を持っています。
年内入試の拡大は、大学・社会人においては非常に追い風となっており、入学前教育ニーズの増加が起こっています。年内入試によって秋くらいに入学が決まり、翌年4月に入学するため、どうしても十分な学びが蓄積されていない、準備ができていない大学生が増えており、大学側もそこに課題を持っています。大学に入る前にしっかりと教育して、学んで大学に入ってもらいたいとの考えから入学前教育ニーズが増えてきています。
これを担当しているのが、我々のベネッセグループの進研アドです。進研アドが展開する入学前教育ニーズ「学問サキドリプログラム」は、すでに全国の大学・短大368学科、1万3,731名の方に受けていただいています。
このニーズは、年内入試の拡大に伴ってさらに広がっていき、十分に機会点になっていくだろうと捉えています。
K&F:中国
K&Fの中国の「こどもちゃれんじ」についてです。実は、中国のロックダウンが今回の下方修正の大きな理由の1つとなっています。3月末から5月末までロックダウンによるマイナスの影響が出ていますが、このときにまず、教材が送れないということが起こりました。
また、中国の場合は、日本のように契約が、自動継続ではないため、継続するかどうかの意思確認するプロセスがあるのですが、ロックダウンの間は十分に行えませんでした。加えて、新規の営業活動を止めました。これが事業に非常に大きく影響し、今回の下方修正につながりました。
足元の状況については、教育に対する底堅いニーズは当然あると思っています。しかし政策変更(双減政策)によって、競合は事業縮小の傾向が続いており、去年あたりにお話ししていた、競争環境の厳しさは緩和しています。
したがって、私は足元の市場としては非常に好転していると捉えています。9月の新規会員も、対前年で13.3パーセントくらい増えてきており、また非常に大きい点として、上の学年、プレスクールの学年の継続率が回復しています。
このような意味合いにおいては、ロックダウンで本当に傷みましたが、市場環境をしっかりと受けとめて、もう一度、回復へと戻していきます。中国事業はそのようなことが十分にできると感じています。
事業の性格上、いっぺんに戻せるわけではありません。販売費がかかりますので、収益のバランスを見ながらしっかりと伸ばして回復させていこうと思っています。中国事業については、2025年にもう一度100万人を視野に入れつつ取り組んでいきたいと考えています。
介護・保育
介護・保育についてです。介護・保育も、先ほど中国事業のところでお話ししたことと同様に、新型コロナウイルスの影響が、今回の下方修正の大きな要因となっています。
新型コロナウイルスの感染が広がったときには、「入居が止まり、見学が止まる」ということが起こっています。さらに、今回の利益としては物価高騰の影響が非常に大きかったです。これに対して早期の回復と対応をしっかりと進めていきたいと思います。
今回は第7波の影響が大きかったわけですが、少し収まってからは営業を再開しています。足元の見学者は、コロナ禍前の水準よりも、さらに多くの方に見学していただいている状況となっており、入居率の回復に向けて、しっかりと営業を強化しているところです。
また、今年は光熱費の高騰が非常に厳しく、事業にも影響を与えました。光熱費の高騰分については、12月から値上げする対応をすでに取っています。
期中からですので、今年度についてはすべてをカバーすることにはなりませんが、来年度からは光熱費の高騰によるP/Lへのマイナスインパクトは、値上げによって解消していけるだろうと考えています。
これ以外にも、下期の打ち手として、体験ショートステイからの入居拡大を進めています。体験ショートステイの利用者は、現状では過去最高となっています。ここを長期の入居にしっかりとつなげていきたいです。そして我々のハイエンドホーム「アリア」「高額グランダ」では、10月から年齢別入居金の導入をしています。
これにより、91歳以上の方の入居が非常にスムーズになるように手を打っています。介護・保育も、しっかりと入居率の回復とP/Lの回復を目指していくことを打ち手として考えています。
国内教育横断戦略について
各カンパニー別、事業別にお話をしてきましたが、日本の教育において大きな変化が起こっていることは事実です。
特に留意すべき変化を的確に捉えて、その変化に対してカンパニーを越えて、オールベネッセとして戦略を打っていく必要があると、今、思っており、国内教育横断戦略というものをキックオフし、スタートを切っているところです。
テーマとしては、義務教育では先ほどからお話をしているFY25のGIGA端末リプレイスは、学校事業だけでなくゼミ事業にも機会点があるわけです。それをしっかりとオールベネッセで戦略を作り、対応していきます。
そして高大接続領域として、年内入試が広がっているというお話をしましたが、その中で新たな事業モデル作りが必要であると考え、そこに対してもオールベネッセでしっかりと取り組んでいこうと考えています。
またもう1つは、「地域」が非常に重要なキーワードになってきます。地域ごとにかなり教育改革に対する歩みが違ってきており、地域格差も起こっています。ここに対して、しっかりと地域の教育を支えていくための支援モデルを作るということも私どもの非常に重要な命題だと思っています。
この3つのテーマについて社長直下で経営変革推進本部を10月初旬に設置し、オールベネッセでこのテーマについて取り組んでいるところです。
地域戦略:さいたま市との連携協定
先ほど地域の話を少ししましたが、今、日本の中で一番進んでいると言われているのが、このさいたま市の動きです。
実はさいたま市と民間4社が連携し、さいたま市の地域の教育をさらにブラッシュアップし、強化していこうという動きがあります。さいたま市スマートスクールプロジェクトというもので、先日私もそちらに参加し、調印してきました。
このような動きを通して、学校と家庭の学びがどうあるべきか、そのような中で我々の学校事業、あるいは校外学習事業をどのように組み立てていくかということも、このような地域とのプロジェクトを通してしっかりと作り上げていきたいと考えています。
こちらはさいたま市に限らず、日本中の自治体にこのような問題提起をし、しっかりと地域の教育に寄り添っていくということも非常に重要なテーマではないかと思っており、それを強化していくことも国内教育横断戦略の中の非常に大きなポイントとして捉えていきたいと思っています。
配当について
このような中で、配当についてですが、今年度は1株当たり60円の配当予定に変更はありません。前期比10円の増配をしたいと考えています。
いろいろな変化がありますが、しっかりと打ち手を打っていくことで、十分に今の状況をさらに好転させていくことができると思っています。
そのような意味合いにおいても、60円の配当はしっかりと実行したいと思っていますし、次年度以降さらにこれをベースに考えていきたいと思います。
ベネッセグループの目指すべき姿
ベネッセグループの目指すべき姿ということで、あらためてお伝えします。変化が大きいことは事実です。「サステナブルな社会」あるいはベネッセとしての「サステナブルな成長」の実現に向けてどのように考えていくかが今、非常に問われており、我々がしっかりと考えていかないといけないテーマだと思っています。
「全てのステージで『人』に関わる社会課題の解決に貢献していく」ということをベネッセグループとして絶対、ぜひ実現していきたいと考えています。教育の変化で起こっていることは、当然ベネッセの事業にも影響していますが、まさに日本の教育の社会課題そのものです。大学、社会人事業において機会点ができていますが、これも「社会人が学ぶ社会をしっかり作っていく」という日本の社会課題の1つであると思っています。
シニアについても、もちろん入居者にしっかりとした、ユニークで質の高いサービスを提供していくことはこれからも引き続き行っていきますが、介護の担い手が不足していくというテーマも人に関わる課題として非常に大きな社会課題になっていくと思っています。
このようなに人に関わる社会課題をすべてのステージで一気通貫して取り組んでいくことが、我々が今行うべきことだろうと捉えているため、今回の教育の変化に対する取り組みもこのような大きな視座、志を忘れず、しっかりと取り組んでいきたいと考えています。
最後に
教育については先ほどお話ししたように横断戦略もしっかりとテーマ設定しながら、変革の事業計画を策定するというフェーズにあります。
これは中途半端なものにするつもりはないため、少しお時間をいただいてしっかりと作っていき、5月にはみなさま方に、この変化の中でベネッセがどのように取り組みをしていくのかということをぜひ発表したいと思っています。
今年度は事業説明会をしっかり行っていくとお話ししましたが、特に国内領域においては今日お話をしたような取り組みをしていく必然性を感じているため、こちらをしっかり行った上で、5月に国内教育の事業説明会の代わりになる、変革の事業計画をみなさまの前で発表するつもりで取り組んでいきたいと考えています。
以上となります。ご清聴ありがとうございました。